「幾何学から物理学へ: 谷村省吾」物理を圏論・微分幾何の言葉で語ろう
内容紹介:
『理工系のためのトポロジー・圏論・微分幾何』(2006年、SGC-52、電子版:2013年)の姉妹編。前書では説明しきれなかった数学概念について詳しい説明を補い、かつ、もの足りなかった応用編の部分を拡充することが、本書の狙いである。月刊誌「数理科学」の同名の連載(2016年8月~2019年1月)の待望の一冊化。
2019年6月21日刊行、194ページ。
著者について:
谷村省吾(たにむら しょうご)
名古屋生まれ、名古屋育ち。関西勤めが長かった。名古屋大学工学部応用物理学科卒業。名古屋大学大学院理学研究科物理学専攻修了。その後、東京大学(学振研究員)、京都大学(助手、講師)、大阪市立大学(助教授)、京都大学(准教授)を経て、2011年に名古屋大学(教授)に着任。2017年に所属部局が情報科学研究科から情報学研究科に、兼任学部が情報文化学部から情報学部に改組された。
ホームページ: http://www.phys.cs.is.nagoya-u.ac.jp/~tanimura/
ツイッター: @tani6s
谷村先生の著書:
「幾何学から物理学へ―物理を圏論・微分幾何の言葉で語ろう」数理科学SGCライブラリ150, サイエンス社 (2019)
微分幾何の基本概念、および、微分幾何の物理への応用の解説書。微分幾何を理解するための代数(テンソル代数や外積代数)の構成にかなり力を入れています。向き付けと捩テンソルの説明が独特です。微分形式のスハウテン表示をシステマティックに導入しました。圏論については、表立って書かれている量は少ないですが、底流でつねに意識しています。電磁気学とハミルトン形式の力学をすべて幾何学的に見通し良く定式化しようという目論見をもって著しました。 補足解説ウェブ別録もあります。
「理工系のためのトポロジー・圏論・微分幾何 ―双対性の視点から」数理科学SGCライブラリ52, サイエンス社 (2006)
物理系の学生向けのトポロジーと微分幾何学の入門書。圏論(category theory)の解説書としては最も易しい本だろうと思います。おかげさまで冊子版は売り切れて、現在、電子版のみの販売になっています。
「ゼロから学ぶ数学・物理の方程式」講談社 (2005)
代数方程式から微分方程式までを解説した、とても易しい教科書です。これを読めば数式の意味がわかるようになると思います。ミスプリントについては正誤表を公開しています。
理数系書籍のレビュー記事は本書で418冊目。
先月からツイッターで話題になっている理数系本のうちの1冊。力学系の本はいったん横に置き、人気本の誘惑に負けてしまった。数理科学系・数理物理系の本は想像力を掻き立てられてワクワクする。
本書の前著(姉妹本)は9年前に読んでいて「理工系のための トポロジー・圏論・微分幾何:谷村省吾」という記事で紹介している。当時は自分の勉強がまだ十分に進んでおらず難しい本という印象だった。今回この姉妹本もざっと読み直してみたところ、するすると頭に入ってくる。この9年の学習成果があったようだ。この姉妹本は現在、紙の本は購入できないからサイエンス社のこのページからPDFファイルのみ購入できる状況だ。
今回の本は、姉妹本では説明しきれなかった数学概念について、詳しい説明を補い、前書では物足りなかった部分を拡充したものである。理工系の学生と研究者が対象読者だ。本書へかける谷村先生の想いと意気込みは4ページにおよぶ「まえがき」と「あとがき」そして、本書に書ききれなかったことを「補足解説ウェブ別録」として無料公開されていることから伝わってくる。
姉妹本があるとはいえ、読まなくても今回の本は読むことができる。章立ては次のとおり。
第1章 集合と写像
第2章 ベクトル空間と双対空間
第3章 ベクトル空間の枠と変換則
第4章 枠・枠変換と関手・自然変換
第5章 テンソル積の普遍性
第6章 テンソル代数と物理量
第7章 外積代数
第8章 向き付けと捩テンソル
第9章 スハウテン表示と鎖体・境界
第10章 体積形式と内積とホッジ変換
第11章 ミンコフスキー計量とシンプレクティック形式
