「時間はどこから来て、なぜ流れるのか? : 吉田伸夫」(Kindle版)
内容紹介:
時間とは何か?時は本当に過去から未来へ流れているのか?「時間が経つ」とはどういう現象なのか?先人たちが思弁を巡らせてきた疑問の扉を、いま、物理学はついに開きつつある。相対性理論、宇宙論、熱力学、量子論、さらには神経科学を見渡し、科学の視座から時間の正体に迫る。
2020年1月15日刊行、240ページ。
著者について:
吉田 伸夫(よしだ・のぶお)
1956年、三重県生まれ。東京大学理学部卒業、東京大学大学院博士課程修了。理学博士。専攻は素粒子論(量子色力学)。科学哲学や科学史をはじめ幅広い分野で研究を行っている。ホームページ「科学と技術の諸相」(http://www005.upp.so-net.ne.jp/yoshida_n/)を運営。著書に『明解 量子重力理論入門』『明解 量子宇宙論入門』『完全独習相対性理論』『宇宙に「終わり」はあるのか』(いずれも講談社)、『光の場、電子の海』(新潮社)、『素粒子論はなぜわかりにくいのか』『量子論はなぜわかりにくいのか』『科学はなぜわかりにくいのか』(いずれも技術評論社)など多数。
吉田先生の著書: 単行本を検索 Kindle版を検索
理数系書籍のレビュー記事は本書で439冊目。
「時間とはなんだろう 最新物理学で探る「時」の正体: 松浦壮」(Kindle版)(紹介記事)と同じテーマの本が、今年の1月、同じブルーバックスから刊行されている。比較したいと思い、こちらも読んでみた。優劣をつけるのではなく、どちらを読もうか迷っている方のために比較した結果を紹介するのがこの紹介記事の目的だ。
まず、この吉田先生の本の章立ては、次のとおりである。
はじめに――時の流れとは
《第I部 現在のない世界》
第1章 時間はどこにあるのか
第2章 過去・現在・未来の区分は確実か
第3章 ウラシマ効果とは何か
《第II部 時間の謎を解明する》
第4章 時間はなぜ向きを持つか
第5章 「未来」は決定されているのか
第6章 タイムパラドクスは起きるか
第7章 時間はなぜ流れる(ように感じられる)のか
まず、本全体についてです。数式を書かず文章で説明しているのは松浦先生の本も、吉田先生の本も同じだが、吉田先生の本のほうが専門用語を多く使っていて、そしてより上級者向けの文章表現で書かれている。Amazonのレビュー記事の中に「よくわからなかった」と書いている方がいるのはそのためだと思われる。
ニュートン力学から電磁気学、相対性理論、量子力学に至る発展史を解説しているのは、どちらの本でも同じだ。科学教養書を読み込んでいる読者にとって、少々退屈に思えるのは仕方がないことだと思う。まったくの初心者であれば松浦先生の本のほうが読みやすいと思った。相対論の説明については吉田先生の本のほうが、ページを多く割いて説明している。
「第4章 時間はなぜ向きを持つか」は面白い。ネタバレになりますから詳しく書かないが、時間がなぜ過去から未来への1方向に進んでいるのかということについて、納得する説明がされている。ヒントだけ言えば、時間が向きを持つ原因は宇宙のビッグバンにあるのだ。熱力学第二法則(エントロピー増大則)の謎も、この文脈で解明される。
「第5章 「未来」は決定されているのか」は、量子力学がテーマです。本書では脱干渉と表現されている「デコヒーレンス」のことが詳しく解説されている。
「第6章 タイムパラドクスは起きるか」は、よく取り上げられる「親殺しのパラドクス」や「万物理論のパラドクス」の解決法が解説されているのが面白いと感じた。
松浦先生の本と吉田先生の本で、いちばん違うのは最終章に近い部分からだ。松浦先生の本は、量子電磁気学から素粒子物理学、弦理論、量子重力理論へと進む。
けれども吉田先生の本は量子力学までで物理学の説明は終わる。最終章は「第7章 時間はなぜ流れる(ように感じられる)のか」で、なぜ私たちが時間の流れを感じるのかということを生物学、心理学、神経科学の視点から解説している。
僕は物理的な時間だけに関心があったのだが、この最終章はとてもためになった。もちろん人間が感じなくても時間は物理的に(幻想として?)存在している。時間が流れていると感じるのは私たちの錯覚であること、ミリ秒以下の間隔で起きている事象の時間的前後関係、因果関係を私たちは知覚し得ず、脳が勝手に因果関係に沿った歴史を捏造していることが、詳細に解説されている。その意味で時間の流れは(物理的だけでなく)生理的にも幻想だということがわかる。
補足: 大栗先生は「大栗先生の超弦理論入門:大栗博司」の中で、空間が幻想であると述べ、時間については幻想であるかもしれない、と一歩引いた形でお書きになっているが、超弦理論のような量子重力理論では時間がまだ解明されていないからだと思われる。
時間の流れは物理的視点と神経科学の視点で切り離して考えなくてはならないことが、具体的な事例による解説によってよく理解できた。物理学的視点による時間が幻想であるのも事実だ。こちらは松浦先生の本の最後に書かれているように、量子重力理論による解明が待たれるところである。
