日々のメモ帳

日常生活での、ちょっと気になった事や、面白かった事などメモしていきます。

久しぶりに、日経で『PDCA』の文字が・・

2024-02-15 15:01:45 | 品質管理
昨日、ダイハツでの『品質不正問題』を受け、トヨタとしての『人事刷新』を計るニュースが流れていたが・・いくつかの違和感が残っている。
一昨日も、統計君や、元エンジニア、さらには車好きのパジェロ君などが集まり、いつもの『WAIGAYA』を行ったが、この時も・・『最近は・・???』との言葉が、多く聞かれた。
もうエンジニアとして、『技術の陳腐化』を感じ、『第一線』を退いた仲間達であるが・・同じような・・『アれ』を、感じているようである。

この夜の『雑談』の中で、まず最初に出てきたのは・・
今回の『品質問題』を受けての、専門家たちのコメントが非常に少ない事 ・・
『トヨタ』への配慮なのか、『トヨタ流(TOYOTA WAY)』というものが、あまり理解できていないのか・・
これから日本を支える、若手コメンテーターからの『論評』が、聞こえてこない ・・・
昨年末にNHKの『ビジネス特集』で、『ダイハツ不正 調査報告書から見えた現場「安さと速さ重視」』という事が報じられ、『会社の体質』の、指摘はあったが・・
なにが『本質』かが・・・突けていないような気がする・・
『このままで、日本の製造業は大丈夫なのか・・』との事が、話題に出てきた

話が進む中、小生も『アれ』と思い、切り抜きを行っていたが・・今日集まった何人かからも・・・同じ『アれ・・』を感じた・・・として・・・
『日経で久しく『PDCA』という言葉を、見ていなかった』・・ へ展開
先週末、土曜日の日経朝刊 『Deep Insight』の記事。『JALとトヨタの PDACA 革新のサイクルを築け』の記事である。
少し、この記事を書かれている、日経のコメンテーターの、話題展開には異論もあるが・・
最後の方に書かれていた・・『失敗の本質』の著者、一橋大学の野中名誉教授が注意喚起されている、『デジタル化社会』の中で『事業モデル』が大きく変わる中、この『PDCA』は、ややもすると機械的、直線的な繰返しとなり、効果を発揮しないようになってきている・・・重要なのは『肉初的動機づけ』・・との、この先生ご発言の紹介があり・・人間のモチベーションの源泉は、外的、または物理的なインセンティブや罰則ではなく『体の内側からふつふつ湧き上がる心理的欲求』であり・・『PDCA』も使い方を誤ると、自律的な想像力を毀損してしまうとの、ご指摘が紹介され ・・・
トヨタ会長の『主権を現場に戻したい』とのご発言は・・『自律性』を重んじる事の必要性がある・・と、この記事では言及されているが ・・・『PDCA』の『本質』まで、少し届いていないのでは・・との感想が、仲間内では出ていた。

今日参加の、元技術者達は、『ナゼナゼ問答』に始まり『品質改善活動』
『KY活動』。さらには『PDCA』での『スパイラルアップ』の最前線に立ち、会社を引っ張ってきたが・・この『MEMO』のどこかでの書き残した、現役引退の少し前に出てきた、『TPM管理』や、『PDCA』の、次の『思考回路』として、もてはやされ始めた『OODA』などへの、『疑問』や『良否判断』。さらには、これらの『課題事項』までは、深く知り得ない事もあり・・ 日経で、最近あまりみなくなった『PDCA』と、昨今の『品質問題』などと重ね合わせ ・・・『アれ・・』との、思いなのかもしれない。

『PDCA』という『手法』が、『今流』という事が正しいかどうかは・・判らないが・・
この記事の『デジタル社会』ではないが、昨今の『働き方改革』での『Flex採用』や、『コロナ渦』での『リモート勤務』などもあり、『Face to Face』での『会議』や『打合せ』などが少なくなり、『PDCA』の最初の部分。『Plan』という事が抜け落ちてきている可能性がある。

例えば・・『現場』の基本となる『朝会(朝礼)』での・・『PLAN』は・・
今日の『作業』で・・『何を』『どうする』という事の『指示の共有』であり
特に重要なのは、『時間軸』を含めた、あるべき『結果』の『共通認識』
これを受け、『DO(作業)』に入るが・・・
まずは、この『朝会』で、個々の『PDCA』を、一回りさせ
『DO(作業工程)』を想定し、『Check(仮想評価⇒問題発掘)』を行い・・・
『Action(予防措置⇒改善策)』を、考えだすべきであるが・・・
『AI策定・工程指示書』等だけでは・・『時間軸』だけが追われることになる事になり
今回の様な・・・『時間に追われて・・・』の『品質事件』を引き起こすことになる

そして、この『作業前・PLAN』という事には・・もう一つ重要な点がある
『何のため・・』と言う事である。
これも、最近、『ムダ時間廃止』などという観点もあってか、『朝会』などでの『社訓唱和』や『安全講和』などが、廃止されることもあるとの事を聞くが・・・
『何のため・・』を、『再認識』し、『意思徹底』のためには、必要な事とも感じている。
この『何のため・・』が、『自動車』であれば、『お客様第一・・』であり
自らの『安全確保』と共に・・『すべての人たちへ』
『トヨタ』の『品質管理』で、これまで言われてきた『次工程へ迷惑を掛けない事』ではなかろうか。
この『共通認識』を計るのが『PLAN』の基本であり・・『ISM伝承』でもあるが・・
現状を知り得ない仲間達から・・・『どこかへ・・』『失っている・・』との声も聞こえ・・・冒頭の・・『最近は??・・・』との、言葉へ繋がった・・・

元エンジニアではない、元土木技術者からも・・この前の『東京駅前・梁落下事件』ではないが・・・『事前KY欠如』が、建築関係でも、多くなっているとの事
一つの原因は『コンピューター』に、頼りすぎの所も・・『CAD』や『自動工程作成』は否定はしないが・・『現場・現物主義』も織り込まないと、この事故の様に『ありえない重大ポカ』が起こる可能性もある。
これを『補完』し『事前防止』するためにも、『朝礼』で『事前KY』も行うが・・・これも『形式的』になっており、この段階での『Check』が入らない。
『トヨタ』の反省ではないが・・『主権を現場に戻す』事をしないと、また、とんでもない事故が起こるかもしれない。
『AI』での『ナゼナゼ問答』は、『過去データー』を基にして行っていると思うが・・『AI棋士』は『藤井8冠』には完勝出来ないように、『完璧』ではない・・・
まだまだ『人間』の、過去からの『知恵』と共に、『五感』が、『事故』の芽を摘み取るのでは・・・との意見も

こんな点で、小生から、これからこの問題へ、どう取り組めば・・・
日経記事の最後の部分で・・『肉初的動機づけ』『体の内側からふつふつ湧き上がる心理的欲求』・・・との記載があったが・・この部分が、最近・・少し『??』 ・・
同じような事が・・ 先週、世界的指揮者 小澤征爾さんの追悼番組で・・
今後の若い方々へのメッセージとして・・『オーケストラは、個の集団であっていい』
『個としての意思を持ち続けることが重要』
ただ、最近は・・『迎合する人』が多いが、『演奏者一人一人の主張』『問題意識』がないと『演奏』を、成功させれない・・『意思を戦わすことが必要』・・と言うような事を話をされていたとも、紹介し ・・・
最近の会社の中で、この『意思』『思い』。さらには、相手を思っての『忠告』などが出来ていない限り・・今回の様な『問題』が起こるのでは ・ 
このあたりが、『本質問題』では・・と、さらに振り向けてみたが ・・・

たしかに、先週の『日経 LIVE』で、最近の『企業不祥事』は、『中間管理職の劣化』も一要因との事が述べられていたが、昨今の『終身雇用』が失われ、『成果主義』という『会社社会』で、『コンプライアンス』という事を意識しながらでも、『モノ言う』事の難しさがあり、逆に、『ボ~と生きている社員』が増えてくると、『トヨタ』が目指す『現場主義』はますます難しくなる。ややもすると、『正社員』と『非正規』が、判らなくなるような事にもなり、『PLAN』の『原点』である『企業理念』の『上意下達』が出来ず、『ナゼ?』『Why・What』を、自ら考える事も出来なくなるような気もする。
このためにも『正しく叱る管理職』や、『OJT』なども必要なのかもしれない

統計君から、最近、良く取り上げられる『OODA』も、この前段に『D-OODA』という段階があり、実戦での素早い動きを考える『O(観察)O(状況判断)D(意思決定)A(実行)』という動きも、大隊本部からの『D(作戦司令)』を受けての事で、ここでは『PDCA』に近い手法で、一つの『D』が導き出されており、『PLAN』という事が、根底にあり・・・この『使命』が無ければ『烏合の衆』となり、ここの『戦士』が『意思を持ち』、ここでの『疑問』は上司に伝え、改善されなければ、『オーケストラ』のように一体化はできないと・・・まとめてくれた。
たしかに、我々の時代の『改善提案活動』でもそうであったが、参加者全員が『一言提案』をする事で、お互い『問題点』を共有し、『無理難題』は『ナゼ・ナゼ』で『改善』する事で、『意思』の共有を計ってきたが、これが、これまでの『トヨタ』の強みであったはずであるが、なぜ『ダイハツ』では、この『TOYOTA WAY』が浸透しなかったのか・・ こんな話も、飛び出して来たが・・・

パジェロ君から・・『トヨタ』としての『軽』という『下位車種』との見方。ホンダ、マツダなどの、スタートの歴史の違いも含めた、ダイハツという会社の、認識感も含めて。
逆に『販売台数』だけを睨んでの『ダイハツ』『日野』という、『異分野』を抱き込んだトップと、『トヨタ』従業員との温度差・・逆に、取り込まれたダイハツの従業員意識など・・
この前にでていた『意識』の中で、『PLAN』の『前段』として、どう働いたのかの検証も見ていかないと、根本的な再発防止とはならないような気がする・・・
そして、まだ詳細は判らないが『軽自動車』だけの『ダイハツ』となるようであれば、なおさら『PLAN』での『TOP ISM』の徹底が必要になるのかもしれない・・・と、またまた、最後に大きな宿題を残してくれた。

