競馬マニアの1人ケイバ談義

がんばれ、ドレッドノータス!

千可ちゃん改5

2014年06月19日 | 千可ちゃん改
 その後浜崎さんの豪邸でビデオカメラとスティルカメラをチェックしましたが、幽霊は一切写ってませんでした。ま、千可ちゃんが霊を感じてなかったんだから、写るはずがないのですが。ただ、千可ちゃんはあの呪いの絵馬に何かよからぬものを感じてたことは確かなようです。
 幽霊をチェックしてるとき、森口くんが千可ちゃんに話しかけました。
「羽月さん、呪われたくないよね」
「うん。呪いたくもないけど」
「え?」
「人を呪うなんて、人として最低の行為だもん」
 千可ちゃんはたいていの呪いははね退けることができます。が、千可ちゃんが呪ったら大変です。でも、千可ちゃんはお母さんの躾が行き届いてるので、人を呪ったことはほとんどありません。

 部活はお開きとなりました。福永さん・城島さん・森口くん、そして千可ちゃんが帰るところです。浜崎さんがみんなを送り迎えしてます。
「それじゃあ、みんな!」
「はい!」
 4人がそれぞれ自転車で漕ぎ出しました。最初4人は1つでしたが、途中福永さんが抜け、城島さんが抜け、千可ちゃんと森口さんだけになりました。
 森口くんは何かを気にしてます。
「あの~、羽月さんてキスしたことあります?」
 この森口くんからの質問に千可ちゃんは、
「あるよ」
 そのあっけらかんとした返答に森口くんはびっくりしました。
「幼いときにお母さんとしたよ。でも、ここ10年はしてないかな?」
「あは、そうですか」
 森口くんは安堵の表情を浮かべました。一方千可ちゃんはそんな森口君の企みに気付いてますが、あえて無視することにしました。ちなみに,千可ちゃんはすでに初体験を済ませており,そのときの男の子と何度もキスをしてます。つまり,さっきののセリフは真っ赤なウソです。

 2人の自転車が暗い個所にさしかかりました。と、千可ちゃんの斜め後ろを走ってた森口くんの姿が、悲鳴とともに消えました。
「うぐぁっ!」
 千可ちゃんははっとして急ブレーキ。振り向くと森口くんは倒れており、その前に1人の男が立ってます。
「戸村!?」
 そうです。森口くんは戸村に襲われたのです。戸村に憑りついてる悪霊どもが不気味に笑ってます。
「えへへ…」
 千可ちゃんは反射的に左足を軸にさっとターンすると、全速力で自転車をスタートさせました。急な出来事のせいか、千可ちゃんはちょっと我を忘れてるようです。
「このーっ!!」
 千可ちゃんは戸村に体当たりする気です。が、戸村は寸前にさっと横に避け、千可ちゃんの顔面に強烈なストレートパンチ。千可ちゃんの身体は無残に吹き飛ばされ、アスファルトに叩きつけられました。
「ああ…」
 千可ちゃんはなんとか動こうとしますが、身体がまったくいうことをききません。と、その千可ちゃんの前に戸村が立ちはだかりました。
「おい、金出せよ」
「くっ…」
 千可ちゃんは戸村を睨みました。
「なんだよ、その目は!?」
 戸村は右足を思いっきり上げました。千可ちゃんの顔面を踏みつけるつもりです。
「死ぬや、このブスやろーっ!!」
 千可ちゃん、危ない。が、
「やめてーっ!!」
 ドックン。戸村の心臓に衝撃が走りました。
「うっ!?」
 戸村は心臓を押さえ、うずくまりました。
「な、なんだ?…」
 千可ちゃんは失神寸前です。その千可ちゃんの目の前に、おぼろげに何かの光景が現れました。絵馬です。そうです、あの呪いの絵馬です。千可ちゃんはその絵馬に書かれた文字を読みました。
「1年3組戸村死ね…」
 と、戸村の胸に再び衝撃が走りました。今度はさらに強烈です。戸村は胸を押さえたまま、逆エビ反り状態に。
「うぐぁ~!!」
 戸村は口から泡を吹き、そのまま倒れました。一方千可ちゃんもすでに気を失った状態です。

 先生の処置が終わったようです。千可ちゃんの右頬に大きなガーゼが貼られました。千可ちゃんはベッドに腰かけてます。ここは病室です。
 先生に2人の男が語りかけました。1人は初老で、もう1人は若いようです。実は2人とも少年課の刑事さんです。
「先生、もう話しても大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫ですよ」
 と言うと、先生は看護師を連れ、病室を出て行きました。初老の刑事さんは、今度は千可ちゃんに語りかけました。
「え~と、羽月千可さんだっけ?」
「はい」
「あ~、何があったか、覚えてる?」
 千可ちゃんは戸村に殴られた瞬間を思い浮かべました。
「戸村に殴られた」
「あ~、そこまではわかってるんですよ。問題はそのあと。なんで戸村は死んだのか、わかりますか?」
 その瞬間、千可ちゃんの身体に衝撃が走りました。
「えっ、死んだ!?」
 千可ちゃんは思い出しました。あのとき、薄れる意識の中で千可ちゃんが発した言葉、戸村死ね。そうです。あの瞬間、千可ちゃんは戸村を呪ったのです。
 千可ちゃんの目から一筋の涙が流れました。それを見た初老の刑事さんが、
「あ~、羽月さん、大丈夫ですか?」
「す、すみません…、ちょっと1人にさせてください…」
 初老の刑事さんと若い刑事さんが顔を見合わせ、お互い顔を横に振りました。2人はドアを開けました。
「わかりました、羽月さん。明日また来ますからね」
 ドアが閉まりました。次の瞬間、千可ちゃんの目からどっと涙があふれ出てきました。
「うわーっ!!」
 ついに千可ちゃんが大声で泣き出してしまいました。たとえ自分を傷つけた悪党とはいえ、呪い殺してしまったことに深い心の傷を追ってしまったのです。

 ここは霊安室。中央に戸村が寝かされてます。もちろんこれは死体です。今この死体を見下ろしている男がいます。宙に浮いてる戸村です。こっちは幽霊です。
「オ、オレ、死んじまったのかよ…」
 と、ドアが開き、3人が入ってきました。まず入ってきたのは、さっき千可ちゃんの病室にいた2人の刑事さんです。
「奥さん、こちらです」
 この声を発した若い刑事さんに初老の刑事さんが耳元で、
「おい、シングルマザーだぞ」
「あは、そうでしたね」
 続けて女性が入ってきました。この人は戸村の母親です。戸村の母親は戸村の死体の前で佇みました。
「なんでこんなことに?」
「お子さんが自転車に乗ってたアベックを襲ったんですよ」
 戸村の母親はかなり厳しい目で初老の刑事さんの顔を見ました。
「だから、なんでうちの息子は死んだのよ!」
「さあ、皆目見当がつかないところでして…。明日司法解剖するので、それまで待ってほしいんですが…」
 戸村の母親は目を逸らしました。
「くっ!。
 なんか、ちっちゃい娘がいたそうね。そいつが殺したんでしょ!。たくさん賠償金を獲ってやる!」
 それに若い刑事さんがプツンときました。
「奥さん、それはいくらなんでも言い過ぎですよ!!」
 それを抑える初老の刑事さんが小声で、
「おい、やめろ!」
 その一部始終を戸村の幽霊が見てます。
「なんだよ。またこれかよ…。こいつのせいで、オレの人生はむちゃくちゃになっちまったんだ…」
 次の瞬間、戸村は母親の背後に何か得体の知れない影を見つけました。それは少女の霊です。白目の部分が異様に光っており、黒目がまったく見えてません。しかし、その顔は戸村の記憶にははっきりと残ってます。そうです、これはさっき襲った女の子、千可ちゃんの生き霊です。
「あ、あのときの女?」
 と、いきなり戸村の母親が胸を押さえ、へたり込みました。
「うぅ、心臓が…」
 2人の刑事さんは慌てました。
「お、おい?」
「どうなってるんだ?、親子ともども心臓麻痺か?」
 戸村は千可ちゃんの霊に殴りかかりました。
「くそーっ!、オレのお袋になんてことしやがるんだーっ!!」
 が、突然千可ちゃんの身体から白い光が放たれ、戸村は弾き飛ばされてしまいました。
「うぐぁーっ!!。
 くそーっ!!」
 戸村が立ち上がろうとすると、彼の母親は床に大の字になっており、千可ちゃんが馬乗りになってその首を絞めてます。と、千可ちゃんはあらぬセリフを口にしました。
「死ね!、死ね!、死ねーっ!!」
 母親はまたもや悲鳴を上げました。
「うぎゃ~!!」
 慌てふためく2人の刑事さん。
「おい、救急車だ!、早くしろ!、早く!」
「は、はい!」
 戸村は再び千可ちゃんに殴りかかろうとします。
「このやろーっ!!」
 と、ここで千可ちゃんは突如消えました。
「き、消えた?…」
 千可ちゃんの生き霊は、どこかに行ってしまったようです。
「くそーっ、恨むのはオレだけで十分だろ!。なんでお袋まで恨むんだよ!」
 戸村は成仏の時までは、自分の母親を護ることを決意しました。

