インタビューとコーチングに代表される、
二つの「聞く」の違いについて。
前回は、
「聞き手のした質問が、話し手に機能したかどうか
コーチングではわからない」
と書きました。
もしかすると、
「コーチング」っていい加減なんじゃないの?
と思われた方もいるかもしれません。
もし、そうした誤解を与えてしまっていたのなら、
ごめんなさい。
そういうつもりではありません。
ただ、コーチングについて一つ確実に言えるのは、
コーチングは、話し手(クライアント)ありき、
ということです。
こうしたい、そのためにコーチをつけよう、
コーチを使ってみよう、
そう話し手が思わないことには、
コーチングは意味がない、ということなのです。
コーチをつければ、自動的に何かが達成できる、
そんなことはない、ということ。
コーチは、一人キャッチボールをするときの
壁のようなもの。
投げた球の力に応じて、バウンドの仕方も決まる。
珠を投げた力が弱ければ、
弱い珠でしか返ってこない。
そう思います。
ですから、同じコーチをつけていても、
欲しい結果を120%得る人もいれば、
60%しか得られないという人もいるのだと思います。
そしてもちろん、60%の人が、
ほかのコーチに変わったら、
80%の結果に、ということもあるでしょう。
人と人とのことですから、相性、得意・不得意
そんなものは当然あります。
それにしても、コーチではなく
クライアントの思いありき、
そこは変わらないと思います。
そんなことを前提とした上で、
コーチングとインタビューとの違いについて、
もう一点、考えてみました。
その違いは、
話を聴くときにどこにフォーカスしているのか、
というものです。
コーチングでは、コーチは
「事柄」ではなく「人」(話し手)にフォーカスしよう
と言われます。
これは、コーチが、
話し手と一緒に「問題解決」をしようとしないため、
というのが大きな理由だと思います。
なぜなら、その時の問題は、
それで解決できたとしても、
話し手本人が、どうやって解決するのかを会得しない限り、
次に同じような問題に直面した時に、
一人では解決することができないかもしれないからです。
これでは、話し手がコーチに依存する関係が生まれます。
コーチングは、問題を解決する場ではなく、
その人が問題を解決できるようになるのを手伝う場。
これは、たとえばこんなことです。
話し手Mさんが、
自身の職場で起こった出来事について話すとします。
コーチングの場合には、コーチはその出来事について、
自分が事の次第をわかるために、
いつ、どこで、誰が、どうしたのか、
といった質問は基本的にはしないでしょう。
その事自体は、話し手本人はよくわかっているから、
改めて話してもらっても
オートクラインが期待できず、
話し手の時間を無駄にしてしまうかもしれません。
もちろん、話し手が話したいことを話すのを聞くので、
話し手が事の次第を話したければ、それはOK。
好きに話してもらいます。
コーチングの場合、重要なのは、
事柄がどうか、ということではなく、
その事柄を、話し手本人がどうとらえているのか、
ということです。
100人いたら、99人が「大変だ」というふうにとらえることでも、
話し手がそう思っていなくて、
それ自体が話し手にとって問題となっていなければ、
それは問題ではないわけです。
ですから、コーチングで
「それはいつからですか?」
「誰が、それをしたのですか?」
といった質問をする場合は、
そうしたことを聞くことで、
話し手に見えていない何かがわかる(お互いに)かもしれない、
そんな場合なのだと思います。
話し手との対話の中で、コーチが意識を向けようとするのは、
次のようなことです。
・話し手は、今、どんな感情で話しているのだろうか?
・本当は、どうしたいと望んでいるのだろうか?
・そう思わせる根っこにあるのは、何なのだろうか?
・・・・・
感情、欲求、思い込み、話していないことは何か……
コーチはそんなことを聞き取ろうとするのです。
ベテランのコーチであれば、それは、
「聞き取ろう」としなくても、「聞こえてくる」と言います。
では、インタビュアーとして、
このMさんに話を聞くとしたらどうでしょうか?
この場合、そのインタビューが
何を目的としているものかによって、
インタビュアーが意識するものも違ってくるでしょう。
Mさんが、何かの目撃者で、
Mさんの見た事実が重要なのであれば、
「いつ、どこで、誰が、何をした」ということが
とても大事になります。
この場合は、聞き手は「事実」という「事柄」に
フォーカスすることになるでしょう。
また、Mさんが『プロジェクトX』のような番組の
取材を受けて、
これまでにやってきたことについて聞かれるという場合は、
Mさんがやってきた「事柄」の起承転結は
みんなが知りたいことだし、
その時々で、Mさんが、あるいは仲間が、
何を考え何を悩み、どう決断し選択してきたのか、
といった「人」的な部分も、
みんなが知りたいことでしょう。
この場合は、聞き手は、「事柄」も「人」の部分も
聞いていくことになります。
これがさらに、Mさんそのものを取り上げた企画であれば、
Mさんという「人」にフォーカスする部分は
さらに大きくなるでしょう。
いずれにしろ、インタビューの場合は、
Mさんという人をまったく知らないかもしれない
読者や視聴者が後ろにいることが前提であり、
その人たちに伝えることが大切な目的となります。
そういう前提の上にある限り、
Mさんという「人」にフォーカスする場合にも、
Mさんが何をする人で、これまでどんなことをしてきたか、
今回の取材のテーマに関わるポイントの出来事は何か、
といった「事柄」に触れることは、必須となります。
インタビューは、
それを見たり聞いたりしている第三者にも、
話し手の気持ちなども含めて、
事の次第がよくわかると思います。
けれども、コーチングでは、
第三者には、話し手の気持ちなどはわかるかもしれませんが
事の次第はさっぱりわからないかもしれません。
聞き手のコーチにもわからないのですから、
当然なのですが。
こうして見てくると、
インタビュアーは、「事柄」にも「人」にもフォーカス。
コーチは、「事柄」よりも「人」にフォーカス。
ということになるのかと思います。
ここで、「人」の部分を聞くという「共通点」が出てきたところで、
次回からは共通点について書いてみたいと思います。
やっと共通点について話せる~ \(*^▽^*)/
(もう少し、おつき合いください)