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三浦春馬氏 イメージ小説「姥捨て山伝説」 青リンゴ 第七章(全十一章)

2020-04-28 13:09:14 | イメージ小説
思えば、少し前に我がばあちゃんを背負って
姥捨て山に登ったこと、
こうして姫を背負うこと、どっちもその命を
あずかってのことなのだが、因果応報を感じる。




ばあちゃんを捨てなければならなかったのは姫の領主の命令。
姫を背負うのは井戸のナゾを暴いてばあちゃんを家に戻すため。
馬作は領主の家来、数人に釣瓶(つるべ)を下してもらい、
積み石に囲まれた丸い井戸の中へ降りていった。
その年、村はかつてない飢饉に見舞われていた。
昨秋の野分(のわき・台風)による河川の氾濫で田畑は 
ほとんど水害を受け、粟も稗(ひえ)も、
麦も収穫できない有様だった。
冬から春にかけては雨が降らず、畑の種まき、
田植えの時期になっても水不足でままならない。
農民たちは、いつもに増して飢えていた。
領主も頭を抱えていた。
いつ、農一揆がおこっても不思議はない。
ようやく姫の身体が回復したのは、そんな時だった。




井戸を下っていく馬作と姫を見守りながら、
ややマシな着物を借りて着替えたばあちゃんが 
領主の前に進み出て膝を折った。
「オラ、いえ、私はただの村の老女でございますが、
ふと思い当たる節がございまして」
「何じゃ?申してみよ」
「古井戸にある何かというのは村に繁栄を
もたらすものかもしれねえし、
また災厄をもたらすものかもしれねえ、
という気がするのですじゃ」
「なに?繁栄か災厄とな?正反対のものではないか」
領主は老女をじろりと見て、唇をひん曲げた。
「きっと賢しい姫様はお気づきなのでしょう。
それをどうにかしなければ村の運命を 
左右するものでございましょうから」
メリケン一行も、老女の持つ雰囲気から
神妙な顔つきで取り巻いて見守っている。
「老女、そこへなおれいっ!!」
領主の怒号が飛んだ。家来が持っていた刀を鞘から抜く。
(ちと、カッコよすぎ)
「ご無礼の段は 重々承知の上でございます。
こんな年寄をお斬りになってもお刀を穢すだけ」
「うむむ……」
「姫さまはきっとナゾの一端をつかんで
お戻りになられるですじゃ。
マゴの馬作は貧しい育ちでも正義感強う育ててございます。
命に代えましても姫様を守り地上へ帰り着くと信じております」



伏せられながらも、老女の目は爛々と輝いて 
マゴの青年を信じている。まるで神社の巫女か仙女のようだ。
領主を始めとして、一同は圧倒されてひと言も返せないという 
気迫が老女からあふれていた。


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