 ベッドの上で眠っていた千可ちゃんは、ふと何かの気配を感じ、目を覚ましました。それはお母さんの掌でした。ここは千可ちゃんの病室です。
「お母さん…」
「ごめんなさい、こんな時間になっちゃって…」
「お母さん、私、人を呪い殺しちゃった…」
 と、またもや千可ちゃんの目から涙が溢れ出てきました。
「泣かないで。たぶん私も殺してた。あれは正当防衛よ」
「で、でも…」
「それよりも、千可、あなた、今、生き霊を飛ばしてたわよ」
「ええ?」
「やっぱり自分じゃコントロールできない生き霊だったか…。止めておいて正解だったようね」
 どうやらお母さんは、千可ちゃんの生き霊を止めてくれたようです。
「ど、どこに行ってたか、わかる?」
「さあ、そこまでは…」
 でも、千可ちゃんはどこに行ってたのか、だいたいわかってるようです。
「あなたが生き霊を飛ばすのは2回目だけど、この調子だと1回目も覚えてないようね」
「えっ!?」
「城島さんが拉致られたとき、拉致した男は交通事故で死んだけど、あれ、あなたがやったのよ」
 千可ちゃんの身体に衝撃が走りました。私はすでに1人殺してる。その事実を聞いて千可ちゃんはパニックになりそうです。

 これはあの日の夜のことです。お母さんは千可ちゃの異変に気づいて、千可ちゃんの霊的エネルギーを頼りにクルマを走らせてました。と、ついに千可ちゃんがいるマンションを発見しました。お母さんはそのマンションとは反対側の車道の脇にクルマを駐めました。ちょうどその時、マンションのエントランスから拉致した男が出てきました。男は両ひざの上に手を置き、激しくなった息を整えてます。
「はぁはぁはぁ…。くそーっ、どうしてあんなところに幽霊がいるんだよ!」
「ククク…」
 その笑い声で男はびっくりしました。なんとエントランスの自動ドアの前に半透明の千可ちゃんがいるのです。その両目は異様に光ってます。そうです。これは千可ちゃんの生き霊です。男は後ずさりしました。
「くそーっ!!」
 が、すぐにガードレールに行く手を阻まれました。
「くっ!」
 男はガードレールを乗り越えようとしましたが、クラクション。見ると右側から1台のトラックが迫ってきてます。次の瞬間、千可ちゃんの生き霊が男の肩を押しました。
「うわーっ!!」
 この光景をずーっと見てた千可ちゃんのお母さんは、かなりの衝撃を受けました。悪党とはいえ、娘がたった今1人の命を奪ったのです。
 人が集まってきました。お母さんはここにいたらまずいと思い、クルマを発進させました。

千可ちゃん改4

2014年06月17日 | 千可ちゃん改
 マンションの前にはたくさんのパトカーが駐まってます。中には救急車と消防車もいます。たくさんの回転灯が廻ってます。その脇を千可ちゃん、お母さん、城島さんが歩いてます。たくさんのヤジ馬たちの声が聞こえてきます。
「幽霊だーっ!て言って、道路に飛び出したんだってさ」
 別方向からおばちゃんの声。
「トラックに轢かれて、五体ともバラバラになってたんだよ。私、今夜、寝れないかも…」
 どうやら城島さんを襲った男は、トラックに轢かれて死んでしまったようです。
 マンションからちょっと離れた100円駐車場に駐めてあるクルマに3人が乗り込みました。これは羽月家のクルマです。喧噪の中、クルマが出発しました。
 クルマは城島さんの家の前で城島さんを降ろしました。城島さんとお母さんとの打ち合わせで、城島さんはこの時間まで千可ちゃんの家にいたことになりました。なお、城島さんが乗ってたときも、降りたあとも、千可ちゃんとお母さんの会話はありませんでした。

 次の次の日、月曜日、城島さんはいつもと変わりなく登校してきました。千可ちゃんはそれを見て笑顔になり、話しかけてきました。
「城島さん、大丈夫ですか?」
「ふふ、大丈夫、大丈夫。あんなもん、一晩寝ちゃえば、すぐに忘れちゃうよ」
 城島さんは大丈夫なようです。
「羽月さんはなんともなかったの?」
 千可ちゃんは頭をかきながら、
「それが…、部長さんからもらったウィッグを忘れちゃって…」
「あ~、それは部長には内緒ね」
「はい」
 どうやってあの部屋に入ったの?、なんでテレビから這い出てきたの?、なんて質問がくると思い千可ちゃんはいろんないい言い訳を考えてましたが、その必要はなかったようです。

 千可ちゃんが通ってる高校で,ちょっとした事件が起きました。千可ちゃんの隣のクラスで授業中悲鳴が起きたのです。戸村雄二という男子生徒が隣に座ってた女の子をいきなり殴ったのです。女の子は倒れた拍子に机の角に頭をぶつけてしまい、失神。あたりは騒然となり,その影響で千可ちゃんのクラスまで授業は中断となりました。
 実は千可ちゃんは、この戸村て男が気になってました。戸村にはたくさんの悪霊が憑りついていたからです。千可ちゃんの霊視によると、戸村の家は母子家庭で、おまけに母親とうまく行ってないようです。それが負のオーラを作り、悪霊を呼び寄せてるようです。
 千可ちゃんも母子家庭の時代がありました。だから助けてあげたい、悪霊を取り除いてあげたいと思った時期もありましたが、お母さんのビンタが怖いので、何もしてあげられませんでした。だから戸村が事件を起こしたと聞いて、ちょっと残念な気分になってます。

 雨の日でした。千可ちゃんの下校の時間です。人影はまばらです。千可ちゃんは下駄箱から靴を取り出し、履き替え、そして傘立てへ。しかし、千可ちゃんの傘はないようです。
「あれ?」
 と、千可ちゃんが視線を逸らすと、そこに千可ちゃんの傘を持った男の子がいます。森口くんです。
「あ、それ、私の傘!」
「え?」
 森口くんが振り向くと、千可ちゃんが早足で来ました。
「それ、私の傘だよ!」
「ご、ごめん」
 森口くんは傘立てから別の傘を取り出しました。
「ぼくの傘、こっちだった」
 それは朱色の傘でした。千可ちゃんの傘は紺色です。どう間違えたんでしょうか?
「もう、しっかりしてね!」

 次の日も雨でした。千可ちゃんはいつものように帰ろうとしましたが、今日も傘がありません。千可ちゃんは一瞬呆れた顔をしましたが、次の瞬間、ふーっと目を瞑りました。リモートビューイングです。
 小雨の中、千可ちゃんの傘をさして歩く人影が見えます。顔を見たら森口くんでした。
 千可ちゃんは目を開けました。
「あ、まただ…」
 千可ちゃんは傘立てに残る森口さんの傘を持って、駆け出しました。
「も~っ!」

