水に卵うむ蜉蝣よわれにまだ悪なさむための半生がある 塚本邦雄
前衛と称する歌人によきものはいない。
それは劣等感に似た自己崩壊感を埋める叫びのようなものだ。
何かに反逆しているスタイルを背骨にせねばもたない、強烈な虚無感を抱いているのである。
神に置き去りにされた小石のように、自分が徹底的におかしいのだ。
すべてをなんとかするために、切り立つような崖にしがみつきながら、轟のような声をあげているつもりの、小さな蜉蝣のうめきなのである。
かげろふのうすきかたちをよじりつつ神なすあやのとはのひらめき 揺之