☆Lorosae(太陽が昇る)ブログ☆

ロロサエという言葉は、東ティモールで使われているテトゥン語で、つまりは「日の丸」です。

石光真人編著 ある明治人の記録 会津人柴五郎の遺書

2022-02-09 21:25:08 | 書籍紹介
中央公論社の本です。
おそらく中古の本屋さんで入手した本だと思う。
一回読んだことがある気がする。
でも、意識して読了し、衝撃を受けた。

話は、白虎隊で有名な会津藩が戊辰戦争にて降伏したときからはじまる。
主人公である柴五郎さんはまだ10歳で、祖母、母、兄嫁、姉、妹は辱めを受けるを恥として、自害する。妹は7歳だったというのに、常に懐剣をしのばせている逸話が…。

明治時代がはじまると同時に、少年のふるさとは京都をまもり、お内裏様は天子様である雛まつりをして過ごしていたにもかかわらず、朝敵となり賊軍、戦犯となり、収容所へと送られる。
送られるといっても自力で歩かされる。しかし怪我人か老人か子どもしかいないような状態で、粗末な御輿のようなものが作られ、「乞食の大名行列」と当事者の表現。

その後脱走?に成功し、父親らと落ち合い、斗南藩の一員として再興を目指しますが、着いた土地は海に近く寒風吹きすさぶ不毛の大地に等しい土地で、どん底の底の鍋底の汚れを舐めるぐらいの辛酸を味わいます。

まだ11歳になるかならないかで、武家の子に生まれたすべては崩壊し、それなのに知恵も経験も人脈もなく、それでも、熊本からやってきた福島県知事との出会いがきっかけとなり、やがて、陸軍大将にまでのぼりつめます。

犬の肉を飲み込むときの話や、12歳ぐらいで、か細いツテを頼りに居候のお願いをして歩く姿。
薩摩や土佐の人たちが出世をしていくなか、ひねくれることなく、武家出身でありながら、小間使いとして働くことに身も心も慣れてしまう少年の姿。淡々と綴られているだけに、目に浮かび辛い。

陸軍大将になったっていう結果にほっとしたけれど、こういう少年たちが、そのままヤクザのようになったり、野垂れ死にしたりしたのだろうと思う。
戦争というと、太平洋戦争しか昨今思い浮かばないけれど、日本人が日本人を殺し合い日本という国をつくった歴史も、忘れてはいけないと思った。

本編は士官学校でのエピソードであっさり終わる。

編集後記に、その後の柴五郎さんが義和団事件で活躍してたこと、北京籠城という本やアメリカの映画(北京の55日)になってることを知った。

そして、靖国神社が招魂社といって、維新の犠牲者を祀るために明治政府が建立したので、東北人士の戦死者は祀られなかったことを知った。
全国の護国神社も招魂社であるため、祀られずとのこと。

明治2年に明治天皇が初めて東北を巡幸したときも朝敵、賊軍の墓には立ち寄らず、官軍の墓には勅使を差遣し慰霊したという。

また、中国で日本は日本人を中国人に仕立て歩騎兵をつくらせる。
にも関わらず、そのトップごと見限り、掌返しをしたらしい。
馬賊という本も読まねばならない。

軍人となった柴五郎さん曰く、
「近頃の軍人は、すぐ鉄砲を撃ちたがる、国の運命をかける戦というものは、そのようなものではない」

この本を読み、読まねばメモ

『城下の人』龍星閣刊
『北京籠城』平凡社 東洋文庫
『馬賊』中公新書
『佳人之奇遇』柴五郎さんの兄著

彰義隊

2018-08-15 23:30:29 | 書籍紹介
『彰義隊』 吉村昭著 新潮社

3年かけて数ページをちょっとずつくくって読んできた本です。
輪王寺宮という皇族が主人公です。
皇族でありながら朝敵となったこと、
有栖川宮と相容れない様子から、皇女和宮の内容だと思い込んで、そんなことがあったのか~などと、パラパラ読んではまたいつかとなっていました。
残りの部分、お盆に読みきろう!と、読み終えたら男性の話でした。

