読書とかいろいろ日記

読書日記を中心に、日々のあれこれを綴ります。

第412号 『やっちゃれ、やっちゃれ!』

2010年09月19日 | メルマガお奨め本
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週刊 お奨め本
2010年9月19日発行 第412号
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『やっちゃれ、やっちゃれ!』 坂東眞砂子
¥1,648+税 文藝春秋 2010/7/15発行
ISBN978-4-16-329440-7
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高知県が独立した!

坂東眞砂子が高知新聞に連載していた小説の単行本化です。
地方の独立採算制が叫ばれますが、それを究極まで突き詰めるとこうなるという。


> キューバもフィジーもトンガも、みんな小さな島国で独立して頑張っている。
> 高地だって、やれるかもしれない。
> やっちゃれ、やっちゃれ。(31頁)


高知県独立を成し遂げた、女性知事、浜口理絵子。元は地球環境学者。
今、何とかしないと高知の人間は消滅する。土佐に生まれ育った自覚と誇りを持った者たちは。森林や珊瑚礁のように。
志を同じくする仲間たちとともに、共和国を住みよい国にするため邁進する。
けれど裏切り者はどこにでもいる。そしてテロ。


新聞連載小説なだけに、多彩な読者を想定してか、登場人物も各層取り揃えてございます。

今まで選挙の投票もしたことのない今どきの若者、宅配便のドライバーの奥宮惇也。趣味はサーフィン。
四国山脈まっただ中。年寄りしか残っていない寂れた山村でひとり暮らす房江。
自転車で駆けずり回って取材する、高知新聞の記者、枝川ゆかり。
高知を基盤とする衆議院議員、百々智彦。「この女、高知を潰す気かや……」
外人部隊の前歴を持つ悠斗。
主婦、生駒景子。独立騒ぎに浮かれ、国名公募に頭をひねり、物価高に嘆き、夫の実家の農業から逃げ出す。


独立にまつわるディティールいろいろも楽しい。
電力の六割を県外に依存してきたため、独立後はエネルギー不足で、屋台ではろうそくで酒を飲む、とか。
新貨幣の単位は両で、一万両札から一両札まで、鉱物資源は貴重なので硬貨はなし、全部紙幣、とか。もちろん坂本龍馬ははずせません。国民からつるし上げ食っちゃう。
税関の整備がころりと忘れられていた、とか(笑)。
経費削減のために憲法発布はよさこい祭りのついでにやっちゃう、とか。

日本政府は、外交の話し合いには一切応じてくれない。そのくせ医師や役人といった国家公務員は早々に引き上げられ、年金や身体障害者や母子家庭への補助金まで止められそうになった、とか。
なのに自衛隊は引き上げない、とか。

うわー、日本国、やりそー。

そもそも、日本国は、国の財政見直しのために地方に回す資金を削減した。国家公務員を整理して国の財政を引き締めるのではなく、政府省庁に勤める者たちの権利と利権は温存して、地方切り捨てによって国の財政再建を果たそうとする。
「国をあてにするのが間違いなんよね」


と、いうことで、独立です。


良いことばかりじゃないわけで、主婦・景子の切れっぷりがリアルで、きっとこれがいちばん普通の反応な気がする。生活は大変になるわよねえ。
それでも、小説のなかとはいえ高知独立を羨ましいと感じる読者がここにいます。私です。


やっちゃれ、やっちゃれ!



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やっちゃれ、やっちゃれ!―独立・土佐黒潮共和国
坂東 眞砂子
文藝春秋

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