とりあえず、今日の『アれ』・・・ 久しぶりの『PDCA』での、最初の部分
『PLAN』という事の重要性を、再認識させられた『WAIGAYA』であったが・・
これからの、若い方々へ『意をもって・・』行動してもらうためには・・・
日常の中で、常に『疑問』を感じ・・『ナゼ・ドウシテ』『Why・What』を意識し
ここから『危機』を想定し・・・『How』を考えだし、『PLAN』をまとめる中で
『PDCA』という事の必要性を・・・
『AI』に、先を越されないためにも・・・ 
まずは『PLAN』・・を、どうすれば『自分事』として感じてもらえるのか
難しいい課題である・・・

+*+*
今日書き残した事は、次の『アれ・・』で追記したい

<過去の参考MEMO>
日本の製造業 /『思考回路形成力』教育が急務   2018-04-17 15:35:29 | 品質管理
日本の製造業 物を見る力の向上策/技術伝承の中で   2018-03-19 12:39:18 | 品質管理
製造業/TPM活動が品質保証をダメにする
製造業/『品質不正』という言葉をどうとらえるか


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『先輩の一言』/『コロナに翻弄される日本』/『枯れた製品』/『メラミンモノマー』/『教科書に無い化学品』

2021-09-30 15:06:35 | 品質管理
前メモに残したが、この『MEMO』を時々見て頂いている先輩から、『最近『コロナ』に関する『文句』ばっかり書いとるけど、これ以外の『勉強・進んどるんか』・・・との『叱咤』のメールが飛んできていた。

確かに、言い訳となるが、最近の『MEMO』のほとんどは、目先の『危機』/『コロナ渦中』ばかりで、ご指摘の通り『政府』や『マスコミ』への『ボヤキ』を続けて来ていることは否めない。新聞を見ても、テレビ報道を見ても、明けても暮れても『コロナ』『コロナ』一色であり、ここ3週間ほどは、『感染者数減』の傾向もあり、『コロナ報道』がトップニュースから消え、『自民党総裁選』がメインとなっているが、これにも『安直に流され』『洗脳』されてしまったのか・・・大いなる『反省』である。

先輩は、日本全体も『コロナの流れ』に『翻弄』するだけで、本来の『科学技術の進歩』がおろそかになっているのでは・・と、『危惧』し『警鐘』を鳴らしたかった・・のかもしれない。
そして、もう一つ、このお叱りは『大先輩の勉強のネタ』をも失わせたのでは・・との思いも出てきた。

思い起こすと、この『MEMO』で時々触れている、『品質管理』『安全管理』『危機管理』などで、『危険を危険』として感じる策や、これに向けた『思考回路形成法』など、ご知見から、時々、鋭い『コメント』を発信していただいていた。
今年、春先に触れた『AIに先を越される子供達』の問題でも、『孫たちが心配』との事で、小学校の先生用に作りかけていたプロト版の提供要請もあり、『アンテナ』の高い方である。

昨年の『MEMO』に残した、国が進めようとしている『Dx戦略』での『漢字が支障』との件に関しては、『ワクチン登録』や『給付金支給』での『漢字ネック問題』の『切り抜き』を多数送信して頂いたが、この『MEMO』で取り上げないままとなっており、せっかく『送ってやったのに』との事であったのかもしれない。

年齢的には、少し年上の、ノーベル賞『受賞』の吉野さんと同年の、23年生れ。我々より少し早く、63歳で完全リタイアされ、はや10年、悠々自適の生活を送られているが・・
コロナ前までは、月に何度か、昔の仲間を集め、居酒屋の昼飲で『ワイガヤ』を行なわれていた。
再雇用された仲間や、現役でコンサルを続けている後輩などから、『業界周辺』の話を聞くことで盛り上っておられたが、だんだん現役がいなくなり、追い打ちの『コロナ禍』で『外飲』も出来なくなり、『生情報不足』での『イライラ』だったのかもしれない。
この会へは、何度か参加させていただき、『熱い議論』へ、すぐには飛び込めなかったが、参加の方々は、色々な『業界情報』を耳で得て、『思い』を語られ、自らの『成長の糧』とされておられた。

一昨年、『日立化成』の『品質不正問題』が発生した時も、先輩主催の『忘年会』で、この『MEMO』から、『老いる工場』『供給責任製品』の『話題』へ展開し、業界へ長年携わってこられた方々から、『不正に近いことがあった話』から『撤退賛否』で『大激論』があり、『ババ抜き』の言葉には『異議あり』との声があった、記憶がよみがえった。

たぶん、先輩も、『ネット記事』等で、『業界関連情報』は、日々『検索』されているとは思うが、『コロナ』『新規感染者』しか報じられない『コロナに翻弄された世の中』で、『業界』、特に『化学業界』に係る、新たな『展開』が起こっていないか。何か『刺激』を受けることはないか。さらには『今後、日本はどうなる』との思いで、『オイこら』『サボルナ』と声をかけてこられたのでは・・・・これは、自らへの『反省』でもあるのでは。

こんな事から、この『叱咤』は・・・
昨今、自宅へ籠る事が多くなり、『ワイガヤ』が出来ず、耳からの『情報源』が途切れた事への『スイッチ』の入れ直しと『解釈』し、時を戻す事にしてみたが・・・
なかなか『なまけた頭』は元へ戻らず、時間がかかってしまっている ・・・・・

+*****
この間、先月末に届いた、このありがたい『激励メール』へ・・
『もっと早く言ってほしかった』と『御礼』を記し、この数か月、調べただけで、Desk Topや Folderに『未整理』のままとしていた『情報』から、面白そうな『記事』を要約し、教えを乞うため折り返してみた。送信内容は、以下の通りである。

(1)『枯れた製品』で残ったビジネス展開のありかた
『日経XTECH 』に、ここ数年、化学会社や電機産業、自動車会社などで発生の『品質不正問題』を受け、『品質問題の陰に「枯れた製品」/経営陣は大胆な決断ができるか(2021-8-4)』という記事が出ていた。
●一昨年の『日立化成』での『品質偽装問題』の時と同様に、『まだ世の中では必要』とされる製品ではあるが、事業規模(『生産性』『採算性』)から、大手企業がまず撤退し、中小の化学会社などへ生産が移管される中、最後に残されたメーカーが、『ババ抜き』に負けて『供給責任』を負う・・というビジネスのありかた。
この記事の『枯れた製品』には少し違和感があるが、今後どうすれば・・・

(2)化学業界の今後のありかた
<ニュースイッチ(日刊工業新聞)>昭和電工とJSRは売却加速、大変革の化学業界で進む「しがみつかない経営」(2021-7-30)
 昭和電工 日立化成買収の効果発揮へ/半導体・車・医療に照準
 JSR 祖業エラストマー売却/汎用素材、アジア勢に苦戦
<化工日>【社説】世界的活況みせる化学業界のM&A(2021-8-24)
●本件も、これまで化学会社は、日本の自動車産業や電器産業、その他の基盤産業を支えてきたが、『事業整理』を行う中で、多品種の『化学製品』のありかたを問う記事であり、『化学会社』が、『採算性』『利益追求』、これと『供給責任』との関係をどうとるか。
さらには『化学を支える原動力』が維持できるのか、という事が問われているようにも思える・・

(3)『日産化学 メラミン生産停止 22/6 (2021-8-4)』について
<化工日>『日産化学 メラミン生産停止 22/6 (2021-8-4)』
●この小さな記事も、過去の『メラミン樹脂』を知る技術者にとっては、大事な『原料』が、日本から消えていくことの寂しさを覚えるが、時代が変わった感は否めない・・・
ただ、世界の化学会社では。BASFは、まだこの『メラミン』の生産を続けているはずで、最近では『激落ちくん』などの『メラミンスポンジ』を作り続けていることは、日本の化学関係者でも、あまり知られていない事なのかもしれない。
●『教科書にも載っていない化学製品』が、まだまだ身の回りでは『必要製品』となっている可能性もあり、前項の『枯れた製品』ではないが、『化学会社』としての『供給責任』をどこまで求めるべきなのか・・・
●そして、これもこの『MEMO』のどこかで書いた、『原料』の流れが失われることにならなければいいのであるが・・

(4)化学の『基盤技術』
<日経 関西タイムライン>日本が強い半導体材料、原点は繊維の染料 関西に集積(とことん調査隊)(2021-7-27)
●先の『新型コロナ』の治療薬をして着目され、備蓄のための『暫定生産』を行った、『アビガン』ではないが、『精密化学品』は『設備』と共に、『反応』を進めるための『知見』が必要となる。この基盤技術となるのが『染料』の合成技術であるように思えるが、今、日本の『大手化学会社』からは、この『製品』が消えてしまっている。『医薬品』『農薬』さらには『機能性色素』などに『基盤技術』は残せるのであろうか・・・
●『少量・多品種』『要求価値の高度化』に答えるための『製品研究』と、前項の『事業規模』との関係、さらには『品質保証体制』など、これからの『開発』はますます大変そうになるようにも思える・・・

*+****
こんな様な内容で『最近の話題』を送信したが・・
先週、『『枯れた製品』と言う言葉はおかしい』『日本を支える古典的基盤製品』との『タイトル』で、長文の返信が折り返されてきた。・・
そして、最後に『緊急事態宣言』が『解除』となれば、『一度・飲もう』と書き加えられていた。
明日『解除』となるので、早速『よろしく』と返信したが、『招集』がかかるまでに、内容を読み返しておきたいが、かなりの『再勉強』が必要となった。

先輩からの折り返しメールでは、過去の『一世を風靡した製品』も、今は『枯れた製品』と言われるようになってしまったが、『今もどこかで使われている製品』と思われ、何らかの『継続対策』をとらないと、日本の『物作り』が危うくなる。

『京セラ』が最終的に引き受けた『ワニス』など、我々も扱っていた『熱硬化性樹脂』と言われる『化学製品』であるが、『教科書』もあまり出てこないような、『反応基』を有した特殊な、業界用語でいわれる『樹脂』である。
『ポリエチレン』のような『高分子』『ポリマー』ではなく、『分子量』と言うにはおこがましい『縮合樹脂』や『オリゴマー』に『反応性』を『付加』させた、『自己架橋』もしくは、他の素材との『架橋』に寄与させるなど、『製品構造』や『架橋構造』も『推定』の域を、いまだ脱していないのではなかろうか。
このため、これらの製品の『製品規格』は、ある程度の製品としての純分を保証するための『不揮発分』や、製品の『縮合度』を代替するための『製品粘度』、さらには『硬化性』を左右する『製品pH』などで決められているが、最終求められる『機能』を『保証』する事がはできていなかった。
これらの『ローテック』な製品が、『モーター』などに使われる『エナメル線』の『ワニス』として採用された場合、『ワニス』としての『製品規格』では決めれないので、この『反応性』を『評価』するために、『最終製品』として『規格化』された『UL規格』などで『疑似製品化』し、これで『製品規格』を決めてきた可能性がある。

