とね日記

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相対性理論への数学的第一歩 ~共変微分のやさしい説明~

2008年06月08日 14時49分05秒 | 物理学、数学
相対性理論への数学的第一歩
~共変微分のやさしい説明~
著者:多田知記

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2011年11月7日に追記

その後、本書は改訂された。お買い求めになる方は新版をどうぞ。

新版 相対性理論への数学的第一歩―共変微分のやさしい説明:多田知記
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時空の幾何学
数学的理解なしに相対性理論は語れない!!
独学でがんばる人、趣味で楽しむ人、途中で挫けた人…に最適な入門書

相対性理論を真に理解するために必要な数学的基礎を徹底的にやさしく丁寧に解説
~ 反変ベクトル、共変ベクトル、テンソル、共変微分等 ~

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数式をなるべく使わずにアインシュタイン選集を紹介していく中で、最初の難関となるのがリーマン幾何学という曲がった空間を扱う数学や、その空間で成り立つ共変微分という数学だ。アインシュタイン自身も一般相対性理論を展開するにあたってリーマン幾何学を苦労して身に着けた。アインシュタイン選集(2)の[A3]の論文の中であえて「B. 一般共変方程式に対する数学的準備」というセクションを設けて論文の読者の便宜をはかっている。

共変微分を理解するためには、次のようなことを順に理解していかなければならない。すなわち、計量行列(テンソル)、斜交座標、接ベクトル、反変ベクトルと共変ベクトル、テンソル、曲線座標の座標変換、曲線座標上でのベクトルの平行移動、接続係数、ベクトルやテンソルの共変微分などである。一般相対性理論を勉強しようとする人が最初に超えなければならない壁が、まさにこれらの数学なのだ。

僕もこのブログの「腕の見せどころ」という記事でこれらの数学を文章だけで説明できると意気込んだが、実際は「[A3] B 一般共変方程式に対する数学的準備」の記事でわかるように、あえなくわかりやすく説明することを放棄してとりあえず先に進むことにしてしまった。(ごめんなさい。)

今日紹介する「相対性理論への数学的第一歩 ~共変微分のやさしい説明~」は、まさに僕が放棄してしまった数学的内容をわかりやすく具体的な数式を使って解説した格好の入門書だ。相対性理論を理解するための数学にターゲットを絞った100ページほどの薄い本なのでアインシュタイン選集に本格的に取り組む前に読んでおくと、見通しよく効率のよい理解ができるようになると思う。数学的にも不必要な抽象化はされていず、なるべく具体的にわかりやすくという方針がつら抜かれているので読者としてはありがたい。本書は昨年の10月に第1版が発売されたばかりだ。

著者の多田知記さんという方は愛媛大学数学科を卒業された後、現在は公立中学校の先生をされているそうだ。多田さんのように、数学や物理を深く勉強された先生から教えてもらえる生徒は恵まれていると僕は思った。

なお、本書は相対性理論を学ぶにあたって必要になる数学の入門書であって、相対性理論の解説書ではないことを注意しておく。相対性理論を数式を使って勉強したい方には「時空の幾何学:特殊および一般相対論の数学的基礎」や「趣味で相対論」のほうをお勧めする。

以下に本書のまえがきから多田さんご自身による本書の紹介を抜粋する。

(一般的は相対性理論の本については)読む側からするとこの数学的な内容で挫折してしまうのである。いきなり反変ベクトル、共変ベクトルの説明があり、あっという間にテンソル、共変微分がでてくる。何となく分かったような分からんような、もやっとした感じで、どうにか式変形は追っていけても本当に分かっているとは思えない、そう思いつつ読み続けようと努力するが、結局その努力は無駄になり途中で挫折してしまうのである。

それじゃということで今度は数学の本できちんと調べようとすると、これがまたいきなり程度が高くなり、高度で難解な記述が続き、理解するためにはかなりの時間と労力を要する。ましてや相対性理論に関係ある内容だけをうまく拾い読みしていくことはさらに困難である。何か他人事みたいな事を言っているがこれは私自身のことである。

本書は反変ベクトル、共変ベクトル、テンソル、共変微分等について自分自身の経験からやさしく、丁寧に解説したものである。ごく一部の限られた内容しか解説をしていないが、相対性理論の本を読んで途中で諦めた人、これから独学で相対性理論を勉強しようと思っている人等にとっては適した本ではないかと思う。なお、この本を読むには線形代数と偏微分の基礎的な知識は必要である。

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相対性理論への数学的第一歩
~共変微分のやさしい説明~

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2011年11月7日に追記

その後、本書は改訂された。お買い求めになる方は新版をどうぞ。

新版 相対性理論への数学的第一歩―共変微分のやさしい説明:多田知記
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目次

1. 直交座標
2. 斜交座標
3. 曲線座標上の接ベクトル
4. 曲線座標上での微小距離
5. 4次元リーマン空間
6. 反変ベクトル、共変ベクトル
7. 反変ベクトルと共変ベクトルの関係
8. 2階のテンソル
9. 曲線座標の座標変換
10.曲線座標におけるベクトル、テンソル
11.相対性理論におけるテンソルの役割
12.平行移動を調べるための予備的考察
13.曲線座標上でのベクトルの平行移動
14.テイラーの定理
15.接続係数の変換則
16.接続係数の対称性
17.接続係数を求める
18.反変ベクトルの平行移動
19.ベクトルの共変微分
20.ベクトルの共変微分の変換則
21.テンソルの共変微分
22.テンソルの共変微分の変換則
23.計量テンソルの共変微分

関連リンク:

アインシュタイン選集(1)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/26d6fc929bf7b9f0fc1e2a210882f559

アインシュタイン選集(2):読みはじめた
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d3d0869ab3911e84845b5b121bd1aa3e

時空の幾何学:特殊および一般相対論の数学的基礎
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/ffc643a688ce45dec7460d107fe1392e

少年の頃の夢(の続き)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a6e4b9271cd56b2e85c3bdaa0b8b7cae

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