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三浦春馬氏イメージ小説「姥捨て山伝説」青リンゴ 第一章、二章

2020-04-25 15:26:00 | イメージ小説
十年近く前、将来の予定をワイドショーで
答えた 三浦春馬氏。
「40歳になったら農業する!!」には、
仰天しました。
そこから妄想して書いた短編小説です。



   第 一 章 (全十一章)

 音もなく降り続く雪……
 今年はなんという冷え込みだろう。
藁の雪ぐつを履いて進める足がこんなに重いのは初めてじゃ。
行きたくねえ、行きたくねえ……
大好きなばあちゃんを山に捨てになんぞ。

 時は明治時代。
ある山に囲まれた地方の貧村。
この村では 年寄は山の中へ捨てに行かなければならない。
すでにご一新を過ぎているのに、まだ江戸時代の
風習が固く残っているのだった。
「馬作、ワシを負ぶって さぞ重いじゃろう。ワシは歩けるぞ」
「バカ、言うでねえ、ばあちゃん!!
姥捨山へ 自分で 歩いていく年寄がいるか!!
負ぶって連れていくのがオラの役目。
父ちゃんが死んじまったからマゴのオラの役目じゃ」



そこまで言って、馬作は口をつぐんだ。
<なんでこんな慣わしの村に生まれちまっただろう>
ばあちゃんは着の身着のままだが、腐りかけの林檎を
大切に胸に抱いている。
「なんだ、そのリンゴ」
「お前がくれたじゃないか、馬作。食べるのが
もったいないからずっと持っているだよ」
そういえば、その林檎は、前に馬作が山深く迷い込んだ時、
拾ったみっつの林檎のうちのひとつだった。

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       第 二 章

 やがて長い冬がやっと終わろうとしていた。
 もちろん、馬作は村の衆の目を盗んで冬中、
ばあちゃんに食糧を運び続け、ばあちゃんは元気でいる。

やがて小川の氷も溶け、幾度かの嵐も過ぎ去り
花々も咲き始めた頃、村を治める領主のひとり娘、
姫りんご姫が病で伏せっているという噂が流れてきた。
 八方からたくさんの薬師が呼ばれたが容態は一向によくならない。
幼い姫は高熱で苦しみ続けているということだ。

村の者たちはウワサした。
「オラのじいちゃん、ばあちゃんたちを山に捨てろという 
慣わしはご一新前からの古い風習だ。
もう新しいご時世だというのに」
「きっと、天罰が下ったに違いねえ」
それを聞いた馬作は村の衆に
「じゃが、ちっこい姫さまは何も悪くねえ。可哀想でねえだか」
と言うと、 村の衆は
「おめえ、領主が憎くねえだか」
「そりゃ、憎いけど…… 慣わしが憎いんだよ」


 ある日、山へ向かう道を登っていると、松の木の根元から
何やら種類の違う若木がにょっきり伸びているではないか。
「あ、もしかして、あのリンゴの??」
 ばあちゃんが持ってたリンゴを捨てた場所だ。
 そこから種が根を張り、若木が伸びたんだろうか!?
 近寄ってみると、確かに林檎の樹の葉っぱだ。
 その林檎の樹は急速に成長して馬作の背を、たちまち越え、
翌年には白い花をたくさん咲かせた。



「もしかして!!」
 馬作は何者かに突き動かされるように、
花に受粉の作業をした。
 綿で作った丸いものを棒をつけ、その先に花粉をつけ、
雄蕊にくっつけてやる。
 林檎の樹の世話なんぞしたことがないが、山を越え、
林檎作りしている農家にまで行って、教えてもらってきたのだ。

<どうか、秋にはたくさんの実が成りますように>
 ことの一部始終は、山にいるばあちゃんにも報告していた。
「なんでまたお前、そこまで……」
「リンゴの実が成ったらばあちゃんに食わしてやるからな。
そしたら精力つけてもっと長生きしてくれろ!!」

 ばあちゃんは逞しく、裏山で畑を耕し、姥捨て山に
捨てられた老人たちと作物を作っていた。
 まだまだ働ける年寄を捨てろなんて領主がザンコクなのだ。
「しかし、お前の言う通り、姫さまには 
何の罪もないのじゃから気の毒じゃのう。
まだ病で苦しんでおられるのか?」
「そうみてえだ」




★第三章に続く


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