これらの作業は、開発当初、電機メーカーと、比較的大手の化学会社や、電機会社傘下の化学工場で『取決』『製造』され、『UL規格検査』も『適切』に行われていたかと思われるが、安価な中国品のなどが流入する中、国内での『汎用品生産』は『事業規模縮小』などで『生産量減』となってしまい、『高機能』を求める『特殊品』だけが残ってきた可能性がある。これらの『製品』は『小ロット』であり、関連会社や下請けへ『生産委託』され、『移管』の中で『検査』が出来なくなっている可能性がある。ただ、国内での『生産』が残った『ワニス』などは、特殊な『小型モーター』用や、音響機器の『コイル』に使用されていると思われ、決して『枯れた製品』ではない。
これらのを理解できないままで『品質問題』を『議論』すると、大変な事になるのでは・・と、この業界へ関わった方としての、コメントが付けられていた。

先の日立化成での『品質問題』で、小生も少し触れたが、塗料や接着剤などには、熱をかける事で、そのもの自体が『熱硬化』し、『被膜』を形成したり、アクリル樹脂などを『架橋』する『機能』を有する『製品』。『熱硬化性樹脂』という『反応基』を有した『樹脂』では、この『特性』を『製品規格』として決めることが難しい事を経験してきた。
過去在籍の化学会社では、社内ではあまり知られていなかったと思われる『機能性樹脂』を担当していたが、事業規模や、生産設備を新規製品へ明け渡す必要などで、『販売撤退』『事業譲渡』が決まり、『顧客』への説明や、『生産移管作業』を行ったが、一部用途では、『顧客最終製品』での『機能特性』を『保証』する事も求められ、『移管先』での『試製造品評価』や、『移行期間』での『在庫確保』など、大変な苦労をした記憶がある。

過去は、大手の化学会社でも、それなりの『販売規模』があれば、『特殊機能化学品』として生産されていたものが、先の『ワニス』でなはいが、日本での『マーケット』が『大幅減』となる中、大半のメーカーは『撤退』しても、その『特性』から、今でも、どこかで使われ続けている可能性がある。

先輩へ送信した、日産化学の『メラミン・生産停止』を受けて・・
よく使っていた『メラミンモノマー』・・との懐かしい記述があった。
当時、『縮合型樹脂』などを扱っていた社内の方々が、これを使用した『メラミン樹脂』の『原料』の一つである。

戦後アメリカのある化学会社から、『メラミン』の製造技術を導入をするため、渡米した大先輩が、技術として持ち帰ったのが『メラミン樹脂』である。後に『メラミン(モノマー)』は、別の、大手化学会社が技術導入したので、どうも社内では『メラミンモノマー』と言うようになったとも聞いているが、真意は判らない。
さらには、この『技術導入』を『役員会』で承認を得るため、渡米された方々が、アメリカでは、戦中から、この『メラミン』を、紙に使用しており、日本がジャングル戦に敗れたのも、これが原因の一つと説明し・・・、今は鬼籍となられた大先輩が、『地図を雨合羽にしていた』と『豪語』され、『メラミン(モノマー)』から『導入技術』をすり替えた・・と、聞いた記憶が残っている。

こんな経緯で『ライセンス』を受けた『メラミン樹脂』は、『メラミン』を『ホルマリン』で『メチロール化』させた『反応性樹脂』であり、『繊維用』『紙用』、さらには『塗料用』と、多様な所へ『販売』されていたが、昭和49年あたりから『ホルムアルデヒド』の『発ガン性問題』が起こり、『販売量』は減少傾向となったが、優れた『架橋特性』や『硬さ』『耐久性』などで、『顧客』からは『機能化学品』として、根強い信頼を得、『製造』『販売』は継続させていた。

しかし、この長年の歴史ある『製品』も、工場内レイアウト変更などの影響で、『生産継続』が難しくなり、同業での『生産委託』を試みたが、微妙な『設備差』があり、なかなか『相当品』へ近づける事が出来なかった。
特に、この『メラミン樹脂』は、『水溶性樹脂』のため、『架橋特性』を残しながら、『水溶性』を維持するため、長期保存下での『自己縮合』も抑える必要があり、このバランスが取れないと、『白濁』などの『安定性不良』を引き起こしてしまう。
なんとか、ぎりぎりでの『製品化』まで漕ぎつけたが、今度は、顧客での『品質保証問題』が発生。
一般的な『繊維用樹脂』として『販売』している『顧客』は、『試作品』の『テスト』だけで『切替可』の『承認』を得たが、『セールクロス』や『シートベルト』などの『機能素材』では、最終の『特性評価』まで必要となったりで、時間を要した。
さらに、これらの『織物用途』以外への『販売』も『多数』あり、『水溶性糊剤』の『架橋剤』として使用し、最終の用途が『高性能濾過素材』であったり、フィルムの『下挽き用途』あったり、長年の『販売』の中で、『高機能』を求める『顧客』があることを、この時初めて知り、『供給責任』が発生する所まで展開してしまったところもあった。

これまで、この『メラミン樹脂』は、単なる『水溶性樹脂』として、『繊維用』として『販売』しており、『製品規格』も『比重』と『製品pH』位しか『提示』していなかったが、この『メラミン樹脂』を使用した『最終製品』が、『JIS化』される中で、『4M変更対象品』となってしまっている事などもあり、『重大さ』を改めて知らされたこともある。

こんな事を知っての先輩の『『枯れた製品』と言う言葉はおかしい』という言葉と・・
『日本を支える古典的基盤製品』を、あらためて感じ、今後、このような『製品』は無くなることはなく、いかに『支えれば』との思いである。

大手の化学会社は、その事業規模や、採算性から『教科書に載っていないような基盤化学品』から、かなり昔に撤退し、中小の化学会社が引き継いでいるが、今後、この『技術継続』はどうなるのであろうか。
先の『品質問題』となった日立化成も、昭和電工が吸収したが、小口は切り捨てられるようであり、ここでの『機能商品』はどこか引き受けるのであろうか。
そして、もうひとつの『話題』とした、JSRの『Latex撤退』・・・
『果敢な撤退』はいいが、これらの製品を使い続けた『日本の製造技術』は『低迷』してしまう可能性がある・・心配な限りである。

この『MEMO』で紹介できなかった、先輩からの『メール』には・・
最終的に『生産』を引き受けた『化学会社』の、大変さへの思いも綴られていた。

そして、この『枯れた製品』、小生の『ババ抜き』と言う言葉は正しくなく、
『エースを守り続ける』という事でないと・・・
日本の『基盤技術』は危なくなるのでは・・・
とまとめられていたが・・・

次回の『ワイガヤ』で、先輩諸氏のご意見を聞いてみたい

とりあえず、時間がかかったが、一旦終了

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『土木屋』 / 『地図に残る仕事』

2021-07-08 21:12:02 | 品質管理
昨夜遅く、友人の『土木屋』から『Zoom CALL』がかかった。
熱海での『大規模土石流』の映像が、毎日流れることに心を痛め、酒が進んでの事だった。
繋がるやいなや、開口一番、『土木屋の恥や』『地図に残る仕事になっとらん』との『ボヤキ』が・・
このあと、酔いつぶれる寸前まで、一方的に、色々な事を語ってくれた。

彼は、元大手建設会社の『土木技術担当』だったが、大学卒業後『トンネル工事』や『ダム工事』で全国を『転々』とし、定年まで『現場』へ踏みとどまっていた。
『土建屋の大将』ではないが、土を扱うことが多いので、いつも『土木屋』と称しており、今日も『土木屋』君で・・
彼からすると、今回の崩落事故は、『土木屋として責任放棄』としか思えない様である。

『CALL』をかけてきたもう一つの理由に、別 Blogで綴っている『市内散歩』へ、『昭和42年の水害』の記事を残したが、これについての『コメント』もしたかったようである。
<箕面市の防災マップ(最後に張り付け)>

『機関銃』のような勢いで『支離滅裂』にしゃべって来るので、紙きれに『メモ』しながら聞いていたが、『印象』に残っていることを書き留めておきたい。

●何が一番原因か
ちゃんと判る『土木技術者』がいなくなったこと
『建設会社』と共に『官公庁』も・・
今回の『崩落』した土砂の『総量』を見てみると、どこかで大規模な工事をした『残土』としか思えない。小さなデベロッパーの仕事ではなく、大手の不動産会社、その『工事』を受けた大手建設会社が『受注』物件で、その下請け、孫請けが安直に『残土』の処分を引き受けた可能性があるかも。
昔は、大手建設会社が都心部で『再開発』を行う場合など、『残土』については『工事設計』の中で『詳細見積』を行い、『妥当性』を『土木技術者』として判断していたが、最近は、『下請』へ『丸投げ』の感もあり心配である。
バブル後、デベロッパーも新興が参入したり、最近では『中国系』なども入り込み、『開発費用』を抑え込むために『違法投棄』が増えている。
今回は、言葉が悪いが、たまたま『土石流』で発覚したが、テレビで、いきなり田んぼの真ん中に『小高い山』や『奈良のソーラーパネル予定地へ残土搬入』なども放映されており、氷山の一角に過ぎない。
これらは『建設会社』にちゃんと判る『土木屋』がいなくなったのと共に、『官公庁』側の『土木技術者』の力も落ちたため・・とも思うとの事。
最近では、工事後の官庁担当者の『現地確認』すら、人手不足のためか、来ないことが多くなっており、『写真確認』だけも多くなっているようである。そして、あまりにも『監視業務』と共に担当者の『技術力』『判断力』が落ちているようだ・・とも話していた。
彼が、どこかの『現場』で『建設省』の若手担当者に説明するときも、あまりにも『初歩的』な『知見』がなく、『議論』にもならなかったとの事例も・・
小生の『メモ』のどこかで書いていた、『品質管理』『危険予知』などでの『技術の伝承不足』が、今回のような『危険を危険として感じられなかった』事になっていなければいいが・・・とも
『工事完了報告』が『目で確認』されており、『一言でも是正勧告』が出されていたのか。
昔から、役所は『なんかあったら困る』ので、『工事完了』の『判』はなかなかくれない。
『なんやかんや小さいことまで見つけて』、業者に『注文』を付ける。これは、別の見方をすれば『KY(危険予知)』を、さらにさせるためでもあったと・・今思うと。
これが、最近は、確認もしないで『めくら判』が多いような気もしてならない。
あまりにも『杓子定規』『お役所的』で、さらには、『業者癒着』の議員さんなどへの『忖度』であれば、なお始末が悪い・・と辛辣な意見も
そして、まだ『原因調査』段階と言えども、『役所』から『工事関係書類』が見えてこない事も気になる。『開発許可』と共に、『工事写真』なども提供を受けているはずであるが、ひょっとすると『10年』で『廃棄』されている可能性もある。
最近、このような『過去工事』での『確認書類』が残されていないことも問題
『DXはほんまに大丈夫か』『昔やったら青焼きで正副2通出してたで』・・と少し別への展開も