本書のタイトル「時間はどこから来て、なぜ流れるのか?」での2つの問いかけは、物理学的視点、神経科学的視点をそれぞれ象徴しているのだと思う。
松浦先生の本よりは、学習レベルが少し上の読者を対象としているが、吉田先生の他の本(たとえば「光の場、電子の海」)などよりは、易しく書かれている。
唯一、難点を言わせていただければ、最終章が唐突に終わっている感じがして、尻切れトンボ感が残ること。本書全体を総括する記述がなかったことだ。
多少の重複はあるものの、松浦先生の本と吉田先生の本の両方を読んでも、それぞれ楽しめると思う。また、どちらを先に読んでも問題はない。ぜひ書店で手に取っていただきたい。
関連記事:
時間とはなんだろう 最新物理学で探る「時」の正体: 松浦壮
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/30e586091ba9dda356e9a0d2d3a0e815
時間は逆戻りするのか 宇宙から量子まで、可能性のすべて: 高水裕一
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/c14a3269ad7ef2f8f11702ef584e7d3c
時間は存在しない: カルロ・ロヴェッリ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/55f4ffc2e5f45add46dea97086bb3aed
時:渡辺慧
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d149cf16bb9dd319f572e4228fdfe241
深層学習と時空:橋本幸士先生 #MathPower
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/bf7e7e661246866943c765bdd371248f
宇宙に「終わり」はあるのか: 吉田伸夫
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/c9ad8a76d2a1725b731238eeb4699694
光の場、電子の海―量子場理論への道:吉田 伸夫
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ea4bc17a6b2c98c1073039d868223f02
素粒子論はなぜわかりにくいのか:吉田伸夫
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/bcbaebb9f2a77b1bd63e3928f6bd6e9f
量子論はなぜわかりにくいのか「粒子と波動の二重性」の謎を解く: 吉田伸夫
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e1e94804c62fc8cf2212ca37d805b9da
明解量子重力理論入門:吉田伸夫
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e0ab2fd9fafe3568c24ed358dd4ea92c
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「時間はどこから来て、なぜ流れるのか? : 吉田伸夫」(Kindle版)
はじめに――時の流れとは
- ニュートンの時間観
- 場の理論の台頭
- 本書は何を目標とするか
- 本書の構成
《第I部 現在のない世界》
第1章 時間はどこにあるのか
- 原子スケールの現象と時間
- 時計で時を計る
- 尺度の起源
- 尺度を生み出す量子効果
- 大きさのない世界
- 現実世界における大きさの基準
- 時間の尺度を決める
- 時間の尺度と重力
- 重力による光の屈折
- 時間はどこにあるのか?
- もう少し深く知りたい人のために――等価原理と時間の遅れ
第2章 過去・現在・未来の区分は確実か
- 地球の運動とエーテルの風
- 電磁気学で公転運動が検出できるか
- 静止エーテルの謎
- 力学で公転運動が検出できるか
- アインシュタインの相対性原理
- 人間的な法則・宇宙的な法則
- マクスウェルの電磁気学
- ローレンツの挑戦
- 運動に伴う時間のずれ
- 相対性原理と「現在」
- 拡がった時間と運動
- もう少し深く知りたい人のために――時間のずれが必要な理由
第3章 ウラシマ効果とは何か
- 回転しても変わらない世界
- 静止と運動の区別がない世界
- ミンコフスキーの幾何学
- 座標系の同等性
- ミンコフスキーが明らかにしたこと
- 時間と空間の界面
- 光速は(なぜか)不変である
- ニュートリノの速度
- 運動する時計の遅れ
- ウラシマ効果
- 時間と空間の計量
- もう少し深く知りたい人のために――光速不変性は原理か
《第II部 時間の謎を解明する》
第4章 時間はなぜ向きを持つか
- 熱の流れとエントロピー
- エントロピーと秩序
- ビッグバンのパラドクス
- 変化はビッグバンから始まる
- 恒星・惑星・海洋の形成
- エントロピーは時に減少する?
