未来の少女 キラシャの恋の物語

みなさんはどんな未来を創造しますか?

第21章 同じ時を生きる君に ③

2021-02-24 14:40:19 | 未来記

2014-04-05

3.秘密の空間

 

タケルの周囲が暗くなったと思った瞬間、

 

無重力の真っ暗な空間に、ポ~ンと放り出されたかと思うと、

 

近くで何かが爆発した。

 

 

その爆発の音の凄まじさに、タケルの耳の鼓膜が激しい痛みとともに、

 

パーンと破れたような感覚があり、

 

『もう、これでホントに耳が聞こえなくなるンだ…』と、タケルは覚悟を決めた。

 

 

その後も、どこかで爆発するたびに周囲が明るくなるが、音がまったく聞こえないので、

 

タケルはかえって冷静に、爆発の様子を見守ることができた。

 

 

そんなタケルに、キララが話しかけてきた。

 

「この爆発って、タケルが地球に帰ってから、すぐに始まるのさ。

 

これから起こることなンだよ!

  

アンタに会うのを待ってる女の子がいる。

 

キラシャだっけ…

 

アンタの友達、ケンと一緒にね。

 

 よっぽど、アンタのことが好きなンだろうね。

 

 

でも、アノ子、ケンにも心を動かされてるみたいだよ。

 

ずっとそばにいると、情が移っちゃうのかね。

 

 

まるで、アンタとアタシみたいだ…』

 

 

タケルの怒りが、爆発した。

 

 

『何言ってやがンだぁ!

 

よく聞け! オレは、オマエがだいっっっきらいなンだ!

 

人を操り人形みたいに使いやがって!

 

 

キラシャはな! 

 

オレに反抗した時だって、

 

オレの言い分が正しいってわかったら、

 

ちゃんと言うこと聞いてくれたぞォ!

 

 

オマエみたいに、何でも思い通りに人を巻き込もうなンて、

 

人の気持ちがわかンない奴に、何がわかるって言うンだァ!

 

オマエに未来が見れるって言うンなら、オレがその未来を変えてやろーじゃねェか!

 

オマエがどんな未来を見せたって、そんな未来なんてくそっくらえだ!』

  

『だからさ… 

 

このまンまじゃ、アノ子は爆発で死んじゃうンだよ!

 

ケンとかって、友達と一緒にね。

 

アノ子を助けられるのは、アンタしかいないンだ。

 

 

…でもね、アンタひとりじゃ無理だよ。

 

アンタさえやる気になれば、今は宇宙ステーションに戻りたいって言ってる子らも、

 

一緒に地球に行って、アンタを助けてくれるかもしれない。

 

アノ子らは、家族と宇宙の旅してる途中で、ゲームに夢中になってさ。

 

親からこっぴどくしかられて、置いてけぼりにされた子もいるっていうのに、

 

悪党に目つけられて、ゲームでせっかく獲ったポイントだって、はぎとられてさ。

 

挙句の果てに、あの連中の手先になって、コソ泥に使われるしかないのさ…。

 

 

アノ子らにも、この秘密の空間で自分の未来を見せて、

 

こんなことになンないようにって、言い聞かせたんだけどさ。

 

『こんなのウソだ! オレをだまして、働かして、オマエがカネをせびるつもりだろ!』

 

だってさ。 

 

けどね…。

 

アノ子らも、アンタと同じで、いずれアフカに行く運命持ってるらしい。

 

アフカは、アンタも知ってるだろうけど、今も戦争で殺し合いをやってるトコさ。

 

あるグループは、自分達の仲間だけじゃ人数が足りないってさ、

 

行き場を失った子供達をかき集めて、戦争が起こった時の兵士にしてンだ。

 

自分達のテリトリーを守るためにね…。

 

アノ子らは、身代わりに死ンでゆくのさ。

 

アンタが見ているこの爆発も、そのグループの仕業だよ。

 

これをホッとくと、アノ子らは鞭を打たれて、寝る間も与えられずに歩かされて、

 