彼は、定年前、『技術伝承』のため、下請けへ志願して出向したようだが、最近の『大手ゼネコン』では、この『技術の引継ぎ』が出来ていない事も『危惧』される。昔は『工事現場』は『男くさい所で、何年か同じ釜の飯』で『KKD(カン・コツ・ドキョウ(判断力)』を教え込んできたが、
最近では『労働環境』や『働き方改革』が『優先』され、『工程』も『IT化』されるなどしてきたが、『工事』という『技術』はこれだけではできないような気もしている・・・と。
ただ、彼は、まだ多くの『土木屋』は、学校で最初に教えてもらった『地図に残る仕事』という『プライド』は持っているはず。この中で『正しく、安全を全うする』・・・と思っているようである。

●『土木技術者』の技量
今回の『崩落』を受けて、だれが『残土投棄』を『設計』したのか。
普通の『土木技術者』であれば、『開発前』に『山』へ分け入り、『鉄の棒』で『沢筋』くらいは探すとの事。少しでも『水道(みずみち)』が見えれば、パイプを入れるとか、仮設での『残土処理』であれば『シート敷』などは行うはず。
テレビの画像だけを見ていると、何んにもせずに、ブルで押し込んだだけのような気もしている。
宅地造成で山を切り出す時でも、谷筋への『擁壁』の『設計』は、今の『土木技術』でもなかなか大変。切り出した所から、水が出てくるときもあるし。
隣の『ソーラのはげ山』も、谷一つ向こうかもしれないが、尾根の上はつながっている。たぶん保水性が変わり、『水道』が違ってきているかも・・・専門的でよく理解ができない所もあったが。

こんな事を言うたら、『古いおっさん』と『若い技術者』には煙たがられたが、『設計前・現場100回』を『信条』にしていたとも話してくれた。
山奥の『ダム計画』が入ると、『設計前』、『年間フルシーズン』『現地』を訪れ、何日か『滞在』し『地元の人』の話を聞いたり、山へ入り『調査』をしたとの事。
夏は夏で『川筋』が出来るが、冬は『雪道』となり、春は、雪解け時『洪水』を引き起こすこともあり、立っている樹木の傾きから『土地』の性質も判るとの事。
村の人からは、過去の『歴史』を聞くとともに、どの沢の『石』が『どんな形』『どんな色』が多いのかも、自らの『調査』と共に『検証』することが、まず第一歩であった。
最近は、『環境破壊問題』もあり『発電用や治水用 大型ダム』の開発が少なくなったが、『土木屋』は『体力勝負』と『豪語』している。さすがもと『ワンゲル』である。

この『土木屋』の『勘・感に基づいたフィールドワーク』が、『建設現場』での『第一歩』であり、この『勘・感』『見るべき所』の数が、『技量』と、いまでも思っているようである。
最近では『ドローン』などでの『事前調査』も進んでいるようであるが、彼は、まだまだ、自らの足での『事前調査』を行わないと、『良いもの』はできないと信じているようである。

話の中に、東京外環道の『シールド工法』での『陥没事故』の話も出てきたが、『地図』や『地質図』だけでなく、『工事着工前』や『工事中』、実際に『現地探査』『確認』をしていれば、あれほど大規模な事にはならなかったのでは。すぐそばに『小さい川』があり、当然『水道』があるはずなので『危険予知』行えたはず。掘っている途中の『土質』でも、何か『変化』はあったはず。『シールドマシン』の『センサー』だけを頼りにしていると『危ない』。『黒部の太陽』のように、『ドリルの音』から、『人的・感性』を働かせないと、とんでもないことになるとの事。

こんな『土木屋の技量』は、実地で教え込まないとだめな時もあるとも話していた。クレーン車の『転倒事故』の話である。(だいぶ前にも何度か聞いた話だが・・)
最新型のクレーン車は、『画像認識』で『旋回範囲』に引っ掛かりそうなものがあれば『警報』がなり、『停止』もさせてくれるようである。しかし『アウトリガー(外への足)』の固定だけは『事前』の『経験』でしかできないかもと話していた。彼の経験では、造成地で、硬そうだった地面へ踏板だけで足をかけ、荷物をつり出したとき、地面から水が噴き出し『大慌て』したこともあり、この体験から、『足場』の確認、『鉄板敷』など、重要な『技量』として『会得』した事を、後輩たちへも『伝授』したとも話してくれたが、このような、ちょっとした『技量』『伝授』がおろそかになっている可能性もある。

最近『コンピューター制御』や『センサー』の発達で、人が『確認』すべきことが『省略化』されてきているが、この『クレーン事故』のような事例が、『新名神工事』でも『死亡事故』として報じられていた記憶があると、思い出してしまった。

●『若手』『土木技術者』の育成
彼は、定年後『下請』で『工事監理』をしていたが、『膝』を悪くしたので、一昨年『引退』し、悠々自適の生活をしている。
今日も、こんな『グタグタ』を言うのなら、大学や、土木系の専門学校で『若い人』の『教育』をしてはどうか・・と振ってみたが、『もう無理』との事。
『ナゼ』と聞くと・・『フィールドで教えられない』からとの事。
確かに彼らしい『解答』なのかもしれない。
今日、話していた中でも、いくつかこの事が見えてきている。
彼曰く、ここ数年の『土石流災害』を見ても、『大学の研究力』が低下している。
ここ何年か『大規模水害』が発生しており、『発生後』『現地・立入究明』は行えているが、『発生しそう』と『事前検証』で『現地確認』を行い。『やはり起こりました』と『答えた学者』は少ない。
今回の『熱海の現場』も、だれか『ちょっとでも気になる』『土木屋』がいなかったものであろうか。
彼は、若いころから、あえて『学会』へは『入会』せずに、学友から『年次大会資料』などを借りて『勉強』していたようであるが、最近は『IT』や『新工法』での『新提言』はあるが、古臭い『**川の治水対応』のような『研究テーマ』が少なくなっていることを危惧していた。

そして、各大学の建築や土木学科は、『SDGs』や『環境対応』の『注目されるテーマ』と共に、直近の『被災』での『回避策』などの『目立つ研究テーマ』が多く、地方大学でも、地元の『急峻河川の解析』などは行うが、市内に、あたりまえにある『川』、さらには『崖』などへは目が向けられていない。
大学が『独立法人化』し『研究テーマ』として『スポンサー』がつかなくなる事が影響しているのでは・・とも
そして、若い先生と、古参の教授陣との『年代ギャップ』も心配との事。どちらか言うと、彼くらいの『名誉教授』は、今でも『山歩き』で『危険個所』を巡っているが、若い先生方は『パソコン画面』で『シュミュレーション』に明け暮れ、実際の『フィールド作業』が少ないようだとも笑っていた。
これは、大手の『建設会社』でも言えるようである。
こんな事から、経験豊かな『土木屋』が育たない。育てられない事なのであろうか。

彼の『膝』とが、ここでつながった気がする。『現役プレーヤー』として活躍できなくなり、『後進指導』をあきらめたのかもしれない・・

●『土木技術者』の経過が足りない事での危険性
話がどんどん『深入』してきたが、
『土木屋』が育たなかった、もう一つ大きな『原因』は、『最近のJV(共同体)』かも。
昔から大規模工事は『JV』を組んで取り掛かることが多く、高度成長期は『JV』で、相対する会社でも、その時期だけは『同胞』として成果を上げてきたが、『最近のJV』では、『幹事社』と共に『道路公団』などの『意向』が強くなり、お互いの『技量』や『ノウハウ』。さらには『経験則』『危険感性』などが出しにくくなっているように思える。『JV』そのものが『上下』『元請・下請的』となり『一体化』されにくい。『お金』『予算』問題が『先行』する事が最も大きいかもしれないが・・・
これらから『工事の厳格監理』や『品質管理』『安全管理』に『ひころび』が出てくる。
テレビで『東京スカイツリー』の『大林組』が時々放映されるが、これくらい『自社工事』に近くないと『工事監理』は難しい。最近の『高速道路』の様に、誰が『工事主体』かわからなくなると、『工程』まで遅れ遅れになるのではと・・

そして、最近、日本での『大規模工事』が少なくなったこともあり、大手ゼネコンも『海外』へ展開しているが、これも『土木技術者』の『技量』を上げる事ができない『要因』のように思える。
『ダム』や『大型橋梁』の工事を進める場合、『掘削』した段階で『地盤』の『良否』が見極められ、『強度見直し』などの『設計変更』が必要となる場合もあり、このようなビックプロジェクトでの『OJT』で『経験』『技量向上』が行えなくなっており、心配である。

過去、タイなどで、高速道路や橋梁などを受注し、最近では、中近東やアフリカまで『工事』を展開し始めているが、『事前調査』『設計』が十分にできない問題がある。
『現地コンサル』が作成の『設計図書』などを基に『本格設計』に入るが、橋梁足場の『ボーリング調査』や『周辺調査』などが十分に行えない場合もある。ましてや、『環境アセスメント』はどこか飛んでしまっている・・・
中国がODAと引き換えに、アフリカなどで『橋梁』や『高速道路』などを『受注』をしているが、広大な『中国』の真ん中を通すこととは異なり、『設計』『不十分』などで、『無理』が起こり、『橋梁』完成後数年で『崩落』する問題が起こっているが、日本の『土木技術者』も同じようなことにならなければ・・とも心配していた。

