「関数解析 共立数学講座 (15):黒田成俊」
アマゾンに投稿されている「ていねいで親切な入門書」というレビューを信用して読んだわけであるが、僕にはかなりきつかった。全体の理解度は7割程度。細かい文字で310ページもある「ていねい=証明が省略されていない」教科書を読み込むのには忍耐力が必要だ。
まるで大学時代に戻ったような気分である。この厚さになると記憶力がついていかず「あれ?この記号や式の意味って何だっけな?」と数十ページ戻って読み直すことがしばしば。読み進むにつれてペースが落ちるわけである。こういう再確認を怠ると定理の証明で何を前提としていて、何が自明なのか全くわからなくなり、理解しないまま証明完了。電話帳を読むのとほとんど変わらない状況に陥るのだ。だから気が抜けない。「ていねいな」数学の教科書とはそういうものだ。
ただ、この本はテーマが豊富なので「ルベーグ積分入門:伊藤清三」のときよりは変化があり、読後の達成感があった。
理解度7割というのは、証明の細かいところに理解が及ばないこともあるけれども、定理や説明など話の筋書きは理解できているというレベルだ。大学での試験や自主講義ができるレベルには達していない。時間さえ十分にかければきっと理解できるのだろうなと思いつつ、僕の目的は物理学と数学のかかわり方、物理学でのあいまいさがどのように数学で基礎づけられるのかがわかればよいので「とりあえず先に進む」という方針でよいのだろう。
関数解析で扱うヒルベルト空間は、ドイツの偉大な数学者ヒルベルトが、第二種のフレドホルムの積分方程式を研究する過程で導入されたユークリッド空間の無限次元版である。その後、フォン・ノイマンによってヒルベルト空間が当時黎明期であった量子力学の数学的な基礎付けを与えるものとして紹介された。この「関数解析 共立数学講座 (15):黒田成俊」で解説される内容が量子力学と密接なかかわりを持っているわけだ。ただし本書は数学書なので量子力学の「りょ」の字も登場しないわけであるが。。。
内容が膨大なのと僕自身消化しきれていない部分が多いので、ここで章別に中身を紹介することができない。だから目次やアマゾンに投稿されているレビューを参考にしていただきたい。
「何とか頑張って読み終わったよ!」ということで記事にさせていただいた次第だ。
次に読むのはこちらの本。量子力学に近づけるので楽しく読めそうだ。
「ヒルベルト空間と量子力学:新井朝雄」
今日紹介したのはこちらの教科書。
「関数解析 共立数学講座 (15):黒田成俊」
目次:
第1章:Banach空間・Hilbert空間
- 線形空間
- Banach空間
- Hilbert空間
- 部分空間
- 有限次元ノルム空間
- 線形作用素
第2章:関数空間
- まえおき
- B^m(Ω)
- L^1(Ω)
- L^p(Ω)
- L^∞(Ω)
第3章:Hilbert空間の完全正規直交系
- まえおき
- 正射影
- 正規直交系
- 完全正規直交系の存在
第4章:Fourier級数
- Fourier展開
- 完全性の証明
- Fourier級数とたたみこみ
- Poisson積分
- Poisson積分の調和性・正則性
- 単位円内で正則な関数、調和な関数
- Dirichlet問題・Neumann問題
- 多重Fourier級数
第5章:Fourier変換
- 定義と例
- Fourier変換とたたみこみ、Gauss総和法
- Fourier変換のL^2理論
- 上半平面のPoisson積分
- 上半平面で正則な関数、調和な関数
第6章:Sobolev空間
- まえがき
- 軟化作用素
- 一般化された導関数とSobolev空間 W^m,p(Ω)
- 一般化された導関数とSobolev空間 W^m,p(Ω)、続
- Sobolev空間 H^s(R^n)
- 一般領域におけるDirichlet問題
第7章:線形作用素
- 有界線形作用素
- 一般の線形作用素
- 線形作用素の例
- 閉作用素
- 一様有界性の原理
