豊中市立第十一中学校吹奏楽部が、来たる10月31日、名古屋国際会議場で開催される第60回全日本吹奏楽コンクール中学の部で、全国から選ばれた強豪団体とその演奏を競います。
3年連続で全国コンクール出場校に選ばれるのは、それだけでも非常に名誉なことで、同コンクールの60年以上の歴史の中で、大阪府では3校目。豊中市立中学校としても初めての快挙です。
地区大会を経て、8月11日、第51回大阪府吹奏楽コンクールで関西吹奏楽コンクールの大阪代表に選ばれたのは7団体。このうち、約半数の3団体が豊中市立中学校の吹奏楽部でした(同校のほか、第三、第十三中学校)。「音楽あふれるまち」を謳(うた)う豊中にとって大きな誇りです。
そして同月20日、関西吹奏楽コンクールで、2府4県から関西代表のわずか3団体に選ばれたのが、第十一中学校吹奏楽部。大阪府からは、唯一、同部のみでした。
同部は去年、おととしと全国コンクールで銀賞を受賞。今回こそはと、金賞受賞の意気込みで臨みます。
<1年生が全体練習に使っている音楽室の壁面(室内奥・上部)には、これまでのコンクールで獲得したトロフィー・賞状や出場写真が並びます。1年生はまだ全国コンクールには出場しませんが、憧れの先輩たちの輝かしい歩みの証(あかし)を前に、練習に一層力が入ります。>
全国コンクールを翌月に控え、去る9月17日、「全日本吹奏楽吹奏楽コンクール出場記念演奏会」が、グリーンホール(箕面市立市民会館)で開催されました。
同部と保護者、学校や協賛企業の協力で実現したこの壮行演奏会を待ちわびて、開場前から多くの人がホールに詰めかけました。
3時半に開演したこの日の演奏会は2部構成。前半は、1年生と2年生からなる約50人のBチームのプログラム・4曲です。オープニングの「ロマネスク」は、同部で代々大切に受け継いできた曲。満席に近い会場で聴いているOB・OGにも思い出深い一曲です。
前半を締めくくるのは、「栄光の架橋(かけはし)」。司会者が伝えます。これは、音楽グループ「ゆず」が2004年、アテネオリンピックのアスリートのために作った曲で、全国コンクールに出場する2・3年生への応援歌として送るもの。
休憩をはさんで、後半は全国コンクールに出場するAチームの演奏です。2・3年生のメンバー約50人が舞台に着席すると、淺利敬一郎豊中市長と山元行博教育長から、激励のメッセージと花束が贈られました。
<「感動を与える、楽しい演奏を」と淺利市長>
<山元教育長からも花束が贈られました>
1曲目は全国コンクールの課題曲4・行進曲「希望の空」です。題名のとおり、軽快なマーチに乗せた明るい旋律がホールいっぱいに響きました。
いよいよ2曲目は、全国コンクールのために選んだ自由曲・「紺碧(こんぺき)の波濤(はとう)」。高い演奏技術と表現力が要求される難曲ですが、瑞々(みずみず)しい感性あふれる豊かな表情と、緊張感の効いた演奏から、譜面に込められた曲想が見事に紡(つむ)ぎ出されました。
プログラム全曲の後、全国コンクールで「いい演奏を届けたい」との意気込みとともに、応援への感謝を込めて演奏されたのが、NHK連続ドラマでヒットした、音楽グループ・いきものがかりの「ありがとう」。さらに、アンコールに応えて、情熱のラテンナンバー「エルクンバンチェロ」で盛大に締めくくられました。
<この日のプログラム全曲>
同部保護者会では記念CDを作成しています。過去2回の全国大会出場記念CDも制作してきましたので、今回の最新作は3枚目となります。
<「3年連続全国大会出場記念CD「豊中十一中ベストセレクション2」>