やはり、この『メモ』のどこかで残した、『技術の伝承』を途切れさせない事が、これからの『日本の安心・安全』を得るためには、最も『重要』であろう。

●『ドローンより自らの足で』
最後に、酔いがまわる中で、最近の『政府政策』『国家強靭化計画』へ話が及んだ
だんだん『支離滅裂』になりつつでの話であったが、『国家強靭化計画』や『政府の諸施策』はあまりにも『IT』や『ドローン』に頼りすぎ。
今回の『土石流』でも『センサー』がない限り『無策』
そして、『目で見ての確認』が出来ていない
たとえ『ドローン』で『常時監視』が出来ていたとしても、『過去』の『歴史』からの『問題点』は出てこない。『沢筋』をさがすため『足』で分け入る必要もある。

例えば、最近『橋脚クラック』を『ロボット』を『上下』させて『老化度』を測定しているが、『クラックの流れ』『クラック端』『深さ』など、まだ『打診』での『診断』より劣る事もある。
『勘だけ』と『よく怒られるが』、単に『クラック度合』だけでなく『橋脚』の『足元状況』や『流水圧負荷』なども『総合的』に『検証』しておかないと、『洪水時』『橋脚破壊』もありうる。こんな事も『IT』『ロボット』『検査』から『抜けるもの』として想定しておく必要がある。これが『土木屋』の『技量』で『感・勘』である。

彼は『ドラクター』から『CAD』への転換をいち早く取り入れた『IT先駆者』ではあるが、やはり、今でも『フィールド検証』の方を『重要視』しているようである。
『IT化』は否定はしないが、『もしも』のためには『自らの目で集めた情報』を『優先』させることが要であると・・感じているのかもしれない。

『国家強靭化計画』でも『DX』や『IT化』『ロボット』『ドローン』を『推進』させるのはいいが、『人の目』ほど『鋭いものはない』・・・と最後に話したことが結論かも

何れにしても、今回の『土石流』は『人災』であることは間違いない。
『不法投棄』した『業者』には『大責任』があるが、これを『監視』できなかった『行政』にも問題があり、彼の様に『フィールド』を大切にしている『技術者』にとっては、『指摘できなかった事』が心に痛むのであろう。
『土木屋』が『地図に残す仕事』をすれば、地震などの『天災』が起こらない限り、100年経っても、200年経っても『崩落』せずに残ったのかもしれない。
ただ、最近の『豪雨』は、『天災の域』となってしまったのかもしれない。

このためにも、さらに『土木屋』の『技量』を上げていく必要がある。
彼の望みは、『IT』に頼ることのない、『フィールド重視』『現場主義』の『土木屋』が『育つ』事なのであろうか。

***+*
今朝、昨夜の『話題』の『追加資料』として、下記 URLが送信されてきた。
建設省、近畿整備局の『新技術・紹介資料』であるが、たしかに『IT』に頼り切っているような気がしてきた。どこまで『フィールドワーク』の『積み上げ』であろうか。 
もう少し詳しく読み進めてみたい。

そして、『質問』しようとしていた『わが町の防災・ハザードマップ』は、次回、詳しく議論してみたい。


とりあえず、今日はいったん終了・・

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『品質不正』/日立化成㈱調査報告書から

2018-12-19 15:26:42 | 品質管理
前ブログで日経記事を受け、『製造業/『品質不正』という言葉をどうとらえるか』というMEMOを残したが、11月22日、日立化成㈱より今回の不正につき『調査報告書』が公開された。
三連休前でこの間日産の前会長逮捕などがあり、新聞等ではあまり大きな記事とはならなかったが、HPに全文が掲載されている。
膨大なページ数なので画面では確認しきれず、一部をプリントアウトし、この数週間学ばせて頂いた。
品質管理のありかたと言う点で、示唆に富む解析がなされており、過去同じような製造業に携わった者として、痛切な指摘も何ヶ所かあった。

『当社製品における不適切な検査等に関する特別調査委員会の報告書について』『調査報告書』(PDF)」日立化成株式会社(2018年11月22日)

この調査は、委託された同社と利権のない法律や会計事務所に属する何十人ものメンバーと、技術関係の方で、5ヶ月近くもかけ、社員への直接アンケートや各事業所を訪問され,品質にかかわる不適切行為の精査をされたとの事。
報告では、各事業所で発見した品質不適切の具体的な内容と共に、これを引き起こした業務実態、実行者、指示命令系統なども詳しく精査されている。さすが法律家を中心とした精査と感心させられた。
又、この調査では、事実関係を残すため電子データーをデジタルフォレンジックと言う新しい技術で、保全と検証をされたとの事。
森友事件ではないが、削除ファイルまで復活されたようであり、これらを基に各事案の源流まで遡った鋭い原因究明と事実関係の解析もなされている。

報告書の最終項では、会社全体としての問題を引き起こした本質的な原因につき鋭く切り込み解析がなされ、これらを受けて再発防止にむけた提言がまとめられている。

本報告書は日立製作所の内製的メーカーという少し特殊な会社での品質に係わる不正事案の再発防止に向けた報告ではあるが、日本の製造業。特に電気や自動車産業などを頂上とする産業へ素材を供給するメーカーが課せられている『今後のあり方』を問う内容と読み替えれる。
日本の製造業が培ってきた『高機能を維持しながら少量多品種の生産をどう継続させる』かとの課題が見えて来たような気がする。今後、大手で対応できなくなった製品を維持するために、中小へ移管させる事も出て来る可能性があり、ここでの品質保証の課題事項でもある。

最終頁の結語で(抜粋)
『日立化成の目の前には、
 開発段階ないし開発部門における不適切行為の調査、
 不適切行為対象製品の性能検証、
 国内子会社や海外拠点及び海外子会社の調査、
 不適切行為対象製品に関する顧客への連絡と対応、
 これらと並行した再発防止策の策定と実行
 など、取り組まなければならない課題が山積している』
との記載があり、さらに
『不適切行為対象製品に関する顧客への対応については、
 不祥事を起こした負い目はあるものの、
 サプライチェーンを展望した責任を果たすことを根幹に捉え、
 顧客との健全な関係性の第一歩としてほしい』
『サプライチェーンを展望した責任を果たすことは、
 ひとり日立化成だけの力で実現できるものではない
 サプライチェーンを構成する全ての関係者と日立化成が
 協同して、サプライチェーン全体の健全化を推し進め、
 我が国のものづくりの信頼回復を遂げていくことを切に希望する。』
とまとめられている。

報告でも書かれているが、今回の事案は、事業領域が大きく異なり、上場間で合併した旧新神戸電機に端を発した問題ではあるが、日立化成のサプライチェーンが、日立G内での子会社的な位置づけでのあり方から、新たに合併した会社が持ち込んだ今までの日立G以外の顧客、さらには、今後の発展のための『脱日立G』としての新規顧客獲得策まで議論を進めてほしいと示唆されている様にも思われる。

一方報告の中で、個々の製品群の売上額が決算報告等では明確に読み取れないが、一つのユニットで歴史ある何十品目もの銘柄を抱えた製品群の売り上げが年間50億円と記載されていた。
社全体の売上げは、7000億円近くであったかと思うが、この規模であれば、大企業の中にある中小企業であり、機能製品を残すためには仕方がないが、採算性や全社管理となると、これら少量多品種の生産を継続させる点で、今後のあり方も議論されるかと思われる。

サプライチェーンを支えるため『供給責任』を果たすことは重要であるが、会社維持のためのコストも加味した運営も急務であり、今回出て来た品質に係わる課題事項をすべて供給元で負担する事は到底できない可能性がある。
このため、規格項目削減となると、ユーザー側でも検証作業が必要となるが、上下関係で『いまさら』感もあり、なかなか受け入れてもらえない可能性がある。
供給維持のための価格への転嫁やさらなる理不尽な要求が継続すれば、『供給停止』も最終手段として考える必要があり、歴史あるOLD製品であればあるほど、供給側と共に受入側との技術面での相互理解も必要となってくると思われる。

このような事態となると、今までの歴史を知りえていない担当者では、ますます対応が難しくなるかもしれないとの思いであり、先のブログでの反省事項が再度頭をよぎってしまった。
+*前ブログで
・『データー改竄問題』は『顧客第一主義』が原因。
・規格値変更は膨大作業。現行踏襲。データー改竄
・定年退職者発生、『規格値』採用経緯が消滅。
・『カイゼン』で『顧客要求』に合う測定法工夫。
これらが不幸な事態を引き起こしたのでは。
・・とのまとめを書いた。

膨大な資料なのでまだすべて読み切れていないが、日本を支える製造業としての今後のあり方をあらためて考え直す内容であり、過去同じような機能化学品を扱う業界に在籍した者として、心痛む内容である。

以下、『調査報告書の結語』から感じた事をまとめてみた。

(1)『サプライチェーン全体の健全化』①
 本報告書では、個々の品質問題以上に、製品群やそのマーケットでの
 位置づけ重要性を勘案し、今後の事業展開を心配されている節もある。


日立化成の製品群は、大手メーカーで大量に汎用品として販売している商品ではない。
どちらか言うと多品種(品質毎も含め)少量の機能性樹脂や、技術が進歩し日本から出ていった老テックになりかけている電気関連の部品もある。
その特性からまだ小規模ではあるが高機能製品として需要があり、これらをどう残すかが問われているかと思われる。

先週末の新聞では、日立化成も日立Gから分離させられるような記事もあり『サプライチェーン全体の健全化』という点で大きな課題となるかと思われる。

例えば、今回の精査の中でも出てきていたが、数年前に合併の新神戸電機でも製造している『銅張積層板』などもその一つかと思える。
積層板は家電製品などの伸長とともに紙フェノールからガラエポへかなり移行したが、紙フェノールでも軽量で安価な事から、両面実装や高蜜化が進み、ハンダ耐熱やピール強度等、積層板に対する要求特性が高くなり各社とも高機能化競争をしてきた。
これが今回の規格値制定の中で問題となっている所であるような気がしているが。

その後電化製品の生産が中国へ移り、基盤自体も現地生産化が進んだため、汎用の積層板は海外移転から、現地メーカーの安価生産品に押され、国内生産は殆どなくなったが、一部の高機能化製品はまだ国内で生産されているようである。

この高性能な積層板が供給されなくなると、AIや自動運転といった電子制御機器への影響が出て来る事になるかと思われる。

このため、日立化成など国内の積層板メーカーも、採算や事業規模での観点から、事業撤退となると、顧客側からは供給責任での抵抗も大きく、すぐにはやめれない分野となり、一方で、要求品質はさらに高くなる事も想定され、板挟みとなりかねない。

