道尾さんの小説を読むのは、久しぶり。過去記事を振り返ったら、「透明カメレオン」が最後だったようで、5年位前。それまではコンスタントに一杯読んでいたのですが
本作は4章が含まれていますが、書下ろしではなくて、それぞれ既に発表されている過去作品で、ラストだけが書下ろしで、全てをまとめた形になっているのかな?
弓投げの崖を見てはいけない(初出『蝦蟇倉市事件1』2010年1月 )
その話を聞かせてはいけない(初出:文藝春秋『オール讀物』2018年5月号)
絵の謎に気づいてはいけない(初出:文藝春秋『オール讀物』2019年3・4月合併号)
街の平和を信じてはいけない(書き下ろし)
最初のお話が一番、あ!!っという驚きがあって、私は面白かったです。
でも、初出は10年前なんですね。
各章の最後には、それぞれ一枚の写真が貼り付けられていて、それがキーになっているという面白い仕掛けになっています。
「弓投げの崖を見てはいけない」
安見邦夫は、危険な名所「弓投げの崖」につながる道路で,交通事故に巻き込まれる。
不良グループ3人(リーダー格と、兄弟)は、まだ息のある邦夫の顔面を叩きつけ、財布からお金を抜き取るという悪い奴らだった。
その後、リーダー格の男が現場で何者かに石で撲殺された。
そして彼を慕っていた弟の行方も解らなくなる。
家族を失った妻の安見弓子と担当の隅島刑事は大学時代、付き合いがある関係だった。
最近起きた暴走族の男の殺害に関して弓子を疑い始める。・・・
★以下ネタバレ★
なんと、死んだと思っていた邦夫は失明したものの生きていた。死んだのは助手席にいた小さな息子だった。でも不良たちはちゃんと新聞や記事を読まないため、それを知らずに邦夫が死んだと思い込んでいた。(読者も騙される)
そして復讐したのは妻か?と思わせ、実は邦夫がやっていたのだった。現場に来るであろう犯人を毎日待ち構えていて撲殺、家にやってきた弟を入口玄関先で、矢で一撃。(目が見えないし、かなり無理があると思うんだけどね)
最後は隅島刑事に見透かされるも、家の前でスピードを出し過ぎて走っている宗教団体の車に轢かれて死んでしまう。
騙された!感があって、とても面白かったのだけれど、冷静に考えると、助手席にチャイルドシートとか子供を座らせるってことは、あまり無いし、この後の話で判明するのだけれど、寝室に隠した弟の死体を、外に運び出して捨てるっていうのも無理があるような・・・(ドタバタで見張りの警察がちょうどいなかった、そんなわけないかと・・・)以上
その話を聞かせてはいけない
道尾さんお得意の小学生の孤独でいじめにあってるカー君という男の子のお話。
中国から親と一緒に日本に来た少年、名前が偶然バカと読める事からバカにされて、親も中華料理店が上手く行かない状態で、いつも孤独。そんな彼にクラスメートで、やはり異質な存在の山内が接近してくる。彼が路地裏でホームレスっぽい男に暴力振るわれてるところを助けた事がきっかけで、恩返しをしたいと思われている。
★以下ネタバレ★
優しいおばあさんのいる文房具屋さん。彼が目撃したのは幻じゃなかった。しかし逆に彼が目撃者という事で捕らえられてしまい崖から今落とされそうになっている、というところで終わる。
この後の話で判明するのは、そのクラスメートの男子山内が助けてくれて、落とそうとした、おばあさんともう一人を逆に突き落として殺してくれたのでした。(えーー少年が大人2人を突き落とせるんだろうか?) ラストの写真、よく目を凝らしてみると、インタビュー受けてるおばあさんたちの後ろにHの文字の服を着た山内らしき少年が!
ここでは、カー君は山内を凄く嫌っているし、2人を殺しちゃうような怖い子なのに、後に親友になってるのよね・・・。以上
絵の謎に気づいてはいけない
竹梨刑事と若手の水元刑事、宗教団体の女性宮下が殺された事件を追っている。
彼女を殺したのは守谷という宗教団体のお偉いさんで、スマートロックというやつがトリックになっている。管理人の中川に見破られたので、彼も殺す。
竹梨はなんとその宗教団体のメンバーだったので、お偉いさんを守るために、水元を殺してしまうのでした(ひどいー) しかも、5年前の隅島刑事が車に轢かれて死んだ事件で、唯一の目撃者だった彼は、スピード出し過ぎじゃなかったという偽りの証言もしていたのでした。
イラストが2つあって、一つは不自然な、ちょっと上に浮いた位置に死んだ人間の形が書かれていて、それは後から竹梨刑事がトリックが解らない様に書き足した絵であって、もともとは、そんな人間の絵は描かれてなかったのでした。以上
街の平和を信じてはいけない
自分の罪を告白しようとしている安見邦夫。妻に告白文を書いてもらった封筒を竹梨刑事に手渡すのだが、その日、久しぶりに保育園の教え子だった中国人の少年に再会し、いじめられていた自分を助けてくれた安見先生をずっと忘れずにいてくれた事、お礼を言われて、思いとどまる。さっき渡した封筒を抜き取るはずが、間違って竹梨刑事自身が告白文を書いていた封筒を取ってしまう。竹梨刑事も1年前から自分の罪を告白する手紙を持ち歩いていたのでした。
安見邦夫はその封書を破り捨てた。竹梨刑事は鞄の中から自分の書いた封書がいつのまに無くなっているのに気がつく。そして、さっき安見邦夫から渡された手紙を開けてみると何も書かれていない白紙であった・・・(奥さんは代筆をあえてしなかった)最後の写真に写ってます。
中国人の少年は友達と2人仲良さそうに自転車で遊んでいましたが、「平和だね」なんてのんきに楽しそうにやってますが・・・。山内君って末恐ろしい子だし、大丈夫かしら・・。
これって、鎌倉市、藤沢市と、江の島当たりの地形を参考にしてるのかもーって思いました。
七夕まつりが出て来たり(平塚)、電車公園?とか、辻堂海浜公園とか、あの辺りとかも参考にしてるのかなー?
蝦蟇倉市事件1(2010年1月 東京創元社)も、読んでみようかな、と思っています。
道尾秀介さんの他の本の感想
「透明カメレオン」
ノエル
「光」
水の柩
カササギたちの四季
月と蟹
「プロムナード」「背の目」
「片眼の猿」「シャドウ」
「月の恋人」「ラットマン」
「カラスの親指」「ソロモンの犬」
「光媒の花」
「鬼の跫音」
「龍神の雨」「向日葵の咲かない夏」感想
「球体の蛇」「花と流れ星」
趣向を凝らしていて、面白かったですよね。
アンソロジーの『蝦蟇倉市事件』(二巻まであります)も、寄稿作家が実力派揃いなので、読み応えあって面白かったですよ。
コメントありがとうございます。
>ソブケンは基本クダラナイ作品・・・
そうなんですね?
うーん、どうしようかなあ・・・。
>『蝦蟇倉市事件』(二巻まであります)
1巻だけは、予約しました。
2巻目は1を読んだ後に考えようーと思っています。