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夜と霧

2011-10-28 | レビュー


夜と霧 新版 
ヴィクトール・E・フランクル著 池田香代子訳

原題「心理学者強制収容所を体験する」

ナチス政権下、強制収容所に送られたユダヤ人心理学者の体験記。
収容時のショックから、収容所生活の苦悩、解放後の失意まで、個々の人々の精神状態を克明に描き出している。
収容所の中での生活、それは想像を絶するほどの過酷さと陰惨さである。殴られ、糞尿にまみれ、家畜のごとく労働を強いられる。
飢え・疾病・苦痛・死が常態化した中で、肉体的にも精神的にも追いつめられると人はどうなるのか。
あきらめ・逃避・堕落・自暴自棄・・・
このような極限状態の中でも人としての尊厳を失わずにいることは可能なのか。

まさに人間の真価は、収容所の中でこそ発揮された、と著者はいう。
精神的主体としてどのように振る舞うか。
内的よりどころのないものは脆弱であったと。

どんなに悲惨な生であっても、その苦悩も死も、かけがえのない自分の運命として引き受ける勇気を持つこと。
その唯一性が生に意味を与える。

「人間とは常に何かを決定する存在だ。人間とはガス室を発明した存在だ。しかし同時に、ガス室に入っても毅然として祈りの言葉を口にする存在でもある。」

まさに地獄から帰還した者だからこそ語れる真実なのだろうと思う。



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