![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7a/96/fbb8c86f1f05c4b050a96086ddf2d7ba.jpg)
思えば、少し前に我がばあちゃんを背負って
姥捨て山に登ったこと、
こうして姫を背負うこと、どっちもその命を
あずかってのことなのだが、因果応報を感じる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/70/69/94ba29cea12080cf064c9c6efd8f117d.jpg)
ばあちゃんを捨てなければならなかったのは姫の領主の命令。
姫を背負うのは井戸のナゾを暴いてばあちゃんを家に戻すため。
馬作は領主の家来、数人に釣瓶(つるべ)を下してもらい、
積み石に囲まれた丸い井戸の中へ降りていった。
その年、村はかつてない飢饉に見舞われていた。
昨秋の野分(のわき・台風)による河川の氾濫で田畑は
ほとんど水害を受け、粟も稗(ひえ)も、
麦も収穫できない有様だった。
冬から春にかけては雨が降らず、畑の種まき、
田植えの時期になっても水不足でままならない。
農民たちは、いつもに増して飢えていた。
領主も頭を抱えていた。
いつ、農一揆がおこっても不思議はない。
ようやく姫の身体が回復したのは、そんな時だった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/9c/5a7789a9e06ebcf24ba064444caf1fe0.jpg)
井戸を下っていく馬作と姫を見守りながら、
ややマシな着物を借りて着替えたばあちゃんが
領主の前に進み出て膝を折った。
「オラ、いえ、私はただの村の老女でございますが、
ふと思い当たる節がございまして」
「何じゃ?申してみよ」
「古井戸にある何かというのは村に繁栄を
もたらすものかもしれねえし、
また災厄をもたらすものかもしれねえ、
という気がするのですじゃ」
「なに?繁栄か災厄とな?正反対のものではないか」
領主は老女をじろりと見て、唇をひん曲げた。
「きっと賢しい姫様はお気づきなのでしょう。
それをどうにかしなければ村の運命を
左右するものでございましょうから」
メリケン一行も、老女の持つ雰囲気から
神妙な顔つきで取り巻いて見守っている。
「老女、そこへなおれいっ!!」
領主の怒号が飛んだ。家来が持っていた刀を鞘から抜く。
(ちと、カッコよすぎ)
「ご無礼の段は 重々承知の上でございます。
こんな年寄をお斬りになってもお刀を穢すだけ」
「うむむ……」
「姫さまはきっとナゾの一端をつかんで
お戻りになられるですじゃ。
マゴの馬作は貧しい育ちでも正義感強う育ててございます。
命に代えましても姫様を守り地上へ帰り着くと信じております」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3b/fa/827e448ee17836a5ea4e53c8e41a0595.jpg)
伏せられながらも、老女の目は爛々と輝いて
マゴの青年を信じている。まるで神社の巫女か仙女のようだ。
領主を始めとして、一同は圧倒されてひと言も返せないという
気迫が老女からあふれていた。
姥捨て山に登ったこと、
こうして姫を背負うこと、どっちもその命を
あずかってのことなのだが、因果応報を感じる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/70/69/94ba29cea12080cf064c9c6efd8f117d.jpg)
ばあちゃんを捨てなければならなかったのは姫の領主の命令。
姫を背負うのは井戸のナゾを暴いてばあちゃんを家に戻すため。
馬作は領主の家来、数人に釣瓶(つるべ)を下してもらい、
積み石に囲まれた丸い井戸の中へ降りていった。
その年、村はかつてない飢饉に見舞われていた。
昨秋の野分(のわき・台風)による河川の氾濫で田畑は
ほとんど水害を受け、粟も稗(ひえ)も、
麦も収穫できない有様だった。
冬から春にかけては雨が降らず、畑の種まき、
田植えの時期になっても水不足でままならない。
農民たちは、いつもに増して飢えていた。
領主も頭を抱えていた。
いつ、農一揆がおこっても不思議はない。
ようやく姫の身体が回復したのは、そんな時だった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/9c/5a7789a9e06ebcf24ba064444caf1fe0.jpg)
井戸を下っていく馬作と姫を見守りながら、
ややマシな着物を借りて着替えたばあちゃんが
領主の前に進み出て膝を折った。
「オラ、いえ、私はただの村の老女でございますが、
ふと思い当たる節がございまして」
「何じゃ?申してみよ」
「古井戸にある何かというのは村に繁栄を
もたらすものかもしれねえし、
また災厄をもたらすものかもしれねえ、
という気がするのですじゃ」
「なに?繁栄か災厄とな?正反対のものではないか」
領主は老女をじろりと見て、唇をひん曲げた。
「きっと賢しい姫様はお気づきなのでしょう。
それをどうにかしなければ村の運命を
左右するものでございましょうから」
メリケン一行も、老女の持つ雰囲気から
神妙な顔つきで取り巻いて見守っている。
「老女、そこへなおれいっ!!」
領主の怒号が飛んだ。家来が持っていた刀を鞘から抜く。
(ちと、カッコよすぎ)
「ご無礼の段は 重々承知の上でございます。
こんな年寄をお斬りになってもお刀を穢すだけ」
「うむむ……」
「姫さまはきっとナゾの一端をつかんで
お戻りになられるですじゃ。
マゴの馬作は貧しい育ちでも正義感強う育ててございます。
命に代えましても姫様を守り地上へ帰り着くと信じております」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3b/fa/827e448ee17836a5ea4e53c8e41a0595.jpg)
伏せられながらも、老女の目は爛々と輝いて
マゴの青年を信じている。まるで神社の巫女か仙女のようだ。
領主を始めとして、一同は圧倒されてひと言も返せないという
気迫が老女からあふれていた。