![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4c/44/084f77ca42a47e76670993ea76c4d8bd.png)
HP-35科学電卓(1972)のAndroidアプリ
今日はHP-35をはじめ、いろいろな意味で「世界初」、「日本初」の関数電卓、プログラム電卓を紹介しよう。
HP-35は1972年にヒューレット・パッカード社から発売された世界初のポータブル関数電卓だ。当時の価格は395ドル、1ドル360円の時代だったから日本円で14万2千円。
関数の精度は実に11桁もあり、この電卓が発売されたことで科学者やエンジニアは計算尺や三角関数表&対数関数表を使わなくてすむようになり、計算が何倍も楽になった。
参考記事:
計算尺ノスタルジア (コンサイス計算尺、ヘンミ計算尺)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b91ae7814c1830a9aaf7da77aadf88a8
アポロに搭載された計算尺(Pickett N600-ES)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3898318d7f4b3e84900d9ae2cb80d816
五桁ノ 對數表 及 三角函數表:えふ.げい.がうす著
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/8d90de27b13365139c25bbffd9c4f04b
このHP-35電卓のアプリがGoogle Playで発売されていることに最近気がついた。昨年2月に発売されたようだ。146円だったので即ダウンロード。アプリのスキンには本物の写真が使われている。(その後2015年5月にiPhone用アプリも発売されたので追記した。)
HP-35 Emulator Calculator: Google Playアプリを見てみる App Storeを見てみる
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/28/14/301eada470b389ab70c94fd3f45e006d.png)
実機は今でもアメリカのeBayから買うことができる。300ドルくらいから出品されているが、状態の良いものがほしい場合は1000ドル以上のものを選んだほうがよいだろう。(まれに500ドルくらいでも状態の良いのが出品されている。)ただし、アメリカのeBayサイトは米国在住者でないと買うことができない。
eBayでHP-35を: 検索してみる
HP-35の詳細についてはウィキペディアやThe Museum of HP Calculatorsというサイトをご覧いただきたい。
ウィキペディア: HP-35についての記事
The Museum of HP Calculators: HP-35のページ
実機(クリックで拡大)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/05/c8/a1c553b831498154be9d6af60adee443.png)
ウェブ上で動くHP-35のエミュレータもある。
画像をクリックするとHP-35電卓が起動する。
![HP-35](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/53/a0/df651aee87b29304194b46dab24f3764.jpg?random=f592a151b991b4e86f0c5b9da38d0e79)
豆知識: ところで三角関数や指数・対数が計算できる電卓を関数電卓と呼んでいるが、アメリカでは科学電卓と呼ばれている。「関数」は英語で「function」なのだが、このほかにも「機能」という意味がある。「Functional Calculator」という英語だと「ちゃんと機能する電卓」という意味にとられるからだ。だから関数電卓のことを英語で表現するときは「Scientific Calculator」という言葉を使ったほうがよい。
2007年にはHP-35の発売から35年を記念してHP35sという「科学電卓」がヒューレット・パッカード社から発売されている。こちらは現代のスペックの高級電卓で、プログラミングも可能だ。
VIVA!帰ってきたHP電卓--米国HP社「HP35S」
http://japan.cnet.com/digital/pc/20353764/
HP35s ハイエンド関数電卓 日本語クイックガイド付: 見てみる
HP35s ハイエンド関数電卓 日本語マニュアル付属: 見てみる
ところで、この当時の日本製の電卓はというと「CASIO fx-2、1972年」が発売されていた。ご覧のとおり卓上型で小型化されていなかった。関数の精度は8桁。HP-35には3桁も負けている。価格は9万8千円におさえられていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/57/67/845dac895040a1c75f0fe73ef740b1a9.png)
神様の計算機 (CASIO fx-2、1972年)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/51d92a0f17a3abd1112691590d86c83a
HP-35と同じくポータブル型の関数電卓ということになると日本で初めて発売されたのは2年後、「CASIO fx-10 (1974)」である。価格は24,800円。10関数内蔵で単三電池4本で動作する。精度は6桁しかない。価格と性能を抑えてたくさんの人に使ってもらいたいという方針があったのだろう。この電卓の詳細は以下の記事をお読みいただきたい。
70年代の関数電卓:CASIO fx-10 (1974)、fx-15 (1975)、fx-19 (1976)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e27a518854a8b71b3eb83b6d38ab598c
関数電卓としてはHP-35が世界初ということではない。すでに卓上型の関数電卓がHP-9100A (1968)として発売されていた。そしてこれは「プログラム電卓」でもあった。
つまり「世界初」、「日本初」といってもいろいろあるのだ。関数電卓、プログラム電卓について年代順に紹介しよう。
世界初の卓上プログラム電卓 CASIO AL-1000 (1967): 価格328,000円。12.3Kg。(詳細)
世界初の卓上プログラム関数電卓 HP-9100A (1968):価格5000ドル。(詳細)
