NINAの物語 Ⅱ

思いついたままに物語を書いています

季節の花も載せていきたいと思っています。

仮想の狭間(6)

2010-04-13 11:29:47 | 仮想の狭間
 仲間が帰って、真理は部屋の片づけをしながら めぐみのことを考えていた。
よく似たことが過去にあったように思う。

 真理の高校時代の親友に加奈という生徒がいた。
彼女とは何故か気が合い、休憩時間も遊びに行くときもいつも一緒だった。
小柄ではあったが色白で青味をおびた大きな目をした可愛い子で、男子生徒にはよくもてた。
彼女は高校を卒業すると機械メーカーに就職して、3年ほどしたら町の有力者の息子と結婚した。
結婚相手は父親と食品店やレストラン、カフェショップなどを数店経営していた。
結婚後、加奈はそれらのレジを暫く手伝っていたが、子供を儲けると主婦業に専念するようになった。
二人子供があったように記憶している。
30歳の半ば過ぎ、どんな心境の変化か自分の店としてスナックを開店して、そこでママとして自ら出ていた。
そのうち、店に通ってくる同い年くらいの客と親しくなり、店を持って一年足らずでその客と駈け落ちをしてしまった。
その男性にも幼い子供が何人かいて、妻は必死で夫の行方を探していると聞いた。
それから5~6年経ったある日、真理がH百貨店の婦人服売り場で適当な服を探していると、偶然加奈もその売り場で買い物をしていた。
良く似合うモノトーンのワンピースに、赤茶色の長い髪をしていて歳より若く見えた。
その生活振りが苦しいものではないのが一見して分かった。
久し振りの出会いであったので、百貨店内のドリンクショップへ入って話をした。
彼女の言うには
「駆け落ちしたした当時は、彼のことが好きでどうしようもなかったの。
とにかく一緒にいたくて後先のことを考えずに飛び出してしまった。
今は彼に対してあの時ほどの情熱はないけれど、元に戻る気もないわ。
ただ自分の子供のことが気になって仕方ないのよ。」
とフルーツティーのカップを手にして話していた。
その後彼女がどうしているのかは、真理には分からない。

めぐみも彼のことが、この加奈と同じように、それほど好きになってしまったのだろうか。
相手の妻子のことなど気に掛ける余裕も失って、激しい感情の赴くままに行動したのだろうか。
突然夫に去られた妻は幼子を抱えて、どんなにショックを受け、生活にも困ったことであろうと気の毒でならない。
真理がネットで付き合っている人達は、メールの中ではどんなに親しく付き合っていても、本名も知らないし会うこともない。
例え甘いメールのやり取りがあったとしても、理性をもった付き合い方をしたいと真理は思っている。
しかし好意を持つ男性も現れて、デートに誘うメールが来ると心が揺れる。


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