第12章 多様体
第13章 多様体上の微積分
第14章 ホモロジーとコホモロジー
第15章 幾何学的な電磁気学
第16章 カレントで表される電磁気量
第17章 物質中の電磁場
第18章 幾何学的なハミルトン力学
第19章 リー群・リー代数と力学系の対称性
第20章 力学系の簡約とゲージ対称性
付録A テンソル積と外積の規約
付録B ダルブーの定理の証明
第14章までで純粋に「幾何学」を解説している。(第11章のミンコフスキー時空は少し物理に踏み込んでいる。)第7章までは他の本ですでに学んでいたから理解しやすかった。しかし、数学書で学んでいたため、本書のように簡潔に(厳密な証明をある程度犠牲にして)説明されると話の筋道がはっきりする。第10章以降も既習の部分が多かったが、理解が十分でなかったからとても助かった。特に「捩形式カレント」という日本ではあまり使われていない数学概念の説明をしていただいているのがありがたい。(「捩形式」は「れいけいしき」と読む。)
第15章以降が物理法則への応用が書かれている部分。姉妹本に比べてこれに多くのページを割いている。ここまで幾何学が適用できてしまうのかと驚く箇所だ。「自然という書物は数学という言葉で書かれている。」というガリレイの言葉を彷彿させる。電磁気学ではいわゆる「ベクトル解析」を物理数学として学ぶが、それはどちらかというと数学を物理の道具として使っているイメージが強い。第14章までの微分幾何が描き出す電磁気の法則は、物理数学をはるかに超えた「理論化」である。こういうのが僕は好きなんだよなぁ。
「マクスウェル方程式を1本にまとめたのは誰?」という記事では、「EMANの物理学」の広江さんが公開している形の数式を詳しく紹介したが、おがわけんたろうさんから教えていただいた「相対論的なマックスウェルの方程式の微分形式での表現」を結果だけ書いていた。本書にはその式の導出手順を第15章の最後に紹介している。これはうれしかった。
第18章~第20章は、僕には少し難し過ぎて未消化に終わったところがあるが、知的興奮と刺激は十分いただいた気がする。特にハミルトン系微分方程式が扱われる力学系(例えば「Hirsch・Smale・Devaney 力学系入門 ―微分方程式からカオスまで―」)の勉強を始めたばかりだし、次に読む予定の「ディープラーニングと物理学」(Kindle版)ではハミルトニアンによる統計物理が重要だから、第18章の「幾何学的なハミルトン力学」はしっかり学びなおしておきたい。
圏や関手は姉妹書よりわかりやすいと感じた。また、枠や枠変換、自然変換などは、本書で初めて知った数学概念だった。
ツイッターで話題になっているだけのことはある。折に触れて取り出して復習したい本だと思った。あと「坪井俊先生の幾何学三部作」も読みなおしたいと思うようになった。僕は3冊とも自炊してしまったが、最初の2冊はすでにKindle版で発売されていることに気がついた。
注意: 1冊目の「多様体入門:坪井俊」は、まず「多様体の基礎: 松本幸夫著」をお読みになってからのほうがよいと思う。
関連記事:
理工系のための トポロジー・圏論・微分幾何:谷村省吾
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3f58e5c285fe4c45a9a551593a72940a
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「幾何学から物理学へ: 谷村省吾」物理を圏論・微分幾何の言葉で語ろう
第1章 集合と写像
1.1 数学記号の書き方・読み方
1.2 ラッセルのパラドクス
1.3 写像と図式
第2章 ベクトル空間と双対空間
2.1 体と環
2.2 ベクトル空間と線形写像
2.3 双対空間
2.4 引き戻しと双対作用素
2.5 数ベクトル空間の双対空間
第3章 ベクトル空間の枠と変換則
3.1 数ベクトル空間
3.2 部分空間
3.3 枠とベクトルの成分表示
3.4 作用素の行列表示
3.5 枠の変換
3.6 作用素の行列表示の変換則
第4章 枠・枠変換と関手・自然変換
4.1 ベクトル空間の枠
4.2 圏
4.3 関手
