8.時空を超えて叩け!
タケルは腹を決めた。大事な友達を失うくらいなら、自分が死んでしまえばいいのだ。
この命と引き換えに、あの2人は必ず生きてここから解放してやらねば…
「いいよ、キララ。おれの命、オマエに預けるよ!
ただな…。
あの2人は必ず助けてくれ!
それだけは、約束だぞ。
約束破ったら、死んでもオマエを恨んでやるからな! 」
キララは、フッと苦笑いして言った。
「人を幽霊呼ばわりしてて、今度は、アンタが幽霊になるってか?
アンタを生かすも殺すも、アタシ次第ってことか…
面白いじゃないか…
じゃぁ、アンタをゲームの駒に使ってやるよ!
まぁ、楽しンで動いてくれ! 」
タケルは、前方の敵の集団が、キラシャとケンを盾にして、銃で2人を狙いながら、こちらに向かってくるのが見えた。
「てめえら、早く銃を捨てるんだな! すぐにでも、こいつらの頭に穴あけられるぜ! 」
ところが、少年達は銃を捨てるどころか、みなそれぞれに敵の集団に向かって銃を構えたままだ。
「何やってンだよ! オレの友達がどうなってもいいってのか?
地球に帰って、ちゃんと生活できるように協力するって、約束したじゃないか!
あれ、ウソだったのかよ! 」
タケルは、他の少年達に向かって、必死で叫んだ。
「残念だけどな。タケル。
オレら、あの子らがどうなっても、カンケーねェンだ。
アイツら始末しないと、オレらの将来にかかわるンだよ。
オマエなンかに、頼っちゃいないよ!
自分で、自分のことはケリつけないとな!
オマエも、あの子ら助けたかったら、自分でどーにかしろよ!
早くしないと、あの子らと一緒にやつらを集中攻撃するぞ! 」
タケルの近くにいたボス格の少年が、敵をにらみながら、タケルに聞こえるように大声で言った。
キララの声が聞こえた。
「さぁて、タケル。どうする? 時間がないみたいだよ」
「わかった。
キララ! あの2人をオマエが隠してくれたら、オレが人質になってやる。
アイツらが、オレを縛ったら、オレを撃て! あいつらと一緒にな! 」
「そうか。
だけど、アンタの友達、キラシャって、女の子だよね。
アタシが隠したって、アンタが死んだら、どこへ連れてきゃいいのさ。
その辺にほったらかしてたら、またどっかの悪い連中にイイようにされるだけだよ。
アンタに見せたビデオみたいにね。
ひどい目に遭って、殺されちゃうけど、それでいいンだね・・・」
タケルの脳裏に、銃で脅され泣き叫ぶ少女達の姿がよみがえった。
キララの言葉は続いた。
「それくらいの気持ちでやれば、何とかなるだろ。
まだ、アンタに見せてなかったけど、
あの子らは、アンタの知らない特技があるンだ。
まぁ、見ときな! 」
キララはタケルにそういうと、他の子供達に向かって叫んだ。
「それじゃ、行くよ!
みんな! 時空を超えて、奴らを叩くんだ!
戦利品は、ありがたく頂戴しときな!
奴らの方が人数多いけど、手早くやりゃすぐに縛れるからな!
タケル!
アンタもあの子らのやってること見て、できることをしな!
力の弱い子の手助けをしてやってくれ!
じゃぁ、行くよ! 」
キララは呪文を唱えながら、揺らぐ空間の範囲を少しずつ広げていった。