「計算尺ノスタルジア」という記事で紹介したPikett社製のN600-ES計算尺を入手した。
3月にアメリカに住む友人にeBayで落札してもらっていたのだが、郵送料をかけないために彼が一時帰国するタイミングで手渡ししてもらうことにし、ようやくこの土曜に僕の地元まで来ていただいたのだ。(2人で「大樹苑笹塚本店」で焼肉ディナー。2100円のコースはボリューム満点かつ美味なので超オススメ!)
このモデルは人類初の月探査プロジェクトとして知られるアポロ計画で司令船に搭載された計算尺として知られている。(以下の説明を参照)
僕が入手したのは1953年製で箱、説明書、革ケース付きの極めて保存状態の良い一品だ。本体はアルミ製。52ドルで落札。
Pikett N600-ESは製造年代によって留め金具の形状が少しずつ違う。アポロに搭載されたのと全く同じ形状にこだわる人は保管状態のほか、留め金具にも注意を払うべきだ。
この計算尺を肴にしながら僕がハイボールを飲んでいるのを見て「その感覚はまったく理解できない。。。」と友人は言っていた。そりゃそうだろうな。。。
実物は想像していたのよりだいぶ小さかった。
クリックで拡大(計算尺は裏面)
中段:ヘンミ計算尺:No.P45D(中学生用、片面)
下段:ヘンミ計算尺:No.259D(機械技術用、両面)とくらべても小さいことがわかる。
クリックで拡大
アポロ計画と計算尺
Derek's Virtual Slide Rule Gallery内のいちばん下のJavaアプレットでこのPickett N600-ESの両面を試すことができる。
Pickett N600-ES Javaアプレット:
http://www.antiquark.com/sliderule/sim/virtual-slide-rule.html
Pickett N600-ESの詳細:
http://www.kkdepot.com/Product.asp?Key=1037
この計算尺は人類初の月面着陸・帰還をなしとげたアポロ計画においてコンピュータが故障した時のために非常用として司令船に搭載されていたものだ。世界初のポータブル関数電卓HP-35が発売されたのはアポロ計画末期の1972年なので、当時は計算尺がいちばん適していたからである。HP社初のプログラミング可能な卓上科学電卓(HP 9100A 拡大写真1 拡大写真2)は1968年に発売されていたが、アポロに搭載するには大きすぎた。(アポロに搭載されていた本体のコンピュータはAGC(Apollo Guidance Computer)というもので、その詳細はウィキペディアの記事で読むことができる。)
とはいっても、命を失うかもしれない状況の中で計算尺って。。と僕は思ってしまうわけだが。
実際にアポロ11号(1969)に搭載されたN600-ESは2007年に行われたオークションで $77,675 で落札された。
月へ向かう途中で酸素タンクの爆発と電源の喪失に見舞われ、奇跡的に地球に帰還したアポロ13号(1970)にもN600-ES計算尺が積まれ、これは現在スミソニアン博物館に展示されている。
スミソニアン博物館(Pickett N600-ES)
http://americanhistory.si.edu/collections/search/object/nmah_694174
このような歴史的逸話を持つN600-ES計算尺は、現在アメリカのeBayサイトで出品されているものを購入することができる。(検索してみる。)ただし、アメリカ在住でないと購入できないので、どうしてもという場合は代行業者かアメリカ在住の知り合いに依頼するしかない。
トム・ハンクス主演の映画「アポロ13号(1995年)」では、地上にいる管制官が計算尺を使うシーンがでてくる。映画が始まって1時間経ったあたりだ。ヘンミ社製のように見える。
この映画は実際に起きた事実を忠実に再現して製作された。爆発事故が起きて姿勢制御ができなくなった船の角度を知るために、司令船内のジム・ラヴェル船長(トム・ハンクス)が読み上げる数値をもとに、ヒューストンの司令室のエンジニアが計算するシーンである。(だから実際には船内に搭載された計算尺は使われなかった。)
「アポロ13 【プレミアム・ベスト・コレクション】 [DVD]」(Blu-ray)(デジタル・リマスター版Blu-ray)(Amazonプライムビデオ)
映画アポロ13 打ち上げシーン
