熱い。熱いんだよ。まだマイケル・ムーアは腐っちゃいなかった。監督の思いは十分に伝わってくるほど、感動させられたのは『ボウリング・フォー・コロンバイン』以来だと思う。『華氏911』(2004)でのブッシュのアホ面を楽しませてくれた作風ともまた違い、最終的には銃社会批判、反戦、人種差別、格差社会へと鋭い切れ味で彼の思いを展開していった。特にラストの女子高生エマ・ゴンザレスさんのスピーチには泣かされた。何度かYouTubeで見たことあるにもかかわらず。
てっきりトランプの汚点に対して終始するかと思いきや、対抗馬となった民主党クリントンの失態についても言及し、オバマだって無人機攻撃などで悲惨な戦争を繰り返していたと主張するこの作品。民主党のこの二人を批判するところがムーアの凄いところだ。所詮は政治は金で動いている。貧困層には何のメリットも生まれやしない。共和党も民主党も変わりはないのだ。ただ、サンダースが民主党候補となっていたならば・・・と、選挙制度への不満もぶちまける。
映画の大半を占めるのがムーア監督の故郷でもあるミシガン州フリントの水災害のこと。2011年からミシガン州知事を務めるスナイダーは豊富な水がめでもあるヒューロン湖から引いていた水道水を経費削減のため近くのフリント川に変更した。そのため水道水は濁り、腐食性が強く、鉛の含有量が増えたため、健康被害が増大したのだ。鉛は排泄されず、体内に蓄積し続け、親子3代に渡っても鉛が体内にとどまるほど毒性が強い。その問題を真摯に取り上げているのだ。黒人が多い町。黒人ならば鉛水を飲ませておけばいいなどとレイシストのスナイダーは考えているらしい。それをトランプがいい例だとして彼を支援する・・・
自由の国アメリカ。どこが自由なんだろうと思わせるほどの映像、突撃取材。先進国でありながら国民皆保険制度はないのだ。金持ちは生き残り、貧乏人は死んでいく。中間層はいなくなり、選挙で無投票の人が1億人もいる国、アメリカ。それでも、教師たちは立ち上がりストライキをして、高校生たちは政治家に直接ズバズバ質問する。そして大規模なデモ行進だって出来る自由の国、アメリカ。そこが自由なんだよなぁ。
鑑賞中はずっと日本のことを考えてました。似てる。似てるんだよ。しかもアベちゃんはトランプのポチ犬。朝鮮問題ではさらにトランプに置いてけぼりにされて、必死になって敵国を探し続けている有様。トランプはヒトラーに似ていると映画は結論づけるが、日本がそのヒトラーの片腕にならないよう祈るばかりだ。ただ、祈ってばかりじゃダメなんですよね。ムーアは立ち上がることが重要だと訴えてましたから、せめて映画レビューだけでも批判の精神を忘れないようにしなきゃ・・・
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