凄く面白かったです。5つ☆
「ミーナの行進」と「猫村さん」風な内容で、第二次世界大戦ちょい前の東京を舞台に描いた小説。
この1910年代~戦時中の東京の中流よりも少し上のクラスの庶民の人たちの暮らしぶりがかいま見れて、非常に興味深かったです。
女中さんのタキさんの賢さに拍手!
以前の旦那様の言ったとおり、勉強が出来るとかそういう事ではない頭の良さがあります。誰かをこっそり影でサポートしたり、出入りする業者さんと上手い具合にやっていく才能とか・・etc・・、本当に素晴らしいな、と思いました。
彼女が作る料理が、どれも美味しそう!物不足の時代にも、なんとか工夫して素敵な献立を考えて作ってくれるんです。
また、恭一ぼっちゃんへの愛情は深く、実の息子や弟に対する様な態度で接してくれます。
そして、なんといってもこの小説の中で魅力を放っているのが時子さん。
最初の出会いのシーンの、水玉のワンピースを着た、お嬢さん奥様。
いつも着飾り、髪の手入れをし、美しくいることが最優先で、楽しく賑やかな華のある事が大好きな、ちょっと天然なお姫様体質。その美しさと無垢さで、回りの人たちが彼女を好きになってしまう。
★以下ネタバレです 白文字で書いています★
タキさんがその後もずっと独身で、きっと他に誰も男性を(多分女性もかな・・)奥様以上に好きになることがなかったであろうことが、ちょっと切ないです・・・。
奥様が書いた手紙(最後の逢瀬の)をタキさんは渡さなかった事がラストに解ります。それなのに、タキさんが書き残した帳面には「板倉さんは午後にやってきて奥様と会った。その間自分はずっと庭にいた。とありましたが、それは嘘だったのでしょうか・・。板倉さんは訪ねて来なかったけれど、そういう風に書いたのでしょうか。ここらへんは、2年ほど前のイギリス映画の「つぐない」をちょっと思い出しました。とはいえ、奥様と板倉さんの関係はその逢瀬の手紙を渡したか渡さなかったかが、重大な起点になることは無かったと思うんです。既に2人は良い仲になっていたし・・・。
お里に戻った後、タキさんが東京大空襲前に、6年生の引率で東京に行ったのが、最後に奥様に会った時になるわけなのですが、その時お米をなんとか奥様にあげようと、こっそり解らない様に頭巾とハンテンに縫いつけて行きます。奥様は、どうしてもお返しに!とウールのコートを下さった。2人が今もし食べられるなら何を食べたい?と名前をあげて行くシーンでは、ウルウル来てしまいました。
そして、次の年、荒れ果てた東京に再度上京したタキさんは、あのお家の場所に行ってポーチのあたりで、恭一君のかつての友達セイちゃんのお父さんに会うんです。お父さんは無実の罪で投獄されていたんですね・・・。小さいブリキのジープを息子に渡そうと思っていたのに、息子も妻も被災して亡くなっていました・・。そして奥様と旦那様も亡くなっていたことを告げられるのでした・・。
でも恭一さんは生き残っていました。そして板倉さんも、有名なイタクラ・ショージというアーティストになっておられ、あの平井家のお家を描いていた・・というラストは、感慨深く、素敵なお話だったなぁ~と思いました。余韻が残る良いお話でした!以上
小説の中で、二楽荘のしゅうまいとか、ゼリー型のハムライスとか、職業婦人の睦子さんのエピソードや、当時後家さんがやるには文房具屋さんが一番良いとされていたとか、万国博覧会やオリンピック(東京も、そして冬季の札幌も)が本当は行われるはずだったのが、取りやめになった事など、色々と印象に残りました。
以前ブログに書いた、資生堂の花椿のクッキーも出て来ました^^
小さいおうち 中島京子/ 2010-05
この小説、本当に素晴らしい作品だと思います。昨年読んだ本の中でベストでした。
さて。ネタバレになりますが許してね。。白文字の中の話なんだけど。。
板倉さんの出征前、タキちゃんが手紙を渡さなかったことで時子奥様は板倉さんに逢えなかったんですよね。
奥様が死んで、そのことをタキちゃんは一生悔いたんだと私は思います。
(午後に板倉さんが来て、、という部分は、タキちゃんの創作だと思います)
何故タキちゃんがあの手紙を渡さなかったのか、がこの小説の一つの肝であると私は思っています。
賢い女中であろうとした、奥様を守ろうとしたのは建前で、本音ではタキちゃんは板倉さんと奥様に逢って欲しくなかったんですよね。。
それは、タキちゃんが「第三の道」を行く人だったから。
これがこの小説の隠しテーマでもあると思います。
あ~~、読んだのは昨年の夏なんですが、とにかく大好きな小説なんで熱く語ってしまいました(照)。
阪神大震災のとき、私は大阪に住んでいました。
早朝の揺れで目が覚めて。。とにかく長い揺れでした。
でも、神戸と大阪は近いんだけど、被害は雲泥の差だったんです。大阪は大きな被害はなかったの。
今回の震災、本当に心が痛みます。。latifaさんも気をつけてね。まだ余震もあるみたいだし、停電もあるのかな?
