とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
量子テレポーテーションや超弦理論の理解を目指して勉強を続けています!

宇宙の形、ガウスの曲面論と内在幾何(第2回)

2017年01月21日 21時00分17秒 | 理科復活プロジェクト


[テキスト版]

私たちの宇宙は3次元空間ですが、説明をわかりやすくするために2次元空間の宇宙で考えてみましょう。

18世紀から19世紀にかけて2次元の空間、つまり曲面の性質の研究をした数学者がいました。ドイツの有名な数学者のガウスです。

ガウスは、徳川第11代将軍家斉や第12代将軍家慶と同時代を生きた人です。とても頭がよさそうに見えますね。

ガウスの業績をあげればきりがありませんが、そのうちのひとつに「曲面についての研究」があります。高校の数学でも球面や放物面、円錐や円筒の側面などを学びますし、そのうちのいくつかについては数式での表現も学びます。「曲面についての研究」とだけ聞くと、それほど難しいことをやっていたようには思えません。でもそんなはずはありませんよね。彼が業績として遺した曲面の理論については、後で説明することにいたします。


さて、ここでガウスさんに登場してもらいましょう。2次元空間に住んでいる「平面ガウスさん」です。平面にガウスの肖像画を貼り付けて、方眼紙のように縦横に座標を描いてみました。

画像:ガウスの肖像画に方眼紙を重ねた

このガウスさんは平面の世界に縛られているので、縦と横の方向しか認識できません。あなたを見つめているように見えますが、あなたのいる方向はガウスさんが認識できない3つめの方向なので、ガウスさんにあなたは見えていないのです。

1905年に発表されたアインシュタインの特殊相対論によると、物体が等速で運動すると運動する方向に空間が縮むそうです。ですのでガウスさんに横方向に運動してもらいました。私たちから見るとガウスさんの横幅が縮んだことがわかります。この画像です。

画像:横幅が狭くなったガウスさん

でも、ガウスさんは自分の横幅が縮んだことを認識しているでしょうか?空間が縮むのと一緒にガウスさんも縮んだのですから、彼には周囲の空間に変化がおきたとは感じられないのです。ですから彼は自分が縮んでいるとは感じていません。そして彼の周囲にある三角形や円、四角形も形が変わっているようには見えません。

けれども(肖像画には描きませんでしたが)私たちから見るとガウスさんや彼の周囲にある三角形や円、四角形は横方向に縮んで見えるはずです。想像できますよね?

つまり、私たちの住む3次元世界とガウスさんが住む2次元世界の幾何学(面や3次元空間の座標)は別物なのです。私たちとガウスさんは長さの尺度が違う別の世界に生きているのです。

私たちの住む世界の幾何学を「外在幾何」、ガウスさんが住む世界の幾何学を「内在幾何」と呼ぶことにします。ガウスさんがいる2次元の世界の座標を基準にした線と角度だけであらわすから「内在」だというわけです。ガウスさんにとって私たちがいる3次元空間は見ることができない外(高次元)の世界なので、その世界の座標を基準にした線や角度であらわされる幾何学を外在幾何と呼ぶわけです。

ガウスさんの2次元世界は私たちの3次元世界に埋め込まれているので「内と外」という区別をするのです。外在幾何と内在幾何の違いは大切ですので、しっかり覚えてください。

私たちにはガウスさんが2次元の世界に閉じ込められているように見えますが、ガウスさんは3次元世界を知らないのですから自分が閉じ込められているとは思っていません。ガウスさんの宇宙も私たちの宇宙と同様、無限に広がっていますが、利用できる手段は内在幾何だけなのです。


