「豆腐小僧双六道中おやすみ:京極夏彦」(Kindle版)
内容紹介:
妖怪総大将であった父に恥じぬ立派なお化けになるため、達磨先生と修行の旅に出た豆腐小僧。甲州の裏街道を行く人間2人組を理由もなく追いかけるが、道中は思いもよらぬ珍騒動ばかり。突如現れた金の鴉に巨大な蟹、凶悪な邪魅。芝居者狸らによる“妖怪総理化計画”。信玄の隠し金を狙う人間たちの悪だくみ…。ゴタゴタに巻き込まれた豆腐小僧に、驚くべき災難が降りかかる。果たして小僧の運命や如何に!?シリーズ第2弾。
2013年7月刊行、706ページ。(単行本は2011年4月刊行)
著者について:
京極夏彦(きょうごくなつひこ): 公式ホームページ
小説家、意匠家。1963年北海道生まれ。94年、かねてよりアイデアを温めていた妖怪小説『姑獲鳥の夏』で小説家デビュー。『魍魎の匣』で第49回日本推理作家協会賞、『嗤う伊右衛門』で第25回泉鏡花文学賞、『覘き小平次』で第16回山本周五郎賞、『後巷説百物語』で第130回直木賞を受賞。
著書: Amazonで検索
「なぜ、手前は豆腐を持っているんでしょうか?」自己の存在理由、存在意義にうすーく不安を抱く小さな妖怪が数々の異種妖怪に出会って馬鹿にされながらも経験を積んでいく。このシリーズの1作目は豆腐小僧が「世間」を少しずつ知っていく立志篇だ。
本シリーズ1冊目の「豆腐小僧双六道中ふりだし」の感想記事を書いたのが2月9日。700ページある2冊目を読むのに2か月もかかってしまった。電車の中だけを読書時間にあてているのだから仕方がない。
本シリーズの最大の魅力は主人公、豆腐小僧の、救いようもないバカっぷりと、憎めないキャラクター、可愛らしさである。1冊目は通勤電車で必死に笑いをこらえて読み終えた。
2冊目でも笑わせてほしいと期待して読み始めだが、残念ながら「笑える度」は半減している。理由のひとつは豆腐小僧をいじって楽しむパターンが1冊目と似たり寄ったりで、そろそろ飽きてしまったということだ。
そしてもうひとつはあろうことか2冊目が始まってしばらくすると、豆腐小僧はいなくなってしまい、主人公不在のまま物語の終わりのほうまで引きずられてしまうこと。
いずれ登場することはわかっていても、相当長い間待たされる。確かに豆腐小僧がいつもいると、話題がこのキャラに集中して、物語がいっこうに進んでいかないというジレンマがある。豆腐小僧以外にも魅力的な妖怪キャラはいろいろ登場し、その妖怪たちは必ず人間に憑いているわけだから、物語進行に事欠くわけではない。
問題は豆腐小僧抜きで、どれくらい面白い話を繰り広げられるかという著者の創造力と描写力にかかっている。豆腐小僧抜きの部分のストーリーは「内容紹介:」で少しだけうかがい知ることができるが、誰ひとりとしてまっとうな登場人物がいない。繰り広げられる珍騒動に妖怪たちも翻弄され、互いに争う物語。京極夏彦は言わずと知れた妖怪の大家だ。水木しげる先生亡き後、彼の右に出る妖怪作家はいない。
しかし、その博識ぶりがこの2作目では裏目に出てしまったと僕は感じた。新しい人物が登場するたびに、その人間に憑いている妖怪が紹介される。この小説で妖怪とは人間が妄想する「概念」に過ぎないのだから実在するわけではない。しかし、この同じ説明が妖怪が登場するたびに繰り返されるのだから、いささかマンネリというか、くどく思えてしまうのだ。著者の饒舌さが物語の進行を遅らせ、豆腐小僧の再登場を願う読者の気持ちを強くさせる。
ネタバレになって申し訳ないが、豆腐小僧は2冊目の残り4分の1あたりで再登場することになる。再登場した小僧は元通りではなく、少し変わった形の妖怪となって現れる。おバカさは昔のままなので読者は安心できるわけなのだが。
再登場したのだから、思い切り活躍してほしいと願うのが読者の心情だろう。しかし、そういうわけにもいかず、相変わらずストーリーは豆腐小僧以外のキャラクター中心で進んでいく。人間も妖怪もたくさんいるから、かなりごちゃごちゃしている。この物語、いったいどういうふうに締めるのかしらと思いつつ、最後の最後で豆腐小僧が物語の集結に役目を果たすわけであるが。。。これ以上ネタバレしてはまずいので書かないでおくが、この終わり方で納得してすっきりできる読者はいるのだろうか?
