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2014年5月25日発行 第594号
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『一神教と国家 イスラーム、キリスト教、ユダヤ教』 内田樹、中田考
¥760+税 集英社(集英社新書) 2014/2/19発行
ISBN978-4-08-720725-5
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日本人の多くは一神教についての知識が不足しているのではないだろうか。
と、自分を基準にして、思います。
実際のところ、発行人ほど無知なヤツは少なくて、みんなきちんと分かってるのかもしんないけど。
発行人は宗教関係に弱い自覚があるので、ときどき本書のような本を読みたくなります。そして「なるほど」と思っては、またしばらくすると「わからん……」となる。その繰り返し(笑)。
そんな流れの中で読んだんですが、おもしろかったのでおススメにしてみました。
内田樹と中田考の対談本です。
イスラーム教徒でありイスラーム学者である中田は、カリフ制を訴えています。
カリフ制とは、ものすごく乱暴に端折って言っちゃえば、カリフという首長のもと、イスラーム聖法に基づいてイスラーム圏をひとつにまとめちゃおうよ、ということです。
イスラーム教徒は、どこの国の人でもアラビア語で祈り、アラビア語の聖典を読みます。唯一絶対の聖典は他言語に訳せないからです。
共通言語を持ち、同じ文化があり、価値観を共有しているのだから、もともとバラバラになっているのがおかしい。
にもかかわらずイスラーム諸国が連帯していないのは、まず西欧の価値観のもとで分割され、一部富裕層が既得権益を手放すまいと再統合を阻んでいるから。
どうしてこんなことになってしまったのか。
宗教と国家の関係性について、国民国家について、中田考が内田に説明します。
いやー、おもしろかったわー。
宗教と国家についてもおもしろかったし、その前のそもそもイスラームとは、ってとこからおもしろかった。知らなかったことがいっぱい。
イスラームについて、勉強になりました。
「目には目を、歯には歯を」という言葉、単純な復讐法ではない。
ユダヤ教では、目を潰されたら目を潰さなければならない。
キリスト教は、「汝の敵を許せ」。許さなければならない。
イスラム教は、許すのが一番いいけど、同じことをやり返してもいい。柔軟性が高い。そしてそのとき、やられた以上の過剰な復讐はダメ。制限つき。
「目には目を」って、「目に対しては目だけにしとけよ」って意味だったのか。
寛容っていうか、柔軟性高いっていうか。
あと、強欲と吝嗇は違う、ってのが興味深かった。
強欲はかまわないけど、吝嗇は末代までの恥。
主題の国民国家についてももちろんおもしろかった。
> 中田:国家は主権というものを持っていて、国民の生殺与奪の権を握っていて、国民は国家に死ねと言われたら死ななければいけない。そういう奇妙なものが国民国家なんです。(122頁)
> 内田:グローバリズムの世界は、国民国家が解体して、最終的には自己利益をひたすら追求できる「強い個体」しか生き残れないわけですけれど、中田先生の考えるカリフ制イスラーム共同体はむしろ「弱い個体」をどうやって支援するか、どうやって扶養するかということが最優先課題である一種のゲマインシャフトですよね。(227頁)
イスラーム、いいじゃないか! という気分になっちゃいますよ(爆)。
読みどころがいっぱいです。
カリフ制は現行制度の否定だから、下手なところで口にすると本気で命が危険なんだそうです。日本はイスラームに中立なので、大丈夫。
日本がいつまでも中立でありますように……。
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一神教と国家 イスラーム、キリスト教、ユダヤ教 (集英社新書) |
内田 樹,中田 考 | |
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