
CASIO fx-CG50 (2017)
レトロな算盤記事の次は最新型電卓の記事である。
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2017年11月に追記:
日本のAmazonでも発売されました。ここをクリックするとページが開きます。
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5月に発売されたばかりの最新のグラフ電卓である。グラフ電卓は関数電卓、プログラム電卓の機能に加えグラフや表計算などビジュアルな表示機能を備えた高級電卓のこと。
fx-CG50は現時点でCASIOの最上位、フラッグシップ・モデルだ。日本では発売されていないのでアメリカ在住の友人に買ってもらい、一昨日届いたばかりだ。在庫がない状態が続いていたので注文してから友人宅に配送されるまで1カ月待つことになった。この友人には5年前、アポロ計画で司令船に搭載された小型計算尺「Pickett N600-ES」を入手するときにもお世話になっていた。
アメリカ在住だと、このページから注文することになる。
Graphing fx-CG50 PRIZM
http://www.shopcasio.com/product/graphing-fx-cg50-prizm
この電卓については今年の1月に「やすさん」が次の記事で紹介していらっしゃっていた。
楽屋裏 - カシオ グラフ関数電卓 fx-CG50 が2017年春登場
http://egadget.blog.fc2.com/blog-entry-579.html
2017年7月23日に追記:やすさんも実機を入手され、詳細な紹介記事をお書きになった。日本在住でもアメリカから購入する方法も紹介されている。
Casio fx-CG50 の概要
http://egadget.blog.fc2.com/blog-entry-594.html
2017年9月26日に追記:ついに 2017年10月20に国内発売される。国内販売される製品には3ピンケーブルが付属しているが、これはSB-62ケーブルのことで、ヤフオクから2880円で買うことができる。
http://egadget.blog.fc2.com/blog-entry-608.html
ニュースリリース - 立体図形を簡単に描画・解析できるカラーグラフ関数電卓
https://www.casio.co.jp/release/2017/0926_fx-cg50/
fx-CG50 OS 3.10 へのアップデートファイル公開
既に個人輸入や海外で調達して fx-CG50 (OS 3.00) を持っている場合は、Casio World Education Website からOS 3.1 へのアップデートファイル が公開されているので、すぐにアップデートできる。
2020年10月15日にOS3.50がリリースされた。
https://support.casio.jp/download.php?cid=004&pid=2126
OSのアップデートに関しては、次のページで更新情報が提供されている。
Casio fx-CG50 の概要
https://egadget.blog.fc2.com/?cat=36&page=0
CASIOの科学電卓は日本で販売されていないものが多い。それはおそらく日本の数学教育では電卓を使わないという状況が大きな理由だ。海外では関数電卓やグラフ電卓が積極的に数学教育で活用されている。電卓を購入してくれた友人も「この電卓、息子が学校で使っているのとよく似てる。」と言っていた。
このあたりの事情は次のページをお読みになるとよいだろう。長年、数学教育に携わってきた「数学の鉄則シリーズ」で知られる寺田文行先生も1995年に「グラフ電卓で数学する」という本をお書きになっていた。
世界の数学教育・日本の数学教育
http://www.shinko-keirin.co.jp/keirinkan/kosu/mathematics/sekai/nagasaki02.html
ツイッターで次のアンケートをしてみた。(ここをクリックするとアンケートのツイートが開く。)

ともあれ無事届いたので記念撮影。最上位モデルの関数電卓 fx-JP900 のデザインを引き継いでいるのだ。JP900は小さい電卓ではないので、CG50はかなり大きいことがおわかりになるだろう。(写真クリックで拡大)