映画化された予告動画を見ると、現代の社会に豆腐小僧は現われるようだが、小説のほうは1冊目、2冊目ともに舞台は江戸時代である。2冊目が空振りしたので3冊目はとりあえず読まないことにするが、映画のほうはもしかすると3冊目(こちらは薄い本)から話をとってきたのかもしれない。
このように僕は2冊目を楽しめたわけではないが、1冊目は痛快であることに変わりはなく、とりあえず皆さまには「1冊目だけでも読むと面白いよ!」とお勧めしたい。
この小説は映画化され、2011年4月に公開された。東日本大震災の翌月である。(試写会のときにも震災について言及している。[動画])
それに伴い1冊目の文庫本のカバーはオリジナルのものにかぶせて、次のようなカバーが使われている。中古で買うときはこのカバーがついているかどうかに注意してほしい。
全部で3冊ある。
「豆腐小僧双六道中ふりだし:京極夏彦」(Kindle版)
「豆腐小僧双六道中おやすみ:京極夏彦」(Kindle版)
「豆腐小僧その他:京極夏彦」(Kindle版)
映画のDVD&ブルーレイはこちら。本のほうは「豆腐小僧」、映画は「豆富小僧」である。映画は観ていないが、予告編を見る限り小説のほうが数段面白いと思う。
「豆富小僧 DVD&ブルーレイ」
豆富小僧 予告編
映画『豆富小僧』特報映像
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読書の秋は京極夏彦で!
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巷説百物語シリーズ:京極夏彦
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/5ba0517a8c1770f915aed78fe8bc90ff
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内容紹介:
妖怪総大将であった父に恥じぬ立派なお化けになるため、達磨先生と修行の旅に出た豆腐小僧。甲州の裏街道を行く人間2人組を理由もなく追いかけるが、道中は思いもよらぬ珍騒動ばかり。突如現れた金の鴉に巨大な蟹、凶悪な邪魅。芝居者狸らによる“妖怪総理化計画”。信玄の隠し金を狙う人間たちの悪だくみ…。ゴタゴタに巻き込まれた豆腐小僧に、驚くべき災難が降りかかる。果たして小僧の運命や如何に!?シリーズ第2弾。
2013年7月刊行、706ページ。(単行本は2011年4月刊行)
著者について:
京極夏彦(きょうごくなつひこ): 公式ホームページ
小説家、意匠家。1963年北海道生まれ。94年、かねてよりアイデアを温めていた妖怪小説『姑獲鳥の夏』で小説家デビュー。『魍魎の匣』で第49回日本推理作家協会賞、『嗤う伊右衛門』で第25回泉鏡花文学賞、『覘き小平次』で第16回山本周五郎賞、『後巷説百物語』で第130回直木賞を受賞。
著書: Amazonで検索
「なぜ、手前は豆腐を持っているんでしょうか?」自己の存在理由、存在意義にうすーく不安を抱く小さな妖怪が数々の異種妖怪に出会って馬鹿にされながらも経験を積んでいく。このシリーズの1作目は豆腐小僧が「世間」を少しずつ知っていく立志篇だ。
本シリーズ1冊目の「豆腐小僧双六道中ふりだし」の感想記事を書いたのが2月9日。700ページある2冊目を読むのに2か月もかかってしまった。電車の中だけを読書時間にあてているのだから仕方がない。
本シリーズの最大の魅力は主人公、豆腐小僧の、救いようもないバカっぷりと、憎めないキャラクター、可愛らしさである。1冊目は通勤電車で必死に笑いをこらえて読み終えた。
