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ヒトラー・ユーゲントの若者たち

2012-10-10 | レビュー
ヒトラー・ユーゲントの若者たち―愛国心の名のもとに
スーザン・キャンベル バートレッティ 日本初版2010年
ノンフィクション

 1930年代から第2次大戦中に、ヒトラー・ユーゲントとして活動した少年少女たちがいかに行動し、考えていたかを 膨大な研究資料と当事者達へのインタビューをもとにまとめられたもの。証言者が高齢になり、語らずして亡くなった方も多い中、生の声を個人レベルで聞ける最後のチャンスであるかもしれない。

 第三帝国の未来を「希望にあふれる10代の若者に託す」やり方は、その純粋さゆえに、あまりにも痛々しい。驚くべきは、子をして親を密告させるような状況である。ユーゲントの教育の徹底ぶりがうかがわれる。戦闘においても、無私の精神で総統のために命をささげる一途さは、まさに殉教者のイメージですらある。

 著者は、戦後彼らがどのように生きてきたかにも焦点を当てる。騙されたとはいえ、大量殺戮に加担した加害者としての苦しみの方が、彼らの魂を大きく損なったという。

 経済の低迷からファッショへ、ナショナリズムに至る道のりは、当時の日本の状況と恐ろしいほど酷似しており、止めように止められない人間の定めのようなものが見えてくるだけに、現代にも通じる空恐ろしさを感じる。どうやったら、この「他罰的」心性のスパイラルから国民全体が抜け出せるのか。解決は、経済にのみゆだねられることなのだろうか。経済でいう「景気」とはまさに人の気分のことを言ううらしいけれど、それはつまり「いい気分・いい機嫌」を作り出すことで、ブレイクスルーできたりするのか。


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