- エントロピーが減少できる条件
- 分子のヒートポンプ
- 時間の端緒としてのビッグバン
- もう少し深く知りたい人のために――生命現象と物理法則
第5章 「未来」は決定されているのか
- ニュートン力学における未来の決まり方
- 確定しない初期条件
- 微分方程式とは異なる法則
- 量子論の波動性
- 量子論における歴史
- 二重スリット実験
- 干渉と脱干渉
- 世界線の座標
- 世界のはじめから終わりまで
- もう少し深く知りたい人のために――脱干渉の曖昧さ
第6章 タイムパラドクスは起きるか
- タイムトラベルの方法
- 「ループする時間」という抜け道
- 時間ループのタイムパラドクス
- ワームホールによる時間ループ
- 物理学者の発想法
- パラドクスの起源
- 「親殺しのパラドクス」の解決
- 「万物理論のパラドクス」の解決
- 人間とタイムパラドクス
- もう少し深く知りたい人のために――「存在」と「生成」の物理
第7章 時間はなぜ流れる(ように感じられる)のか
- 時間は無意識下で再構成される
- バッターがボールを打ち返せるわけ
内容紹介:
時間とは何か?時は本当に過去から未来へ流れているのか?「時間が経つ」とはどういう現象なのか?先人たちが思弁を巡らせてきた疑問の扉を、いま、物理学はついに開きつつある。相対性理論、宇宙論、熱力学、量子論、さらには神経科学を見渡し、科学の視座から時間の正体に迫る。
2020年1月15日刊行、240ページ。
著者について:
吉田 伸夫(よしだ・のぶお)
1956年、三重県生まれ。東京大学理学部卒業、東京大学大学院博士課程修了。理学博士。専攻は素粒子論(量子色力学)。科学哲学や科学史をはじめ幅広い分野で研究を行っている。ホームページ「科学と技術の諸相」(http://www005.upp.so-net.ne.jp/yoshida_n/)を運営。著書に『明解 量子重力理論入門』『明解 量子宇宙論入門』『完全独習相対性理論』『宇宙に「終わり」はあるのか』(いずれも講談社)、『光の場、電子の海』(新潮社)、『素粒子論はなぜわかりにくいのか』『量子論はなぜわかりにくいのか』『科学はなぜわかりにくいのか』(いずれも技術評論社)など多数。
吉田先生の著書: 単行本を検索 Kindle版を検索
理数系書籍のレビュー記事は本書で439冊目。
「時間とはなんだろう 最新物理学で探る「時」の正体: 松浦壮」(Kindle版)(紹介記事)と同じテーマの本が、今年の1月、同じブルーバックスから刊行されている。比較したいと思い、こちらも読んでみた。優劣をつけるのではなく、どちらを読もうか迷っている方のために比較した結果を紹介するのがこの紹介記事の目的だ。
まず、この吉田先生の本の章立ては、次のとおりである。
はじめに――時の流れとは
《第I部 現在のない世界》
第1章 時間はどこにあるのか
第2章 過去・現在・未来の区分は確実か
第3章 ウラシマ効果とは何か
《第II部 時間の謎を解明する》
第4章 時間はなぜ向きを持つか
第5章 「未来」は決定されているのか
第6章 タイムパラドクスは起きるか
第7章 時間はなぜ流れる(ように感じられる)のか
まず、本全体についてです。数式を書かず文章で説明しているのは松浦先生の本も、吉田先生の本も同じだが、吉田先生の本のほうが専門用語を多く使っていて、そしてより上級者向けの文章表現で書かれている。Amazonのレビュー記事の中に「よくわからなかった」と書いている方がいるのはそのためだと思われる。
ニュートン力学から電磁気学、相対性理論、量子力学に至る発展史を解説しているのは、どちらの本でも同じだ。科学教養書を読み込んでいる読者にとって、少々退屈に思えるのは仕方がないことだと思う。まったくの初心者であれば松浦先生の本のほうが読みやすいと思った。相対論の説明については吉田先生の本のほうが、ページを多く割いて説明している。
「第4章 時間はなぜ向きを持つか」は面白い。ネタバレになりますから詳しく書かないが、時間がなぜ過去から未来への1方向に進んでいるのかということについて、納得する説明がされている。ヒントだけ言えば、時間が向きを持つ原因は宇宙のビッグバンにあるのだ。熱力学第二法則(エントロピー増大則)の謎も、この文脈で解明される。
「第5章 「未来」は決定されているのか」は、量子力学がテーマです。本書では脱干渉と表現されている「デコヒーレンス」のことが詳しく解説されている。
「第6章 タイムパラドクスは起きるか」は、よく取り上げられる「親殺しのパラドクス」や「万物理論のパラドクス」の解決法が解説されているのが面白いと感じた。
松浦先生の本と吉田先生の本で、いちばん違うのは最終章に近い部分からだ。松浦先生の本は、量子電磁気学から素粒子物理学、弦理論、量子重力理論へと進む。
けれども吉田先生の本は量子力学までで物理学の説明は終わる。最終章は「第7章 時間はなぜ流れる(ように感じられる)のか」で、なぜ私たちが時間の流れを感じるのかということを生物学、心理学、神経科学の視点から解説している。