報告書の中に
『当委員会は、本調査の過程で、サプライチェーンを展望した責任を果たすことと相容れない態度を示そうとする顧客側の対応に、日立化成が苦慮したケースもある事を仄聞した』
との記述があるが、
顧客が電子材関係、自動車、塗料、化学業界など、購買が強い所であれば、無理難題を言われる可能性があり、担当者ではなく、事業戦略を説明できるトップ交渉が重要になるのでは思われる。

特に過去何十年も供給している歴史製品では、4Mなどでの変更が起こった場合、顧客側でも相当検証に負荷がかかり、おのずと同品質での供給責任が突き付けられる可能性がある。
逆に、購入側でも業界を理解した危険予知、SCMを立てていただく必要があり、都度適切な報告が供給側からも必要となのかもしれない。

ただ、顧客側も若い担当者に代わるなどの中で、面談時間が限られ、供給側から相手方への情報提供も少なくなる事も多く、この点も業界全体としての課題なのかもしれない。
(日立ご出身の現経団連会長が文系はもっと数学や物理、化学を学ぶ必要があるとのご発言は、このあたりに通じる気がする。)

過去小生も、化学の教科書にもあまり出てこない反応性を有するメラミン樹脂やエポキシ樹脂などの機能性高分子を担当していた事がある。
当時の売り上げは年間十憶強で、何千億も販売している社内では、小規模ビジネスであったため、関係会社への製造移管や一部製品の事業譲渡を行う作業を行った事がある。

この際、『期限を切って出荷をやめるように』とTOP指示が出されたが、機能を買っていただいていた製品のため、顧客目線での作業を行う事となった。
高々月1千万円程度の販売商品でも、顧客での他プラント生産品や、譲渡先製品での切替検討作業で、機能特性がきっちり得られるかと言う検証とさらに先の顧客での確証を得るのに1年近くを要した。
現有の生産プラントが止まるタイムリミットが切られる中で検証作業や供給責任を果たすための在庫積上げなど、顧客側からの無理難題に対応し、この間の品質保証に苦慮したことが思い起こされた。

国内の同業他社が撤退してくれば、最後の『ババ抜き』となり、調査委員会が残された『サプライチェーン全体の健全化』という点が、品質問題以上に大きな課題となる事は否めない。
経営者として『偽装問題』では責任をとる事にはなるが、日本の基幹産業を維持していく上でこの機能分野でのビジネスのかじ取りの方が難しくなるかと思われる。

(2)『サプライチェーン全体の健全化』②
本報告書では不適切行為で判明した製品の出荷先が明確では無かったが、同社がモーター巻線用ワニスや積層板から、半導体材料、カーボン製品、さらには合併した会社でのヒューズ供給などから判断すると、顧客は日立製作所、もしくはその関連会社が主体かと考えられる。

過去からモーター巻線(エナメル線)や紙フェノール積層板には熱硬化型のフェノール樹脂などが主に使われているが
・反応性がある樹脂であるため輸送が難しい
・各最終製品に応じた特殊な配合物を混合させる必要がある
・エチレンプラントの様な大型設備でなく、反応釜さえあれば生産可能
・電機メーカーの秘密保持
などの点で、内製と言われる自社内生産や限定の製造委託先への受託生産されることが多く、化学業界でも特殊な扱いとされてきた。
同様な生産は、過去塗料やインキ、マイクロカプセル等のメーカーでも行われていた事もあるが、現状は委託先へ出されている事が多いかと思われる。

このフェノール樹脂などの生産する場合、親会社の研究部門が構造体を設計する場合もあり、子会社や生産委託先では製造のための条件検討を行う必要があるが、親子の力関係では親指導型となることは否めない。
最終特性が得られた製品を供給する際は、当然規格値が決められ、この管理は生産者側で担保する事になるが、製品設計を行った親会社に対するコミットとは逆に、最終製品は親会社の加工された製品として品質保証されるから大丈夫等との甘えも出てくる可能性がある。
一方で、外部へ生産を託した所では、何が何でも供給先から突き付けられた規格項目、管理幅の踏襲は絶対であり、下請けとしての悲哀が出て来る可能性がある。

今回の報告書でも何カ所か出てきているが、試作から本格生産、継続生産の中では、このような反応性を伴う樹脂は振れ幅もあり、自社で判断できない場合は、『先行サンプル評価』『特採申請』といった作業で安易に対応する場合も出て来る。この感性も、親子以上に上下関係の歪ではないかとも思われ、逆に言うと『特採申請』で不良品が出ても、供給先で処理できるようであれば、製造工程での異常も見逃す危険性もあるのではと危惧される。

今回の事態も日立G全体での問題でもあり、多分、巻線用ワニスなどは他の化学会社へも生産委託をされているかと思うが、この品質監査をそのまま日立化成へ適用されていれば、今回の様な問題が長年継続されることはなかったのではないかと思われる。

この他、電気部品に用いる化学材料は秘密性が高いが故に、上記で述べた通り内製化が多いと思われ、電機メーカーが海外へ進出してもついて行くことになり、ここでも親子や生産受託での上下関係、系列化と言ったしがらみは取れず、このあたりも日本型サプライチェーンの大きな課題かと思われる。

報告書にあった半導体封止用エポキシ樹脂なども、構成するエポキシ樹脂や配合剤はすべて外部購入ではあるが、樹脂を乗せるためのノズルからの流動性や、焼き付けやリフロー特性で配合設計も変わってくるかと思われる。この薬剤を同社が系列を超えて、例えばパナソニックGに販売できる事は動議的に不可能とも思われ、日本の電子材産業が海外へ出て行く中で、G内での伸長展開も難しくなる。さらに封止剤専業メーカーとの競争となると製品設計力と品質保証両面での製造となり、将来性を考える必要がある。

日立製作所の先にある自動車産業までを考えた時、車がEV化、自動運転化されると、モーター設計、Li-B等の蓄電池、さらには電子部品設計で新しい素材が必要となる可能性もある。Gパワーの中での日立化成のポジションが、親子、下請けとならないような、開発でのイコールパートナーへもっと強く舵が切れればいいのであるが。

社方針の中に『落穂ひろい』との言葉があったが、下請け的マインドとも読みとれ、これが今回の会社風土を悪くしている様にも思える。
やはりGで縛られるのではなく、新しいビジネスを積極的に切り開く思想が出てこないと、品質を含めた『行動規範の高揚』にはつながらないかとも思われる。

もう一点、日立製作所との関係では、昔からの『縦割り社会』が浸み込んでいる可能性もある。
この点でも新たなサプライチェーンを見つけ出すことで、全社横横断のプロジェクトなどが生まれ、再生する事を期待したい。
暴論であるが、『住友ベークライト』のような、大手の化学会社の巨大組織の一員ではなく、グループの枠にとらわれない一匹狼として、電気と化学をつなぐ専門会社となる事も、日本のサプライチェーンを再構築すると言う点で必要なのかもしれない。

特殊な化学品は製造設備や周辺環境、さらにはこれに係わるコストもあり、過去からの蓄積も必要で、少量多品種の生産を中小へすぐには渡せない事もあり、前項①での事業継続も含めての組織つくりも急がれる所かと愚考する。

(3)『統合・合併した会社運営の一体化
      (国内子会社や海外拠点及び海外子会社の調査)』

本報告では直接触れていないが、日立化成は、もともと内製的原料を供給していた化学工場が独立し、その後、G内の関連した部品や化学製品を供給する多種、異種の工場が合併し運用されている。
このため、生い立ちが違う会社での文化、イズム、さらには過去の社員教育を含めての一元化に対する取り組みが今後の大きな課題と思われるが、本報告では詳細には解析されていない。
会社規模や仕事のやり方が違う会社同志では、コンプライアンスマインドの温度差はすぐには解消できないと思われる。
社内をどう一体化するかが経営陣に課せられた先決課題とも言える。さらには、今までの文化が違った会社の海外拠点までコントロールするとなると、組織力、特に人力がさらに必要となる可能性がある。

この吸収合併の問題については、小生が担当していた製品を子会社へ移管時に痛切に感じた事でもある。
まず1点目は親会社と子会社の関係である。
子会社へは親会社から社長、関係役員、さらには実務担当の管理社員までが出向や定年後再雇用の形で送り込まれ、落下傘部隊と揶揄された事もある。
当初は親会社から移管された製品を子会社が製造する場合、親会社のマザー工場経験者が製造ラインや管理の中心となって子会社を支えたとの事であるが、その後、マザー工場も縮小し、人的な面で部門を異とする出向者も増えた事もあり、子会社独自の文化との融和に時間がかかる場合も出てきている。
この背景には、出向者の能力の違いもあるが、受け入れる側での融和力、理解力も必要となり、今回の問題で、現場任せになっていなかったかが心配である。
即戦力のためには、親会社からの派遣する人材は、地の利が必要であるとも感じている。

二点目は子会社間の合併である。
親会社の経営的な意向で、強引に関係する子会社A,Bを合併させたため、この融和に10年近く有している。
合併前の子会社A、Bは各々生産工場を有し、そのまま本社組織だけを統合後の主会社Aへ移し、社名もAを踏襲したが、統合合併させられた会社、B側の社員の不満は大きく残っていた。(この統合前後の移管作業となり、生産から出荷開始まで色々と問題を生じた。)

子会社A,B社では生産品目も大きく異なったため、合併直後は旧の子会社A,B独自での生産対応をしばらくは踏襲する事になったが、人事管理はともかくとして、安全管理、品質管理などは、現状、見掛け上は一体化したが、まだ2本立ての様相は否めない。
ただ統合前の子会社A側が比較的人的には余力があり、生産ラインのトップなどが交流する中で融和が図れ、B側の工場空スペースに新設の工場を設置するなどで、やっと一元化が計れる事になって来た。
A側から見ても、本社機能は残されているが生産規模ではB側がはるかに大きくなり、10年も経つと両社の古い人間も徐々に定年退社し、この違和感が無くなって来たのは事実である。

会社として、役員会や主要定例会議などを双方の工場で開催するなどでの均等化の努力もあるが、人の心を動かすまでには時間が必要である。
この真の心の充足感が満足されないと、品質管理基準の一体化、さらにはコンプライアンス遵守といった基本の考え方の浸透もされにくいのではと思われる。

今回指摘の多かった事業所は、2014年旧日立粉末治金、2016年旧新神戸電機、旧日立化成ポリマー、旧日立化成フィルテックなどのとの合併での組織一体化が行われた所である。
まだ合併・統合後時間が浅いので、管理システムなどを含めて十分に構築出来ていない事が、今回の調査で如実化したのではと思われる。