なお、この電卓はWindowsやMac用のエミュレータも利用可能だ。90日間は無料で使える。その後、有料になるのだが1年ライセンスは(約3300円)だ。
fx-CG Manager PLUS Subscription
https://edu.casio.com/products/classroom/fxcgm_plus/
これはエミュレータを使って作成されたfx-CG50の紹介動画だ。実機の紹介動画はこちらでご覧いただける。
操作ガイドは簡単なクイックガイドが付属しているだけなので、ネット上から詳しいことが書かれたPDFファイルをダウンロードする。またプログラミングについては「やすさん」がお書きになっている「e-Gadget - プログラム関数電卓」がいちばん詳しい。
製品マニュアルは英語なのだが、fx-CG50は日本でも販売されているfx-CG20の後継機種であるから日本語で読みたいときはCG20のを読めばよいわけである。CG50はCG20からCPUクロックが2倍になってメモリが4倍に増え、ソフト面ではCG20とほとんど同じである。CG50の英語マニュアルやCG20の日本語マニュアルは次のページからダウンロードできる。
CASIO電卓のマニュアルのダウンロード・ページ
http://world.casio.com/manual/calc/
2017年9月26日に追記:カシオの日本語サイトで、fx-CG50 (OS3.10) の日本語マニュアルが公開されているのを見つけました。現行のOSは Ver 3.00 なので、次のバージョンアップに備えて先行して日本語版が公開された形です。(2020年6月1日にOS3.40がリリースされた。)
http://support.casio.jp/manual.php?cid=004
本件は、以下のページに追記しています。(やすさんのブログ)
http://egadget.blog.fc2.com/blog-entry-594.html
2019年6月6日に追記:OSが 3.20 にアップデートされ、プログラミング言語 Python が追加され、選択言語にイタリア語が追加されました。
Worldwide Education Website (WEW: 海外のカシオサイト)では2018年8月には公開されていましたが、日本のサイトでは 2018年12月に公開されました。
- WEWからのダウンロードはこちら
- 国内サイトのダウンロードはこちら
OS 3.20 から Python モードが追加されました。MicroPython Version 1.9.4 の実行環境です。
機能的には、Python 組込み関数、math モジュール、そして random モジュールしか使えません。
Python から電卓の機能を呼び出すことはできません(そのようなモジュールがない)。
Python モードの中で完全に閉じた世界になっているのです。
将来の OS で電卓の機能を呼び出すことができるようになるかもしれませんが、OS 3.20 では Python と電卓の連携はできません。
プログラミングの基礎がわかるPython機能
https://web.casio.jp/dentaku/fxcg50/python.html
カシオのカラーグラフ関数電卓 fx-CG50 に MicroPython がのったゾ
https://qiita.com/inachi/items/41dbe628be64cfea4193
Casioグラフ関数電卓の Python を使ってみる - 目 次(ブログ仲間の「やすさん」によるページ)
https://egadget.blog.fc2.com/blog-entry-726.html
表示する言語は英語のほか主なヨーロッパ言語、中国語から選べる。日本で発売されるかどうかは未定だが、発売されるとしても来年春以降であろう。そうなれば日本語も選べるようになるはずだ。(7月5日に追記:fx-GC20がカシオの日本語サイトで「生産終了」となった。つまりGC50も日本で発売されると思われる。ただしGC20が日本で発売されるまでは1年ほどかかったそうだ。)
さて、fx-202P (1976)のときと同じ定積分の問題を同じアルゴリズムで計算させてみよう。長方形近似を使ってこの計算を行うわけだ。

この面積を求めるわけである。

現時点で最新、最上位モデルの関数電卓 fx-JP900 だとあっという間に高精度の答が表示される。

fx-CG50 (2017)での計算
プログラムはfx-71Fやfx-5800Pと同じ。言語はCasio Basicだ不必要な演算が一部含まれているが fx-202P でのプログラムと同じにするためなので気にしないでほしい。今回は電卓から直接入力したが、パソコンで入力して電卓に転送することも可能だ。

Casio Basicを学んでみたい方はブログ仲間の「やすさん」がお書きになっている「Casio Basic入門 -目次-」を参照されるとよい。電卓に付属しているマニュアルよりもはるかに詳しく解説されている。
このプログラムのコロン「:」の箇所を改行に置き換えて計算を行なっている。コロンもサポートされているが1つのコマンドとして解釈されるので改行を使ったほうが速度向上が見込めるそうだ。このことは「やすさん」からコメント欄を通じて教えていただいた。
計算結果