 森口さんが傘をさして下校してると、後ろから声が。
「待ってーっ!」
「え?」
 森口くんが振り返ると、千可ちゃんが小雨に濡れながら駆けて来ました。
「もう、なんで私の傘、持ってっちゃうのよ?」
 千可ちゃんは森口くんに傘を差し出しました。
「こっちでしょ、あなたの傘は!」
「あ~、ごめんごめん」
「ぜんぜん色が違うじゃんよ!」
 森口くんは傘を広げたまま、千可ちゃんに手渡しました。
「もう、間違えないでよ!」
 千可ちゃんが振り向こうとしたら、急に森口くんが語りかけました。
「あ、あの~、羽月さん、カラオケに行こうよ!」
 千可ちゃんはびっくりです。
「ええっ?」
「お詫びのしるしだよ。ぼくがお金出すから」
 千可ちゃんはカラオケに行ったことはありますが、男の子と2人で行ったことはありません。でも、せっかくのお誘いです。千可ちゃんは行くことにしました。

 カラオケハウスの一室。森口くんと千可ちゃんは気持ちよく歌ってます。千可ちゃんは1人で歌いたいようですが、なぜか森口くんはデュエット曲ばかり入れてきます。仕方がないから、千可ちゃんはその時は一緒に歌ってあげました。でも、千可ちゃんはとっても笑顔です。
 1時間が過ぎました。森口くんはもう1時間歌いたいみたいです。でも、千可ちゃんは遠慮することにしました。
「ありがとうね、森口くん」
「うん。
 ねぇ、羽月さん、またカラオケに行こうよ」
「う~ん…、気が向いたら、ね」

 翌日の下校時間、教室の中です。千可ちゃんは城島さんと一緒に歩きだそうとすると、そこに森口くんが来ました。
「あ、あの~、羽月さん…」
「あ~、ごめん、今日は部活だから」
「そ、そうなんだ…」
 森口くんを見る城島さんの頭には、疑問符が浮いてます。と、森口くんがまた訊いてきました。
「ぼ、ぼく、その部活に出てもいい?」
「う~ん…。ちょっと特殊な部だけど?」
「か、構わないよ!」
「じゃあ、ついてきて」
 千可ちゃんと城島さんは、森口くんを引き連れて歩き始めました。城島さんの質問です。
「あなた、羽月さんの彼?」
 森口くんの顔が急に赤くなりました。
「そ、そんなものじゃないですよ」
 森口くんはもじもじしながら返答しました。だけど、どっからどう見ても千可ちゃんに恋愛感情大です。もちろん、千可ちゃんもそれに気付いてます。千可ちゃんだって乙女です。恋に憧れてます。でも、森口くんはまだその対象には至ってないようです。

 ここはオカルト研究部の部室です。ふつーの教室の半分くらいの面積です。オカルト研究部だから魔女の大釜とか護符とか置いてあるような気がありますが、そんなものはまったくありません。ただ、大きな書庫があり、そこに怪しい本とDVDがたくさん並んでます。
 ドアが開き、千可ちゃんと城島さんと森口くんが入ってきました。
「こんにちは」
 中には浜崎さんと福永さんがいました。
「こんにちは」
 と、浜崎さんが森口くんに気付きました。
「きみは?」
「森口くんです。入部希望者ですよ」
 あれれ、千可ちゃん、森口くんは入部希望なんて一言も言ってませんよ?。でも、
「も、森口です!、よろしくお願いします!」
 成り行きか、森口くんは入部すると宣言してしまいました。しかし、それを聞いて福永さんは大喜びです。
「ほ、ほんと?、歓迎するよ、ありがとう!」
 実は浜崎さんと蓑田さんがほんのささいなことで大ゲンカしてしまい、それ以来蓑田さんは部室に来てません。もし蓑田さんが正式に退部届けを出したら、オカルト研究部は4人となり、またオカルト研究会に逆戻りです。だからこのタイミングで森口くんが入ってくれると、オカルト研究部はたいへん助かるのです。
 が、森口くんにはまだ疑問が1つ残ってるようです。
「あの~、ぼく、男だけど、いいんですか?」
 そう言えばオカルト研究部は全員女子です。が、浜崎さんはこう答えました。
「あは、いいよいいよ、去年は男子が3人いたから、な~んの問題もないよ」
「あ、よかった」
 森口くんはちょっと安堵です。そして、部活動開始。今日は隣の隣の市にあるみみずく神社の話題です。
 この神社、絵馬を奉納すると願いが叶うことで有名なのですが、最近○○死ねと書かれた絵馬が幾度となく奉納されてるようです。しかもその絵馬をカメラで撮影すると、かなりの確率で霊が写るとか。その噂が広がると、みみずく神社の祢宜さんは絵馬を逐一チェックするようになりました。が、それでもたま~に呪いの絵馬が奉納されてるようです。
 オカルト系の雑誌にその絵馬の写真が載ってるのですが、その絵馬の真後ろに女の子の顔があります。まるでそこに生きてる女の子を立たせたような鮮明な心霊写真です。浜崎さんがその写真を提示すると、福永さんと城島さんは興味津津。でも、森口くんはビビりました。
「うわっ!」
 浜崎さんと福永さんが心配したようです。
「きみ、大丈夫?」
「この程度でビビっちゃうの?、これより怖い写真は、ここにはいくらでもあるんだよ」
 森口くんは苦笑いしながら、
「だ、大丈夫ですよ。あははは…」
 ちなみに、千可ちゃんはこれを生き霊と判断しました。もちろん、そのことは口にしてません。
 今日は金曜日。明日は土曜日。オカルト研究部は明日これを確かめに行くことにしました。

 翌日浜崎さんの豪邸に福永さんと城島さんと千可ちゃんが自転車で来ました。この時点で朝8時。それから約45分。やっと森口くんが来ました。
「み、みなさん、早いですねぇ」
 そうです。言い渡されていた集合時間は、実は9時だったのです。浜崎さんは微笑みながら返答しました。
「ふふっ、オカルト研究部じゃあ、約束より1時間早く集まるのがルールなの」
 さあ、出発です。ちなみに、森口くんが来るまで、4人は心霊写真本を回し読みしてました。

 浜崎さんの家から最寄りの駅まではバス。そこから電車に乗って3つ目の駅。さらにバスに乗り換え、都合30分。ついにみみずく神社に到着です。
 境内に入ると、さっそく絵馬掛けを発見。
「あった」
 浜崎さんと福永さんが、たくさんある絵馬をチェックし始めました。千可ちゃんがビデオカメラで、城島さんがスティルカメラでそれを撮影します。ちなみに、千可ちゃんは生き霊や死霊の気配をまったく感じてません。
「あった!」
 ついに浜崎さんが呪いの絵馬を発見しました。1年3組戸村死ね!、と書いてあります。
「これが呪いの絵馬…」
 城島さんがそーっとその絵馬に手を伸ばそうとしましたが、浜崎さんがその手を振り払いました。
「触っちゃだめ、呪われるよ!」
「ええっ!?」
 千可ちゃんが森口くんに話しかけました。
「1年3組の戸村て、あの人のこと?」
「うん、ぼくもそう思った」
 浜崎さんはその会話を聞いて、はっとしました。
「え?、うちの高校の子なの?」
 そうです。戸村とは先日事件を起こしたあの戸村です。あの事件の直後警察が乗り出し、彼と彼の母親に謝罪文を書かせ、事を穏便に済ませましたが、それ以来戸村は登校してません。ちなみに、殴られた女の子は心療内科に通っていて、こちらも登校してないようです。この絵馬はその娘か、肉親が書いたものなのでしょうか?。
 5人はさらに絵馬をチェックしましたが、呪いの絵馬はこれだけでした。5人はみみずく神社をあとにしました。