僕は物理的な時間だけに関心があったのだが、この最終章はとてもためになった。もちろん人間が感じなくても時間は物理的に(幻想として?)存在している。時間が流れていると感じるのは私たちの錯覚であること、ミリ秒以下の間隔で起きている事象の時間的前後関係、因果関係を私たちは知覚し得ず、脳が勝手に因果関係に沿った歴史を捏造していることが、詳細に解説されている。その意味で時間の流れは(物理的だけでなく)生理的にも幻想だということがわかる。
補足: 大栗先生は「大栗先生の超弦理論入門:大栗博司」の中で、空間が幻想であると述べ、時間については幻想であるかもしれない、と一歩引いた形でお書きになっているが、超弦理論のような量子重力理論では時間がまだ解明されていないからだと思われる。
時間の流れは物理的視点と神経科学の視点で切り離して考えなくてはならないことが、具体的な事例による解説によってよく理解できた。物理学的視点による時間が幻想であるのも事実だ。こちらは松浦先生の本の最後に書かれているように、量子重力理論による解明が待たれるところである。
本書のタイトル「時間はどこから来て、なぜ流れるのか?」での2つの問いかけは、物理学的視点、神経科学的視点をそれぞれ象徴しているのだと思う。
松浦先生の本よりは、学習レベルが少し上の読者を対象としているが、吉田先生の他の本(たとえば「光の場、電子の海」)などよりは、易しく書かれている。
唯一、難点を言わせていただければ、最終章が唐突に終わっている感じがして、尻切れトンボ感が残ること。本書全体を総括する記述がなかったことだ。
多少の重複はあるものの、松浦先生の本と吉田先生の本の両方を読んでも、それぞれ楽しめると思う。また、どちらを先に読んでも問題はない。ぜひ書店で手に取っていただきたい。
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時間とはなんだろう 最新物理学で探る「時」の正体: 松浦壮
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時:渡辺慧
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深層学習と時空:橋本幸士先生 #MathPower
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/bf7e7e661246866943c765bdd371248f
宇宙に「終わり」はあるのか: 吉田伸夫
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光の場、電子の海―量子場理論への道:吉田 伸夫
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ea4bc17a6b2c98c1073039d868223f02
素粒子論はなぜわかりにくいのか:吉田伸夫
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/bcbaebb9f2a77b1bd63e3928f6bd6e9f
量子論はなぜわかりにくいのか「粒子と波動の二重性」の謎を解く: 吉田伸夫
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e1e94804c62fc8cf2212ca37d805b9da
明解量子重力理論入門:吉田伸夫
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「時間はどこから来て、なぜ流れるのか? : 吉田伸夫」(Kindle版)
はじめに――時の流れとは
- ニュートンの時間観
- 場の理論の台頭
- 本書は何を目標とするか
- 本書の構成
《第I部 現在のない世界》
第1章 時間はどこにあるのか
- 原子スケールの現象と時間
- 時計で時を計る
- 尺度の起源
- 尺度を生み出す量子効果
- 大きさのない世界
- 現実世界における大きさの基準
- 時間の尺度を決める
- 時間の尺度と重力
- 重力による光の屈折
- 時間はどこにあるのか?
- もう少し深く知りたい人のために――等価原理と時間の遅れ
第2章 過去・現在・未来の区分は確実か
- 地球の運動とエーテルの風
- 電磁気学で公転運動が検出できるか
- 静止エーテルの謎
- 力学で公転運動が検出できるか
- アインシュタインの相対性原理
- 人間的な法則・宇宙的な法則
- マクスウェルの電磁気学
- ローレンツの挑戦
- 運動に伴う時間のずれ
- 相対性原理と「現在」
- 拡がった時間と運動
- もう少し深く知りたい人のために――時間のずれが必要な理由
第3章 ウラシマ効果とは何か
- 回転しても変わらない世界
- 静止と運動の区別がない世界
- ミンコフスキーの幾何学
- 座標系の同等性
- ミンコフスキーが明らかにしたこと
- 時間と空間の界面
- 光速は(なぜか)不変である
- ニュートリノの速度
- 運動する時計の遅れ
- ウラシマ効果
- 時間と空間の計量
- もう少し深く知りたい人のために――光速不変性は原理か
《第II部 時間の謎を解明する》
第4章 時間はなぜ向きを持つか
- 熱の流れとエントロピー
- エントロピーと秩序
- ビッグバンのパラドクス
- 変化はビッグバンから始まる
- 恒星・惑星・海洋の形成
- エントロピーは時に減少する?
