河瀬の音が山に来る、
春の光は、石のようだ。
筧の水は、物語る
白髪の嫗にさも肖てる。
雲母の口して歌ったよ、
背ろに倒れ、歌ったよ、
心は涸れて皺枯れて、
巌の上の、綱渡り。
知れざる炎、空にゆき!
響の雨は、濡れ冠る!
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われかにかくに手を拍く……
今日は中也である。
春の光が石のようだということばに心惹かれる。
思い浮かぶのは風もない静かな風景だ。
こおりついたような春の朝だ。
それは容易に自分を受け入れてくれない世界の、冷たさでもあるだろう。
鳥の声すら詩人には聞こえないのか。
その絶望の深さはどのくらいだろう。
朝は来てとりさへなかぬさとやまをあふぎて浴むるしづかなひかり 揺之