小生が係わった子会社では、ISOやJIS対応での一体化も検討を進めているが、生産品目が大きく異なったり、生産方法が少量からバルクに近い製品となると取りまとめも難しくなり、個々での議論も必要となった。
何れにしても『ルール順守』が出来る管理とするためには、全社横断で、内容を熟知した、全体を見渡せる部門が必要となり、この構築が最優先かもしれない。

あわせて、生産移管を外部の子会社へ出す場合、長さや重量と言った単純な規格幅で管理できればいいが、今回問題発生の『機能を規格値で評価できない』製品などについては、品質管理面では子会社などへの移管以上に問題が出て来る。

小生が経験した中でも、製品はSPEC内でも、包装材の管理が出来ておらず、天向けのドラム缶に水が溜まっていた中へ製品を充填してしまったなど、管理レベルはさらに高度とする必要があり、この項とは異なる所で実態把握した上での検証、改善が必要となるかもしれない。

親子の会社関係、生産委託委託先との関係いづれも、委託する側からのしっかりとした指導と、受ける側も、受け取る力を最大限発揮する事が肝要であり、このためには上下をなくすことが必要なのでは感じている。

(4)『開発段階ないし開発部門における不適切行為の調査』
報告書の仔細内容で蓄電池などの所は門外なので判断は難しいが、斜め読みした中で、今回の問題の根底は、『品質部門ではなく、製品化する中での研究や開発部門の関与が大きかった』との事が指摘されているが、接着や塗料、硬化などの反応性を有する分野、独特の事なのかもしれない。
前々項(2)で少し触れたが、電機部品製造メーカーの内製工場、下請けとしての開発について、もう少し検証が必要かもしれない。
この点で『開発段階ないし開発部門における調査』が、製品を仕上げていく中で、どの段階でどのような役割をしたのかの検証を受ける必要があるかとも考える。

この問題発生の同じような機能性樹脂の開発に携わった者として少し言い訳的になるが・・
農薬や医薬などの化学品の開発は、スクリーニング段階の薬効で主成分の構造が決定し、それを効率よく生産する事で製品化されるが、巻線用ワニスなどに使用する反応性のある樹脂(熱硬化性樹脂)は、顧客側で最終の機能検証を行いながら仕上げていく必要があり、製品決定と開発から製造までのステップも異なり、規格値決定も少しあいまいさが残ってくることは否めない。
この点、顧客側との最終取り決めを『開発設計』だけに責を負わすわけにはいかないかとも考える。

ワニスなどでは、過去の色々な知見から原料を探し、硬化特性などから概略組成を決め、自社内で最終品の評価が出来ない事もあり、フラスコ段階のラボ品の提供から始まる。もしくは、ユーザー側からフラスコ試作の合成ルートを入手し、この再現性検討からのスタートとなる事もある。

このラボ品で特性が得られれば、組成や分子量などを変えたラボ品で周辺検討を行い、合格すれば少し大きなスケールで試作し拡大評価を受ける。
これでOKとなれば、顧客側での周辺データー採取、実製造に向けた問題点検討も含め、何回かの少量試作機でのトライアル生産を行う。
このステップで最終の電気機器まで組み込めるレベルの確認がなされ、再現性や耐久性などに問題が起こらなければ、仮規格を策定し実生産機での試製造。顧客側では量産一歩手前の量産製造となり、合否を待つことになる。
この後、顧客側でのラインテストのための仮製品供給が必要となり、実機でのトライアル生産を継続するが、売り上げが立たない事が多く、開発部門扱いで、検査成績もここからの発行となる。
末端顧客での耐久試験が長引けば、受注確定までに数年かかる事もあり、本格生産開始となる。

この間、試作段階で決めた仮規格は、特性を得るための製造条件の微調整や、実機での何ロットかの実績から見直しをかける必要が出て来るが、受注時に取り交わす購買仕様書では、すでに顧客側では仮規格が正式規格となっている場合もあり、変更に手間がかかる場合もある。

前(2)の所で記載したが、反応性のある機能性樹脂は反応途中で縮合なども起こるため、農医薬のようにきっちりとした構造体の純度を求める事が難しい。さらに反応装置(釜)の容量が変わる事での反応条件や、使用する原料を汎用工業製品へ切替えるなどで、出来上がる製品分子量も振れる事が多い。
この分子量の一つの指標として製品粘度規格を決めるが、規格化しにくく、管理幅を逸脱する事が出て来る。
又、機能特性を成分含量で代替する事もあり、樹脂量を不揮発分で測定したり、比重値で求める事もあるが、機能を保証するものではない。
このため特性を求める必要があり、JISやISOに規定されている評価や、開発途中で最終製品に近いモデル品を作成し、その機械的特性から機能を評価してきたことを踏襲して評価する事も行っており、これが規格値として決めていれば都度、手間はかかるが測定が必要となる。

旧日立化成ポリマの徳島工場での、剥離試験の基材として『OHPフィルム』使用など、剥離剤の機能を代替して指標とする数値を創意工夫で求めだすために検討を行い、顧客との仕様書にも盛り込んだ事からの『データー偽装』となってしまっている。
本当に末端の剥離性能が、この『OHPフィルム法』で正しいのかどうか。必要なのかどうか。

何れにしても、機能化商品は、ポリエチレンなどのBIGな商品ではなく、反応釜で一つ一つ炊き上げる小ロット、多品種が多く、その開発は、大手の化学会社の中でも中小企業的な『手作り製品』に近い所は否めなく、今後『開発』が難しくなってきそうである。

中小の化学会社では、原料取り扱いや反応後の釜の洗浄、危険物対応、専門性などで簡単に受け入れられる所も少なく、機能化学品継続のためには、当面大中化学会社の二軍、三軍での対応が続くのかもしれない。

(5)『サプライチェーンを展望した責任を果たすこと』
本報告書では従業員教育や部門内教育、さらには担当製品の知識教育などがあまり取り上げられていが、『サプライチェーンを展望した責任を果たすことは』を考えるためには、担当している製品がどんな所で使われ、どのような重要性があるのかの認識が、コンプライアンス遵守、品質維持には重要な因子と感じている。

今回問題があった製品が、1900年代、平成前の製品であれば、若い担当者にしてみると生まれる前、入社前であり、平成元年入社の社員でも50代の幹部社員ではあるが、ちゃんとスタートまでの歴史が共有されていたかと感じている。

前ブログでも書いたが、製品を開発時の設計思想や、そこでの取り決めが品質規格の改訂書類の中に残されていればいいが、単なる改訂履歴だけであれば、前項で書いたような『なぜその規格が決められているか』という事が見えなくなってきてしまう。
これが伝承的に『測定をかえても大丈夫』『改竄しても大丈夫』さらには『測定しない』となってしまい、最初の規格値で決めた取り決めが危険予知となってこない。

当然管理範囲の逸脱は工程内での異常であり、何かの変化点であるので、これを見出す重要な指標である事は間違いない。

これに加え、製品がどんなところへ使われているかと言う教育がさらに重要である。
昨今定年で開発当時のベテランが去る中で、最終の使用先が見えなくなっており、これが最も危ない事である。
今回の調査報告の中では、この数値を求めない事や改竄する事での危険性まで明確には書かれていないが、Li-Bなどであればボーイングでの火災事故が起こったような暴走もあり、積層板では基盤不安定での制御不能といった事態が起こるかもしれない。

サプライチェーンの出発点であるが、最終どこまで使用されているかを知る事も、供給者としての責務であり、これを知る事で品質に対する意識は格段と向上するかもしれない。
さらに現状に照らし合わして、不要、陳腐化した規格値も洗い出しが出来、顧客との真の技術的対峙も出来るとも思われる。

このためには、製造する技術部門だけではなく、営業部門の担当者でも勉強しておく必要があり、『門前の小僧』で文系の担当者も知識吸収を急いでもらいたいものである。

さらに、OLD製品は受ける顧客側でも認知されないものとなっている可能性があり、購買担当者へも常々情報提供が必要かと感じている。単に製品周辺だけでなく、この素材製造にかかわる原料背景や生産設備回りなども十分説明しておけば、中国からの原料手配不可や何らかの生産設備不具合での生産ストップ時の対応など、双方でのBCP、SCMが整うと思われる。
LowTecな製品であればこそ、重要な作業であり、末端への影響度も小さくできるかと考える。

冒頭の所でも記載したが、下請け的になるとこの気概も低下し、製品への愛着も希薄になるが、古い担当の方が在籍の間に何とか整備される事が重要であろう。

さらに、全社での製品知識高揚も必要であり、どこの工場でどんな製品を作り、さらには、こんな所へも使用されているという事が判れば、先項で酷評した『落穂ひろい』もあらたな開発のネタとして拾い起こせる事となるのではなかろうか。

*;*:*:***
1週間ほどかけてのメモ記述となった
 内容のダブりや語句のミス、打ち間違えもあるかと思う
 順次訂正していきたい。

あわせて、原因分析のまとめで
『本調査において判明した各種の不適切行為は、
・・日立化成の行動規範が形骸化している事』と結論付けられ
その背景には
「1.品質に対する過信・甘え、品質の軽視」
「2.サプライチェーンを展望した責任感の欠如」
「3.顧客からの要求やプレッシャーに対し迎合する姿勢
  さらには面従腹背の姿勢」
といった全社的な組織風土が大きく影響と解析されており
これが「現場における品質に対する意識の欠如」に繋がり長期にわたる不正行為が発生したとの事。

品質保証部の役割が
「適正な検査と品質管理活動の推進」ではなく
「顧客クレーム処理する事の重視」という目的の誤認や、
これが部門横断的な規範意識の鈍麻となり
「品質保証担当者が社内規定や顧客との取り決めに
   違反する事に対する心理的抵抗が少ない」となって

いるなどと言う厳しい究明もあり、この点もう少し報告書を読み解いてみたい。

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製造業/『品質不正』という言葉をどうとらえるか

2018-11-12 22:51:56 | 品質管理
今日は新聞休刊日であるが、昨日の日経朝刊にトップ記事で出ていた『衰えるニッポンの工場 品質不正を招く』という記事に対し、早速、沢山のメールが届いた。



