アメリカのICUで働く看護師のブツクサ独り言なので
興味のない方はすっ飛ばしてください。
一般の方にもわかりやすいように書いているつもりですが
専門用語とか、わかりにくい事もあるかもしれません。
わからない事があったらググってください(丸投げ)。
えいやの働いている病院には
産科や周産期を管理する病棟があり
出産以外にも、妊娠悪阻や各種ハイリスク症状に対応。
大概のことはそちらで管理出来ますが
手に負えないケースは
えいやの働くMedical ICUに移動になります。
今まで実際に担当したのは
・普通分娩による大量出血
・周産期心筋症
・帝王切開後の大量出血
・妊娠中の頭痛、意識障害
などなど。
ICUに運ばれるくらいの症状なので
みなさん気管挿管が必要な重いケース。
で、タイトルにもある通り
最近HELLP(ヘルプ)症候群が多いんです。
HELLPをものすごーく簡単に説明すると
肝臓疾患を伴う妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)です。
この病気のやっかいなところは症状に気付きにくい。
母子ともに生命を脅かす病気で
妊娠継続を終了する(胎児を出す)以外に治療法がない。
妊娠後期に発症するケースがほとんどで
出産後に「実はHELLPにかかっていた」というケースも。
HELLPは肝機能に障害が出るので非常に血液が固まりにくい。
出血しやすい&止血するまで時間がかかります。
産後の大量出血で子宮遺残物を除去しても
子宮内に圧迫バルーンを入れても、何をやっても止まらないので
最終的に子宮動脈塞栓術を行ったり
はたまた子宮摘出か!?なんてケースも。
これ、年齢に関係なく発症するので
18歳の産婦さん(気管挿管されていて意識なし)のお母さんに
「子宮動脈の塞栓でも出血が止まらなければ
最終手段は子宮摘出になります」
なんて話さなければいけないのは本当に心が痛いです。
幸いこの患者さんは動脈塞栓で出血が止まったので
子宮摘出は免れたし
赤ちゃんは37週にまで達していたので
数日間NICUに入っただけで健康そのものでした。
一時はGCS 3でかなり危ない状態でしたが
状態が安定してからの回復は早く(若い!)
無事に退院していきました。
でも、HELLPは本当に怖いです。
残念な結果になってしまったケースもあって
2-3日間、頭痛や体調不良で寝込んでいた20代の妊婦さん。
家族の方が「これはおかしい」とERに連れてきた時には
ろれつも回らず意識が混濁。
気管挿管されてICUに入院。
エコーで胎児の状況を確認するも生死のほどは不明。
血圧は高く、肝機能は低下。
極度の凝血障害を発症しているため
止血が困難と推測される帝王切開は不可能。
誘発分娩で胎児を摘出するもののすでに亡くなっていました。
お母さんは意識がないので
赤ちゃんが産まれた事も、亡くなっている事も知りません。
極めつけには、
凝血障害による脳出血を起こして脳死判定が下りました。
アメリカ全土ではどうかわかりませんが
私の住む州では脳死=固体死(死亡判定)になるので
人工呼吸器から外されて完全にお亡くなりになられました。
医療従事者として
どんな患者さんでも最善を尽くして救命に当たります。
やはり3人の子供を持つ25歳は何としてでも救ってあげたかった。
どんな患者さんでも亡くなるのは辛いですが
3人の幼い子供の悲痛な叫びは本当に本当に辛いです。
普段は涙を見せることのない多くのICUナース達も
このケースは堪えるものがあって
涙ぐんでるナースあり。
子供達の声を聞くのが辛くてその場を離れるナースあり。
普段とは違う雰囲気の漂う1日となりました。
妊娠中は浮腫みやすかったり不調を訴えがちですが
少しでも異変を察知したら
医療機関を受診して欲しいと思います。
そして、ただ単に受診するだけでなく
血液検査など精密な検査を要求する姿勢も大切です。
HELLPはわりと最近教科書に載るようになった病気なので
15-20年選手のベテランナースのほうが
この病気を知らなかったりするんですよね(経験談)。
産婦人科医であれば「誰もが知ってるはず」と思いたいけど
意外と知らない産婦人科医もいるかもしれないし
内科を受診した場合なんかは
HELLPを知らない内科医がいる事は簡単に想像出来るので
患者としても医師に色々求める姿勢は必要だと思います。
いずれにせよHELLPが広く認知されて