ループ1回につき9ミリ秒。fx-202Pよりも計算時間が378.3分の1、fx-5800Pよりも16.7分の1に短縮されている。
そして三角関数 sin と cos の箇所をスキップし、10000回の分割で計算すると52秒で終了した。つまり全計算のうち三角関数の計算が占めていた割合は43.4パーセント。
三角関数1回の計算にかかる時間は2ミリ秒ということになる。三角関数についてだけ言えばfx-202Pよりも計算時間が712.7分の1、fx-5800Pより22.4分の1に短縮されている。
なお、電卓についていろいろ教えていいただいているsentaroさんによると、fx-CG50のエミュレータでは1000回の分割に対しての計算時間は3.5秒ということだった。一般的に電卓の実機よりもパソコン上で動くエミュレータのほうが計算速度が速いそうである。
まとめ
fx-202Pの計算速度を1とし、各機種の速度改善を率(倍数)であらわすと次のようになった。いちばん下の2つはスマートフォンアプリである。

所有している電卓や電卓アプリ、エミュレータなどはこれまでにたくさん記事を書いているので、興味のある方は「iPhone、携帯、電卓」というカテゴリーからお読みいただきたい。
関連記事:
日本初のプログラム関数電卓: CASIO fx-201P (1976)、fx-202P (1976)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/55c4832a2ca95087960c2ec0e532b1e6
世界初の手帳型プログラム関数電卓 CASIO fx-502P (1979)、fx-602P (1981)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/fdc21158802ddaef862956805b0195f2
現行のプログラム関数電卓 CASIO fx-71F (2006)、fx-5800P (2006)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/745d3cb41a88d8fd317bb6488ccf695c
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fx-CG50を早々に入手、おめでとうございます。
国内販売がいつになるのかまだ分かりませんが、私も入手したいと色々と手を打っています。
私のブログをご紹介頂き、ありがとうございます。
さて、fx-CG500 と並行して fx-CG500 も発売開始されています(記事でご紹介のビデオの冒頭でもチラッと触れていますね)。
http://www.casioeducation.com/products/calculators/graphing/fx-cg500
CG500はCAS機能がついた CP400 (海外のみ販売)の後継機の位置づけで、LUA (Casio Basicではありません)でプログラミングできる高価な機種です。価格で言えば CG500が最高機種となるかも知れませんが、同列に比較できないと思うので、Casio Basic搭載機種の最高機種と間違いなく言えます。
CP400は国内販売されないので、CG500も国内では売られないと思います。
fx-CG50 の1つ前の機種は fx-CG20 で現在も国内で販売されています。Casio Basic で使う視点で言えば、fx-CG20 はグラフィックス表示が非常に遅いので、動きの速いグラフィックスを多様するゲームなどを作るのには向きません。グラフィックスの高速表示を実現するには、C言語でアドインプログラムを作る必要があります。こおあたりの事情が 新機種の fx-CG50でどうなっているのか?おそらく変わっていないと思いますが、興味があります。
CG500もすでに発売されているのですね。てっきりこちらもCasio Basicなのだと僕は誤解していました。紹介いただいたページを見てみました。デザイン的にはJP900の親分のようなCG50のほうが僕の好みです。
CG20はグラフィックス表示が遅いのですね。CG50でどの程度改善されたかを見るのも楽しみですね。
fx-CG20 (そしておそらく fx-CG50)のグラフィックス表示が遅いのは、Casio Basic で記述した時の話でして、アドインプログラム (Cで記述)はそれほど遅くならないのです。
なので、Casio Basic のグラフィックスコマンドの動作が遅いとはっきり書くべきでした。
fx-CG50は外観も中身もCASIO関数電卓のフラッグシップといえる機種になった感じですね。
CG10/20は若干もっさりが目立っていたのでfx-CG50でやっとバランスのとれた機種になりそうです。
日本発売版では出来るならば日本語対応されたCG50に期待したいところです。
