とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
量子テレポーテーションや超弦理論の理解を目指して勉強を続けています!

とね日記賞の発表!(2014年): 物理学賞、数学賞、他

2014年12月10日 00時00分15秒 | とね日記賞

毎年12月10日、スウェーデンのストックホルムでアルフレッド・ノーベルの命日に行われるノーベル賞の授賞式の日程にあわせて、「とね日記賞」を発表している。今年で5回目だ。

ノーベル賞を僕がもらう見込みはないので、みずから賞を作って「あげる側」になってしまえ!という思いつきである。

「とね日記賞」はその年に僕が読んだ物理学書、数学書の中から自分のためになった本、この分野を勉強している学生や社会人にお勧めする本を物理学、数学など各分野に分けてそれぞれ1~2冊発表する。あとテレビドラマ賞や贈り物にふさわしい本としてクリスマス賞というのも設けている。

たとえ名著と言われる本であっても僕がその価値を理解できなければ受賞できない。昨年以前に読んだ本は自動的に選考対象から外されるし、どんなに良書であっても僕が読んでいなければ対象外。今のところ洋書も対象外。何より僕の学習進度や理解度や好みに影響される。

メダルも賞金も授賞式も晩餐会も舞踏会もないから、ありがたくも何ともなく、主観に満ちたアンフェアな賞だが、それでよいのだ。

- とね日記物理学賞
 物理学の教科書、専門書から選考。

- とね日記数学賞
 数学の教科書、専門書から選考。

- とね日記天文学賞
 天文学、天体物理学の教科書、専門書から選考。

- とね日記教養書賞
 一般向け書籍から分野別に選考。

- とね日記文学賞
 ジャンルを問わない小説、文学書から選考。

- とね日記テレビドラマ賞
 テレビドラマの中からいちばんよかったものを選考。

- とね日記クリスマス賞
 クリスマスプレゼントにふさわしい本を選考。


この1年で読んだ本は25冊で、次のような本を読んだ。通算239冊~263冊目。(参考:「200冊の理数系書籍を読んで得られたこと」)

- 「エレガントな宇宙」をはじめとするブライアン・グリーン博士の科学教養書5冊
- 中原幹夫先生の「理論物理学とトポロジー」のI巻とII巻
- 代数学I 群と環:桂利行
- 素粒子論はなぜわかりにくいのか:吉田伸夫
- 演習 群・環・体入門:新妻弘
- 時間とは何か、空間とは何か: S.マジッド、A.コンヌ、R.ペンローズ他
- ファインマン博士の人物伝2冊
- 数学の教科書が言ったこと、言わなかったこと:南みや子
- 代数系入門: 松坂和夫
- 宇宙が始まる前には何があったのか?: ローレンス・クラウス
- ワインバーグの宇宙論(上)(下)
- 宇宙創成はじめの3分間 (ちくま学芸文庫):S. ワインバーグ
- 数学とは何か(原書第2版):R.クーラント、H.ロビンズ、I.スチュアート
- 無限をつかむ: イアン・スチュアートの数学物語
- 数学とは何か―アティヤ 科学・数学論集
- 素数夜曲―女王陛下のLISP:吉田武
- 分子運動30講(物理学30講シリーズ):戸田盛和
- 物性物理30講(物理学30講シリーズ):戸田盛和


それでは発表しよう。2014年の「とね日記賞」は次のとおりだ。(書籍名と画像は本の購入ページにリンクさせておいた。)


* 物理学賞

理論物理学のための幾何学とトポロジー I:中原幹夫」(原書第2版
理論物理学のための幾何学とトポロジー II:中原幹夫

 

授賞理由: 最先端の理論物理学と現代数学が密接に結びついていることをいちばん実感できる本だ。特に抽象的な現代幾何学の視点で解説しているのが特徴。現代数学にはとてつもない広がりがあり、その世界に入り込むと、どう進んでよいか途方に暮れてしまうことが多い。理論物理学の本筋をたどりながら、その数理的な本質を理解するために必要な現代数学の迷宮のガイドマップといえよう。ただし今の僕には難しすぎて「高嶺の花」であった。いずれまた挑戦したい。

厳密にいえば数学書に分類されるが、物理学を主軸に置いた内容なので物理学賞を授賞させていただいた。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

理論物理学のための幾何学とトポロジー I:中原幹夫
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ef0b2fcb7c87aabfcd68bbe2a567840e

理論物理学のための幾何学とトポロジー II:中原幹夫
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/9fd93716929786316ee234a66ec4d32b