お大事にね!
なんだかね、今日から暫く停電が始まるらしいんだが、家の地区は、朝6時過ぎから夜10時まで、ほぼずっとなんだって・・・。電気が使えるのは午後3時間程度で(仕事で家にいないって!)どうしよう??
同じ市でも、場所によって違っていて、駅の側とかだと昼間3時間だけと、随分違うんだよ・・。
そうっか~、真紅さんもこれ、すんごいお気に入りだったのね? 解るわー。気が早いけど、私も今年のベスト3には必ず入って来そうなほど、良かったもの。
で、真紅さんの解釈、私と同じ!
やっぱり、あれは創作だったと思われ、奥様への思いは「第三の道」なものだったんだよね。
なんかさ、モンガに散るとかも、ちらっと連想しちゃったよ~。凄く丁寧なコメント、ありがとう!!
で、時子さんのキャスティング、夏目雅子さん、いいかも! ・・って、もういないって~~。私が考えて見たところでは、作家の川上未映子さんなんてどうかな?凄い美女!ってわけじゃないけど、気高い処とか、コテあてたショートボブな髪型に和服とか似合いそうな感じがして。
タキちゃんは蒼井優ちゃんってのは、見てみたいけど、可愛過ぎるんじゃないか
阪神大震災時、真紅さんは大阪に住んでいたのね・・・。隣だといっても、ずいぶん違うんだね・・・。日本は地震大国で、本当に怖いわ・・。
わたしは小説の中の昭和モダンの雰囲気が好きです。タキさんにとってはその華やかさの中心が奥様だったんでしょうね。わたしも「第三の道」説だと思います。
私のところは、交通がまだまだ・・で、都内や仕事に出られないでいます。ガソリンが買えないので最小限にしか車も動かせないし・・・。
停電も金曜日あって、土日は無いみたいですが、火曜から再開しそうだし・・。
それでも、被災地の方々思うと、こんなことは言ってられんのですが・・・
>東京都小金井市にある江戸東京たてもの園
是非行ってみたいです~!
私も昭和モダンとか大正モダンに惹かれます~
お返事が遅くなってしまいました。
私の住んでいるところは、地震も原発もなにも影響がありません。
本当に幸せだと思います。
ただ、被災された方のことを思うと、PCを開く気にもなれずにいました。
でも、今私にできることを考えて、明るく毎日を送ることにしようと思います。
この本、とてもいいですよね。
奥様とお手伝いさんという関係を越えた暖かい気持ちが伝わってきました。
そうか~良かったです、花さんの処は影響の無い場所だったんですね?
とはいえ、日本全国安全な場所って無いから、気をつけましょうね
私のところは、交通とか停電とか、はたまた放射能の影響など不安だったりもするのですが、被災者の方々を思うと、これ式のことは言っておられんな、って思います。
私も、地震以後、な~んか映画とか本とか、どれも見る気に、なかなかなれずにいますが、ぼちぼちまた見たり読んだりし始めています。
この本は、気が早いですが、多分今年のベスト3に入るだろう位、気に入りました。
昨日また2回目を読み返しましたが、本当に良いお話だなぁ~としみじみ感じました。
あるときから並行して流れていた時間の片方が止まっていたのですね。その悲しみはよくわかるのですが、なぜこんなにもタキさんの後悔の念が深いのか、わかりませんでした。コメント欄を見て、自分の行為を責めているのだとわかりました。ただ、あの「心覚えの記」にまで、そんな創作を挟み込む、ような人でしょうか?全部書いて、後悔の念も書けばいいだけのこと、ではないでしょうか?なぜならくどいほど、正しい女中の心得、の伏線が書かれていて、事実を書いたところで、だれも非難はしないでしょう。たきチャンは、全部書く人だと思います。
私が不思議に思うのは、板倉さんの「ちいさいおうち」には奥様だけでなく、ふたりの女が対等にいることです。板倉さんにとっては、奥様だけでなく、タキちゃん、への思い、あるいは、たきちゃんの奥様への思いに対する、身を引くほどの、理解があったのではないかと、おもうのですよ。どうでしょう?
この小説、とっても大好きなお話です。
久しぶりにこの小説の事を思いだしていますが、結構忘れてしまっていて、焦ってしまいます。最近の自分の忘却度のすごさには呆れるばかり・・・。
>板倉さんにとっては、奥様だけでなく、タキちゃん、への思い、あるいは、たきちゃんの奥様への思いに対する、身を引くほどの、理解があったのではないかと
おおおーーーーーー!そうかも、そうかもですね。 特に後者の、たきちゃんの奥様への思い、が伝わっていたのかもしれませんね。