- 開写像原理、閉グラフ定理
第8章:線形汎関数と共役空間
- 定義と例、Riezの定理
- Hahn-Banachの定理
- Hahn-Banachの定理の応用、共役作用素
- 第2共役空間
- 弱収束、汎弱収束
- 共役作用素
- 共役作用素の例
第9章:レゾルベント・スペクトル
- Neumann級数
- レゾルベント・スペクトル
- 実例
第10章:線形作用素の半群
- まえおき
- ベクトル値関数
- 半群と生成作用素、簡単な例
- 半群と生成作用素、Hille-吉田の定理
- 熱伝導方程式の基本解
第11章:コンパクト作用素、Fredholm作用素
- 直和分解と補空間
- コンパクト作用素
- 作用素 I-K
- Fredholm作用素と指数
- 安定性の定理
- コンパクト作用素のスペクトル理論
- コンパクト作用素の実例
- 自己共役なコンパクト作用素
第12章:自己共役作用素のスペクトルの分解定理
- Stieltjes積分
- 調和関数に関する1つの表現定理
- 射影作用素と単位の分解
- 対称作用素、自己共役作用素
- スペクトル分解定理(レゾルベントの表現)
- 作用素解析とスペクトル分解定理
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アマゾンに投稿されている「ていねいで親切な入門書」というレビューを信用して読んだわけであるが、僕にはかなりきつかった。全体の理解度は7割程度。細かい文字で310ページもある「ていねい=証明が省略されていない」教科書を読み込むのには忍耐力が必要だ。
まるで大学時代に戻ったような気分である。この厚さになると記憶力がついていかず「あれ?この記号や式の意味って何だっけな?」と数十ページ戻って読み直すことがしばしば。読み進むにつれてペースが落ちるわけである。こういう再確認を怠ると定理の証明で何を前提としていて、何が自明なのか全くわからなくなり、理解しないまま証明完了。電話帳を読むのとほとんど変わらない状況に陥るのだ。だから気が抜けない。「ていねいな」数学の教科書とはそういうものだ。
ただ、この本はテーマが豊富なので「ルベーグ積分入門:伊藤清三」のときよりは変化があり、読後の達成感があった。
理解度7割というのは、証明の細かいところに理解が及ばないこともあるけれども、定理や説明など話の筋書きは理解できているというレベルだ。大学での試験や自主講義ができるレベルには達していない。時間さえ十分にかければきっと理解できるのだろうなと思いつつ、僕の目的は物理学と数学のかかわり方、物理学でのあいまいさがどのように数学で基礎づけられるのかがわかればよいので「とりあえず先に進む」という方針でよいのだろう。
関数解析で扱うヒルベルト空間は、ドイツの偉大な数学者ヒルベルトが、第二種のフレドホルムの積分方程式を研究する過程で導入されたユークリッド空間の無限次元版である。その後、フォン・ノイマンによってヒルベルト空間が当時黎明期であった量子力学の数学的な基礎付けを与えるものとして紹介された。この「関数解析 共立数学講座 (15):黒田成俊」で解説される内容が量子力学と密接なかかわりを持っているわけだ。ただし本書は数学書なので量子力学の「りょ」の字も登場しないわけであるが。。。
内容が膨大なのと僕自身消化しきれていない部分が多いので、ここで章別に中身を紹介することができない。だから目次やアマゾンに投稿されているレビューを参考にしていただきたい。
「何とか頑張って読み終わったよ!」ということで記事にさせていただいた次第だ。
次に読むのはこちらの本。量子力学に近づけるので楽しく読めそうだ。
「ヒルベルト空間と量子力学:新井朝雄」
今日紹介したのはこちらの教科書。
「関数解析 共立数学講座 (15):黒田成俊」
目次:
第1章:Banach空間・Hilbert空間
- 線形空間
- Banach空間
- Hilbert空間
- 部分空間
- 有限次元ノルム空間
- 線形作用素
第2章:関数空間