4.4 自然変換
4.5 普遍性
第5章 テンソル積の普遍性
5.1 多重線形写像
5.2 関数積としてのテンソル積
5.3 テンソル積空間の普遍性
5.4 圏論的テンソル積空間の構成
5.5 テンソルの同等な書き換え
第6章 テンソル代数と物理量
6.1 テンソルとしての物理量と次元解析
6.2 高階のテンソル
6.3 テンソル成分の変換則
6.4 テンソルどうしのテンソル積
6.5 縮約とトレース
第7章 外積代数
7.1 面積と反対称性
7.2 コベクトルの外積
7.3 ベクトルの外積
7.4 外積の圏論的特徴
第8章 向き付けと捩テンソル
8.1 向きについて考える
8.2 向き付け
8.3 捩形式
8.4 向き集合の双対
8.5 高階の捩テンソル
8.6 写像の向き
8.7 捩テンソルの成分の変換則
8.8 絶対値のような写像
第9章 スハウテン表示と鎖体・境界
9.1 向き付けと捩形式
9.2 等位面の族
9.3 ベクトルの図示化
9.4 コベクトルの図示化
9.5 捩ベクトルの図示化
9.6 捩コベクトルの図示化
9.7 鎖体と境界
第10章 体積形式と内積とホッジ変換
10.1 横切る図形と横切られる図形の双対性
10.2 体積形式
10.3 双線形形式
10.4 ユークリッド計量
10.5 ホッジ変換
第11章 ミンコフスキー計量とシンプレクティック形式
11.1 ミンコフスキー空間
11.2 ローレンツ変換
11.3 ミンコフスキー空間の幾何と物理
11.4 ミンコフスキー計量が誘導する体積形式とホッジ変換
11.5 シンプレクティック形式
第12章 多様体
12.1 多様体論は何をするのか,なぜそれをするのか
12.2 多様体
12.3 多様体から多様体への写像
12.4 接ベクトルと余接ベクトル
12.5 座標変換と接ベクトル・余接ベクトルの成分の変換
12.6 多様体間の写像から派生する写像
12.7 テンソル束とテンソル場
第13章 多様体上の微積分
13.1 ベクトル場が生成するフロー
13.2 リー微分
13.3 多様体の境界と向き
13.4 微分形式の積分
第14章 ホモロジーとコホモロジー
14.1 なぜ微分形式は積分されるのか
14.2 接的向きから横断的向きへの変更
14.3 捩鎖体の横断的向き付け
14.4 捩鎖体の境界
14.5 捩微分形式の捩鎖体上の積分
14.6 外微分とストークスの定理
14.7 ホモロジー群とコホモロジー群
14.8 ホモトピーとポアンカレの補題
第15章 幾何学的な電磁気学
15.1 電荷と電流
15.2 静電場とスカラーポテンシャル
15.3 磁場とベクトルポテンシャル
15.4 ファラデイの法則
15.5 ガウスの法則
15.6 アンペール・マクスウェルの法則
15.7 マクスウェル方程式と構成方程式
15.8 相対論的定式化
第16章 カレントで表される電磁気量
16.1 ペアリング
16.2 カレント
16.3 カレントの微分
16.4 局在した電磁気量
第17章 物質中の電磁場
17.1 束縛電荷と自由電荷
17.2 平滑化
17.3 物質中の電磁場の方程式
17.4 分極と磁化の幾何学的意味
17.5 物質中の電磁場の測定方法
17.6 電磁場のエネルギー・運動量とアブラハム・ミンコフスキー論争
第18章 幾何学的なハミルトン力学
18.1 幾何学と力学
18.2 シンプレクティック多様体
18.3 シンプレクティック多様体の局所的な構造
18.4 ハミルトンベクトル場と変分原理
18.5 ポアソン括弧
18.6 積分不変量
第19章 リー群・リー代数と力学系の対称性
19.1 対称性と群
19.2 リー群
19.3 リー代数
19.4 シンプレクティック変換
19.5 対称性と保存則
19.6 運動量写像
第20章 力学系の簡約とゲージ対称性
20.1 ラグランジアンの循環座標と簡約
20.2 ハミルトニアンの簡約
20.3 マルスデン・ワインスタイン簡約
20.4 電荷保存則による簡約
付録A テンソル積と外積の規約
付録B ダルブーの定理の証明
B.1 反対称双線形形式の標準形
B.2 ダルブーの定理
あとがき
