☆Lorosae(太陽が昇る)ブログ☆

ロロサエという言葉は、東ティモールで使われているテトゥン語で、つまりは「日の丸」です。

『スカレーの冒険』最終話

2014-08-15 00:17:20 | 作品
スカレーは、カモメの背中に乗せてもらいました。
カモメもスカレーも、潜水艦の喜ぶ姿がとても嬉しくて、かける言葉がみつかりません。
潜水艦は、どんどん、ずっと深く、空に潜っていきました。

「ここから先へは、みんなはもういけないわ。ここでお別れです。空の底についたら、夜、暗くなったら、チカチカ光らせて、おやすみでスカレーって言うわ、カモメさん、魚さんたちに、おやすみって言うわ、いい香りのカレーをつくるおにいさんにも、おやすみって言える、迷子になった人を助けたいわ。ありがとう、ありがとう、さようなら、さようなら」

潜水艦の声はきこえなくなりました。
そのほどに、星がまたたきはじめました。
横須賀はすっかり夜になりました。
スカレーはカモメに乗せてもらって、おうちであるカレー屋さんに着きました。

「今日は本当にありがとう、明日もまた遊ぼうね」

カモメたちは海に帰って行きました。
スカレーはおうちに入りました。

スカレーのパパとママは、一日中帰ってこなかったスカレーをとても心配して怒っていましたが、パパとママの顔をみるなりとびついて
「ぼくね、今日、とてもすごい冒険をしたんだよ」とキラキラした瞳をみて、怒る気持ちがすっかり消えて「話は、明日ゆっくりきくから、もう寝なさい」と言いました。

スカレーは部屋に入るとまっさきに窓をあけて、空いっぱいにまたたく星を見上げました。

「チカチカチカとまたたく星は役目を終えた護衛艦や潜水艦がぼくらに信号を送っているんだ。ぼくらに話かけているんだ」

スカレーはふぅっと息を整えると「おやすみー!」と大きな声でいいました。「おやすみでスカレー!」
空の一番奥の方で、チカチカチカとまたたく星が見えました。

スカレーは窓をしめて、ベッドにもぐりこみました。

スカレーは、今夜、どんな夢を見るのでしょうか。

星がまたたく横須賀に、もうすぐまた、朝日がのぼります。


おしまい

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『スカレーの冒険』寿

2014-08-15 00:08:14 | 作品
「こっちはいいぞ」
「こっちも大丈夫!」
「それじゃあ、飛んでみよう!!」
カモメ達がロープをくわえてはばたきはじめました。

「うーーーーーーーーーーーーーん」

魚たちも小さなヒレで、少しでも潜水艦を浮かせようと頑張っています。

「みんな、がんばって、もう少しでスカレー!」スカレーは声をかける役です。

「うーーーーーーーーーーー・・・・・・---------ん」

カモメ達の声をききつけて、トンビが群れでやってきました。
みんなびっくりしてしまいましたが、トンビもロープをくわえてはばたきました。
少し、潜水艦が浮きます。

夕日は、海の向こうにとけていき、横須賀の街にあかりが灯りはじめました。

「がんばれ!がんばれ!」スカレーは声の限りに応援しました。
「オーエス・オーエス」ものをロープで引っ張るときのかけ声です。
潜水艦は、少しずつ、海から姿を現してきます。

「オーエス・オーエス」

カモメと魚とトンビの声が一つになった時、潜水艦が海から出てきました。

「わーい、やったー!」スカレーは歓声をあげました。
魚たちがヒレで拍手をしました。小さなパチパチという音が波のあいまに消えていきます。

潜水艦が空を飛んでいきます。

暗くなった空を進む真っ黒な潜水艦に気が付く人は誰もいません。

観音崎にいるパン屋さん家のワンコが、空に向かってワンワンワンと吠えました。そのほかは、波の音が聞こえるほどの静かな夜です。

しばらくすると潜水艦が言いました。
「なんだか、潜る時と同じみたい。ねぇ、きっともう大丈夫よ、ロープを離してみて、私飛べるわ!」
トンビたちが離れていきました。
カモメ達はちょっと心配でしたが、一羽ずつ離れてみました。
ロープがほどけて、はずれても、潜水艦はすいすい空を進めました。
空を潜っているのかもしれません。

「ね、私、大丈夫でしょう?」

つづく

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『スカレーの冒険』③

2014-08-14 23:36:46 | 作品
外国の海で見た魚が綺麗だったこと、
金曜日になるとカレーを上手につくる人がいて、いい香りに包まれたこと。その日になると、心なしか、乗ってるみんなの声が明るく聞こえたこと。
いつだったか、ひろいひろい大海原にひょっこり浮いたとき、空に星がまたたいて、ラッパの音がして、それがとても美しくて、すごく感動したこと。

ラッパの音が、しました。
あたりはすっかり、夕暮れを迎えていました。

金色に輝くさざ波にうたれながら、潜水艦は話を続けました。

「あの基地に見える護衛艦には、大きくて眩しいあかりがついていて、それをつけたり消したりすることで、遠くの人と会話ができるの。役目を終えて、空にのぼった護衛艦は、夜に、人がいなくても、あかりを光らせることができるの。自分の言葉を伝えられるの。一番よくしてくれた乗組員の人に、ありがとうって言えるし、ひろいひろい海の上で迷子になった人に、こっちだよ、あっちだよって、助けることができるの。私もあかりを持っているのよ!だから、役目を終えるのは、ちっとも悲しいことではないの。だけど、空にいけなければ、何の役にもたたないの。ありがとうって言えないの」