- まえおき
- B^m(Ω)
- L^1(Ω)
- L^p(Ω)
- L^∞(Ω)
第3章:Hilbert空間の完全正規直交系
- まえおき
- 正射影
- 正規直交系
- 完全正規直交系の存在
第4章:Fourier級数
- Fourier展開
- 完全性の証明
- Fourier級数とたたみこみ
- Poisson積分
- Poisson積分の調和性・正則性
- 単位円内で正則な関数、調和な関数
- Dirichlet問題・Neumann問題
- 多重Fourier級数
第5章:Fourier変換
- 定義と例
- Fourier変換とたたみこみ、Gauss総和法
- Fourier変換のL^2理論
- 上半平面のPoisson積分
- 上半平面で正則な関数、調和な関数
第6章:Sobolev空間
- まえがき
- 軟化作用素
- 一般化された導関数とSobolev空間 W^m,p(Ω)
- 一般化された導関数とSobolev空間 W^m,p(Ω)、続
- Sobolev空間 H^s(R^n)
- 一般領域におけるDirichlet問題
第7章:線形作用素
- 有界線形作用素
- 一般の線形作用素
- 線形作用素の例
- 閉作用素
- 一様有界性の原理
- 開写像原理、閉グラフ定理
第8章:線形汎関数と共役空間
- 定義と例、Riezの定理
- Hahn-Banachの定理
- Hahn-Banachの定理の応用、共役作用素
- 第2共役空間
- 弱収束、汎弱収束
- 共役作用素
- 共役作用素の例
第9章:レゾルベント・スペクトル
- Neumann級数
- レゾルベント・スペクトル
- 実例
第10章:線形作用素の半群
- まえおき
- ベクトル値関数
- 半群と生成作用素、簡単な例
- 半群と生成作用素、Hille-吉田の定理
- 熱伝導方程式の基本解
第11章:コンパクト作用素、Fredholm作用素
- 直和分解と補空間
- コンパクト作用素
- 作用素 I-K
- Fredholm作用素と指数
- 安定性の定理
- コンパクト作用素のスペクトル理論
- コンパクト作用素の実例
- 自己共役なコンパクト作用素
第12章:自己共役作用素のスペクトルの分解定理
- Stieltjes積分
- 調和関数に関する1つの表現定理
- 射影作用素と単位の分解
- 対称作用素、自己共役作用素
- スペクトル分解定理(レゾルベントの表現)
- 作用素解析とスペクトル分解定理
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お読みになりますか。頑張ってください!
「付録部分を見た限り、フーリエ解析、シュワルツ超関数、ルベーグ積分の数学的に厳密な記述が難しく」ということをお書きになっていることから、田島様のおよその学習進度が想像できるようになりました。
特にフーリエ解析は物理学では必須ですが、数学科の学生が学ぶ内容は主に「証明」ですから、難しく感じるのは当然のことです。シュワルツ超関数、ルベーグ積分についても同様です。新井先生は数理物理がご専門ですが、物理学科の学生から見れば数学書に見えると思います。
黒田先生の関数解析の付録のルベーグ積分は、易しく書かれています。本文のほうは最初のほうは読み進められる程度の難易度ですから、理解できなくなるまで読み進めるというのがよろしいのではないでしょうか。「途中まで読んでおく」という読み方もあると思います。
コメントをいただき、ありがとうございます。
吉田洋一先生のおルベーグ積分入門は、とても読みやすいです。ルベーグ積分の知識としては、この関数解析の本を読むのに十分ではありますが、難易度は吉田先生の本よりもずっと高いです。この本は数学科の大学院修士課程1年目あたりの学生を対象に書かれています。
むしろ、僕には新井先生の量子力学の数学的構造のほうが読みやすかったです。
ブログ記事の投稿日時を見たところ、この本を読んだのはほぼ10年前なのですね。あっという間に時が経ってしまいました。