千可ちゃん改3

2014年06月15日 | 千可ちゃん改
 2台のタクシーが豪邸の前に停まりました。ここは浜崎さんの家のようです。なんとも立派な家です。千可ちゃんはその豪邸を見て、思わずぽか~んと口を開けてしまいました。
 しかし、浜崎さんはすごい人です。身長は170cmはあるし、美人だし、ウエストは細いけど胸は立派だし、家は大金持ちだし、髪の毛以外は完璧女性です。
 オカルト研究部の5人が豪邸の中にある部屋に入りました。ここは浜崎さんの部屋のようですが、10畳はありそうな広い部屋です。千可ちゃんはまたもやぽか~んとしてます。しかし、福永さん・蓑田さん・城島さんはそんなことはてんで興味がないようです。さっそく部屋の隅にあるテレビにビデオカメラをつなぎました。60インチくらいはありそうな巨大なテレビです。この巨大な画面で幽霊を探すようです。再生開始。
「こ、これ、霊じゃない?」
「ただの染みよ~」
「あ、これは?」
 と、3人は忙しいようです。
 一方浜崎さんは、千可ちゃんにたくさんのウィッグを見せてます。
「これはどうかなあ」
 浜崎さんはウィッグを順番に千可ちゃんに被せてます。そのたびに千可ちゃんは目をらんらんと輝かせてます。しかし、これでは千可ちゃんは着せ替え人形です。ま、千可ちゃんが喜んでるんだから、いいのかもしれませんが。
 浜崎さんが一通り千可ちゃんの頭にウィッグを被せたようです。
「どう、羽月さん、どのウィッグがよかった?」
「ええ。え~と…」
 千可ちゃんは黒髪で艶のあるストレートの超ロングヘアのウィッグを選びました。
「これがいいです」
「えっ? それでいいの」
「はい!」
 浜崎さんは個人的にはカールした髪が好きなので、これは意外に感じたようです。浜崎さんは千可ちゃんが選んだストレートのウィッグを千可ちゃんに被せました。
「う~ん、こんなものかな?」
 長身の浜崎さんがこのウィッグを被ると肩甲骨あたりで髪が止まりますが、ミニミニな千可ちゃんが被るとお尻くらいまで伸びてしまいます。でも、ロングヘアに憧れていた千可ちゃんには、夢のアイテムになったようです。

「会長、幽霊いないみたいです」
 この福永さんの発言で浜崎さんの目がようやくテレビの方に向きました。
「もう、私、部長になったんだってばさぁ!」
 浜崎さんもテレビの前に座りました。で、早回し、コマ送りと、ビデオカメラを操作しました。
「あ~、やっぱりいないのかなぁ~」
 ここで千可ちゃんが城島さんの横に座りました。いきなり長髪になった千可ちゃんに気付いて、城島さんがびっくりしてます。
 浜崎さん・福永さん・蓑田さんの会話が続いてます。まず、福永さんの発言。
「私,この前行ったとき、何かを感じたんだけど、今日は何も感じなかった。やっぱ夜じゃないとダメなのかなぁ…」
 浜崎さんはビデオカメラを床に置きました。
「そんなことはないと思うけど…。もしかしたら誰かが来て、追っぱられた…」
 ここで城島さんが大声で発言しました。
「わかった、羽月さんだ!、羽月さんが悪霊を追っ払ったんだ!」
「ええ~」
 千可ちゃんはびっくりです。先日除霊したときと同じ、見事な的中だったからです。しかし、福永さんと蓑田さんは呆れてます。
「城島さん、それはいくらなんでもムリよ!」
 これに千可ちゃん自身が追い打ちをかけました。
「そうですよ。私、あの廃ホテルに行ったのは、今日が初めてなんですよ!」
 と、ちょっと城島さんは反省してるようです。
「そ、そっか…」
 しかし、城島さんも意外と負けん気が強いようです。
「で、でも、羽月さんには霊能力が!」
「だから~、私には霊能力はありませんって!」
「ま、このへんにしておきましょっか」
 と、浜崎さんの一言でこの話題は終了しました。でも、城島さんは内心、まだ納得がいってないようです。
 このままオカルト研究部の会合はお開きとなり、みんなが部屋を離れました。福永さんと蓑田さんと城島さんは、なんとここまで自転車で来てたようです。この3人はそのまま自転車で帰路につきました。千可ちゃんは浜崎さんがタクシーを呼んでくれると言いましたが、遠慮し、バスを乗り継いで帰ることにしました。
 最後に、浜崎さんは千可ちゃんに紙袋を手渡しました。
「はい、これ」
 中にはあのウィッグが入ってます。
「ありがとうございます!」
 と、千可ちゃんは輝いた目でそうあいさつしました。
「いえいえ」
 こうして千可ちゃんも帰路につきました。

 しかし、です。実は帰路につかなかった人が1人いました。城島さんです。城島さんはビデオに悪霊が映ってなかったことに合点がいってないようです。で、あの廃ホテルに自転車を走らせてます。でも、心霊スポットには1人でいかない方がいい場合もあります。待ち受けてるのは幽霊だけとは限りませんからね。
 陽がかなり傾きかけたころ、城島さんが廃ホテルに到着しました。さっそく仮囲いの隙間から侵入。やはり人気はありません。城島さんは玄関の壊れた自動ドアから中に入りました。
 廃ホテルの廊下、ケイタイの動画機能を使いながら歩く城島さんの姿があります。で、撮影が終わると、さっそく再生。それを凝視する城島さん。
「いない…」
 やはり何も映ってないようです。と、その城島さんの背後に人影が?。その人影がいきなり右手を伸ばし、城島さんの口に。城島さんは一瞬抵抗しようとしましたが、すぐに気を失ってしまいました。この右手の持ち主は20歳くらいの男です。右手には何か液体を染み込ませたハンカチを持ってます。何かすごく嫌な予感がします。

「ただいま~」
 千可ちゃんが自宅に帰ってきました。千可ちゃんは急いで自分の部屋に入ると、さっそく紙袋の中からウィッグを取り出しました。艶やかでロングな黒髪のウィッグ。もう千可ちゃんの目は輝いてます。
「憧れのロングヘア…、オカルト研究部に入ってよかったっ!」
 さっそく千可ちゃんは、そのウィッグを頭に装着しました。そして姿見の前に。右を向いてポーズ。左を向いてポーズ。正面を向いてポーズ。千可ちゃんはとっても上機嫌です。
 しかし、どうもどこか変です。そう、ちょっとずれてるのです。千可ちゃんは一度ウィッグを外し、もう一度装着。でも、まだずれてます。で、もう1回外して、また装着。が、今度はひどく不格好になってしまいました。髪の毛が千可ちゃんの顔に被ってます。
「う~ん…」
 千可ちゃんはちょっと困ってしまいました。浜崎さんにもっとウィッグの付け方を教えてもらえばよかったなあと後悔してます。その瞬間、千可ちゃんの身体に嫌な衝撃が走りました。
「な、なに、この嫌な感覚は?」
 千可ちゃんはその嫌な衝撃の正体を知ろうと、ふーっと目をつぶりました。リモートビューイングです。

