ペンネーム牧村蘇芳のブログ

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蟲毒の饗宴 第7話(1)

2025-02-24 18:14:25 | 小説「魔術ファミリーシリーズ」ウェストブルッグ2<蟲毒の饗宴>
 ケイトの使い魔である黒猫フレイアは、
 大胆にも敵地の建物に侵入していた。
 ドタドタと数人の足音が聞こえる。
「チクショー!
 あの野良猫、どっから入り込みやがった!!
 そっち、いたか?」
「いや、いねえ。
 まさか2階に上がっちまったか?」
 すると1階のどこからか、
 ニャーオ
 とノンビリ調な鳴き声が聞こえた。
「あっちだ!」
 またドタドタと足音が響く。
 黒猫フレイアの鳴き声は魔声。
 あたかも他の場所から鳴いている様に、声だけを移動させる事が出来る。
 見張り役の男どもを錯乱させている間に、悠々と2階へ上がった。
 そのまま3階へ続く階段と、2階の各部屋へ通じる廊下が見える。
 一番手前の部屋の扉にくると、ドアノブに飛び乗って器用に開けた。
 そこは下っ端どもの私室だった。
 おそらく他の部屋もそうだろう。
 床は脱ぎ捨てた衣服やゴミが散乱しており、
 ベッドの上はゴチャゴチャになった掛布団。
 ゴキブリが同居していても不思議に思わない惨状がここにあった。
 一応他の部屋も見て回るが、どこも同じ。
 どうやらここの人間に綺麗好きはいないようである。
 2階の部屋の扉を全て開けたままにし、次は3階へ。
 ここは大きめの部屋が1部屋のみのようで、
 階段を上がってすぐが扉だった。
 ここでもドアノブに飛び乗るが、鍵が掛かっている。
 たぶん1階のどこかの部屋に鍵束を保管していると思うが、
 今更下に戻る気は無い。
 自らの爪を鍵穴に差し込み、まさかのピッキングを始めた。
 カチャカチャと器用にいじり、
 ガチャッ!と開錠した音がするとドアノブを回す。
 無事(?)に部屋へと侵入。
 もはや盗賊並みである。
 日頃からケイトの部屋で悪戯しまくっている成果と言えた。
 この部屋は、正面奥に事務机。
 入ってすぐ右には応接用のソファーとテーブル。
 まるで社長室に見える。
 黒猫フレイアは、迷う事なく事務机に行き、
 引き出しをガラガラと全部開けて中身を引きずり出した。
 サイン用のペンにインク、無記入の白い和紙と薄茶色の羊皮紙が数枚ずつ、
 あとはファイルされた書類が1つ。
 そのファイルの上にベタッと寝そべり、数秒後再び起き上がると、
 今あったファイルが消え失せている。
 身体のどこかに取り込んだのだろうか。
 すると、ここでの仕事は終わったと言わんばかりに帰ろうとするが、
 ここで普段の悪戯癖が出てしまう。
 インクの入った壺を机の上にブチ撒け、
 その上をシッカリと歩いて足裏にインクをタップリと付け、
 事務机、椅子、和紙と羊皮紙、テーブル、ソファー、床と、
 足裏のインクが無くなるまで走り回った。
 もちろん窓は、事務机の上にあった物凄く高そうな文鎮を投げつけて、
 ガシャーン!
 と割っていく。
 そして、
『いやー、今日もイイ仕事したなぁー。』
 と言いたげなドヤ顔をすると、
 満足というか愉悦した表情でこの部屋を去っていった。
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