最古のプロ電fx-202Pからの定積分ベンチマーク比較はなかなかお目にかかれないものなのでとても興味深く拝見させていただきました。
fx-202Pからすると40年くらい経ってるわけですよね。プロ電の40年間の進化が一目瞭然なのでとても貴重な比較だと思います。(^^)
エミュレータの速度についてですが、fx-CG50のようなキャッシュ付きのCPUのエミュレータではキャッシュミスが起きないので遅いメインメモリに足を引っ張られること無く理想的な動作となるのでかなり速いみたいです。
Casioのグラフ電卓(32ビットCPU)の実機は安定性重視でかなりのメモリウエイトが追加されている上に、32ビットバスではなく16ビットバス接続なのでキャッシュミスでメインメモリにアクセスしたら速度低下がかなり大きいです。
ちなみにfx-9860GIIのエミュレータでは7.5秒とCG20/50の約半分の速度でした。
実機では24秒くらいなのでエミュレータからは3倍位遅いので、このあたりはCG50実機とエミュレータの速度差に近くなってますね。
HP PrimeのPCエミュレータはでPCのCPUがネイティブで動くPrimeシミュレータなので超爆速です。
iPhoneのFX-602Pシミュレータが爆速なのも同じ感じでしょうか。
やす様、こんにちは!
>CG500はCAS機能がついた CP400 (海外のみ販売)の後継機の位置づけで、LUA (Casio Basicではありません)でプログラミングできる高価な機種です。
あ゛、ClassPadシリーズのLuaは非公式のアドインアプリなので、SH4AのCP330以降はアドイン未対応になってしまったらしくLuaアドインは使えなくなっている模様です。(^^;
ClassPadシリーズはアドインに関しては残念ながら完全封印されてしまいました。
今のところ本体標準仕様でLuaが使えるのはTIのNspireシリーズだけみたいですが、標準では電卓だけでポチポチとLuaプログラムを打ち込めないのでプロ電としてみればイマイチなところもあります。(^^;
fx-CG50はCG20同様にアドインが封印されなかったので、そこのところはかなり大きなポイント、というかそこが一番大事ですよね。(^^)
詳しく教えていただきありがとうございます。実機やエミュレータのメモリやCPUのことなど、いったいどこで調べられるのだろうと思えるほどお詳しいですね。まるで電卓の開発に関わった方のように感じられます。「電卓道」は奥が深いものですね。
電卓を使い込むと電池がすぐなくなりそうですので、エネループを買うことにします。
とね様
fc-CG500 ならびに CP-400 に関する誤情報の訂正を頂き、ありがとうございます。
いやぁ、十分に確認しないまま伝聞情報を流してしまいました。大変失礼しました>とね様
最新の fx-CG50 を実際に評価した日本語の記事を Google で探してみたところ、今のところこの記事が唯一のもので、つまり日本初の記事だと分かりました。
fx-CG50 発売のアナウンス、海外からの入手の方法、入手したというだけの記事は幾つかありますが、それでも日本語の記事は本当に少ないです。
日本では、プログラム電卓を話題にする人が本当に少ない、つまりそれだけ市場も小さいということでしょう。
初等教育でプログラミングを教えるためには、このようなプログラム電卓やMicrosoft の Small Basicは構造化プログラミングが可能なミニマムな開発環境です。
教育面でも経済面でも最適だと思うのですが、教育の世界ではそのように考える方は少数派のようです。とても不合理で不思議に思います。
とねさんよりも一足先にベンチマーク結果の記事が投稿されていました。
http://egadget.blog.fc2.com/blog-entry-592.html
すみません、うっかりしていました。
教えていただき、ありがとうございます。
この方はCG50だけでなくCG500も入手してベンチマークを試したのですね!
総和のベンチマーク結果
http://optoelemech.hatenablog.com/entry/2017/05/31/232645
この方も電卓オタクぶりもなかなかのものです!
CASIOの最新関数電卓(fx-260 SOLAR II、fx-CG50、fx-CG500)
http://optoelemech.hatenablog.com/entry/2017/05/26/005506
CASIOの関数電卓fx-CG50の電源を入れてみました
http://optoelemech.hatenablog.com/entry/2017/05/28/001027
一足先に評価されたベンチマークは、内蔵されている総和(Σ) 関数を利用し、三角関数を含んだものですね。
一方とねさんのベンチマークは、三角関数を含んだ積分をプログラミングして走らせた結果なので、プログラム機能の評価になっています。
とねさんの記事は、日本初の fx-CG50 プログラム機能のベンチマークと言って良いと思います。