次にとてつもなく大きな重力波がやってきて、空間が波打つ状況を描いてみましょう。次の画像のようにガウスさんの姿は私たちから見ると波打って見えます。

画像:波打ったガウスさん

平面が「正の方向に曲がる」と平面は凸レンズのような曲面になります。私たちからはガウスさんの姿がこのように右の眉毛のところが盛り上がったように見えます。

画像:凸レンズ形に盛り上がったガウスさん

平面が「負の方向に曲がる」と平面は馬の鞍に貼り付けたように曲がります。私たちからはガウスさんの姿がこのように眉や目、口などが鼻のほうに寄って見えます。

画像:へこんだ形の顔をしたガウスさん

さらに続けましょう。空間が渦を巻き始めました。ガウスさんの顔は鼻を中心に渦を巻き、醜く変形してしまいます。

画像:顔が渦巻いているガウスさん

球や円筒の側面にガウスさんの2次元世界を貼り付けることもできます。私たちからはそれぞれ次のようなガウスさんを見ることになります。

球面の世界にいるガウスさん
画像:球面に貼りついたガウスさん

円筒の側面の世界にいるガウスさん
画像:円筒の側面に貼りついたガウスさん


このようにガウスさんのいる空間が変形することで、私たちにはガウスさんの姿がそれぞれ違った形に見えるわけです。

けれどもガウスさんはどのように感じているでしょうか?空間といっしょに自分の形もひきずられて変化するので、ガウスさんは相変わらず自分が真っすぐな空間に住んでいると信じています。彼からは周囲の物体の形にまったく変化は見られません。ここが不思議で面白いところです。

画像:普通の形をしたガウスさん

ガウスさんのいる世界を宇宙だと考えれば、たとえ宇宙が曲がっていてもその内部にいる限り周囲の空間はいつも真っすぐに見えるので、宇宙の形はわからないのだと思えます。でも、はたして本当にそうでしょうか?


ところで、私たちが住んでいる3次元の空間の幾何学はX、Y、Zの3方向に伸びる空間の中であらわされます。これが外在幾何の座標システムで、その中にあるすべての場所は(x, y, z)の座標で示すことができます。この座標システムでガウスさんのいる曲面を方程式にして書くと、それぞれx,y,zを使った複雑な数式で表現できます。(もちろん難し過ぎるからここでは紹介しません。)

ガウスさんが住んでいる2次元の曲面の幾何学はU、Vの2方向に伸びる空間の中であらわされます。これが内在幾何の座標システムで、その中にあるすべての場所は(u, v)の座標で示すことができます。ガウスさんはこの(u, v)座標であらわされる世界を、このように真っすぐな方眼紙の世界のようにとらえています。横方向を u、縦方向が v としておきましょう。

画像:普通の方眼紙

そして私たちの3次元世界からガウスさんの(u, v)の座標であらわされる世界を見ると、たとえば球に貼り付けた方眼紙のように次のように曲がった座標システムに見えるのです。

画像:球面に貼りついた方眼紙


ここからがガウスさんのすごいところです。それは2次元の世界にいながら「もしかしたら私のいる2次元世界は曲がっているのではないか?」と気が付いたことです。そして気が付いただけでなく、その曲面の曲率を数式であらわすことに成功したのです。考えてみてください。ガウスさんが使える座標は u と v の2つだけですよ。

彼がたどり着いた曲面をあらわす数式は次の2つでした。(ここから少し難しくなるので無理そうな方は「まとめ:」というところまで読み飛ばしていただいて構いません。)

第一基本形式
画像:I=Edu^2+2Fdudv+Gdv^2

第二基本形式
画像:II=Ldu^2+2Mdudv+Ndv^2

x, y, zではなく u, v だけであらわされていることがおわかりになると思います。より正確に言えば u, v ではなく du, dv となっていますが、これは u と v の方向に伸びている無限小の長さの線素(線分)の意味で、微分形式といいます。無限小の線素が u, v の2方向に無数つながり編目のようになることで曲面が作られていきます。そして du, dv のような微分形式であらわされた幾何学のことを微分幾何学と呼んでいます。