* 数学賞

素数夜曲―女王陛下のLISP:吉田武



授賞理由: 今年は僕にとって整数論入門の年になった。初等整数論へのとてもユニークな入門書である。著者は中学、高校生あたりの読者を期待しているが、読んでみたところ明らかに理数系の大学生向きだと思った。だから僕としてはこれを「専門書」として扱いたい。870ページという分厚さから尻込みしてしまう方が多いのだろうが、すぐ熱中できるように工夫されているので読み始めるとその分厚さは気にならなくなる。本書の前半は数学としての理論編、後半はSchemeという関数型のプログラミング言語を学びながら理論編で学んだことをパソコン上で実験をして検証を行う。本書を読めば整数論がなぜ数学の女王と言われるのか、なぜたくさんの大数学者をとりこにしたのか理解できるようになるだろう。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

素数夜曲―女王陛下のLISP:吉田武:(前半の紹介)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3740cd7fde863f2aebd195e326488ff6

素数夜曲―女王陛下のLISP:吉田武:(後半の紹介)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0b151c73a689f71d6debf12567170663


* 天文学賞

ワインバーグの宇宙論(上): ビッグバン宇宙の進化
ワインバーグの宇宙論(下): ゆらぎの形成と進化

 

授賞理由: 超一流の素粒子物理学者による最新の宇宙物理学の教科書である。著者のワインバーグ博士がご自身の理解を確認するためにお書きになった本だけあって、学部レベルの学生では全く歯が立たないほど難解な本だ。博士の物理的な経験と超絶技巧が駆使された数式導出を理解するのは諦めたとしても本書を読む価値はじゅうぶんにある。現在ではスーパーコンピュータで数値計算するのが主流な天文学の世界で、あえて数式だけ使った解析的手法で宇宙の始まりやその進化の過程を解明しようとする姿勢に感動すること間違いなし。前提知識は「場の量子論」。本書の著者がお書きになった「ワインバーグの場の量子論」の教科書で学んでおくとよい。また「宇宙創成はじめの3分間 (ちくま学芸文庫):S. ワインバーグ」という科学教養書も前もって読んでおくべきだろう。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

ワインバーグの宇宙論(上)ビッグバン宇宙の進化
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/bd3d49fe1e13bcdd97116b33e8c736bb

ワインバーグの宇宙論(下): ゆらぎの形成と進化
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/13c2b81456935c281b4c57a014cd9d60


* 教養書賞(物理学部門)

素粒子論はなぜわかりにくいのか:吉田伸夫



授賞理由: 数式を敬遠する一般の科学ファンが理解できるレベルの本は、せいぜい量子力学まで、そして素粒子物理学については「粒子としての振る舞い」から書かれた教養書までである。けれども素粒子の本質的な姿は量子力学が示すように粒子性と波動性の両方を兼ね備えたものだ。波動としての素粒子の姿は「場の量子論」という分野で説明される事柄なのだが一般の読者にはとてもわかりにくい。本書は素粒子物理学の教養書のこのような片手落ちの状況を少しでも改善すべく著者が工夫をこらしてお書きになった本なのだ。科学教養書の中では難しいほうの部類だが、ぜひ多くの方に読んでほしい。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

素粒子論はなぜわかりにくいのか:吉田伸夫
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/bcbaebb9f2a77b1bd63e3928f6bd6e9f

そして今年の教養書賞(物理学部門)はもうひとつ授賞させていただこう。

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉」(Kindle版
ご冗談でしょう、ファインマンさん〈下〉」(Kindle版
困ります、ファインマンさん

  

授賞理由: アインシュタインが20世紀でいちばん天才の物理学者だとすると、ファインマンは20世紀で(そして今も)いちばん人気のある物理学者だ。昨年12月には彼の講義をまとめた有名な教科書がありがたいことに全巻まるごと無料でネット公開された。(参考:「ファインマン物理学(英語版)が全巻ネット公開されました。」)科学ファンの枠を超えて全世界の人からファインマン先生が、なぜこれほどまで愛されて続けているかを知るのにうってつけの本だ。とにかく楽しい本である。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

ファインマン先生の自伝本と講演本
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/9bf47cf51085c74caf34a11068a17285


* 教養書賞(数学部門)

無限をつかむ: イアン・スチュアートの数学物語



授賞理由: 大学以降の数学はほとんどの人にとって無縁だ。高校までの数学は一般の人にもイメージできる世界だが、その先の数学はどのような世界なのか、高度に発展した数学が、現実社会にどのように役立っているのか。数学の歴史をたどりながらどのような分野の数学が生まれたのか解説している良書だ。同じテーマの本はいくつもあるが、わかりやすさ、現代的なセンスのよさ、各分野がバランスよくカバーされていることなどを総合して、本書がいちばん優れていると思った。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

