恋ひ恋ひて逢へる時だに愛しき言尽くしてよ長くと思はば 大伴坂上郎女
万葉集からとったので、資料に入れた。
万葉人は恋に率直だ。技巧に凝るということをあまりしない。
それもよいことだが、現代人にはこのような恋はもうちょっと無理だろう。いろいろなことがわかりすぎている。
恋をして、会えるときくらい、やさしいことばをかけてください、これからも長く続けていきたいと思うならば。
せっかく恋しい男に会えたのに、思うようにいいことを言ってもらえなかったのだろう。これを詠まれた男がどんな顔をしたか、想像してみた。
わがいもの袖にこもりし菊の香にゑひてつかのま言を忘れぬ 揺之
「恋ひ恋ふる」を「またとなき」にしようかと悩みました。後者の方が臨場感があるかとも思うのですが、相手を追い詰めるような響きがあって「そと」にはそぐわず、また、脅迫しているような感じになりそうなのでやめました。現代人の乾いた情感には、「またとなき」の方が似合うのかもしれませんが、難しいです~。
男の言い訳の心を強いてとわず、どうせひとときの夢なのだからと、あっている間にも泣いている月夜でございますよ。という感じにしてみました。最初からこうしようと思ったのではなく、なんとなくなりゆきで言葉を選んでいるうちにこうなりました。
強気です。雅やかな情感に憧れてはいるのですが、どうも自分の性格が出てしまいます。歌をつくるときには、嘘はつけないものなのですね。
月にも耳があると困りますから、貝の中にも秘すようにささやいてください、というところです。あまり強気で来られるととまどいますね。
最後だけ「かな」にしても、まだ語気が強すぎでしょうか。夕月夜ならばと思うのですが。