参考文献
索引
内容紹介:
『理工系のためのトポロジー・圏論・微分幾何』(2006年、SGC-52、電子版:2013年)の姉妹編。前書では説明しきれなかった数学概念について詳しい説明を補い、かつ、もの足りなかった応用編の部分を拡充することが、本書の狙いである。月刊誌「数理科学」の同名の連載(2016年8月~2019年1月)の待望の一冊化。
2019年6月21日刊行、194ページ。
著者について:
谷村省吾(たにむら しょうご)
名古屋生まれ、名古屋育ち。関西勤めが長かった。名古屋大学工学部応用物理学科卒業。名古屋大学大学院理学研究科物理学専攻修了。その後、東京大学(学振研究員)、京都大学(助手、講師)、大阪市立大学(助教授)、京都大学(准教授)を経て、2011年に名古屋大学(教授)に着任。2017年に所属部局が情報科学研究科から情報学研究科に、兼任学部が情報文化学部から情報学部に改組された。
ホームページ: http://www.phys.cs.is.nagoya-u.ac.jp/~tanimura/
ツイッター: @tani6s
谷村先生の著書:
「幾何学から物理学へ―物理を圏論・微分幾何の言葉で語ろう」数理科学SGCライブラリ150, サイエンス社 (2019)
微分幾何の基本概念、および、微分幾何の物理への応用の解説書。微分幾何を理解するための代数(テンソル代数や外積代数)の構成にかなり力を入れています。向き付けと捩テンソルの説明が独特です。微分形式のスハウテン表示をシステマティックに導入しました。圏論については、表立って書かれている量は少ないですが、底流でつねに意識しています。電磁気学とハミルトン形式の力学をすべて幾何学的に見通し良く定式化しようという目論見をもって著しました。 補足解説ウェブ別録もあります。
「理工系のためのトポロジー・圏論・微分幾何 ―双対性の視点から」数理科学SGCライブラリ52, サイエンス社 (2006)
物理系の学生向けのトポロジーと微分幾何学の入門書。圏論(category theory)の解説書としては最も易しい本だろうと思います。おかげさまで冊子版は売り切れて、現在、電子版のみの販売になっています。
「ゼロから学ぶ数学・物理の方程式」講談社 (2005)
代数方程式から微分方程式までを解説した、とても易しい教科書です。これを読めば数式の意味がわかるようになると思います。ミスプリントについては正誤表を公開しています。
理数系書籍のレビュー記事は本書で418冊目。
先月からツイッターで話題になっている理数系本のうちの1冊。力学系の本はいったん横に置き、人気本の誘惑に負けてしまった。数理科学系・数理物理系の本は想像力を掻き立てられてワクワクする。
本書の前著(姉妹本)は9年前に読んでいて「理工系のための トポロジー・圏論・微分幾何:谷村省吾」という記事で紹介している。当時は自分の勉強がまだ十分に進んでおらず難しい本という印象だった。今回この姉妹本もざっと読み直してみたところ、するすると頭に入ってくる。この9年の学習成果があったようだ。この姉妹本は現在、紙の本は購入できないからサイエンス社のこのページからPDFファイルのみ購入できる状況だ。
今回の本は、姉妹本では説明しきれなかった数学概念について、詳しい説明を補い、前書では物足りなかった部分を拡充したものである。理工系の学生と研究者が対象読者だ。本書へかける谷村先生の想いと意気込みは4ページにおよぶ「まえがき」と「あとがき」そして、本書に書ききれなかったことを「補足解説ウェブ別録」として無料公開されていることから伝わってくる。
姉妹本があるとはいえ、読まなくても今回の本は読むことができる。章立ては次のとおり。
第1章 集合と写像
第2章 ベクトル空間と双対空間
第3章 ベクトル空間の枠と変換則
第4章 枠・枠変換と関手・自然変換
第5章 テンソル積の普遍性
第6章 テンソル代数と物理量
第7章 外積代数
第8章 向き付けと捩テンソル
第9章 スハウテン表示と鎖体・境界
第10章 体積形式と内積とホッジ変換
第11章 ミンコフスキー計量とシンプレクティック形式
第12章 多様体
第13章 多様体上の微積分