画像:左下は3次元直交座標、右上は曲面にduとdvを書いた画像

意味はともかく、そのことだけわかれば十分です。詳しい説明はウィキペディアの「驚異の定理」に書いてあります。名前が示すとおり、これはすごい発見だったのです。

なぜすごいかというと、第一基本形式だけでほとんどすべての形の曲面の曲率(正しくはガウス曲率)をあらわせることです。ふつう私たちが球面や放物面を3次元の x, y, z を使って数式にすると面の形が違うのだから数式も違ってきますよね? でもガウスさんが導いたこの数式は、(一部を除き)ほとんどすべての曲面の曲率をあらわすことができる「一般形」、ほぼ万能な数式なのです。

2つの数式は文字の違いを除けばまったく同じ形をしています。けれども2つの数式の意味は違います。

詳しい説明はウィキペディアの「驚異の定理」に書かれていますが、第一基本形式の中のE, F, Gは曲面の中にある長さや角度だけを使って計算される値です。つまり「第一基本形式は、外在する3次元空間の情報を使わずに決まる」ことが重要なのです。

さらに第二基本形式の中のL, M, Nもuとvの関数およびdu, dvによって決まります。そしてこの式は曲面に内在する幾何学が曲面の外に在る(外在する)幾何学(空間)にどのように埋め込まれているかをあらわしているのです。第二基本形式は本質的には外在的なものになります。不思議ですよね。


まとめ:

第一基本形式はガウスさんが住んでいる2次元世界の幾何学、第二基本形式はガウスさんが住んでいる2次元世界の幾何学と私たちが住んでいる3次元の幾何学との結びつき方を示したものということになります。

また第一基本形式は du, dv だけであらわされるわけですから周囲の3次元の空間がなくても2次元の曲面の曲率を導けるということを主張しているのです。ここが2つめにすごいところです。内在幾何の威力ですね。

1つめの驚異:第一基本形式と第二基本形式は、ともにほとんどすべての曲面の曲率を表現している。
2つめの驚異:第一基本形式で求められる曲面の曲率は、その周囲の3次元空間を必要としない。

ということです。曲面を取り囲む3次元空間はあってもなくても構わないのです。

画像:左は3次元直交座標あり、右は3次元直交座標なしの曲面

でも考えてみてください。七輪で切り餅を焼くと真ん中が膨らんで表面は平面から曲面になりますよね。周囲に3次元の空間がなくても切り餅の表面は膨らむことができるというのが2つめの脅威が意味していることです。これはすごいことですよ。なぜなら面が曲がるためには1つ次元の高い3次元空間があるのが私たちの日常感覚ですから。(そして3次元空間が曲がるためには4次元空間が必要です。)

膨らんだ切り餅の写真

そうです。内在幾何、つまり宇宙の中で利用可能な長さや角度を測定すれば、外から見なくても宇宙の形がわかるのです。ガウスさんは曲面の性質を研究しているうちにそのことに気が付き、数式で証明したのです。1827年、彼が50歳のときのことでした。

後にガウスの弟子になり、曲面の研究をより高い次元の空間の理論にあてはめることに成功したベルンハルト・リーマンは、このときまだ1歳になったばかりでした。


大数学者ガウスの曲面の研究は高校数学のレベルをはるかに超えたものであることがおわかりになるでしょう。

難しくなってきたので、ついてこれなくなった方がいると思います。次回の記事では、もっと具体的に、そしてやさしく解説しますのでご安心ください。ガウスの曲面論を使って第1回の記事で提起した「宇宙の形は宇宙の外に出なくてもわかるのか?」を解き明かすことにいたしましょう。

第3回の記事に続きます。


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6 コメント

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Re: 空間感覚 (とね)
2017-01-25 13:56:00
hirotaさん

> 人間が空間を感じる最初は触覚からだそうです。

そう言われて気が付いたのですが、煙が充満したり停電で真っ暗の室内からは視覚障碍者のほうが早く出られるのだろうと思いました。

> 触覚が一番敏感なのは口だからしょうがないかな?