無限をつかむ: イアン・スチュアートの数学物語
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/2307174ab3fd537695b1287f059f2304


* 教養書賞(天文学部門)

宇宙が始まる前には何があったのか?:ローレンス・クラウス」(Kindle版)(文庫版



授賞賞理由: 今年は素粒子物理学や超弦理論などよりも宇宙の起源への挑戦のほうが目立った年になった。宇宙の起源については3月に「原始重力波を観測できたかも?」というニュースで世界中が沸き立ち、日本では6月から7月にかけてNHKでローレンス・クラウス教授による「宇宙白熱教室(4回シリーズ)」が放送されたことによる。また12月3日には小惑星探査機「はやぶさ2」の打ち上げが成功し、太陽系や生命の起源を探す新たな一歩を踏み出すことができた。

本書は「宇宙白熱教室」の関連本としてローレンス・クラウス教授がお書きになったもので、この20年の間に劇的に進化した宇宙の起源の研究成果を知ることができる。本来難しい内容であるにもかかわらず、宇宙マイクロ波背景輻射の観測の歴史や写真、豊富な図版とグラフによって一般の人でもじゅうぶん理解できるレベルに抑えているのが、僕が本書を推す理由だ。今年のとね日記賞の中で、僕がいちばん読んでほしい本である。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

宇宙が始まる前には何があったのか?: ローレンス・クラウス
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b6f36e8eedba5ee63a4f919d30a2cb20


* 文学賞

妻は、くノ一:風野真知雄」(Kindle版



授賞理由: ブログ記事として紹介していないが、今年は「小暮写眞館:宮部みゆき」など理数系以外の小説も5冊ほど読んでいる。そしていちばんハマってしまったのが「妻は、くノ一:風野真知雄」の13冊だった。もともとNHKで放送されたドラマを気に入って読み始めたのだが、今年は「BS時代劇『妻は、くノ一 ~最終章~』 全5回」も放送されて大満足である。本もテレビドラマもそれぞれ別の面白さがあった。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

妻は、くノ一:風野真知雄
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/05e001f6b22838ea2dd9a29f10f607a8


* テレビドラマ賞

火10ドラマ「素敵な選TAXI」(フジテレビ系列)



授賞理由: 忙しいと言いながらも僕は結構たくさんのドラマを見ている。今年は「花子とアン」、「妻は、くノ一 ~最終章~」、「おそろし~三島屋変調百物語」、「花咲舞が黙ってない」、「戦力外捜査官」、「ごめんね青春!」などが候補に上がったが、いちばん気に入った「素敵な選TAXI」に授賞させていただくことにした。

紹介記事は次のリンクからお読みいただきたい。

火10ドラマ「素敵な選TAXI」(フジテレビ系列)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/6cbd1fcdb1830e7394cb66fcadff671b


* クリスマス賞

クリスマス・キャロル (新潮文庫)
アンのゆりかご―村岡花子の生涯 (新潮文庫)」(Kindle版

 

授賞理由: NHK「花子とアン」の主人公の村岡花子先生は1952年にディケンズの「クリスマス・キャロル (新潮文庫)」も翻訳している。クリスマスにはこの本を贈ってみてはどうだろうか。村岡先生のお人柄や人生を紹介している「アンのゆりかご―村岡花子の生涯 (新潮文庫)」(Kindle版)と一緒に贈るのもよいかもしれない。

年末には「花子とアン」やスピンオフスペシャルの「朝市の嫁さん」が再放送されるそうだ。




最後になりましたが、今日ノーベル物理学賞を受賞される赤崎勇先生、天野浩先生、中村修二先生に心からお祝いを申し上げます。

2014年ノーベル物理学賞は赤崎勇先生、天野浩先生、中村修二先生に決定!
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/2172a44a53c933389fcb8dc1acbfd97e


関連記事:

とね日記賞の発表!(2010年): 物理学賞、数学賞、他
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ddc344204dec2ebd35c47a8699eb1389

とね日記賞の発表!(2011年): 物理学賞、数学賞、他
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/27bc2b5eafa9334dae11d92e90c69b0d

とね日記賞の発表!(2012年): 物理学賞、数学賞、他
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b4ce3d8c7d90d5b95bf6ab826cc7d93f

とね日記賞の発表!(2013年): 物理学賞、数学賞、他
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/35a258d08776ca6964cc70764cc1f5a8


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