先週末のこのブログサイトで『製造業/『データー改竄問題』の整理』に、これまでの日本の製造業で発生した品質に係る問題につき、頂いたメールの内容などを整理し、少し過激な私見を述べて来たが、この新聞記事の内容についてのコメントを含め、さらなる『品質保証』という事での問題点・今後のあり方などのご意見を頂いた。

この中で元技術屋の仲間から特に多かったのは、各社での『データー偽装・改竄』がどんな内容であり、どこから発生したかという事がこれから子細が出て来るのかもしれないが、日本の今後の品質保証のあり方を考えるために包み隠さずに公表してほしいとの意見も多く頂いた。

今回日経でのまとめとして下記の記載がなされている。(一部抜粋)
『SUBARUや日産自動車などの調査報告書を読み解くと、一つの共通点が浮かび上がる。
 設備の老朽化と人手不足で「衰える工場」という現実だ。・・
 カイゼンの名の下、問題の解決を現場に任せてきた日本企業。
 各社の報告書でもコストや納期を守るために、現場の判断で不正に手を染めたケースが目立つ。
 もちろんそれが経営陣の言い訳にはならない。
 コスト削減を掲げるだけで現場のひずみに目をつぶり、不正に追い込んだ経営の責任は重い。

 ・・製造業のデジタル化を目指す「インダストリー4.0」を掲げるドイツでは、
 生産から検査までロボット技術を使った最先端工場で本国に生産回帰する動きが始まった。
 ・・膨大な情報を自動で分析する技術は、検査工程や品質向上にも活用できる。
 生産年齢人口が減少するなか、現場の感覚や頑張りだけに頼ったものづくりは限界を迎える。
 日本のものづくりの復権のためには、抜本的な生産の革新が必要になる。』:::

たしかに日本の製造業が衰えていく中で、ITを活用する事は重要であるが、このロボット制御での判断基準を決めるのは人間であり、このためのデーター採取やデーターの質を見極めるのも人間しかできない。
この事はつい最近日経電子版の『日経ものづくり』要約版に出ていたトヨタ副社長のインタビュー記事からも読み取れる。

データー偽証に繋がったトップの経営能力、管理能力の議論と共に、現場を支える人間力。さらにはこのブログ記事でも取り上げて来た『物を見る目』をどう醸成するかが急務ではないかとの小生の自論に、エンジニア卒業生からは沢山の賛同を得た。

一方で、先のメールで『品質保証』と『マーケットイン』との関係についても少し触れたが、今起こっている『データー改竄問題』が、過去の『顧客第一主義』を引きづっている可能性もあるとの反省の弁も、定年退職者の仲間内からも聞こえており、今一度品質保証のあり方を、今の時代に合わせてきっちり取り組むことも重要なのではとの意見も出されている。

特に品質をつかさどる規格値(品質保証基準)については、一度決めてしまったものは、販売者側はともかくとして、購入側でも購入仕様書に記載等していれば、ISOなどでの監査対象となり、規格項目の削減や規格範囲変更、測定手順の変更などをするとなると膨大な作業となり、自ずと現行を踏襲せざるを得ない。
例えば、規格項目の一つを測定する装置が老朽化し、代替機器が販売中止となっている場合など、代わりの装置でデーターを採る事になるが、今まででのデーターとの検証や、アウトプットの様式がチャート添付などとの取り決めをしていれば、これに合わせる事も出来なくなり、購入側からは無理難題が押し付けられる可能性がある。

このために日経記事にもある通り、老朽化設備の更新を急ぐ必要があるが、費用面も大きな要因であり、人的な面の方がもっと深刻なのかもしれない。
定年退職者の発生等で、規格値が品質を担保する項目として採用した経緯が引き継がれなくなり、残された書類の中で記載されていればいいが、この測定手順を入れ込んだ『原理原則』が後継者では判断できず、やむにやまれず、『測定方法逸脱』や『データー追記』『改竄』といった取り決めからの勝手な判断をしたのであれば、歴史を残した我々の世代も責任はあるのではないか。

『カイゼン』という名の下で測定法を工夫し、出来るだけ『顧客の要求特性』に合わせるような項目を決めた事が、今『プロダクトアウト』という事で、生産性、採算性を求める生産現場で足かせになり、今回のような不幸な事態を引き起こしていないか。このあたり、『偽証の内容』が公開されることで、先輩たちが反省し、解析を受けたい所である。

ここから先は、今回の『品質偽装問題』。日経の記事では『品質不正』と書かれているが、色々の方から頂いたメールや、小生が化学会社で関わった事など含め、品質での『よもやま話』をまとめてみた。
現状と大きく異なっていたり、少しノウハウに係わる事もあるかもしれず、リタイア後の記憶などで内容に誤りもあるかもしれないので、時効・賞味期限切れの情報として取り扱いをお願いした所であるが・・

①品質保証の難しさ
 ・一般工業製品
   JIS等で決められた規格項目の管理だけで良かった

・『機能商品』への移行期
   工業製品としての原料供給から高機能付与商品
  顧客からのニーズ(要望) → 研究開発 → 特性付与
  『特性の数値化』⇒ 機能を数値化 ⇒ 『品質保証』
  開発段階での測定項目が規格値として入ってしまった悪い例
例)『ゲルタイム』
  熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂等)の硬化特性測る方法の一つ
 (当初の試験方法は、たこ焼器の様な、少し凹んだ場所がある温度コント
  ロールされた鉄板へ、樹脂と硬化剤を配合した物を投入し、割りばしの
  先にゼムクリップを伸ばしたものを取り付け、この凹の中をかき回し、
  固まっていく状態と固まる時間を測定。これを『ゲルタイム』とした)
  その後、熱板プレートの温度管理の厳格化や攪拌を機械化し、トルク
  を計測する事で最終固化時間を自動計測できる機器が開発され、今で
  も一部の製品検査では規格値として使用中?)

 ・汎用原料から精密化学品へ
  汎用原料を機能商品等の原料として展開 ⇒ 不純物等の管理が必須
  ガスクロ分析 → LC分析
  測定機器の故障、老朽化 → 代替機無し
  規格締結時の機器での分析ができなくなる
 例)GC-5A、GC-7A
  ガスクロの元祖である島津の代表品番であるが、生産中止となり、
  故障時の部品供給も停止となったと聞いている。
  何台か保有していた検査部門では、故障した機器の部品取りで残され
  た機器の維持を行っている所もあるが、いよいよの感がある。
  この中で、これらの機器で最終製品の検査を行い、不純物の有無を
  数値で検査項目として提示している場合はまだしも、顧客との間でチ
  ャート添付という約束をしている場合、機器の故障やプリンタの不作
  動となると保証不可となってしまう。
  過去の当該製品販売の中で、顧客側で何らかの品質問題が発生し、
  この原因究明として何ロット化のGCチャート要請で提示した事が発端
  でそのまま踏襲している場合など、このような問題が起こってしまう。
  分析機器を最新の機器へ切り替えると、当然精度は向上し、今までの
  様なチャートではなく、余分な不純物が見えたりする場合もあり、
  再度の協議が必要となるが、購買側からは、今までを踏襲してほしい
  との要望も出て来る可能性はあり、過去営業的に困ったこともある。

②加工製品での検査は人手と時間を要する
  製品の品質保証をする場合、出来上がった原材料を最終に近い製品に
  加工して、その特性から品質を保証する場合がある。
  このため、時間と人力に加え、評価する人の能力も重要かと思われる。 
 例)染料
 現在は吸光度などの代替特性で判断される場合が多いが、過去は基準
  の布に検査試験室で染色し、その染められた性能から良否が決定され
  るため、製造後、出荷されるまでにはかなりの日数を要していた。
 例)プラスチック
  ポリエチレン等も、出来上がったペレットを再溶融し、フィルムにす
  る装置や厚い板などに加工され、フィルムでの特性や引張強度、伸び
  特性などを求める試験を行っており、昨年もこの検査で問題が発覚し
  ている。
  この検査は上記の染料の試験もそうであるが、人が加工する段階と
  データーを採る工程が必要であり、検査として人力を要するため、最
  近では代表特性での検査を自動で行う事も一部進められているが、ま
  だJIS規格等の規格ではフィルム検査なども残されており、手間暇が
  かかる検査となっている。
 例)金属製品(丸棒など)
  少し門外漢なので知りえない所があるが、規格項目を見ていると、
  引張や曲げ強さなどが形状の規格に加えられており、この部分は、切
  り出して試験器にかけてのテストとなっているのであろう。

③組成分析
  規格項目に組成を入れている場合、単純な分析で検査ができればいい
  が、抽出や、タブレット化、フィルム化などでの分析が伴う場合は、
  前項のような人手がかかり、品質保証部門としては負担が多くなる。
 例)錠剤化分析
  最近は少なくなっていると聞いているが、IR分析などで粉などの製品
  分析する場合は、タブレットにして装置にかける必要があり、この準
  備作業が前段階に発生する。
  溶液に溶解しフィルムに塗布し、乾燥後測定度も同様の手間を要する。

④測定する環境
  スバルの排ガス測定での湿度コントロールの逸脱が指摘されているが、
  装置が『ないない』下での工夫が仇となっており、この環境の整備も
  難しい所である。
  高機能化商品になるほど、規格項目を測定する環境は厳しくなり、電
  子材関係のレジストなどは、ユーザーと同等レベルでのクリーンルー
  ムでの測定が要求され、人とともにコストも相当高い物になってくる。

まだまだ書き留めたい事はあるが、時間なのでこれで終わりたい。

まとめになるが、『品質保証』はどこを向いてするべきかという事が、究極の結論となりそうである。
『ユーザー指向』であれば、人的にもコスト的にもいくらあっても足りず、逆に『社内利益』確保の内向きであれば、やれる範囲でという事であるが、物を売るためには、今回の様な『データーを書きかえる』問題が出て来る。
『顧客満足度』のためだけの見掛けの品質保証のために『データー捏造・偽証』が行われたのか、これは無いと思うが、自身の事なかれ主義、さらには、会社、上司に対しての忖度であればなおさら問題の論点が異なってくる。

いずれにしても、時間がない中で色々と判断が迫られての結果と思うが、会社を去った先輩たちの助言が必要な時は聞いてほしいとも思える。
でも少し古臭い議論を出す可能性もあり、やはり今いるメンバーで『なぜなぜ問答』を十分に行い、原理原則に沿った結論を自ら引き出してほしい限りだ。

あわせて今回の問題については、各社での問題発生原因につき、第三者の委員会での検討結果を公表して頂き、色々な角度から何が起こったのかを知りたい所である。

 

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