僕もそう思います。指で硬貨を触って区別できますが、それは日ごろ硬貨を触っているから訓練されているということもありますね。試してはいませんが舌で硬貨を舐めたり唇で触れても区別できる気がします。訓練しなくてもできそうですね。時間はかかると思いますが足の指も訓練すればできるようなるのかもしれません。

返信する
空間感覚 (hirota)
2017-01-25 12:49:57
人間が空間を感じる最初は触覚からだそうです。
そういうわけで絵を描くより前に粘土細工…だと口に入れてしまうけど、触覚が一番敏感なのは口だからしょうがないかな?
返信する
匿名希望さま (とね)
2017-01-25 00:53:14
匿名希望さま

及第点をつけていただき、ほっと胸をなでおろしているところです。アドバイスいただき、ありがとうございました。

ベクトルや内積、計量、接平面、法線、ガウス曲率、平均曲率...etc..などの用語を使えば、明瞭かつ具体的に説明できるのですが、高校レベルの読者を排除してしまうことになります。また、日常用語で言葉を尽くしても、詳しく説明すればするほど、文章の流れがつかみにくくなり、それはそれで読者を煙に巻いてしまうことになりがちです。ポイントをズバリ書きながら読み進む意欲を損なわないように書くのは難しいと実感しました。

> もちの例、非常に面白い例えだと思います!

早いもので1月も下旬になってしまいましたが、まだ正月ですので「餅」がよいだろうと思ったわけです。(笑)

> 「E、F、G」の間違いでした。

お気になさらずに!

この記事は理数系でない一般の人にも読んでもらいましたが、3次元空間に対する4次元方向という意味での「外」と、3次元空間の広がりという意味での「外」との違いを納得してもらうのは、なかなか難しいという経験をしています。「4次元方向ってどっち?」というのは説明しにくいですよね。何か良いたとえ話があればと常日頃から考えています。

あと、この連載記事を書くきっかけとなったYanasyさんですが、全盲の大学生です。全盲の方が幾何学をどうとらえるかという点で、目が見える私たちには想像がつかないというか、とても興味深いものがあります。この点は記事では明示しませんでしたが、気付く人だけ気づいていただければと思っています。

この連載記事は2つの拡がりをもっています。ひとつはYanasyさんのことを引用することで、視覚障碍者が数学を学ぶことへの関心を喚起することです。数学記号をあらわす点字記法を発案したのは「ネメス」という数学者です。
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/4eff04be772bb5d20f62a886c2502a5f

あと「Blind Mathematicians」で検索していただくとわかるとおり、視覚障碍者の数学者には幾何学系の人物が多いことに僕は興味を覚えます。幾何学系とは言えませんがオイラーも晩年には失明していました。

Blind Mathematicians
https://www.quora.com/Are-there-any-blind-mathematicians
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e50b547ed716581ffbfa1d399de5572e

あともうひとつの方向性としては、この記事をYanasyさんに読んでもらいたいということで、ブログの可読性向上という意味での進展を始めたことです。

ブログサービスを提供している会社の方へのお願い: モバイル表示でのalt属性機能追加
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/808f5d358a352a9295f6ec87b75b2ebc

この記事が本来意図した「宇宙の外に出なくても...」というテーマで一般の方に関心をもっていただけたらうれしいですし、その次は視覚障害と数学、視覚障害と数学者、視覚障害とインターネット環境のアクセシビリティという切り口で関心の幅を広げていただけたらとひそかに願っているのです。
返信する
Unknown (匿名希望)
2017-01-24 23:37:09
こんにちは、返信ありがとうございます。
あと、前回のコメント読んでいただきありがとうございます。

記事は(ぼくの個人的な感覚では)とても良くなっていると
感じました。

もちの例、非常に面白い例えだと思います!

