グロテスク 上・下 桐野夏生 初出2001年
「東電OL殺人事件」で、誰も真相を知りえなかった被害者女性の心の闇。著者は、実にまことしやかな状況を設定して複眼的にグロテスクなるものを描き出す。
事件そのものは今から15年前の1997年。1958年生まれの主人公が高校生になったのが1973年頃と思われる。女子高の中でのやり取りは克明で、まるで古さを感じさせない。エリートを排出することで有名なQ大学付属女子高校。そこはまさしく、社会の縮図、美醜・貧富・学力のヒエラルキーに支配された世界である。
主人公が企業に就職するのが「男女雇用均等法」前夜の1980年。まだまだ世の中が悪しき慣習にとらわれていた時代である。キャリアウーマンとして生きるには、いくつも乗り越えるべき壁が立ちはだかっていたに違いない。男性社会の論理によって疎外され、次第に人格を崩壊させていく。つまり「昼は堅気の会社員、夜は娼婦」という二つの顔を持つことで、自分の存在意味を見出す。
歪んだ魂をを巨大化させ、男と交わることで、虚しさを暴き出し、男性の作ってきた戦後資本主義社会そのものに復讐する物語である。果たして、主人公は「怪物」なのか、はたまた「聖女」なのか。
「東電OL殺人事件」で、誰も真相を知りえなかった被害者女性の心の闇。著者は、実にまことしやかな状況を設定して複眼的にグロテスクなるものを描き出す。
事件そのものは今から15年前の1997年。1958年生まれの主人公が高校生になったのが1973年頃と思われる。女子高の中でのやり取りは克明で、まるで古さを感じさせない。エリートを排出することで有名なQ大学付属女子高校。そこはまさしく、社会の縮図、美醜・貧富・学力のヒエラルキーに支配された世界である。
主人公が企業に就職するのが「男女雇用均等法」前夜の1980年。まだまだ世の中が悪しき慣習にとらわれていた時代である。キャリアウーマンとして生きるには、いくつも乗り越えるべき壁が立ちはだかっていたに違いない。男性社会の論理によって疎外され、次第に人格を崩壊させていく。つまり「昼は堅気の会社員、夜は娼婦」という二つの顔を持つことで、自分の存在意味を見出す。
歪んだ魂をを巨大化させ、男と交わることで、虚しさを暴き出し、男性の作ってきた戦後資本主義社会そのものに復讐する物語である。果たして、主人公は「怪物」なのか、はたまた「聖女」なのか。
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