先日までNEWS ZEROの火曜日担当キャスターをつとめていたサイエンスライターの竹内薫先生による「闘う物理学者!天才たちの華麗なる喧嘩」という一般向けに書かれた本を紹介する。
書店で見かけたとき、歴史上の物理学者たちが専門分野で自分にとってのライバル学者と議論するという内容だろうと思ったが、読んでみるとそれ以上だった。闘う相手はライバルだけでなく、彼の所属していた組織や社会、国家、偏見に満ちた物理学会、そして自分自身であった。自分の研究に対する闘いのほかに、このようなものとも闘うことを余儀なくされた人間のとしての姿を浮き彫りにする。
この2年間、物理の勉強をしてきたおかげで、この本に登場する物理学者と業績については知っていた。それでもこの本が興味深く読めたのは、物理学者の人間的な側面を取り上げていたからであり、ところどころに挿入された竹内先生のちょっと皮肉を交えたな私見が、科学者の伝記を現代に引き戻し、リアリティを高めているからだと思う。
物理のことをよく知らない方でも、また専門の科学者であっても興味を持って読み進められるコーヒーブレイク的な本なので、よろしかったら読んでみてほしい。一般書なので数式はでてこない。竹内先生の文章力のおかげで、他の一般書のようにどこかで読んだような説明を繰り返し読まされるような退屈さは感じなくてすむ。量子論の実在論と実証論をめぐる哲学的な対立もアインシュタインの時代の昔話として終わらせず、現代物理学でもいまだに論争されて続けていることも、対立する理論の説明に沿いながらていねいに解説しているので前提知識のない読者でも知的好奇心を満たせると思う。このあたりが「竹内ワールド」の魅力だ。
以下、この本の目次を紹介する。
「闘う物理学者!天才たちの華麗なる喧嘩」
* 物理学者に必要なのは、実力か人気か(ファインマン vs. ゲルマン)
生真面目ゲルマンと、不真面目ファインマン
名コピーライター、ゲルマン
「弱い力」を巡る争い
性格も業績もフレンドリーなファインマン
「憧れ」転じて「憎しみ」となる
* 350年にわたった無数の馬鹿者たちとの闘い(ガリレオ vs. ローマ法王)
ガリレオと無数の馬鹿者たち
ガリレオは相対性原理を発見した
第一次裁判のプロローグ
第一次裁判 ? 聖書と科学の両立
異端審問のカラクリ
第二次裁判前後 ? 裏切りの序曲
第二次裁判決着 ? ローマ法王のパフォーマンス
たそがれガリレオ
* 永遠にわかりあえない2人(アインシュタイン vs. ボーア)
実在論と実証論
量子は粒子であると同時に波動である
ラウンド1- 「2スリット実験」
ラウンド2- 「アインシュタインの箱」
ラウンド3- 「EPRのパラドックス」
光の速度を超えるものはあるか?
量子は宝くじのようなもの?
やっぱり納得がいかないアインシュタイン
* ビジネスモデルとしての物理学賞(ノーベル賞 vs. フランクリンメダル)
日本人はノーベル賞がお好き
受賞の秘訣は「長生き」?
世界で最も保守的な賞
偉大なるノーベル賞への2、3の疑問
ららら科学の賞
日本人とフランクリンメダル
不遇の日本人科学者たち
ノーベル賞、1人勝ちの理由
* 異端の烙印を押された科学者(ボーム vs. アメリカ「帝国」)
孤高の物理学者
「赤狩り」の時代が生んだ悲劇
猫は生きていると同時に死んでいる?
美しい解釈と醜い解釈
無視されたノーベル賞級の発見
重要なのは場か、ポテンシャルか?
量子論と東洋思想の出会い
すべてはつながっている
* 超秀才物理学者の独奏曲(ランダウ vs. スターリン)
超天才による超秀才のための物理学教科書
ソビエトの異端児ランダウ
西欧ショック
芽生え始めた共産主義への疑問
逮捕の真相 ? ランダウの理想と現実とのギャップ
東国そして釈放へ ? もつべきものは優秀な頭脳
逮捕されたおかげでノーベル賞?
超秀才の悲劇
* 数多の逆境と闘い抜いた生涯(マリー・キュリー vs. 差別)
キュリー夫人からマリー・キュリーへ
存在自体が周囲にプラスの影響を与える
突然、マリーを襲った悲劇
妖しく輝くラジウムの火
4つのノーベル賞をとった一族
放射性物質に汚染された手紙
闘うマリー・キュリー
* 天才同士の苦悩と葛藤(湯川秀樹 vs. 朝永振一郎)
日本物理学界のスーパースター
暗黒のドイツ留学
非凡な科学インタープリター、朝永
真昼の星と中間子
文学の美と物理学の美は同じか
父親に評価されていなかった湯川少年
同じ道を歩む優れた同行者
なぜ、原子核はバラバラにならないのか?
「無限大」の永久追放
偉大な物理学者は眠らない
* 違う世界に棲んでいる師弟(ホーキング vs. ペンローズ)
車椅子のニュートン
サーの称号をもつ物理学者
ツイスター理論は廃れた?
特異点とはなんだろう?
