ポコアポコヤ

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「舞台」感想 西加奈子

2014-03-31 | 小説・漫画他

凄く面白かったです。4つ★半

西加奈子さんの今までの本とは違った雰囲気。
新境地って書かれていたのも頷ける感じです。
鞄を盗まれてからが、お話の開始になるのかな?と思いきや、鞄を盗まれる迄の部分も全体の4割位でした。

前半部分は?というと、葉太が今までどういう風に生きてきたか?ということが書かれています。
調子に乗って失敗しないように気をつけていること(歯の間におはじき、小園という同級生が修学旅行でやらかした事)イタイ奴と思われない様に常に周りの目を気にして生きて来ています。
壊れちゃう!と言った女子との「演技」。
田舎出身なのに洒落人の作家の父が嫌いで、父の期待しない方へ方へと行動していた事。祖父の葬儀の時に大泣きした自分を、産まれて初めて見た亡霊に怯えていた自分を突き放し、冷めた目で見た父、死んでいる人の霊が見えること、化粧して「女」をアピールしても痛々しいだけの母、父が毎朝食べる漬物とそのぬか床を大切に守る母・・。

自分も本当は凄く本を読む事が好きなのに、それを隠し通していること、太宰治の「人間失格」に衝撃を受けたこと。
「小紋扇子」という引き籠りの作家さんのファンであること・・などが書かれています。
もう、面白くて一気読みです。

そして、後半はパスポートも財布も失ってしまった彼が、どういうふうに暮らし、意識を変えて行くか?が書かれています。
見知らぬ旅先で一人きり、ほぼ文無しになり、不安で泣きそうになる心情とか、どうやって安い食事を取ろうか?安い1ドルピザ屋を発見した時の喜びと、「こちら側」と「あちら側」。
生きる事で精一杯の時、空腹で何も考えられなくなった時、ギリギリの状態に陥ると、周りの目などが気にならなくなるのだった。

父は、「地球の歩き方 ニューヨーク」そんな父らしくない本を入院直前に買って読んでいた。退院したらNYに行きたいと思っていたのだろうか、明るい、明るすぎる。父の唯一の強烈にかっこ悪い、だからこそ真実の姿を、そのガイドブックに見つけた葉太。この一件の後、セントラルパークで寝ころびながら好きな本を読みたいがためにNYに来たのだった。

最後に葉太は、ふと思うのだった。
誰かが何かを演じるとき、そこには自己を満足させること、防衛すること意外に、もうほとんど「思いやり」としか言えないような、他者への配慮があるのではないだろうか、父や小紋は、他者のその人の期待に精一杯答え続けていたのかもしれない「皆に望まれる自分」として・・

★以下ネタバレ 白文字で書いています★
無一文で浮浪者の様な姿になった彼は、初日に行ったダイナーに行き、ウェートレスに「ヘルプミー」と言い、あのマズかった12ドルの朝食を食べる。
その後、領事館に行き、母から送金してもらい、無事日本に帰国する空港に向かう前、そのダイナーに立ち寄り、お金とチップを渡した。帰国の飛行機の中で、やっと小紋の「舞台」を読み始めたのだった
以上

ニューヨークの名所や地区等が所々に挿入されていて、行ってみたくなります。
アパートメントで暮らすような滞在がいいな!なんて言ったら、葉太にしゃらくさい!って一喝されそうです。

内容(「BOOK」データベースより)
29歳の葉太はある目的のためにニューヨークを訪れる。初めての一人旅、初めての海外に、ガイドブックを暗記して臨んだ葉太だったが、滞在初日で盗難に遭い、無一文に。虚栄心と羞恥心に縛られた葉太は、助けを求めることすらできないまま、マンハッタンを彷徨う羽目に…。決死の街歩きを経て、葉太が目にした衝撃的な光景とは―。

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2 コメント

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Unknown (苗坊)
2014-04-06 18:01:31
こんばんは^^
葉太の異常すぎるプライドの高さに苦笑いしながら読んでいました^^;
面白くてあっという間に読んでしまいました。最後はほっとしました。
ニューヨークは行ったことがなかったのでたまに文章に書かれている地球の歩き方の文章がとても気になりました。
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苗坊さん☆ (latifa)
2014-04-12 13:29:18
こんにちは、苗坊さん
私は、葉太はプライドが高いといより、他人からバカにされたり、カッコ悪い姿を見られるのが死ぬほどイヤって風に思いました。

カッコつけしぃ?のお父さんの影響も大きかったんでしょうね。

鞄を盗まれても、届けを出さずにいる・・って処とかは、こんな人いるんだ?!って驚きましたが、でも、私もかつて旅行中に、鞄を盗まれて、ほぼ文無しになっちゃったとか、そういう凄い悲惨な目に遭ってるのにもかかわらず、あまり落ち込んで無い(ように見える)ひょうひょうとした人に数人会った事があって、彼らが淡々と、その体験を話すことに、なんかびっくりもしたものでした。

地球の歩き方、私が若い頃、今から20年ほど前は、日本人の海外旅行のバイブル?的な本でした。最近はネットの普及で、そういう本が無くても楽に旅行が出来る様になりましたなあ・・・
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