こんにちは、金木犀です。
不意に曲が流れて、
思わず、足が止まりました。
サザンの『真夏の果実』
突然、波に、
足元をすくわれたかのように、
現実から一気に離され、
何十年も前に引き戻されて、
困りました。
実習棟、基礎研究棟。
講義棟横の階段。
大学会館の学食。
校庭を渡る風と、なびくコート。
試験前の図書室。
夕暮れ時の岩場、
一眼レフとフィルム写真。
一緒に春の砂浜を裸足で歩いたこと。
夜の潮騒。
チェックのシャツを借りたこと。
はい、と手渡されたコーヒー。
灯台、膝枕、
古いルノー。
橋のたもとの桜、
カラマーゾフの文庫本。
海釣り公園。
骨董屋で買ったカップ。
飛行機の座席で泣き続けたこと。
あの頃、街のあちこちで流れていた、
この曲がトリガーになって、
ほとばしるように感情があふれてきて、
困りました。
人間の記憶は不思議なものですね。
最後までお読みいただきありがとうございます。
金木犀でした。