事象の地平線はぼやけている?
実在論と実証論の闘い
虚時間は実証論の代表格
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書店で見かけたとき、歴史上の物理学者たちが専門分野で自分にとってのライバル学者と議論するという内容だろうと思ったが、読んでみるとそれ以上だった。闘う相手はライバルだけでなく、彼の所属していた組織や社会、国家、偏見に満ちた物理学会、そして自分自身であった。自分の研究に対する闘いのほかに、このようなものとも闘うことを余儀なくされた人間のとしての姿を浮き彫りにする。
この2年間、物理の勉強をしてきたおかげで、この本に登場する物理学者と業績については知っていた。それでもこの本が興味深く読めたのは、物理学者の人間的な側面を取り上げていたからであり、ところどころに挿入された竹内先生のちょっと皮肉を交えたな私見が、科学者の伝記を現代に引き戻し、リアリティを高めているからだと思う。
物理のことをよく知らない方でも、また専門の科学者であっても興味を持って読み進められるコーヒーブレイク的な本なので、よろしかったら読んでみてほしい。一般書なので数式はでてこない。竹内先生の文章力のおかげで、他の一般書のようにどこかで読んだような説明を繰り返し読まされるような退屈さは感じなくてすむ。量子論の実在論と実証論をめぐる哲学的な対立もアインシュタインの時代の昔話として終わらせず、現代物理学でもいまだに論争されて続けていることも、対立する理論の説明に沿いながらていねいに解説しているので前提知識のない読者でも知的好奇心を満たせると思う。このあたりが「竹内ワールド」の魅力だ。
以下、この本の目次を紹介する。
「闘う物理学者!天才たちの華麗なる喧嘩」
* 物理学者に必要なのは、実力か人気か(ファインマン vs. ゲルマン)
生真面目ゲルマンと、不真面目ファインマン
名コピーライター、ゲルマン
「弱い力」を巡る争い
性格も業績もフレンドリーなファインマン
「憧れ」転じて「憎しみ」となる
* 350年にわたった無数の馬鹿者たちとの闘い(ガリレオ vs. ローマ法王)
ガリレオと無数の馬鹿者たち
ガリレオは相対性原理を発見した
第一次裁判のプロローグ
第一次裁判 ? 聖書と科学の両立
異端審問のカラクリ
第二次裁判前後 ? 裏切りの序曲
第二次裁判決着 ? ローマ法王のパフォーマンス
たそがれガリレオ
* 永遠にわかりあえない2人(アインシュタイン vs. ボーア)
実在論と実証論
量子は粒子であると同時に波動である
ラウンド1- 「2スリット実験」
ラウンド2- 「アインシュタインの箱」
ラウンド3- 「EPRのパラドックス」
光の速度を超えるものはあるか?
量子は宝くじのようなもの?
やっぱり納得がいかないアインシュタイン
* ビジネスモデルとしての物理学賞(ノーベル賞 vs. フランクリンメダル)
日本人はノーベル賞がお好き
受賞の秘訣は「長生き」?
世界で最も保守的な賞
偉大なるノーベル賞への2、3の疑問
ららら科学の賞
日本人とフランクリンメダル
不遇の日本人科学者たち
ノーベル賞、1人勝ちの理由
* 異端の烙印を押された科学者(ボーム vs. アメリカ「帝国」)
孤高の物理学者
「赤狩り」の時代が生んだ悲劇
猫は生きていると同時に死んでいる?
美しい解釈と醜い解釈
無視されたノーベル賞級の発見
重要なのは場か、ポテンシャルか?
量子論と東洋思想の出会い
すべてはつながっている
* 超秀才物理学者の独奏曲(ランダウ vs. スターリン)
超天才による超秀才のための物理学教科書
ソビエトの異端児ランダウ
西欧ショック
芽生え始めた共産主義への疑問
逮捕の真相 ? ランダウの理想と現実とのギャップ
東国そして釈放へ ? もつべきものは優秀な頭脳
逮捕されたおかげでノーベル賞?
超秀才の悲劇
* 数多の逆境と闘い抜いた生涯(マリー・キュリー vs. 差別)
キュリー夫人からマリー・キュリーへ
存在自体が周囲にプラスの影響を与える
突然、マリーを襲った悲劇
妖しく輝くラジウムの火
4つのノーベル賞をとった一族
放射性物質に汚染された手紙
闘うマリー・キュリー
* 天才同士の苦悩と葛藤(湯川秀樹 vs. 朝永振一郎)
日本物理学界のスーパースター
暗黒のドイツ留学
非凡な科学インタープリター、朝永
真昼の星と中間子
文学の美と物理学の美は同じか
父親に評価されていなかった湯川少年
同じ道を歩む優れた同行者
なぜ、原子核はバラバラにならないのか?
「無限大」の永久追放
偉大な物理学者は眠らない
* 違う世界に棲んでいる師弟(ホーキング vs. ペンローズ)
車椅子のニュートン
サーの称号をもつ物理学者
ツイスター理論は廃れた?
特異点とはなんだろう?
事象の地平線はぼやけている?
実在論と実証論の闘い
虚時間は実証論の代表格
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