潜水艦は、またしくしくと泣きはじめました。

スカレーは、どうしていいか分からなくなって、ふと、横須賀基地を見ました。
真っ白な制服姿のお兄さんが、ロープを片づけています。

「あ!」スカレーは、いいことを思いつきました。
「ねぇ!」だしぬけにスカレーは、言いました「ロープでひっぱったら、空、飛べるんじゃない?」

カモメ達がいっせいにスカレーを見ました。

「そんなこと、考えたことなかった」
「できるかな」
「やってみようか?」
「やってみようよ!」

一羽のカモメがパッと飛んで、ロープをくわえてもどってきました。

「いらなくなったロープ置き場、知ってるんだ、オレ」
得意気に言いました。

「すごいや!」
「ね、それでどうやってくくるの?」

すると魚たちが海から顔を出して言いました。
「海の中はわたしたちがくくるわ。わたしたち、この潜水艦と泳ぐの、とても好きだったの。だから、何かさせて欲しいの」

「わーい!」スカレーは嬉しさのあまり、バンザイをしました。

こうして、カモメと魚たちが協力して、潜水艦をロープでくくりました。
スカレーはロープをしばる係です。

つづく

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『スカレーの冒険』②

2014-08-14 23:17:06 | 作品
スカレーを乗せたカモメは、高く飛んだかと思うと、まもなくすぅっと低いところを飛び、カモメがいっぱい乗っている潜水艦の上に着きました。

「さぁ、ついたよ。この潜水艦が泣いているんだよ、もうずっと泣いているんだ」
「つれてきてくれて、ありがとでスカレー」
スカレーはカモメの背中に乗ったままお礼を言いました。
潜水艦の上に乗るのは初めてで、こわかったのです。

「ねぇ、おりていいんだよ」
カモメが迷惑そうに言いました。
「うん…」しぶしぶ、スカレーはおりました。
「わぁ…」潜水艦の上に乗っちゃった!

「この潜水艦ね、長いこと仕事をしてきたのだけれど、もう年だし、新しい潜水艦に仕事を譲って、どくことになったんだって!」
「そうなんだ」スカレーは潜水艦をさすりながら言いました。
「どいたことが悲しくて泣いているんだね?」
スカレーは、悲しいときでもお話しできない動物を優しくなぐさめるように、潜水艦をなでました。

「ちがうの。」潜水艦が言いました。
「ちがうのよ、泣いているのはどいたからじゃないの。だって、どくことは新しい仲間を加えることだもの。毎日ちゃんと具合もみてもらえたし、誰の命も喪うことなく役目を終えることができて、とても自慢なのよ!・・・泣いているのはね、夢があるからなの。でも、それはとても難しいの。実はね、役目を終えた護衛艦は空にのぼることができるの。でも、私は潜水艦だから、潜るのは得意だけど、空を飛ぶなんてできないから、ずっとこうやって過ごすのかしらって思ったら、悲しくて、泣いてしまうの」

「空に!?」スカレーは驚いて叫び声をあげました。

「ムリだよね」
「ムリだよ」
カモメ達が口々に言いました。

遠くで、ラッパが鳴りました。お昼になった合図でした。

スカレーは、カモメ達と一緒に、潜水艦の思い出話をききました。

つづく



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『スカレーの冒険』①

2014-08-14 23:00:15 | 作品
スカレーは横須賀にある、カレー屋さんのマスコットキャラクターです。
横須賀とカレーが大好きで、日本と世界の平和を守っている海上自衛隊の基地を見るのも大好きです。

今朝も、いつものようにヴェルニー公園をお散歩しています。
キラキラと朝日が波にあたって、向こうにはネズミ色の大きな護衛艦、こちらには真っ黒な潜水艦!スカレーはご機嫌です。

「おはよう、おはようでスカレー!」
遠くからラッパの音が聞こえてきました。
その後、「しくしく、しくしく」誰かの泣き声が聞こえます。
「どうしたの?なんで泣いているの?あなたはだぁれ?」
スカレーは海に向かって大声できいてみました。

すると、「私の声がきこえるの?」海の向こうから返事がありました。

「うん、きこえるよ、どうしたの?なんで泣いているの?」
スカレーは声が聞こえた方に目をこらしました。

すると、カモメが一羽、飛んできました。
「よぉスカレー、君飛べないんだよね、連れてってあげる。背中に乗りなよ」
「連れてくってどこに?」
「泣き声がするところ」
「ほんとう?じゃあ、お願い」

スカレーはカモメの背中に乗りました。

「しっかりつかまって、飛ぶよ!」

カモメが舞い上がりました。

「わぁーっ!」

いつもの横須賀がまるでちがう世界、
基地ではたらく人の姿が見えます。

昇ったばかりの太陽に照らされた横須賀の街なみ
京急の赤い電車がトンネルに入っていきます。

つづく

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世界の時間