 ここはちょっと高級なマンションの部屋のようです。ベッドの上に城島さんが寝かされてます。しかし、口はタオルのようなものでふさがれ、両手両足はそれぞれロープでベッドの端に結ばれてます。つまり、大の字状態。城島さんはなんとか逃げようと身をよじってますが、まったく動けません。
 ドアが開き、男が1人入って来ました。廃ホテルで城島さんを拉致った男です。男の手には大きなナイフがあります。男はそのナイフを城島さんに見せつけました。
「へへへ」
 城島さんは恐怖で顔がひきつってます。
「う…、ううぅ…」
「さぁて、いただくとしますか」
 と、男は城島さんのスカートの中に手を入れました。抵抗しようと激しく身体を捻る城島さん。と、口を覆っていたタオルが外れました。
「や、やめてーっ!!」
「うるせーよっ!!」
 男は城島さんの顔面を1発殴りました。これで城島さんは抵抗をやめてしまいました。覚悟を決めてしまったようです
「へへ」
 男は城島さんの両足を縛るロープを2本、ナイフで切りました。
 千可ちゃんはこの光景をリモートビューイングで見てます。
「き、城島さん…。な、なんとかしないと…」
 ここで千可ちゃんはレイプ魔を呪い殺すことを考えました。千可ちゃんは普段からお母さんに人を呪うなと散々言われてますが、今はこれしかないと自分に言い聞かせました。
 千可ちゃんは一心に祈り、そして一言つぶやきました。
「死ね!」
 ドックン。その瞬間、男の心臓に衝撃が走りました。
「うう?」
 が、男にそれ以上の変化はありません。
「なんだ、動悸か?」
 千可ちゃんはとても残念がってます。
「く…」
 千可ちゃんは再び「死ね」とつぶやきました。が、今度はまったく何も起きませんでした。もう千可ちゃんにできる手は何もありません。千可ちゃんは両手を合わせ、祈りました。
「神様、お願い、城島さんを助けて!」
 と、千可ちゃんの部屋のテレビがふいにつきました。そこには今城島さんをレイプしようとしている男の姿が映ってます。
「城島さん!?」
 千可ちゃんは反射的に城島さんを助けようと、その画面に触れました。すると指先が画面の中に入ったのです。その瞬間まるで池の中に手を突っ込んだような波紋が画面に広がりました。千可ちゃんは一瞬はっとしましたが、今はためらってる隙はありません。このままテレビの中に突入することにしました。

 ついに男が城島さんのパンツが脱がし、スカートの中から引きずり降ろしました。
「へへへへ。
 ん?」
 男がふと何かを感じ、そして振り向きました。すると、ついてないはずのテレビがついてるのです。しかもそこには、長髪の女の子がどアップで映ってます。そうです、これは千可ちゃんです。でも、ウィッグの長髪が顔を覆っているので、かなり不気味な状態です。
「ひゃあ~…」
 男は腰を抜かしました。なんとテレビ画面から千可ちゃんの指が出ているのです。さらに画面から両手がぬーと出てきました。
「うわ、は…」
 男は腰を抜かしたまま、後ずさりしました。ついには千可ちゃんの前頭部が画面から抜け出てきました。かわいい千可ちゃんは睨んでもあまり怖くはないのですが、このときは長髪の隙間から目が見えてる状態。これは凄味があります。
「うぎゃあ~!!」
 ついに男は駆け出し、そのままドアを開け、部屋を出ていってしまいました。この悲鳴を聞いて城島さんははっと我に帰りました。
「な、何が起きてるの?」
「城島さん…」
 城島さんがその声のした方向を見ると、そこにはテレビから上半身まで身体を出した千可ちゃんがいました。ただし、長髪のウィッグが千可ちゃんの顔を隠してるので、悪霊の襲撃にしか見えません。
「うぎゃあ~!!」
 城島さんは泡を吹いて失神してしまいました。
「ああ、城島さん!!」
 と、千可ちゃんが目の前にある床に手をつきました。しかし、この部屋のテレビはラックの上にあります。千可ちゃんは床に手をついたつもりが、そのまま落下。顔面を真実の床にしたたかに打ちつけてしまいました。ああ、千可ちゃんの両目がなると状態。魂も抜けて行ってしまいました。が、千可ちゃんはすぐに目を開けました。
「そ、そうだ、城島さん!」
 千可ちゃんが城島さんがいるベッドに行くと、城島さんはまだ泡を吹いて失神したままです。千可ちゃんは城島さんの両肩を揺らしました。
「城島さん!」
 が、城島さんは目を開けません。千可ちゃんは足元に落ちてるナイフを拾い、城島さんの両手を縛っているロープを切りました。そしてまた、ナイフを握ったまま城島さんの肩を揺さぶりました。
「城島さん!、城島さん!」
「う、う…」
 やっと城島さんは目を覚ましてくれました。が、ナイフを握った長髪の千可ちゃんを見て、また暴れ出しそうです。
「うぎゃ~!!」
 千可ちゃんは慌ててウィッグを取り、
「私ですよ!。羽月です!」
「は、羽月さん?…」
 と、城島さんの目にうるうると涙があふれてきました。そして、わ~と泣きだしました。千可ちゃんはそんな城島さんを抱き締めました。
「大丈夫です。ちゃんと貞操は守られてますよ!」
 でも、城島さんはしばらくは泣きやむことはありませんでした。

 遠くの方でサイレンが鳴ってます。パトカーと救急車のサイレンのようです。そのサイレンがどんどん近付いてきます。千可ちゃんはカーテンを開け、下界を見ました。ここは10階くらいの位置にありますが、このマンションの下の方にパトカーと救急車と消防車が集まって来てます。あたりはすでに夜です。
 城島さんはベッドに腰掛けてます。なんか、ちょっと震えてます。
「な、何が起きてんの?…」
「わかりません。私たちを助けに来たのかも」
 と、いきなり玄関の呼び鈴が鳴りました。はっとする千可ちゃん。
「だれ!?」
「私よ。開けて!」
 それは千可ちゃんのお母さんの声です。
「お母さん?」
 千可ちゃんは玄関のドアを開けました。そこには千可ちゃんのお母さんが立ってました。お母さんは千可ちゃんのほおに1発ビンタを与えました。ただ、この前みたいな勢いはなく、千可ちゃんの身体は床を転がることはありませんでした。千可ちゃんは張られた頬を押さえ、
「ご、ごめんなさい…」
 お母さんはそんな千可ちゃんを無視して、部屋の中に入りました。お母さんは城島さんの前で腰を降ろし、城島さんと視線の高さを合わせました。
「私は羽月の母よ。立てる?」
「はい」
 城島さんは立ちました。

千可ちゃん改2

2014年06月13日 | 千可ちゃん改
「ただいま~」
 千可ちゃんが我が家に帰ってきました。お母さんはまたテレビを見ています。でも、今日は千可ちゃんの顔を見ました。
「千可、おかえり」
 怒ってないときのお母さんはとても素晴らしいお母さんです。でも、千可ちゃんには昨日のトラウマがあるので、何も会話しないまま、そそくさと自分の部屋に行ってしまいました。
 千可ちゃんは自分の部屋に入ると、そのままベッドにごろんとなりました。千可ちゃんが今気になってることは、さっきのビジョン。千可ちゃんは午後の授業中も、帰り道も、ずーっとそのビジョンのことを考えてました。
 そのビジョンは明日廃ホテルの中で起きる出来事を暗示してるようです。じゃあ、なんで浜崎さんは暴れる?。もっとも考えられるのは、浜崎さんに悪霊が取り憑いて、我を忘れてしまったケース。だとすると、先回りして廃ホテルに巣食ってる悪霊どもを退散させてしまえば問題は起きないはず。が、廃ホテルの場所は、千可ちゃんは知りません。しかし、千可ちゃんにはふつーの人では考えられない能力があります。千可ちゃんはふーっと目をつぶりました。

 リモートビューイング。オカルト研究会の4人がまとまって歩いてます。夜なのか、あたりは暗いようです。4人が歩いてる場所は、千可ちゃんの知ってる場所、隣の町です。千可ちゃんはどうやら、数日前のオカルト研究会の足取りを思い浮かべてるようです。
 4人が突如草ぼうぼうの場所で立ち止まりました。そこには仮囲いがあり、その向こう側に廃ホテルらしき建物が見えます。
 千可ちゃんはここでイメージを止めました。
 問題はここから。千可ちゃんが一定以上の超能力を使うと、間違いなくお母さんにバレます。バレたらまた強烈なビンタです。悪霊を追っ払うという行為は、かなり超能力を使うはずです。
 どうすればバレないのでしょうか?。超能力を使っても5時間くらい経っていれば痕跡が消えます。でも、夜外出してなかなか帰ってこないとなると、またお母さんのビンタが飛びます。いっそうのこと、正直にお母さんにすべてを話してしまいましょうか?。いい解決法が見つかりません。ともかく千可ちゃんは、ご飯を食べたら廃ホテルに行くことにしました。

