ペンネーム牧村蘇芳のブログ

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蟲毒の饗宴 第9話(3)

2025-03-04 20:41:31 | 小説「魔術ファミリーシリーズ」ウェストブルッグ2<蟲毒の饗宴>
 ウェストブルッグ家では、人形娘ドールがケイトの父ヴェスターに、
 魔術探偵で受けている仕事について話していた。
 ニードルの件も伝え、黒猫フレイアが奪ってきた
 ファイルの写しを渡している。
「・・・なるほど、状況はだいたい理解しました。
 貴族絡みの案件だと、王宮護衛団も動きにくいでしょうからねえ。
 女王と王宮魔法陣のフィアナに話しておきますよ。」
「宜しくお願い致します。」
 話していると、ケイトの母アニスがひょこり顔を出す。
「何かあったの?」
 ドールは、ヴェスターに話した内容をそのまま聞かせた。
 そして、
「ベレッタ様とキャサリン様は、既に御存じです。」
 と付け足す。
「私もキャサリンも他の仕事で手一杯だけど、
 フランソワちゃんが一緒なら心配する事は無さそうね。」
 アニスは安心してる様子。
 ヴェスターもまた、
「冒険者カイルたちの話は私も聞いた事があります。
 なかなか信用できるパーティーのようですから、大丈夫でしょう。」
 と不安に思う事は何もないようだ。
 むしろ、楽しそうな笑みを浮かべている。
「女王に奴隷商存在の話を聞かせたら、
 どんな反応をするか楽しみですねえ。」
 蓋を開けずとも結果は見えている。
 ブチ切れるのは確実だ。
 挙句、自ら出向くと言い出しかねない。
 そんな状況で女王護衛団の者たちを動かす事は出来ないだろう。
 王宮騎士団も王宮護衛団も貴族相手では出方をうかがってしまう。
 となると・・・。
 王宮魔法陣が動く。
 それもフィアナ直属の星界の陣が。

 ヴェスターが奴隷商アラクネの話を持ってくる事は、
 フィアナは当然の如く予見していた。
 星界の陣は、他の5つの陣を指揮する部署と言われているが、
 実はもう1つの顔がある。
 悪質な貴族・皇族の排除役だ。
 闇夜の陣が管轄する暗殺ギルド“ニードル”だけでは手に余る場合、
 隠密に処理する事。
 貴族側は当然屈強のボディーガードを付けている。
 だが、そんな奴らを歯牙にもかけない程の、
 常識外れな戦闘力を有した2人が星界の陣にいた。
 フィアナの傍に、色白の美青年と浅黒の美青年がいる。
 ヴェスターが、女王エレナ、室長ラングリッツ、フィアナの3人に
 話すため軍議室に集まった際、ヴェスターも初めてその顔を見た。
 まさか2人を連れて軍議室に来るとは思ってもみなかったのである。
 色白の美青年が挨拶する。
「初めまして。
 ケルビムといいます。」
 浅黒の美青年が挨拶する。
「初めまして。
 マルコシアスといいます。」
 天使の名を持つ青年と、悪魔の名を持つ青年か。
 どちらも魔力の量が尋常じゃない。
 本当に人なのだろうかと思う。
 そして預言者フィアナが語る。
「今回は病院が絡んでいますが、ドクター・スノーは深入りしてきません。
 なぜなら患者アメリは・・・だからです。
 厄介な者は3人。
 マーキュリー伯爵夫人の相手は、冒険者カイルたちとケイトに任せます。
 用心棒レグザの相手は、マルコシアスに任せます。
 用心棒ライガの相手は、ヴェスター殿に任せます。」
「は?
 私・・・ですか?」
「ケルビムは私の補助役ですので、外への行動は控えさせていただきます。
 ヴェスター殿、宜しいでしょうか?」
 ヴェスターはニッコリと笑みを見せ、
「はい、お任せ下さい。」
 と毎度楽しそうに語っていた。

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