第14章 ホモロジーとコホモロジー
第15章 幾何学的な電磁気学
第16章 カレントで表される電磁気量
第17章 物質中の電磁場
第18章 幾何学的なハミルトン力学
第19章 リー群・リー代数と力学系の対称性
第20章 力学系の簡約とゲージ対称性
付録A テンソル積と外積の規約
付録B ダルブーの定理の証明
第14章までで純粋に「幾何学」を解説している。(第11章のミンコフスキー時空は少し物理に踏み込んでいる。)第7章までは他の本ですでに学んでいたから理解しやすかった。しかし、数学書で学んでいたため、本書のように簡潔に(厳密な証明をある程度犠牲にして)説明されると話の筋道がはっきりする。第10章以降も既習の部分が多かったが、理解が十分でなかったからとても助かった。特に「捩形式カレント」という日本ではあまり使われていない数学概念の説明をしていただいているのがありがたい。(「捩形式」は「れいけいしき」と読む。)
第15章以降が物理法則への応用が書かれている部分。姉妹本に比べてこれに多くのページを割いている。ここまで幾何学が適用できてしまうのかと驚く箇所だ。「自然という書物は数学という言葉で書かれている。」というガリレイの言葉を彷彿させる。電磁気学ではいわゆる「ベクトル解析」を物理数学として学ぶが、それはどちらかというと数学を物理の道具として使っているイメージが強い。第14章までの微分幾何が描き出す電磁気の法則は、物理数学をはるかに超えた「理論化」である。こういうのが僕は好きなんだよなぁ。
「マクスウェル方程式を1本にまとめたのは誰?」という記事では、「EMANの物理学」の広江さんが公開している形の数式を詳しく紹介したが、おがわけんたろうさんから教えていただいた「相対論的なマックスウェルの方程式の微分形式での表現」を結果だけ書いていた。本書にはその式の導出手順を第15章の最後に紹介している。これはうれしかった。
第18章~第20章は、僕には少し難し過ぎて未消化に終わったところがあるが、知的興奮と刺激は十分いただいた気がする。特にハミルトン系微分方程式が扱われる力学系(例えば「Hirsch・Smale・Devaney 力学系入門 ―微分方程式からカオスまで―」)の勉強を始めたばかりだし、次に読む予定の「ディープラーニングと物理学」(Kindle版)ではハミルトニアンによる統計物理が重要だから、第18章の「幾何学的なハミルトン力学」はしっかり学びなおしておきたい。
圏や関手は姉妹書よりわかりやすいと感じた。また、枠や枠変換、自然変換などは、本書で初めて知った数学概念だった。
ツイッターで話題になっているだけのことはある。折に触れて取り出して復習したい本だと思った。あと「坪井俊先生の幾何学三部作」も読みなおしたいと思うようになった。僕は3冊とも自炊してしまったが、最初の2冊はすでにKindle版で発売されていることに気がついた。
注意: 1冊目の「多様体入門:坪井俊」は、まず「多様体の基礎: 松本幸夫著」をお読みになってからのほうがよいと思う。
関連記事:
理工系のための トポロジー・圏論・微分幾何:谷村省吾
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3f58e5c285fe4c45a9a551593a72940a
メルマガを書いています。(目次一覧)
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「幾何学から物理学へ: 谷村省吾」物理を圏論・微分幾何の言葉で語ろう
第1章 集合と写像
1.1 数学記号の書き方・読み方
1.2 ラッセルのパラドクス
1.3 写像と図式
第2章 ベクトル空間と双対空間
2.1 体と環
2.2 ベクトル空間と線形写像
2.3 双対空間
2.4 引き戻しと双対作用素
2.5 数ベクトル空間の双対空間
第3章 ベクトル空間の枠と変換則
3.1 数ベクトル空間
3.2 部分空間
3.3 枠とベクトルの成分表示
3.4 作用素の行列表示
3.5 枠の変換
3.6 作用素の行列表示の変換則
第4章 枠・枠変換と関手・自然変換
4.1 ベクトル空間の枠
4.2 圏
4.3 関手
4.4 自然変換
