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メルマガ お奨め本
2014年6月15日発行 第595号
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『枯れるように死にたい』 田中奈保美
¥1,500+税 新潮社 2014/4/28発行
ISBN978-4-10-139251-6
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なんだか縁起でもないタイトルの本だこと。
と、お思いの方がいらしたらすみません。
本書は小説ではなく、ノンフィクションです。
老衰による自然死を求めることが、今は難しい時代だってこと。難しいけど、それが「自然」だよって主張です。
> 「ねえ、きみ、おかしいと思わない。病院は病気を治すところであって、亡くなった年寄りを送るところじゃないでしょ」(1頁)
病気ではなく老衰で亡くなっていくお年寄りを、住み慣れた自宅や施設で看取らずに、病院へ送るのはおかしい。
著者の夫、佐藤順は介護老人保健施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)で働くようになって、そう言った。言われた著者は、「えっ、人が病院で死ぬというのは当たり前のことでしょう?」と思ったという。……うん、わりとふつうの反応だと思う。
でも、なるほどたしかに「病院は病気を治すところ」。だよね。
利用者の看取りは一切やらない。そう決めている老人施設は多いのだという。
つまり、危なくなると病院へ送る。ときには亡くなってから病院へ搬送する事例もあるとか。本来なら遺体を霊柩車以外の車に乗せるのは違法なんですが。
そして死亡前に病院に着けば、そりゃ病院は治療します。
それが病院の役目だから、できる限りの手を尽くしてくれます。
でも、そもそも老衰は病気じゃない。
食べることも飲むこともできなくなった肉親に、なにも手を施さないで見守るというのは、まるで「見殺し」にしているようで、良心が痛む。
なにしろ私たちは人の臨終シーンといえば、病室でいろんな管に繋がれていて、医者と看護師が手を尽くした末に、「ご臨終です」と告げる、そんな場面がインプリンティングされてしまっているから。
でも、死期を迎えた体には、食べない飲まないのは自然な状態で、静かに亡くなることができるのだという。
苦しみもなく。
枯れたように。
食事も水分も摂れなくなった体に点滴で水分を補給する。体に水分を吸収する力がなければ、むくむ。すると利尿剤を入れる。無理に水分を入れれば痰も出る。出れば痰の吸引も必要になる。
……でも、水分補給で寿命は延びないし、苦しめるだけなのかもしれないらしい。
「かもしれない」っていうのは、その頃には意思表示ができない状態だし、点滴を止めた状態と比較させてアンケートなんてわけにはもっといかないし、確認ができないからなんでしょうね。
でも、点滴をすると呼吸が苦しそうになるんだそうです。そもそも痩せた体に針を刺すってだけで痛いですしね。
延命治療は、救命のためというより、「死ねない」ようにするためのもの?
たとえば一度「胃ろう」を設けてしまうと、外すのは殺人行為といわれてしまったら外すに外せない。寝たきりで、話すこともなく、ただただ眠り続ける。もしかしたら何十年も。
そんな状態を、ほんとうに本人が望んでいるのだろうか。
ちょうど今朝の新聞(発行人が執っているのは中日新聞)に、「最期をどう迎えますか」という特集記事が載ってました。
「死」は誰にでも訪れるのだから、特別なものとして病院に隔離するのではなく、自宅で家族の中で迎えたほうが、子どもの意識にもよい影響を与えるのではないか。まあ、少なくとも、ゲームのように「死んでも生き返る」などと考える中学生よりは、健全なのではないかという気はしますね。
現実的には、団塊世代の高齢化で、全員分の病院ベッドを死に場所として用意するのは難しいから、厚生労働省も自宅での看取りを勧めているとか。……知らんかった。
自宅での看取りが一番いい! と決めつけているわけではなくて、本人と家族が希望するなら、最大限の延命治療も行うべきだと思います。
それと同時に、本人が希望するなら延命治療なしに自然死を選択する自由もあるべきだと思います。
本書巻末に「尊厳死の宣言書」文面が載ってます。
とりあえず、これに署名しておこうかな、と思ってます。
さすがに老衰死はまだまだ先でしょうけど(笑)。
いやー、それにしても、死期が迫って飲み食いができなくなったら、苦しまずに餓死できるってのはびっくりでした。
死ぬときは苦しまずに死にたいよねー。
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枯れるように死にたい: 「老衰死」ができないわけ (新潮文庫) | |
田中 奈保美 | |
新潮社 |
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