いっときは宮城県に身を潜め、その後、京都へ戻り、
ドイツへ渡り、陸軍を率いる立場になります。
そして、最期は台湾で迎えました。

今日は終戦記念日ですが、桜木町は親子連れや外国からの旅行客が、老若男女問わず、ピカチュウの顔のサンバイザーをつけて、動き回っていました。

辛さ苦しさを知るのは大事なことかもしれませんが、知らないでいて欲しいと語らなかった人がいることを、自分は知っています。なかったことにしたい人を、見てきました。

誰もが思い出さなくていいぐらい、平和な世の中にすることは、彰義隊の時代に生きていた、無言を貫いた人たちの想いではないかなどと、身勝手な感想です...。


「俺の後ろに立つな さいとう・たかを 劇画一代」を読みました。

2014-03-02 21:46:03 | 書籍紹介


新潮社より発売されている、さいとう・たかをさんの『俺の後ろに立つな さいとう・たかを 劇画一代』を読みました。

ゴルゴ13以外知らなくても、読めました。
幼少期から始まって、今現在にいたるまで、まっすぐな言葉でつづられていました。

ゴルゴ13は、冷酷な人物としてとらえられていることが多いと思いますが、
自分の年代としては、コミック的な人間味を帯びたパロディに多く使われ、
ちょっと人間味を帯びている印象でした。

なので、かえって作者の方に対する興味を抱かずに生きていました。

初めて知ったことが多いです。

さいとうたかをさんの生い立ちは、
風変りな生い立ちかもしれません、でも、なんとなくわかる気がするところが不思議です。

枯れ井戸の中にキラキラしたもの集めてロウソクで照らしてみていたという思い出話が、一番印象的でした。

この次読むゴルゴ13の印象が、少しかわる気がしました。

『自衛隊救援活動日誌』を読みました

2013-06-05 15:32:50 | 書籍紹介
扶桑社から出ている
『東日本大震災 自衛隊救援活動日誌 東北地方太平洋沖地震の現場から』
東北方面総監部 政策補佐官 須藤 彰 著

を、岩手ぴこ専門官のツイッターで知り、入手しました。

3.11以降、吉村昭さんの『三陸海岸大津波』が話題を呼び、図書館では予約されているようで
棚に並ぶことも稀な本でしたが、

こちらの本は史実ではなく、実体験の本でした。

自衛隊の活動というのは、究極の活動というイメージで、
生きるか死ぬかの瀬戸際を刺激する部分に存在しているような気がします。

だから、カーっと来る人は、ハラハラしたり、脳溢血になるような考えにすぐ結びつけるかもしれません。

でも、自然災害は、だれか一人のせいというわけではなく、

起きたことを起きたままに、できうる限りのことをする職務を、全うしていく様子が、
東北独特の照れ隠しのような表現のなか、綴られていきます。

現地の人に、「もうやめなよ」と言われても、
非科学的というのか、実際問題、実例でも、もう浮上してはこない「人」を捜す自衛官の話。

身に着けていたものを何かしら発見するために、まわりに遅いと言われながらも
丁寧に作業をしていたという、がれき処理。

現場の声。現場100回。

そしてそして、この本の偉大なところは、
読み終わった後、ご飯がおいしく感じられ、生きてるっていいなと思えるところでした。

史実だけでは、こうはならない本でした。

『深海の使者』吉村昭

2013-04-24 23:11:41 | 書籍紹介
『深海の使者』文藝春秋 を読みました。

あとがきより
「昭和十七年秋、新聞に大本営発表として
一隻の日本潜水艦が報独したという記事が
掲載されていた。戦局も苛烈になったころで、
遙かへだたったドイツにどのようにして
赴くことができたのか、
中学生であった私には
夢物語のようにも感じられた。」

・・・私はインターネットの中で潜水艦に
関わった方とやりとりをする機会を得ました。

なんの知識もなく、
イエローサブマリンが歌えるぐらいで
イメージが沸きませんでした。

無論、これは古い時代の戦時中の話であって
今現在の世界中の乗組員にとって、
潜水艦での仕事内容はインターネットもあるし
まったく違うでしょう。

でも、お風呂には入れないことや
空気が薄く頭痛が酷いこと
たえずつきまとう
密閉された空間での死への恐怖は
いかばかりだろう

最近自衛隊の人が日本人ではなく
アジア圏のお嫁さんを貰っているという
記事に、プライベート時に
何も考えなくていいからではないか
そう思う自分がいました。

「おーい おーい」という声が
自分の耳にも潮騒のように残る本です。

世界の時間