映画アポロ13 事故発生シーン
映画ではないが、詳細はこの動画でご覧いただける。
アポロ13号の奇跡 緊迫の87時間(2016)
アポロ13号での奇跡の生還には次の映画で紹介されるマーキュリー計画での教訓が役立った。この映画もあわせてご覧いただきたい。
映画『ドリーム(2016)』NASAを支えた名もなき計算手たち
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/54307adde353ad3fba64f33914f660a1
関連リンク:
月とコンピュータ
http://research.sakura.ad.jp/2010/03/29/lunar-landing/
計算尺推進委員会:
http://www.pi-sliderule.net/
掛け算、割り算についてだけなら、次のページがわかりやすい。
計算尺の使い方(基本編):
http://www.keisanjyaku.com/sliderule/tukaikata/howto.html
計算尺愛好会:
http://www.keisanjyaku.com/
計算尺資料館:計算尺の種類と用途はこちらで確認。
http://www.keisanjyaku.com/sliderules.htm
計算尺リンク集
http://www.keisanjyaku.com/link.htm
コンピューター時代に人々を虜にする計算尺の魅力(上): リンク
コンピューター時代に人々を虜にする計算尺の魅力(下):リンク
> 僕がハイボールを飲んでいるのを見て
あちきなら、飛び切り上等のテキーラを奮発して、
酒も計算尺もじっくりと味わうかも ^_^;
革のケースだけでもそそられますなあ。。。
http://www.kirin.co.jp/brands/sw/donjulio/
キリンさんと特別な関係はありません。
知らぬ間に代理店がキリンに変わってた。
noboshemonさんは(数少ない)理解者のお一人なのですね!
お宝を紛失してはならないと、テキーラなどの強い酒は控えましたが、それでも翌日は二日酔いでした。(笑)
それにしてもDonJulioは見るからに旨そうな酒ですなぁ。ボトルがいい味出してます。
アネホ以上のボトルなら、
次元の違うテキーラを実感できます。
因みに、1942 は、ザッカーバーグ御用達でも
あるよーです。
http://ameblo.jp/tequila-metoki/entry-11173988226.html
飲んでみたいです。
テキーラソムリエという資格があることも教えていただいたページで知りました。こちらも奥が深い世界ですねぇ。。
大樹苑も支店がお近くにありましたら2100円のコースをお試しください!絶対満足しますよ。
どの支店も、うちから 1000 km 近い ^_^;
> 2100円のコースをお試しください
そーいえば長いこと、
まともな肉食ってないかなあ。。。
お二人の会話を拝見しておりましたが
私の持っている固定尺≒1.2mの教師用計算尺
http://blog.goo.ne.jp/slide_271828/e/837781b6808489d6255559b5155da51a
を前にしたら2,100円の焼肉では役不足でしょうね。
教師用計算尺を肴にして飲むなら、名酒を一斗樽で用意したほうがいいですね。
この2100円コースはあなどってはなりません。僕は1万円払ってもいいと思いました。
西新宿にも2店舗あるようなので、次回のオフ会に利用してもいいかもしれませんね!
コメント欄は焼肉とお酒の話題で埋め尽くされそうです。(笑)
コメントありがとうございます。
アポロ計画にお詳しいですね。あの当時の技術でこれだけの偉業を成し遂げたことには、大人になって詳しく知れば知るほど感動を覚えたものです。
11号の月面着陸当時、僕は7歳でしたが生中継の映像をおぼろげながら覚えています。
既にご存知のページかもしれませんが、記事本文の「関連リンク」に次の2ページと、AGC(アポロ誘導コンピュータ)についてのリンクを追記しておきました。
あなたが知らないアポロ11号についての10の事柄
http://o-navi.net/2009/07/1110_1.html
月とコンピュータ
http://research.sakura.ad.jp/2010/03/29/lunar-landing/