読書とかいろいろ日記

読書日記を中心に、日々のあれこれを綴ります。

第446号 『ピエタ』

2011年05月15日 | メルマガお奨め本
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週刊 お奨め本
2011年5月15日発行 第446号
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『ピエタ』 大島真寿美
¥1,500+税 ポプラ社 2011/2/18発行
ISBN978-4-591-12267-9
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ほんとうに、ほんとうに、わたしたちは、幸せな捨て子だった。


こんばんは。
今週のオススメ本は大島真寿美の『ピエタ』です。
大島真寿美は2010年2月21日のメルマガ第382号で『ほどけるとける』『戦友の恋』をご紹介したことがありましたね。
現代日本のどこにでもいそうな女の子や女性を、自然な会話で自然に描き出してやさしく表した小説でした。


うってかわって、『ピエタ』は18世紀ヴェネツィアが舞台。
うつくしい物語です。
しずかな物語です。


孤児たちを養育するピエタ慈善院。
そこで育ったエミーリアとアンナ・マリーアは、双子のように仲良しだった。
ピエタには、アントニオ・ヴィヴァルディが音楽教師を務める<合奏・合唱の娘たち>がある。
神に与えられた才能は大切にしなければならないし、磨かなければならないし、神のためにピエタのために使わなければならない。


幼いエミーリアとアンナ・マリーアが、ヴィヴァルディ先生から和声の楽しさを教わるシーンがある。
ふんふんふんふんふん、と即興のメロディを口ずさむヴィヴァルディ先生。うひっと笑って、なかよしの曲、と。呼吸するみたいに、吐き出すときには音楽になっている人だった。
三人で合わせる音の楽しさ。
和声のうつくしさは、楽しさあってのものなのだと、エミーリアは思う。


そんな風に、音楽がいつもそこにある。



エミーリアはその後事務方に進み、縁の下の力持ちとなってピエタを支えることになる。

ピエタでともに音楽を学んだ、貴族の娘、ヴェロニカ。
彼女がヴィヴァルディ先生からもらった楽譜。その裏に詩を書きつけた。
あの楽譜を見つけてくれたら、今までよりもずっと大口の寄付をするわ。
どこに行ったかわからないその楽譜を探して、エミーリアはヴェネツィアの街を歩く。


同じようにヴェネツィアを探し歩いたことがあった。
遠い昔。
自分を捨てた母を求めて。父を求めて。
探索行を手伝ってくれた仮面のあの人。
ついにお顔も知らないままの、お名前も知らないままの。

ピエタを守るためにはじめた楽譜探し。
それはヴィヴァルディ先生を知る旅となった。
過去を探す旅となった。


冬、カーニバルが始まると、誰もが仮面をつけるヴェネツィア。
芸術の街、文化の街、ヴェネツィア。
音楽の都。




むすめたち、よりよく生きよ。
むすめたち、よりよく生きよ。

<l’estro armonico>  よろこびはここにある。



美しい調べが流れる。
物語はハーモニーとともに、高く低く、奏でられる。
生きてゆくのです、わたしたちは。


大島真寿美の、ひとつの到達点ではないかと思います。
うつくしい物語です。



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ピエタ
大島真寿美
ポプラ社

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