11月末で閉幕となる豊中音楽月間。中でも好評を博した豊中まちなかクラシックは、市内10会場で開催。市内外の多くの皆さまに日本センチュリー交響楽団が奏でる味わい深い演奏を、さまざまな編成でご堪能いただきました。
同楽団の緻密なアンサンブルはもとより、会場の魅力も相まって、きらりと豊中の魅力が輝きました。後半の演奏会をたどってみましょう。
「萩の寺に綾(あや)なすモーツァルトの調べ」
(11月10日(土)13時~14時/東光院 萩の寺)
<プログラム>
バッハ:「ゴールドベルク変奏曲」~アリア(D.シトコヴェツキー編)
モーツァルト:弦楽三重奏のためのディヴェルティメントK.563
萩の名所で知られる東光院のたたずまいにもしっくりと馴染んでいたゴールドベルク変奏曲。仏様の御前に整えられた調度も美しい本堂で聴くバッハの端正な音律。この静謐な空間が心做(な)しか、極楽浄土のように感じられたかもしれません。
(下写真)左から、ヴァイオリン:松浦奈々さん、チェロ:北口大輔さん、
ヴィオラ:飯田隆さん
続いては、モーツァルトのディヴェルティメントの中でも珍しい弦楽三重奏です。演奏者の北口さんも「モーツァルト晩年の室内楽作品の最高傑作の一つ」と語る珠玉の作品。6楽章からなるこの大曲が、緊密なアンサンブルによって息もつかせぬばかりの心地よい緊張感とともに奏でられました。
「木管五重奏に南仏プロヴァンスを想う」
(11月10日(土)15時~16時/ノワ・アコルデ音楽アートサロン)
<プログラム>
モーツァルト:ディヴェルティメント第9番
ヴィヴァルディ:フルート、オーボエとファゴットのための協奏曲 ト短調
イベール:3つの断章
大きな古時計(楽器紹介)
ミヨー:ルネ王の暖炉
5種の管楽器が勢揃い。フルートやクラリネット、ホルンはよく見かけるかもしれませんが、オーボーエや特にファゴットを間近に見聴きする機会は珍しかったのでは…
分かりやすい解説・楽器紹介も交えながら、時代や曲調もさまざまな作品を通じて、これら管楽器の個性豊かな音色を楽しみました。
(下写真)左から、フルート:永江真由子さん、オーボエ:宮本克江さん、
ホルン:向井和久さん、ファゴット:宮本謙二さん、
クラリネット:大中一巳さん
肌寒さの増すころ、ぬくもりに満ちた演奏で、ミヨーの「ルネ王の暖炉」ゆかりの南フランス・プロヴァンスの日だまりのあたたかさを感じていただけたのではないでしょうか。
「教会にいま甦える古(いにしえ)の響き」
(11月10日(土)17時~18時/ 日本キリスト教団豊中教会)
<プログラム>
マリーニ(1594-1663):ソナタ No.9 Op.8
テレマン(1681-1767):ソナタ
フレスコバルディ(1583-1643):カンツォーナ No. 1
ヘンデル(1685-1759):協奏曲第1番 変ロ長調
ヒダシュ(1928-2007):序奏とフーガ
ヨルゲンセン(1881-1947):ロマンス Op.21
カステレーデ(1926-):ファンタジー コンチェルタンテ
ロペス(1957-):トリオ Op. 1
この演奏会のプログラムでは、すべての作曲家に生没年が添えられ、時代性を感じ取っていただきながら各曲をお聴きいただきました。
日ごろオーケストラではトロンボーンでご活躍のお二人が、古い時代の曲は、その再現にふさわしいトロンボーンの前身「サックバット」でお聴かせくださいました。後半は現代のトロンボーンに持ち替えてのご演奏。両楽器の形状や特徴を楽しくお話しいただき、音色も聞き較べながらこれら楽器の変遷をたどりました。
(下写真)左から、三窪毅さん、笠野望さん。
お二人の前に立て置かれているのがサックバット。
この礼拝堂は天井が高く、17世紀から現代までの多彩な演奏曲が伸びやかに響きわたりました。高い窓からやわらかな夕日が差し込む厳(おごそ)かなひととき、したたる音楽の芳香に包まれました。
(下写真)ピアノは中山詩子さん
「四季(全曲)とヴィオラ協奏曲の夕べ 」
(11月14日(水)19時~20時45分/ アクア文化ホール)
<プログラム>
モーツァルト:歌劇「偽りの女庭師」K.196より序曲
シュターミッツ:ヴィオラ協奏曲ニ長調Op.1
ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集《和声と創意の試み》Op.8「四季」
豊中まちなかクラシックの最後を飾る充実のプログラム。「四季」の12の全楽章が奏でられ、今秋の一連の演奏会の幕を閉じました。
ヴァイオリン、ヴィオラの独奏とともに、第1ヴァイオリン・第2ヴァイオリンが各4人、ヴィオラ3人、チェロ2人、コントラバス1人、オーボエ・クラリネット・ホルンが各2人、チェンバロ1人のチェンバーオーケストラはこの演奏会のために特別に編成されたものです。
開演時には淺利敬一郎豊中市長からご挨拶させていただき、市と日本センチュリー交響楽団とで9月に取り結んだ「音楽あふれるまちの推進に関する協定」や、豊中まちなかクラシックによるこの協定の具現化などについてもお伝えしました。
幕開けは、モーツァルトの序曲。寒気に少し冷える夜でしたが、澄明で軽妙なこの1曲で会場がでぱっと華やぎました。
続くシュターミッツのヴィオラ協奏曲は、日本センチュリー交響楽団ならではの選曲。ヴィオラをメインに聴ける演奏会は少ないものですが、楽器の中でも人の肉声に最も近いといわれるふくよかで厚みのあるヴィオラの音色を存分にお楽しみいただきました。
18世紀の作品ながら、表現の幅と表情に富んだ曲調、そしてヴィオラ独奏の華麗なカデンツァ、息の合ったオーケストラが満場を魅了しました。
(下写真)ヴィオラ独奏:丸山奏さん
後半の「四季」はヴィヴァルディの代表作としてよく親しまれていますが、日本センチュリー交響楽団の精鋭メンバーが紡ぎ出す繊細かつダイナミックな四季はまさに鮮烈。
今から300年近く前のイタリアの四季の風物が、生き生きと目の前に描きだされるようです。小鳥のさえずり、そよ風に水の流れ、嵐などとともに、羊飼い、村人の踊りや狩猟シーンまでもが描ききられた名画を居ながらにして鑑賞いただいたことでしょう。
ヴァイオリン独奏とオーケストラの見事な掛け合いがステージ上に繰り広げられ、終演時には客席から感嘆のため息が漏れました。
(下写真)ヴァイオリン独奏:蔵川瑠美さん
以上、都市活力創造室の加藤からお伝えさせていただきました。