僕は名もない凡人でいたい

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DVD映画「紙の月」※ネタバレ

2015年09月01日 | 映画/DVD
宮沢りえが纏う雰囲気が凄まじい。
追い詰められて、見ている方は真綿で首を絞められているような息苦しさを感じるのに、主人公はどんどん自由になっていく。
聖者のような美しい顔をして……。

小林聡美も印象的だった。
人を突き放しながら寄り添おうともし、最後は、自由に生きる主人公に憧れもしたに違いない。
この映画の中では、唯一理性的で善なる人間だけれど、人生の喜びを享受していない惨めなOLでもあった。

 ……悪は、善人の顔をして近づいてくる。

  ☆

【ストーリー】

友人は一人もいない。夫にも同僚にも自分の意見を言うことがない。
地味で真面目なパート上がりの銀行員が、若い男との情欲に溺れ、男に貢ぐために莫大な金を横領する。
最初は1万円、足りない分を借りただけ。
お金はその日のうちにすぐに返した。
でも、これがきっかけだった。
やり口はどんどん大胆になり、数百万円単位の横領を繰り返し、やがて自宅の一室が一大詐欺会社となって、精密な証書のコピーまで作成するようになる。
平凡だった主婦が、高級ブランドを身に付け、高級車に乗り、毎週のようにホテルのスイートルームに泊まり、不倫に落ち乱れていく。

しかし、そんな暮らしは当然長く続かず、男は自分を捨てて、若い女のところへ去って行く。
ついに、数千万円の(あるいはそれ以上の)横領も明るみに出た時、彼女が上司へ放った言葉は決して言い訳などではなく、鋭いナイフのように相手の弱点をえぐる脅迫の言葉であった。
自己愛の塊である夫は、最後まで妻のしていることに気づかず、ずっとこのサスペンスの蚊帳の外に存在していた。

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