☆Lorosae(太陽が昇る)ブログ☆

ロロサエという言葉は、東ティモールで使われているテトゥン語で、つまりは「日の丸」です。

『スカレーの冒険』③

2014-08-14 23:36:46 | 作品
外国の海で見た魚が綺麗だったこと、
金曜日になるとカレーを上手につくる人がいて、いい香りに包まれたこと。その日になると、心なしか、乗ってるみんなの声が明るく聞こえたこと。
いつだったか、ひろいひろい大海原にひょっこり浮いたとき、空に星がまたたいて、ラッパの音がして、それがとても美しくて、すごく感動したこと。

ラッパの音が、しました。
あたりはすっかり、夕暮れを迎えていました。

金色に輝くさざ波にうたれながら、潜水艦は話を続けました。

「あの基地に見える護衛艦には、大きくて眩しいあかりがついていて、それをつけたり消したりすることで、遠くの人と会話ができるの。役目を終えて、空にのぼった護衛艦は、夜に、人がいなくても、あかりを光らせることができるの。自分の言葉を伝えられるの。一番よくしてくれた乗組員の人に、ありがとうって言えるし、ひろいひろい海の上で迷子になった人に、こっちだよ、あっちだよって、助けることができるの。私もあかりを持っているのよ!だから、役目を終えるのは、ちっとも悲しいことではないの。だけど、空にいけなければ、何の役にもたたないの。ありがとうって言えないの」

潜水艦は、またしくしくと泣きはじめました。

スカレーは、どうしていいか分からなくなって、ふと、横須賀基地を見ました。
真っ白な制服姿のお兄さんが、ロープを片づけています。

「あ!」スカレーは、いいことを思いつきました。
「ねぇ!」だしぬけにスカレーは、言いました「ロープでひっぱったら、空、飛べるんじゃない?」

カモメ達がいっせいにスカレーを見ました。

「そんなこと、考えたことなかった」
「できるかな」
「やってみようか?」
「やってみようよ!」

一羽のカモメがパッと飛んで、ロープをくわえてもどってきました。

「いらなくなったロープ置き場、知ってるんだ、オレ」
得意気に言いました。

「すごいや!」
「ね、それでどうやってくくるの?」

すると魚たちが海から顔を出して言いました。
「海の中はわたしたちがくくるわ。わたしたち、この潜水艦と泳ぐの、とても好きだったの。だから、何かさせて欲しいの」

「わーい!」スカレーは嬉しさのあまり、バンザイをしました。

こうして、カモメと魚たちが協力して、潜水艦をロープでくくりました。
スカレーはロープをしばる係です。

つづく


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『スカレーの冒険』② | トップ | 『スカレーの冒険』寿 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

作品」カテゴリの最新記事