- エントロピーが減少できる条件
- 分子のヒートポンプ
- 時間の端緒としてのビッグバン
- もう少し深く知りたい人のために――生命現象と物理法則
第5章 「未来」は決定されているのか
- ニュートン力学における未来の決まり方
- 確定しない初期条件
- 微分方程式とは異なる法則
- 量子論の波動性
- 量子論における歴史
- 二重スリット実験
- 干渉と脱干渉
- 世界線の座標
- 世界のはじめから終わりまで
- もう少し深く知りたい人のために――脱干渉の曖昧さ
第6章 タイムパラドクスは起きるか
- タイムトラベルの方法
- 「ループする時間」という抜け道
- 時間ループのタイムパラドクス
- ワームホールによる時間ループ
- 物理学者の発想法
- パラドクスの起源
- 「親殺しのパラドクス」の解決
- 「万物理論のパラドクス」の解決
- 人間とタイムパラドクス
- もう少し深く知りたい人のために――「存在」と「生成」の物理
第7章 時間はなぜ流れる(ように感じられる)のか
- 時間は無意識下で再構成される
- バッターがボールを打ち返せるわけ
僕も本屋での立ち読みでは2冊の違いがわかりませんでした。
記事がお役に立ってよかったです。
「とね日記」は10年以上前から楽しく読ませていただいています。本を購入する際にも参考にさせていただき、本当に感謝しております。
質問掲示板ではないので「日記」開設の趣旨とは異なると思うのですが、もし可能でしたら教えてください。
56から57ページにかけて、コイルを磁石に近づけた場合について次のような説明があります。
「コイルを動かすと内部の電子はコイルと一緒に動いて電荷の流れとなり、フレミングの左手の法則に従って磁場から力を受ける」
図2-2を見ますと、コイルの動く向きと磁場の向きは平行です。この場合フレミングの左手の法則は使えないように思えます。多分私の勘違いか、何かの見落としがあると思うのですが、吉田先生の言わんとするところを教えていただけないでしょうか。
コメントをいただき、ありがとうございます。また、ブログを長年お読みいただいてくださっていただき、とてもうれしいです。
さて、ご質問いただいた件ですが、簡単なことです。おっしゃるとおりコイルの動く向きと磁場の向きは平行です。けれども、「コイルを作っている銅線の向き」と磁場の向きは直角です。これがフレミングの左手の法則が使える理由です。
でも、まだしっくりきません。
フレミングの左手の法則は、磁場中を流れる電流に対して(あるいは、移動する電荷に対して)、磁場・電流の双方に対して垂直な方向に力が働くことを示していると理解しています。
吉田先生の説明文は、コイルの移動に伴ってコイル内の電子も移動し、それに対し(フレミングの左手の法則により)力が働く、と読めると思います。
レンツの法則を考えれば、コイル内に電流が流れること自体は、私もわかるのですが。
もう少し自分で考えてみます。
失礼しました。平行か垂直かという角度のことだけに気を取られて回答してしまいました。
おっしゃるとおり、ここでフレミングの左手の法則を持ち出すのは間違っていると思います。
ご理解されているように「レンツの法則」で理解すべきと僕も思います。
あわせて、次の記事の2つめの例をお読みいただければと思います。
自然法則: 量子力学による古典物理学の謎の解明
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a1e326855ceb0a640f75c08d2c0fb423
これで安心して先に進めます。
(先ほどの箇所は全体の流れとはあまり関係ないようですね)
また、興味深い記事を紹介していただき学習のモチベーションが上がりました。(ブルーバックスなどもモチベーションの維持のために時々読んでいる感じです)私は、とねさんと(多分)同世代で、細々とではありますが勉強を続けてきました。電磁気学や量子力学など、基礎的なところをキッチリと勉強しなおそうと思います。
疑問が解決してよかったです。僕
僕と同年代の方なのですね。僕は今月58歳になります。
今回の件は、著者の吉田先生が「弘法も筆の誤り」をされたということになるのでしょうね。
これからもよろしくお願いいたします!