リートリンの覚書

日本書紀 巻第二十 渟中倉太珠敷天皇 四 ・副使ら、大使を暗殺する



日本書紀 巻第二十 渟中倉太珠敷天皇 四

・副使ら、大使を暗殺する



六月、
高麗の大使が、
副使(そいつかい)等に語って、

「磯城嶋天皇
(しきしまのすめらみこと)の時に、

汝等は、
吾が議(はか)るところとちがい、

他(ひと)に被欺(だまされ)、
でたらめに国の調(みつき)を分けて、
たやすく微者(いやしきひと)に与えた。

どうして、
汝等の過ちでないといえるだろうか。

もし、
我が国の王が聞いたなら、
必ずや汝等を誅(ころ)すだろう」
といいました。

副使等は、
自分たちではなしあい、

「もし、
吾等の国に至った時に、
大使が吾の過ちを顕わにいったなら、

これは、
とんでもないことである。

ひそかに殺して
その口を断じようと思う」
といいました。

この夕に、
謀(はかりごと)が泄(も)れました。

大使はこれを知り、
衣と帯を装い、

一人で潜行(せんこう)し、
館の中庭に立ち、
どうしたらいいのか分からなくなりました。

時に、
賊が一人あり。

杖をもって出てきて、
大使の頭を打ち、
退きました。

次に賊の一人があり。

まっすぐ大使に向かって、
頭と手を打ち、
退きました。

大使は、
なおも黙って地に立ち、
額の血を拭きました。

更に賊が一人あり。

刀を執って急いできて、
大使の腹を刺して、
退きました。

この時。
大使は恐れて地に伏して拝みました。

後に、
賊が一人あり。

既に殺して去りました。

明旦(みょうたん)、
領客東漢坂上直子麻呂
(まらうとのつかさやまとのあやのさかのうえのあたいこまろ)等は、

その由を推問(すいもん)しました。

副使等は乃ち、
矯詐(いつはりこと)を作り、

「天皇が、
大使に妻を賜りました。

大使は勅に違いて、
受けません。

これは甚だ無礼です。

ここをもちて、
臣等は、
天皇のために殺しました」
といいました。

有司は、
礼をもって収めて葬りました。

秋七月、
高麗の使人が帰国しました。

この歳、太歳は壬辰(みずのえたつ)。



・潜行(せんこう)
人知れずひそかに行くこと
・明旦(みょうたん)
明朝・あすの朝
・推問(すいもん)
問いただすこと。特に罪を取り調べること



(感想)

(敏達天皇元年)

6月、

高麗の大使が副使らに語って、
「欽明天皇の時に、

おまえらは、
私が話し合ったところと違い、

人に騙され、
でたらめに国の調(みつき)を分けて、

たやすく、
卑しき人に与えた。

どうして、
おまえらの過ちでないといえるだろうか。

もし、
このことを我が国の王が聞いたなら、

必ずやおまえらを誅殺するだろう」
といいました。

副使らは、
自分たちで話し合い、

「もし、
我々の国に到着した時、

大使が我々の過失を顕わに報告したなら、

これは、
とんでもないことである。

密かに、
大使を殺してその口を封じようと思う」
といいました。

この夕に、
謀がもれました。

大使はこれを知り、
衣と帯を装い、

ひとり、
人知れずひそかに行き、

館の中庭に立ち、
どうしたらいいのか分からなくなりました。

館の中庭に
呆然と立ち尽くすって、

自分を暗殺するとの計画を知ったのに…
何故、朝廷に相談しない?

時に、
賊が一人いて、

杖をもって出てきて、
大使の頭を打ち、
退きました。

次に賊の一人がいて、

まっすぐ大使に向かっていき、
頭と手を打ち、
退きました。

大使は、
なおも黙って地に立ち、
額の血を拭きました。

更に賊が一人いて、

刀を執って急いできて、
大使の腹を刺して退きました。

この時。
大使は恐れて地に伏して拝みました。

後に、
賊が一人いて、
ついに殺して去りました。

何故、逃げ出さない?

明朝、
領客東漢上直子麻呂らは、

大使殺害の理由を問いただしました。

副使らは、
偽りごとを作り、
「天皇が、
大使に妻を与えました。

しかし、
大使は勅に違いて、
受け入れません。

これは甚だ無礼です。

ここをもちて、
私どもらは、
天皇のために殺しました」
といいました。

有司は、
礼をもって大使の屍を収めて葬りました。

秋七月、
高麗の使人が帰国しました。

この歳、
太歳は壬辰(みずのえたつ)。

普通、
暗殺計画を聞いたら、

誰かに相談するか逃げますよ。

何だか、
腑に落ちないお話でしたね。

裏がありそうなお話。

続きが気になります。

続きます。

読んでいただき
ありがとうございました。


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