『ありがち日記』

恩田陸『Q&A』

恩田陸さんの本は数が多くてなかなかすべて読み終わりません…
この『Q&A』は、タイトルの通り全編が質問者と回答者の会話だけで進んでいきます。
珍しい形態なのと、ちょっと軽そう(すみません)な気がしていて、
何となくこれまで避けてきていたという感じ。
ところが、読んでいるとゾクゾクと背筋が寒くなるような展開もあり、
なるほど、恩田さんの作品だったわコレ…と思い直してちゃんと読みました。

2002年の2月、祝日の午後2時過ぎ、
郊外の大型ショッピングセンター「M」で多くの死傷者が出る事故が起きます。
その事故(事件?)に関わった人々に、
これまたインタビュアーが誰なのか明らかにされないまま質問する人々がいて、
それに回答していく形で次第に事故の形が見えていくのかと思いきや…
火事という人もいれば、毒ガスだという人もいるし、
とにかく人によって食い違う証言。
何が起こっていたのか全然わかりません。
休日の午後という一番混む時間帯に、急に何らかの原因で人々がパニックを起こし、
わけがわからないまま、人波に押しつぶされながら逃げまどう人々。
事故後に消防が駆け付けたけれど、何の証拠も残っていない。
それだけでゾッとしませんか?

証言者一人一人の回答がちょっとずつ繋がっているところに著者の巧みさを感じ、
さらに小説としての面白さを感じるところではありますが、
実はそれぞれの人が独立した背景を持っていることに気付かされると、恐ろしくなります。
見た目だけではわからないけれど、どの人にもその人の背負う背景があり、
何かがきっかけでそれが吹き出したり露になったりする…。
事故の原因を究明する話というよりは、そういう人の内面や背景を露にすることが、
このストーリーの肝となっているような感じがしました。

さらに、そこに得体の知れないものへの恐怖や、集団心理、新興宗教、
都市化に伴って常に新たな人殺しの方法を探る人々がいるかもしれないということなど、
現代に起こりうることや直面していることだったりするなぁと思いながら読みました。
少し前に書かれた小説ですが、恩田さんらしい、ハッとするような鋭い切り口だと思います。

というわけで、私はこのお話は面白く読ませていただきました。
もっと早く読んでおけば良かったなぁ~(^^;) 


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