世界初のポータブル関数電卓 HP-35 (1972):価格395ドル。(詳細)
日本初の卓上関数電卓 CASIO fx-1 (1972):価格32万5千円(詳細)
日本初のポータブル関数電卓 CASIO fx-10 (1974):価格24,800円。(詳細)
日本初のポータブル・プログラム関数電卓 CASIO PRO-101 (1976), CASIO fx-201P (1976), fx-202P (1976), CASIO PRO fx-1 (1976)
世界初の手帳型プログラム関数電卓 CASIO fx-501P (1979), fx-502P (1979):(紹介記事)
日本初のポータブル・プログラム関数電卓のところに4機種書いたのは、どれも同じ年に発売されたからだ。順番はこのページの次の写真を参考にした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/49/99/dfe09b46797a1d38748cb72c027c4e9f.png)
CASIO PRO-101 (1976):4万9800円。256ステップ。(詳細1、詳細2)
CASIO fx-201P (1976):2万9000円。127ステップ。電源を切るとプログラムも消えた。(詳細1、詳細2)
fx-202P (1976):3万9千円。fx-201Pにプログラム保護回路を内蔵したもの。(詳細)
CASIO PRO fx-1 (1976):127ステップ。CASIO PRO-101に磁気カードリーダがついてプログラムの保存、読み込みができるようになった。(詳細、動画)
HP-35をはじめ、これらの関数電卓やプログラム電卓は60年代から70年代に登場して、それぞれ電卓カテゴリーの中でのマイルストーンとなった往年の名機たちである。
CASIO AL-1000 (1967)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1a/32/df074bc37f3f11afb2fe8bf005caf4fc.png)
HP-9100A (1968)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/62/75/b53af07a5d4858a26f67ee8531e6a040.png)
CASIO fx-1 (1972)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/dd/ce6e8907bdd22ec7c8b36b3121e83fa6.png)
CASIO fx-10 (1974)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/69/502955dcf0c09f699b32afce3eb674d7.png)
CASIO PRO fx-1 (1976), CASIO fx-201P (1976), fx-202P (1976) - クリックで拡大
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/f9/18f46f4b87d8460e5e1f375fb53f589b.png)
以下はYouTubeに投稿されている動画だ。この時代の電卓が実際に動作しているところはなかなか見れないので貴重な映像である。
Casio AL-1000 Nixie Tube Calculator
Casio AL-1000 (1967) First start up after cleaning
Hewlett-Packard 9100 - Computer Calculator For Math And Science (1968)
HP 9100 Display Trick
CASIO FX-1 Scientific Calculator - Nixie Tube Display!
Test de la Casio Pro FX-1
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算数チャチャチャ(NHKみんなのうた)
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プログラム電卓の話題には敏感なのですが、忙しさが小休止したので、やっとコメントさせて頂けます。
HP35は、私がまだ高校生の時の発売のようです。そういえば大学の生協に似たような格好したHP電卓が売られていたのを思い出しました。
高校の時の地学の先生(変わり者)が、電卓の動作原理である2進化10進数について教えてくれて、矢野健太郎さんの数学モノグラフと言うA6版くらいの小さな本を買って、フムフムと読んだのが、私の電卓との最初の出会いでした。とはいっても、実際に電卓を手にしたのは、大学に入ってからです。
大学生の時は、CASIO FX-502Pをなんとか入手して使っていましたが、電卓そのものが珍しく、簡単なプログラムしか作っていませんでした。
当時は、まだ8ビットパソコン全盛でして、同級生が富士通のFM-7でプログラムを作って遊んでるのをみて、すごいなー...と思っていました。高価なパソコンなど買えませんでした...と言うか、自分でプログラムを作ろうとまでは思いませんでした。
同じ下宿の理学部の先輩がNECのPC-8001 (だったと思います...)を持っていて、酔歩理論をプログラムして遊んでいたのを、横で色々と教わりながら見ていた記憶があります。興味はプログラミングではなくて、理論そのものと、条件を変えた時の結果の違いだったと思います。
HP電卓が逆ポーランド記法で動くものであることなどは、後年就職してから、当時のイギリス人の重役の電卓を使わせてもらって!!!????となった時に知りました。
実験や解析用にプログラムを触り始めたのは、30歳を超えてから、派遣先の大学の研究室でのことです。
当時、PCやスパコンでのプログラミングの経験をしたことが、却って手のひらで遊べる電卓でのプログラミングの面白さを感じることにつながりました。
と書けば、格好良いのですが、実はプログラミングの最前線にはとうていついてゆけないので、敢えて制限の強い電卓プログラミングに逃げ込んでいる可能性大なわけです。
電卓プログラミングをなぜ楽しく感じるのかについては、自分でも合理的な説明ができませんが、ささやかな物欲と工夫のしどころ満載なので、なんだかワクワクするんです。
貧乏人のITオモチャがプログラム電卓なのかも知れません。HP電卓のような高価なオモチャは、もうちょっと先のことでしょう。
でも...とても興味をひかれてはいます。
CASIO fx-5800Pでのプログラミングを楽しんでいらっしゃるお気持ちは僕にもよくわかります。