 夕ご飯はふつーでした。ちなみに、千可ちゃんのお父さんは出張が多く、この日も千可ちゃんとお母さんだけで食事でした。千可ちゃんは食べ終わると、自分の食器を流し台に持っていきました。
「ごちそうさま」
 千可ちゃんは横目でお母さんを見ると、こう言いました。
「お母さん、ちょっと買いたいものがあるから、本屋に行ってくるね」
 が、お母さんは座ったまま、いつもとは違う声色を発しました。
「千可」
 千可ちゃんはその一言でドキッとしました。どうやら千可ちゃんの企みは、とっくにお母さんにバレてるようです。千可ちゃんはちょっとおびえてます。
「友達同士が殺し合いしたら困るわね。いいよ、行っておいで」
 思わぬお母さんの発言です。千可ちゃんの顔が急に明るくなりました。そしてお母さんに振りかえって、
「ありがとう、お母さん!」
 千可ちゃんは自転車に乗って、隣町の廃ホテルに向かって走り出しました。

 自転車で廃ホテルに向かう途中の千可ちゃんはとっても上気分です。お母さん公認でオカルト研究会を救うことができるからです。おまけに、お母さんはオカルト研究会のメンバーを友達と言ってくれました。つまり、オカルト研究会に入ってもいいと言ってくれたのです。お母さんのことが気になってなかなか友達を作れなかった千可ちゃんですが、やっとふつーの高校生活を送れるようです。
 しかしです。相手は悪霊です。しかも、悪霊は1体とは限りません。たとえ千可ちゃんの霊能力レベルが最高だからと言っても、悪霊に勝てるのでしょうか?。いやいや、千可ちゃんの能力をみくびっちゃあ、いけませんよ~。

 月のない夜です。近くに街灯が1つありますが、あたりは真っ暗です。そんな廃ホテルの前に千可ちゃんの自転車が到着しました。千可ちゃんが自転車のスタンドを立ててると、さっそく中レベルの複数の悪霊が寄ってきました。しかし、千可ちゃんが振り向きざまかわいいガンを飛ばすと、悪霊たちはびびってしまい、次の瞬間霧散してしまいました。
 千可ちゃんが仮囲いの隙間から中に入ると、廃ホテルの玄関の前で案の定悪霊たちが待ち構えてました。かなりハイレベルな悪霊たちです。7体はいます。中には城島さんに取り憑いていた女の悪霊もいます。何かものすごく曰くありげな廃ホテルです。
 あまりにもハイレベルな悪霊軍団なのに、千可ちゃんはなぜかニヤッと笑いました。これは余裕か?。次の瞬間、悪霊軍団は一斉に千可ちゃんに襲いかかりました。危ない、千可ちゃん!。が…、
 千可ちゃんが気合の一言を叫び白い光を発射すると、悪霊たちはその光を浴び、あっという間に霧散してしまいました。わずか1分足らずの攻防。恐るべき、千可ちゃん!。
 それから千可ちゃんは廃ホテルの中を巡って、まだ残ってる悪霊たちを追い払いました。まあ、すべての悪霊を追い払うことは不可能でしたが、残ってる悪霊はみんなザコです。浜崎さんに憑りつく悪霊はいないはずです。
 千可ちゃんは満足した表情で、自転車に乗って帰りました。かなり気分がいいようで、歌を歌ってます。

 翌日は土曜日、千可ちゃんが通う高校はお休みです。千可ちゃんが約束の時間最寄りの駅前に行くと、オカルト研究会の4人はすでに揃ってました。
「み、みなさん、早いですねぇ」
「みんな、こーゆーことが好きだからねぇ。オカルト研究会では約束の1時間前に集合するという不文律があるんだ」
 と、浜崎会長。
「あ、そうだ」
 と、千可ちゃんが入部届けの用紙を取り出しました。もちろん、千可ちゃんの署名入りです。
「会長さん、これ?」
「えっ?」
「入部届け?」
 オカルト研究会の4人はびっくりです。
「よろしくお願いします」
「あ、ありがとう」
 浜崎さんはその用紙を受け取りました。それを見てた蓑田さんは、
「こ、これでまた部に戻れる…」
 その発言に千可ちゃんはびっくり。
「ええっ?」
「あは、本当のこと言うとね、オカルト研究会はもともと部だったの。でも、4人になって部の最低人員を満たさなくなったから、仕方なく会として活動してたのよ」
 ここまでは浜崎さんの発言。ここからは福永さんの発言。
「会だと学校から活動費が出ないから、部になるとほんと助かるだ」
「あは、そうだったんだ」
 千可ちゃんはちょっと苦笑いです。
 パスが来ました。出発です。

 バスの中、オカルト研究会改めオカルト研究部は、後ろの方に陣取りました。千可ちゃんの後ろに座った浜崎さんは、なんか千可ちゃんの頭髪が気になってます。
「あなた、なんでこんなに髪の毛、短くしてるの?」
「あは、すごいくせっ毛なもので、あまり伸ばせないんですよ」
「へ~、私と一緒だ」
 と、浜崎さんは両手を後頭部に回しました。すると、なんと、美しくカールしたロングヘアが取れてしまったのです。実は浜崎さんは千可ちゃん同様くせっ毛で、そのせいで髪の毛を伸ばすことができないので、ウィッグを使ってました。千可ちゃんは関心しきりです。
「ふぁ~」
「どう、羽月さんも使って見る?」
「い、いいんですか?」
「いいわよ、入部してくれたお礼に、1つ上げるよ」
「あ、ありがとうございます」
 千可ちゃんの目がキラキラ輝いてます。実は千可ちゃんは、ロングヘアに憧れてたのです。もし自分がロングヘアだったら、男の子にモテモテになれると信じてます。ま、もともとちっちゃいんだから、ロングヘアにしてもあまり意味がないと思いますが。

 オカルト研究部の5人がバスを降りました。そこはちょっとした商店街。千可ちゃんがリモートビューイングで見た場所です。ただし、リモートビューイングで見た光景は夜でした。と、千可ちゃんは思わず口にしてしまいました。
「今日は昼間なんですね。この前は夜だったのに」
 その一言に蓑田さんが反応しました。
「あれ、なんで夜行ったこと、知ってるの?」
 福永さんも浜崎さんも城島さんも気になりました。千可ちゃんは心の中でやばいと思いつつ、ここはごまかすことに。
「この前話したじゃないですか。夜行ったって」
 浜崎さんはさらに疑問が増したようです。
「誰が言ったの?」
「城島さん」
「え、私?」
 突然の指名に城島さんはびっくり。
「ほら、2日前、城島さんの家で」
 城島さんは千可ちゃんに介抱されてるシーンを思い浮かべました。
「あの時かなあ…」
「あの時ですよ」
 城島さんはまだ疑問に思ってますが、他の4人は納得したようです。でも、城島さんはあのとき「廃ホテルに行った」とは言いましたが、「夜廃ホテルに行った」なんて一言も言ってませんよね。