全国コンクールを前に、感銘深い演奏を聴かせてくれた第十一中学校吹奏楽部。迫力あるコンサートは、日ごろの活動の賜物(たまもの)です。
ところで、そんな豊かな音楽性を見事な演奏に体現している同部は、どんな活動をしているのでしょうか。ぜひとも練習の様子もご紹介させていただきたく、部活動中にお邪魔しました。
土曜日の朝8時30分、部員の皆さんは個人やグループの練習に取りかかっています。
<傍らの楽譜には、演奏記号、音量の強弱や表現のための注意がびっしり書き込まれています>
<風通しの良い渡り廊下では、ウォーミングアップの音出し>
間もなく、皆で全体練習を行うために、2つある音楽室からすべての机やいすを運び出し、次々と楽器が運び込まれます。管楽器だけでなく、コントラバス、ティンパニや銅鑼(どら)、ドラム、マリンバ、ハープなど、大型楽器も所狭しと並べられます。
全体練習が始まるまでのわずかな隙間(すきま)時間にも、寸暇を惜しんで参考書やノートを広げる3年生の姿も。部活動と勉強の両立にたゆまず励んでいます。
全国大会に出場するAチームは3年生と2年生の混成。全体練習が始まると、50数人の部員が集中して音づくりに専念します。同部を指導する顧問の橋本裕行先生から「(音程が)低い」「アインザッツが合ってない」と次々に指示がとびます。ピッチの高低や、フレーズの出だしなどもきれいに合わせながら、繊細に曲調を彫りだしていきます。
休憩時間に部長と2人の副部長から、全国コンクール出場への意気込みをうかがいました。
部長の津田美優さん:「3年生で最後の大会なので、楽しんで演奏したい。」
副部長の牧田麗さん:「感動してもらえる演奏を。」
同じく副部長の増田夏美さん:「演奏する自分たちも感動できるように。」
同部を代表する3人の思いには、楽しく、そして感動あふれる演奏をめざす全部員の願いが込められているようです。
<牧田麗さん、津田美優さん、増田夏美さん>
中学校の文化系クラブの中でも特に人気があるという吹奏楽部。第十一中学校の生徒数は千人強ですが、同部は100人の部員を擁します。演奏楽器の幅も広く、ピッコロ、フルート、オーボエ、クラリネット、バス・クラリネット、バスーン、イングリッシュ・ホルン、アルト・サックス、テナー・サックス、バリトン・サックス、トランペット、ホルン、トロンボーン、バス・トロンボーン、ユーフォニウム、テューバ、コントラバス、パーカッション、ハープと錚々(そうそう)たる編成です。
最後に、同部顧問の3人の先生から、高い水準の秘訣などを教えていただきました。
コンクールで好成績を収めてきた同部のこと、日々の練習が長時間に及んでいるものと思われがちなのだそうですが、個人練習に充てている週日の放課後は、わずか1時間程度。全体練習も、土曜日の日中と日曜日の午前中だけ。勉強も忙しいので、短時間での集中を大切にしながら成果をあげているそうです。
<下澤美咲先生、橋本裕行先生、大江伸治先生。全国コンクールでは橋本先生がタクトを振ります。>
今回の全国コンクールで披露する自由曲・「紺碧(こんぺき)の波濤(はとう)」は、深く豊かな曲想が織り込まれているだけに、仕上げに並ならぬエネルギーを要する作品。部員の希望と、同部が創り出す厚い音でその曲想を描ききることをめざしてこの曲が選ばれました。そして何よりも、この作品の演奏にこそ、同部が大切にしている「音楽を通じて、自分も感動し、人に感動を伝えよう」とのモットーが存分に発揮されるのに違いありません。
開催が迫る全国コンクールには、中学の部に全国から精鋭29団体が集まり、金・銀・銅賞を競います。第十一中学校吹奏楽部の健闘を、どうぞ応援ください!
(都市活力創造室・加藤がお伝えしました。)