>詳しく説明すればするほど、読者に課すレベルが上がっていきますね。

そうですね。なかなか難しいです。
例えば、接平面(接ベクトル)の定義に、
外の空間が必要ないことも、
多様体論を学ばないと、いまいちピンと来ないでしょうし
(素朴に考えると、接ベクトルも曲面から「はみ出してる」ように見えるので)
とねさんの記事は、専門性と読みやすさのバランスを上手く保ってると感じられるので、
個人的には良い記事だと思います。
これからも応援しています。

あと、ぼくのコメントで「第一基本形式のL, M, N 」
と書いてしまいましたが、「E、F、G」の間違いでした。
すみません。
返信する
匿名希望さま (とね)
2017-01-22 20:26:13
匿名希望さま

たくさんアドバイスいただき、ありがとうございました。とても助かります。匿名希望についても承知しました。

記事の難易度を上げない形で、専門用語を排除して正しい説明をするのは難しいですね。さしあたり修正してみました。いかがでしょうか?

「下敷きの例」については確かにガウス曲率がゼロですので説明に矛盾が生じていました。他の物体を使う例に変更しました。

ご指摘いただいた箇所は、詳しく説明すればするほど、読者に課すレベルが上がっていきますね。

これからも内容を精査し、記述の正確さとわかりやすさの両方を高めていきたいと思います。
返信する
Unknown (匿名希望)
2017-01-22 19:52:17
こんにちは、お久しぶりです!
なのですが、諸事情により匿名でお願いします!
ガウス曲面論の第2回目の記事に関して
気になることがあったので、コメントさせていただきました
(但し、曲面論は苦手な上に手元に資料が無いので、間違ってるかもしれません)。

まず、ガウスの驚異の定理ですが、
これは「(一見外在的に見える)ガウス曲率が第一基本計量L、M、Nのみを用いて記述できる」ことが主張であって、第一基本形式と第二基本形式が曲面を表していることを主張するものではありません(この記事だと、後者のように主張しているように読める気がします。)。

二つ目は「つまり第一基本形式だけ(内在幾何学)だけで曲面の曲がり方を完全に決められるということが重要なのです。」という記述が気になります。
例えば、最後に書いてある
「机の上に置いた下敷きの端を持ち上げて反らせて作った曲面」の曲がり方は、
第一基本形式だけでは表現できません
(どのような反らし方をしてもガウス曲率は0なので、どちらもI=du^2+dv^2という座標系がとれます)。
というか、むしろ
「外の空間を取り払うと、これらの曲面の区別が無くなる」
というのが、「内在的な幾何学」の一つの面白さだと思います。
下敷きを反らせることによって出来る曲面の曲がり方を記述するには、外在的な量である第二基本形式が必要です。

>第一基本形式は du, dv だけであらわされるわけです
>から周囲の3次元の空間がなくても2次元の曲面は
>存在できるということを主張している

この部分も色々とおかしく感じます。
まず、第一基本形式だけでなく、第二基本形式も、
u と v の関数とdu, dvだけで決まりますです。
従って、du, dvだけで表せることが、内在的である理由にはなりません。
第一基本形式のみが内在的である理由は、第一基本形式のL, M, N が曲面の1階微分のみから決まることが本質です。これらは、曲面の接平面からはみ出ないので、外の空間を必要としない内在的な量になります。
一方で、第二基本形式は曲面の2階微分や法ベクトルを用いて定義されます。これらは、曲面の外の空間に依存するものです。ですので、第二基本形式は本質的に外在的なものになります。

また、曲面と言うのは、2次元局所座標系が取れるものであれば良いので、そう考えれば、「3次元空間が無くても曲面が存在できる」ことに計量は関係ありません。

この部分はおそらく、「第一基本計量は、3次元空間の情報に使わずに決まる」などとするのが自然だと思います。

ちなみに、特異点のまわりでは、
古典的な曲面論がそのままでは通用しません。
例えば第一回目の記事で挙げられてる25個の曲面で、
上から3、左から3番目にある曲面の特異点は、
ホイットニーの傘と呼ばれる有名なものですが、
この枠組みでは扱えません
(このような曲面を扱う曲面の微分幾何学は、現在盛んに研究されているみたいです)。
返信する

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