戦争に駆り出されて、戦闘の盾にされて、銃に打たれて死んでゆくンだ。

 

アノ子らにも、あいつらのやり口を何度も見せてやったよ。

 

今まで犠牲になった子らが、どんな目に遭ったかってね…。

 

例えば、こんな風に…」

 

キララは、タケルにアフカの子供達が、大人に銃で脅され、暴行され、殺され、穴に次々に葬られるというシーンを3Dホログラムで見せた。

 

タケルは、女の子達が泣き叫ぶ中、次々に犯されては殺されるという、目を覆いたくなるような映像が流れるのを、歯を食いしばって、見つめた。

 

キララは、そんなタケルを見ながら話をつづけた。

 

「アンタは、平気かい…?

 

アノ子らは、ビビッて目をそむけるし、そんなはずがないって、反発してたけど…。

 

何しろ、戦争してないエリアで育った子ばっかりだからね…。

 

アタシが宇宙ステーションで起きる事故を予知して、それがホントに起きたからね。

 

アタシの言うこと、少しずつ聞いてくれるようになったンだよ…。

 

それにさ。

 

悪党連中の言いなりに、人の部屋に入って盗ンだものとか、

 

人のMフォンで買い物したものを、転売して金にするンだ。

 

たくさん稼いだって、全部あの悪党達に取り上げられるンだよ。

 

そのくせ失敗したら、ぶん殴られるしね…。

 

あんまりひどいことされるから、警察に届けようって、手もあったけどさ。

 

自分らもその手先として働いてたからね。

 

自分のやったことが警察にバレたら、捕まるしかないだろ。

 

何人もいたよ。奴らに連れて行かれて、帰ってこなかった子がね。

 

今残ってる子らも、あくる日にはいなくなってたかもね。

 

だからさ。地球に帰って、生きれるトコ見つけてやろうと思ったのさ。

 

…タケル。アンタはどう思う?』

 

 

『オレの知ったこっちゃないさ。

 

それに、本物の戦争してるトコだぞ!

 

そンなトコへ行く方が、よっぽど危ないじゃないか!

 

アイツ等だって、コレ見せて喜ンでるお前から逃げれた方が、よっぽど幸せだよ。

 

何だよ。人の運命がどうのこうのって…。

 

オマエこそ、自分の運命を変えりゃいいンじゃないか!

 

オレはゴメンだぞ! 

 

アイツらはあの宇宙ステーションに戻って、家族に会えばいいンだ。

 

何だったら、オレもさがしてやるよ!

 

その方が、幸せだよ!

 

オレは、まだ裁判も終わってないンだ。宇宙ステーションに帰らないとな。

 

地球へ行くのは、それからだ! 』

 

 

キララの『それでいいのか? 』という言葉が聞こえると、

 

いつの間にかタケルの周りが明るくなり、

 

元の宇宙船に戻っていた。

 

 

タケルの周りにいた男の子達は、みなタケルを見ていた。

 

「どうだった? 秘密の空間は…」

 

「怖かった? ウェンディは、時々オレら驚かして、おもしろがってンだ」

 

「ウェンディといたら、悪い奴から殴られたら、すぐ隠してもらえるし、

 

おいしいものも食べれるし、ゲームしてて楽しいけど…

 

怒られるたびに、あの空間見せられるンだ…」

 

「自分がこうなるって言われてもな。

 

まだ、子供なのに、銃持って戦わされるなンてな…」

 

「アフカじゃ、子供も武器持って戦わないと殺されちゃうンだ。

 

相手が怖い奴だと、ちょっとビビるよな…」

 

タケルは、てっきりあの爆音で耳が聞こえなくなったと思っていたので、少年達の声が普通に聞こえるのが不思議に思えた。

 

「別に。映画やゲームの方が、もっと怖い格好して、派手に血の出るシーンやってるさ。

 

オマエら、ナンであンなもの見せる、悪魔みたいなウェンディについてきたンだ? 」

 

タケルは、今までずっと疑問に思っていたことを聞いてみた。

コメント
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