 小さい商店街を過ぎると、5人は右に曲がりました。そこから約1km,ようやく廃ホテルが見えてきました。昼間見ても何か出てきそうな廃ホテルです。
「どう、羽月さん、何か見える?」
 城島さんが千可ちゃんに問いかけてきました。
「だから、私は霊能力者じゃありませんって!」
 城島さんは心底千可ちゃんが霊能力者だと思ってます。が、実は他の3人はかなり懐疑的なようです。
 蓑田さんがビデオカメラを取り出しました。
「よーし、今日こそは絶対幽霊を録るぞーっ!」
「ビデオカメラですか?」
 この千可ちゃんの質問に、今度は福永さんが答えました。
「この前ずーっとこのビデオで撮影してたんだけど、なぜか初めの部分しか映ってなかったんだ。ちゃんと録画したはずなのに」
 千可ちゃんはここでピーンとひらめきました。
「今日は私が録りましょう!」
「えっ?」
「こーゆーときは、新人が録るものですよ」
 と、千可ちゃんは蓑田さんからビデオカメラを受け取りました。そして録画方法を蓑田さんから手短に教えてもらいました。
 実はこれは、千可ちゃんの作戦です。昨日千可ちゃんが追っ払った悪霊が戻ってきているかもしれません。また、千可ちゃんの襲撃を隠れて交わした悪霊がいる可能性もあります。そんなのがビデオカメラに映るとまずいので、幽霊が見える千可ちゃんが悪霊を避けて撮影する気なのです。
 でも、廃ホテルに悪霊の気配はまったくありませんでした。5人で廃ホテルの中をくまなく歩きましたが、千可ちゃんの目には、ザコ以外の悪霊は映りません。もちろん、千可ちゃんがリモートビューで見た浜崎さんの暴走はありませんでした。
 5人が廃ホテルの玄関前に戻ってきました。
「どう、何か映ってる?」
 と、福永さんが千可ちゃんが持っていたビデオカメラを受け取りました。さっそくビデオカメラに内蔵されてるミニ液晶画面で再生。それを福永さん、浜崎さん、蓑田さん、城島さんが見てます。
「今回はちゃんと録画されてる」
 この発言は福永さん。蓑田さんがそれに答えました。
「きっと何か映ってるはず。大画面のテレビで見れば…」
 ここから別の意味でがすごいことが発生しました。バスで来たんだからバスで帰るものと思ってたら、なんと浜崎さんがスマホでタクシーを呼んだのです。しかも2台。前の1台は福永さんと蓑田さんと城島さんが乗り、後の1台は浜崎さんと千可ちゃんが乗りました。
 車中、福永さんたちはずーっと幽霊のことを話してました。が、浜崎さんと千可ちゃんは、なぜかウィッグの話をしてました。浜崎さんと千可ちゃんは話が弾んでるようです。

千可ちゃん改1

2014年06月10日 | 千可ちゃん改
 ここに1人の女の子がいます。羽月千可。高校1年生。と言っても、身長は140cmしかありません。おまけに髪の毛が針金のように固く,そのせいで髪の毛を伸ばすことができません。しかも身体全体が細いので、後ろ姿は小学生の男の子そのものです。ただ、胸は標準よりはるかに大きいので、前から見るとはっきり女の子と認識できます。
 顔はとても美人とは言えません。ただ、ちょっとかわいいようです。いや、人によってはかなりかわいく見えるようです。ここだけの話、私はとってもかわいく見えます。
 実は千可ちゃんにはちょっと…、いや、ものすごい能力があります。誰もが驚くその能力。それは…、いやいや、それはのちほどお話することとしましょう。

 9月1日、夏休みが終わって最初の登校日。千可ちゃんも当然登校しました。この日はホームルームだけ。ホームルームが終わると,みんな下校の用意です。千可ちゃんも下校しようと立ち上がりましたが、その瞬間,先生が声をかけきました。
「あ~、羽月、おまえ、城島の家知ってるだろ?」
「ええ、知ってますよ」
 先生は1枚の紙を千可ちゃんに手渡しました。
「これ、届けてくれないか?」
 それは今日クラスのみんなに配られた連絡表です。今日城島さんは学校をお休みしたようです。城島さんはこのクラスの女の子です。
 高校生は夏休みになると道を踏み外してしまうことがよくあります。先生はそれがちょっと気になってるようです。それで千可ちゃんを使うようです。ま、当の千可ちゃんはそこまでは気付いてないようですが。

 ピンポ~ン。千可ちゃんが城島さんの家の呼び鈴を鳴らしました。住宅街にあるふつーの一軒家です。
 ピンポ~ン。もう1回千可ちゃんが呼び鈴を鳴らしました。でも、なんの応答もありません。
「いないのかなあ~」
 千可ちゃんが諦めて帰ろうとしたとき、突然呼び鈴についてるマイクロホンから声が響きました。
「誰ですか?」
 どうやら城島さんのようです。ただ、なんかものすごく頼りない声です。
「羽月です。あの~,先生から連絡表を預かってきたんですけど…」
 千可ちゃんが返答すると、また沈黙。千可ちゃんがちょっと心細くなったころ、ようやく玄関のドアが開きました。そのドアを開けたのは、当の城島さんです。城島さんはパジャマ姿、なんか顔面蒼白な悲惨な状況です。どうやらかなりひどい風邪を引いてるようです。
「ご、ごめんなさい、風邪を引いたんだけど、なかなか治らなくって…」
 と、城島さんは突然激しく咳き込みました。
「だ、大丈夫ですか?」
 しかし、城島さんの咳はかなりひどく、ついには立ってはいられなくなり、ヘタレ込んでしまいました。そのとき千可ちゃんは発見してしまいました。城島さんの髪の毛の中に目だけを出した不気味な女がいるのです。
「悪霊…」
 千可ちゃんは心の中でそうつぶやきました。そう、こいつは悪霊です。城島さんは悪霊に取り憑かれてたのです。それを見た千可ちゃんは、反射的にこの悪霊を取り除くことを決意しました。
「しっかりして!」
 千可ちゃんは城島さんを介抱するふりをして、城島さんの髪の毛の中にいる悪霊の頭を右手でむんずと掴みました。そのままぐーんと右手を上げると、悪霊の全身が姿を現しました。髪の毛の隙間から見えていた悪霊のサイズは小さな人形くらいでしたが、こうして見ると、160cmくらいはありそうです。
 千可ちゃんはその悪霊を睨み…,と言っても、千可ちゃんはかわいいのであまり怖くはないのですが。ともかく千可ちゃん流に悪霊を睨むと、心の中で「あっち行け!」と叫び、悪霊を玄関わきの壁にぶつけました。が、悪霊はそのまま壁を通り抜けるように消えてしまいました。
「せ、咳が止まった?」
 城島さんの咳が止まったようです。
「あれ、頭がずーっと重たかったのに、急に軽くなった?…」
「あはっ、よかったですね」
 と、城島さんは突如千可ちゃんの両手を掴みました。
「あなたが私に取り憑いた悪霊を追い払ってくれたのね!」
「ええっ?!」
 まさにその通りなのですが、千可ちゃんにしてみれば、絶対気付かれないようにやったつもりなので、これは意外です。
「私、この前幽霊が出ることで有名な廃ホテルに行ったんだけど、それからずーっと体調が悪かったから、きっと廃ホテルで悪霊に取り憑かれたんだと思うの。お払いしてもらおうと考えてたんだけど、助かったわ。
 そうだ、あなた、部活は?」
「え、え~と、帰宅部ですけど…」
「じゃあ、オカルト研究会に入ってよ!」
「ええっ、オカルト研究会ですか?」
 千可ちゃんは大いに困りました。実は千可ちゃんにはいろいろと制約があるのです。

「ただいま~」
 千可ちゃんが自分の家に帰ってきました。こちらの家も住宅街にあるふつーの一軒家です。
 千可ちゃんが居間に入ると、千可ちゃんのお母さんがテレビを見てました。お母さんは千可ちゃん同様ミニミニな身体ですが,それ以外は正反対です。顔はとても美人で,まるでたえず強烈な光波を放ってるように見えます。髪の毛はとてもさらさらで,その髪を肩甲骨のあたりまで伸ばしています。ただ,胸の方はかなり残念な膨らみ。これだけは千可ちゃんが勝ってます。
 お母さんは千可ちゃんの帰宅にはあまり興味がないらしく、テレビを見たまま、おかえり~と言うだけでした。が、ふと何かに気付いたらしく、千可ちゃんにきっと振り向きました。とても怖い顔です。
「千可!!」
 お母さんは突然大きな声を出しました。びくっとする千可ちゃん。お母さんは千可ちゃんのところに行くと、千可ちゃんの頬を思いっきり引っぱたきました。次の瞬間、千可ちゃんの小さな身体が無残に床に転げました。
「あなた、力を使ったわね!」
 千可ちゃんは張られた頬を押さえながら、上半身だけ起こしました。
「ご、ごめんなさい…」
「いったいどうして?。あれほど使うなと言ってたのに!」
 千可ちゃんは何も返答できません。
「あなたのおばあさんはね、たくさんの人の前で力を使って、世間から白い目で見られて自殺した。あなたも自殺するつもりなの?」
「そ、そんなことないよ…。今日クラスメイトに悪霊が取り憑いてたから、取り除いただけだよ」
 千可ちゃんは声にならないほどの声で返答しました。お母さんははーっとため息をつきました。
「わかった。もう2度としないで。あなたの友達が悪霊に殺されても、あなたにはな~んの関係もない。これからはそう思って!」
 千可ちゃんはうんとうなずきました。そしてとぼとぼと2階の部屋に消えて行きました。