4.5 普遍性
第5章 テンソル積の普遍性
5.1 多重線形写像
5.2 関数積としてのテンソル積
5.3 テンソル積空間の普遍性
5.4 圏論的テンソル積空間の構成
5.5 テンソルの同等な書き換え
第6章 テンソル代数と物理量
6.1 テンソルとしての物理量と次元解析
6.2 高階のテンソル
6.3 テンソル成分の変換則
6.4 テンソルどうしのテンソル積
6.5 縮約とトレース
第7章 外積代数
7.1 面積と反対称性
7.2 コベクトルの外積
7.3 ベクトルの外積
7.4 外積の圏論的特徴
第8章 向き付けと捩テンソル
8.1 向きについて考える
8.2 向き付け
8.3 捩形式
8.4 向き集合の双対
8.5 高階の捩テンソル
8.6 写像の向き
8.7 捩テンソルの成分の変換則
8.8 絶対値のような写像
第9章 スハウテン表示と鎖体・境界
9.1 向き付けと捩形式
9.2 等位面の族
9.3 ベクトルの図示化
9.4 コベクトルの図示化
9.5 捩ベクトルの図示化
9.6 捩コベクトルの図示化
9.7 鎖体と境界
第10章 体積形式と内積とホッジ変換
10.1 横切る図形と横切られる図形の双対性
10.2 体積形式
10.3 双線形形式
10.4 ユークリッド計量
10.5 ホッジ変換
第11章 ミンコフスキー計量とシンプレクティック形式
11.1 ミンコフスキー空間
11.2 ローレンツ変換
11.3 ミンコフスキー空間の幾何と物理
11.4 ミンコフスキー計量が誘導する体積形式とホッジ変換
11.5 シンプレクティック形式
第12章 多様体
12.1 多様体論は何をするのか,なぜそれをするのか
12.2 多様体
12.3 多様体から多様体への写像
12.4 接ベクトルと余接ベクトル
12.5 座標変換と接ベクトル・余接ベクトルの成分の変換
12.6 多様体間の写像から派生する写像
12.7 テンソル束とテンソル場
第13章 多様体上の微積分
13.1 ベクトル場が生成するフロー
13.2 リー微分
13.3 多様体の境界と向き
13.4 微分形式の積分
第14章 ホモロジーとコホモロジー
14.1 なぜ微分形式は積分されるのか
14.2 接的向きから横断的向きへの変更
14.3 捩鎖体の横断的向き付け
14.4 捩鎖体の境界
14.5 捩微分形式の捩鎖体上の積分
14.6 外微分とストークスの定理
14.7 ホモロジー群とコホモロジー群
14.8 ホモトピーとポアンカレの補題
第15章 幾何学的な電磁気学
15.1 電荷と電流
15.2 静電場とスカラーポテンシャル
15.3 磁場とベクトルポテンシャル
15.4 ファラデイの法則
15.5 ガウスの法則
15.6 アンペール・マクスウェルの法則
15.7 マクスウェル方程式と構成方程式
15.8 相対論的定式化
第16章 カレントで表される電磁気量
16.1 ペアリング
16.2 カレント
16.3 カレントの微分
16.4 局在した電磁気量
第17章 物質中の電磁場
17.1 束縛電荷と自由電荷
17.2 平滑化
17.3 物質中の電磁場の方程式
17.4 分極と磁化の幾何学的意味
17.5 物質中の電磁場の測定方法
17.6 電磁場のエネルギー・運動量とアブラハム・ミンコフスキー論争
第18章 幾何学的なハミルトン力学
18.1 幾何学と力学
18.2 シンプレクティック多様体
18.3 シンプレクティック多様体の局所的な構造
18.4 ハミルトンベクトル場と変分原理
18.5 ポアソン括弧
18.6 積分不変量
第19章 リー群・リー代数と力学系の対称性
19.1 対称性と群
19.2 リー群
19.3 リー代数
19.4 シンプレクティック変換
19.5 対称性と保存則
19.6 運動量写像
第20章 力学系の簡約とゲージ対称性
20.1 ラグランジアンの循環座標と簡約
20.2 ハミルトニアンの簡約
20.3 マルスデン・ワインスタイン簡約
20.4 電荷保存則による簡約
付録A テンソル積と外積の規約
付録B ダルブーの定理の証明
B.1 反対称双線形形式の標準形
B.2 ダルブーの定理
あとがき
参考文献
索引