2冊目でも笑わせてほしいと期待して読み始めだが、残念ながら「笑える度」は半減している。理由のひとつは豆腐小僧をいじって楽しむパターンが1冊目と似たり寄ったりで、そろそろ飽きてしまったということだ。
そしてもうひとつはあろうことか2冊目が始まってしばらくすると、豆腐小僧はいなくなってしまい、主人公不在のまま物語の終わりのほうまで引きずられてしまうこと。
いずれ登場することはわかっていても、相当長い間待たされる。確かに豆腐小僧がいつもいると、話題がこのキャラに集中して、物語がいっこうに進んでいかないというジレンマがある。豆腐小僧以外にも魅力的な妖怪キャラはいろいろ登場し、その妖怪たちは必ず人間に憑いているわけだから、物語進行に事欠くわけではない。
問題は豆腐小僧抜きで、どれくらい面白い話を繰り広げられるかという著者の創造力と描写力にかかっている。豆腐小僧抜きの部分のストーリーは「内容紹介:」で少しだけうかがい知ることができるが、誰ひとりとしてまっとうな登場人物がいない。繰り広げられる珍騒動に妖怪たちも翻弄され、互いに争う物語。京極夏彦は言わずと知れた妖怪の大家だ。水木しげる先生亡き後、彼の右に出る妖怪作家はいない。
しかし、その博識ぶりがこの2作目では裏目に出てしまったと僕は感じた。新しい人物が登場するたびに、その人間に憑いている妖怪が紹介される。この小説で妖怪とは人間が妄想する「概念」に過ぎないのだから実在するわけではない。しかし、この同じ説明が妖怪が登場するたびに繰り返されるのだから、いささかマンネリというか、くどく思えてしまうのだ。著者の饒舌さが物語の進行を遅らせ、豆腐小僧の再登場を願う読者の気持ちを強くさせる。
ネタバレになって申し訳ないが、豆腐小僧は2冊目の残り4分の1あたりで再登場することになる。再登場した小僧は元通りではなく、少し変わった形の妖怪となって現れる。おバカさは昔のままなので読者は安心できるわけなのだが。
再登場したのだから、思い切り活躍してほしいと願うのが読者の心情だろう。しかし、そういうわけにもいかず、相変わらずストーリーは豆腐小僧以外のキャラクター中心で進んでいく。人間も妖怪もたくさんいるから、かなりごちゃごちゃしている。この物語、いったいどういうふうに締めるのかしらと思いつつ、最後の最後で豆腐小僧が物語の集結に役目を果たすわけであるが。。。これ以上ネタバレしてはまずいので書かないでおくが、この終わり方で納得してすっきりできる読者はいるのだろうか?
映画化された予告動画を見ると、現代の社会に豆腐小僧は現われるようだが、小説のほうは1冊目、2冊目ともに舞台は江戸時代である。2冊目が空振りしたので3冊目はとりあえず読まないことにするが、映画のほうはもしかすると3冊目(こちらは薄い本)から話をとってきたのかもしれない。
このように僕は2冊目を楽しめたわけではないが、1冊目は痛快であることに変わりはなく、とりあえず皆さまには「1冊目だけでも読むと面白いよ!」とお勧めしたい。
この小説は映画化され、2011年4月に公開された。東日本大震災の翌月である。(試写会のときにも震災について言及している。[動画])
それに伴い1冊目の文庫本のカバーはオリジナルのものにかぶせて、次のようなカバーが使われている。中古で買うときはこのカバーがついているかどうかに注意してほしい。
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「豆腐小僧その他:京極夏彦」(Kindle版)
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「豆富小僧 DVD&ブルーレイ」
豆富小僧 予告編
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