 お母さんはなんで千可ちゃんにつらく当たったのでしょうか?。実はちゃんとした理由があります。
 お母さんのお母さん、千可ちゃんからしてみればおばあちゃんに当たる女性は、かなりの霊能力者であり、超能力者でもありました。おばあちゃんが30歳になった頃、おばあちゃんの評判をどこからか聞いたテレビ局が、おばあちゃんを無理やり生放送に引っ張り出したことがあったのです。しかし、舞い上がってしまったおばあちゃんは、カメラの前で何もできませんでした。
 お母さんは当時小学校に通ってましたが、翌日小学校ではお母さんは笑い物です。お母さんは我慢できずに、最も笑っていたガキ大将に喰ってかかりました。しかし、逆に袋叩きにされてしまい、重傷。責任を感じたおばあちゃんは自殺してしまいした。
 実はお母さんもかなりの霊能力者であり、超能力者でもあります。でも、おばあちゃんの自殺を見ているので、めったに力を発揮することはありません。
 お母さんが今一番気になってることは、千可ちゃん。実は千可ちゃんは、お母さんやおばあちゃんをはるかに凌駕する超能力者なのです。お母さんは千可ちゃんの超能力がバレることをとても恐れています。だから力を発揮するなと、日頃からいい聞かせてるのです。

 お母さんのビンタがショックだったのか、千可ちゃんは夕食の時間、ダイニングに来ることはありませんでした。翌朝もダイニングに来ることはなく、お母さんの顔を見ずに登校して行きました。ふつーのお母さんだったらこんな娘の姿を見たら少しは反省するのでしょうが、このお母さんに反省という文字はまったくないようです。
 実は以前もっとひどいことがありました。千可ちゃんはかなりおませなところがあり、初体験は14歳の時に済ませてます。当時千可ちゃんはギター教室に通っており、一緒にギターを習っていた3つ年上の男の子と白昼愛の行為に及びました。しかし、その直後、家に帰ってきた千可ちゃんを見てお母さんは何発も往復ビンタを食らわしたのです。
 お母さんは千可ちゃんにはない能力、人のオーラを見てその人が直前に何をやったのかわかってしまう能力があります。それで千可ちゃんの早すぎる初体験を見抜いたのです。
 お母さんの怒りは往復ビンタでは済みませんでした。お母さんは即ギター教室に電話を入れ、千可ちゃんの目の前でギター教室を辞めると宣言したのです。
 千可ちゃんにとってさらにきつかったのは、初体験の男の子の死。なんと、その3日後、彼は交通事故で死んでしまったのです。どう見てもお母さんの仕業です。千可ちゃんは遊びのつもりでしたが,彼の死は千可ちゃんを大きく落胆させました。で、当然のようにお母さんを呪いました。そうしたら、またお母さんに往復ビンタを食らいました。千可ちゃんに呪われたら、さすがのお母さんでもかないません。それでやめさせるために,強硬手段を使ったのです。
 呪うことさえ禁じられてしまった千可ちゃんが唯一母親にできる仕返しは、母親以上の美人になること。で、毎日美人になれと祈り続けましたが、一向に美人になる気配はありませんでした。さすがの千可ちゃんでも、そこまでの能力はなかったようです。ただし、つるぺただった胸が急に膨らみ始め、今の身体になってます。

 その日学校に行った千可ちゃんの表情は暗いままです。でも、昼休みに意外なものが訪れました。
「あなたが羽月さんね」
 と、学食に向かおうとした千可ちゃんの前に、4人の女の子が立ちました。その中には、昨日の城島さんもいます。
「あなた、すごい霊能力持ってるんですって?」
 リーダー格と思われる女の子がそう語りかけてきました。巻き毛がとてもきれいな長身の美人さんです。
「あ、あなたは?」
「オカルト研究会会長、浜崎優実」
 今度は浜崎さんの右隣にいた女の子が話かけてきました。
「ねぇ、私たちの部に入って欲しいの」
 追い打ちをかけるように、浜崎さんの左隣にいた女の子も話かけてきました。
「あなたみたいな霊能力者がいたら、百人力よ!」
「わ、私に霊能力なんかありませんよ!」
 ちなみに、右隣にいた人は福永さん、左隣にいた人は蓑田さん。福永さんも蓑田さんも上背があるので、千可ちゃんはなんか子供みたいです。城島さんは千可ちゃんより上背がありますが、この3人の中に入るとやっぱり小さくみえます。
 今度は城島さんが語りかけてきました。
「ねぇ、羽月さん、お願い。オカルト研究会に入って」
「で、でも…」
 千可ちゃんは部活動に関してはお母さんに制限を設けられてません。でも、オカルト研究会となったら、きっとお母さんは怒るはずです。お母さんのビンタは強烈です。
 しかし、千可ちゃんは昨日のことでちょっとグレてます。それに、ここで友達を作りたい気分もあります。
 迷ってる千可ちゃんを後押しするように、城島さんが言いました。
「私たち、明日またあの廃ホテルに行くの。羽月さんも一緒に来て欲しいんだ」
 なんと城島さんはせっかく千可ちゃんに除霊してもらったというのに、また廃ホテルに行くようです。そのとき、千可ちゃんの脳裏にあるビジョンが浮かびました。それは狂乱状態に陥った浜崎さんが、城島さんや福永さんや蓑田さんを鉄パイプのようなもので襲うというものです。背後の光景からしてそこは廃ホテルのようです。
「どうしたの、羽月さん」
 ちょっとぼ~としてる千可ちゃんに、浜崎さんが声をかけてきました。千可ちゃんは微笑みを見せることでそれを交わそうとしましたが、ちょっとぎこちのない微笑みです。
「い、いえ、なんでもないですよ」
 福永さんが1枚の紙を取り出しました。
「入部届け、もう用意してあるんだよ。羽月さんがここに名前を書いてくれたら、入部完了だよ」
 ずいぶん気の早い人たちです。
「そ、それはちょっと」
 千可ちゃんはさすがにこれには気分を害してしまったようです。が、逆に今度はオカルト研究会の4人がしょぼ~んとしてしまいました。その空気を読んだ千可ちゃんが、
「で、でも、その廃ホテルには一緒に行きましょう!」
 千可ちゃんのその宣言に、オカルト研究会の4人は安堵しました。
「ありがとう。じゃあ、明日、朝9時に駅前にきて。約束ね!」
 そういうと、4人は立ち去りました。しかし、あのビジョンはいったいなんだったのでしょうか?

千可ちゃん改、序章

2014年06月09日 | 千可ちゃん改
以前私は当ブログに「千可ちゃん」という小説を発表しました。一見するとふつーな女子高生、千可ちゃん。でも、彼女には絶対人には言えない秘密があります、てな感じの小説です。
前回発表したときは、構想の前半部分を文章化しました。ふと思い、残り半分も文章化したので、またここに発表しようと思います。

実は前回文章化したとき、千可ちゃんの設定をいくつか省きました。が、残り半分を文章化するには、どうしても省いた部分を復活させないといけません。でも、その部分ははっきり言ってエロです。前回省いた理由の1つはそれです。
今回あえてその部分を復活させます。そんなわけで、エロが苦手な人は読まないように。ま、私の文章力です。正直これを読んで発情する人はいないと思います。

明日から順次発表していきます。先ほど述べた通り加筆してあるので、再び頭から載せます。
なお、当ブログはあくまでも競馬ブログです。競馬ネタがないときのみ、小説をあげます。ご了承ください。また、旧文章を残しておきますので、そっちも比べて読んでもらえるとうれしいです。