重い症状で入院してくる患者さんが減ることを祈るばかりです。
←妊娠中期・後期に肝機能チェックすべし
興味のない方はすっ飛ばしてください。
一般の方にもわかりやすいように書いているつもりですが
専門用語とか、わかりにくい事もあるかもしれません。
わからない事があったらググってください(丸投げ)。
えいやの働いている病院には
産科や周産期を管理する病棟があり
出産以外にも、妊娠悪阻や各種ハイリスク症状に対応。
大概のことはそちらで管理出来ますが
手に負えないケースは
えいやの働くMedical ICUに移動になります。
今まで実際に担当したのは
・普通分娩による大量出血
・周産期心筋症
・帝王切開後の大量出血
・妊娠中の頭痛、意識障害
などなど。
ICUに運ばれるくらいの症状なので
みなさん気管挿管が必要な重いケース。
で、タイトルにもある通り
最近HELLP(ヘルプ)症候群が多いんです。
HELLPをものすごーく簡単に説明すると
肝臓疾患を伴う妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)です。
この病気のやっかいなところは症状に気付きにくい。
母子ともに生命を脅かす病気で
妊娠継続を終了する(胎児を出す)以外に治療法がない。
妊娠後期に発症するケースがほとんどで
出産後に「実はHELLPにかかっていた」というケースも。
HELLPは肝機能に障害が出るので非常に血液が固まりにくい。
出血しやすい&止血するまで時間がかかります。
産後の大量出血で子宮遺残物を除去しても
子宮内に圧迫バルーンを入れても、何をやっても止まらないので
最終的に子宮動脈塞栓術を行ったり
はたまた子宮摘出か!?なんてケースも。
これ、年齢に関係なく発症するので
18歳の産婦さん(気管挿管されていて意識なし)のお母さんに
「子宮動脈の塞栓でも出血が止まらなければ
最終手段は子宮摘出になります」
なんて話さなければいけないのは本当に心が痛いです。
幸いこの患者さんは動脈塞栓で出血が止まったので
子宮摘出は免れたし
赤ちゃんは37週にまで達していたので
数日間NICUに入っただけで健康そのものでした。
一時はGCS 3でかなり危ない状態でしたが
状態が安定してからの回復は早く(若い!)
無事に退院していきました。
でも、HELLPは本当に怖いです。
残念な結果になってしまったケースもあって
2-3日間、頭痛や体調不良で寝込んでいた20代の妊婦さん。
家族の方が「これはおかしい」とERに連れてきた時には
ろれつも回らず意識が混濁。
気管挿管されてICUに入院。
エコーで胎児の状況を確認するも生死のほどは不明。
血圧は高く、肝機能は低下。
極度の凝血障害を発症しているため
止血が困難と推測される帝王切開は不可能。
誘発分娩で胎児を摘出するもののすでに亡くなっていました。
お母さんは意識がないので
赤ちゃんが産まれた事も、亡くなっている事も知りません。
極めつけには、
凝血障害による脳出血を起こして脳死判定が下りました。
アメリカ全土ではどうかわかりませんが
私の住む州では脳死=固体死(死亡判定)になるので
人工呼吸器から外されて完全にお亡くなりになられました。
医療従事者として
どんな患者さんでも最善を尽くして救命に当たります。
やはり3人の子供を持つ25歳は何としてでも救ってあげたかった。
どんな患者さんでも亡くなるのは辛いですが
3人の幼い子供の悲痛な叫びは本当に本当に辛いです。
普段は涙を見せることのない多くのICUナース達も
このケースは堪えるものがあって
涙ぐんでるナースあり。
子供達の声を聞くのが辛くてその場を離れるナースあり。
普段とは違う雰囲気の漂う1日となりました。
妊娠中は浮腫みやすかったり不調を訴えがちですが
少しでも異変を察知したら
医療機関を受診して欲しいと思います。
そして、ただ単に受診するだけでなく
血液検査など精密な検査を要求する姿勢も大切です。
HELLPはわりと最近教科書に載るようになった病気なので
15-20年選手のベテランナースのほうが
この病気を知らなかったりするんですよね(経験談)。
産婦人科医であれば「誰もが知ってるはず」と思いたいけど
意外と知らない産婦人科医もいるかもしれないし
内科を受診した場合なんかは
HELLPを知らない内科医がいる事は簡単に想像出来るので
患者としても医師に色々求める姿勢は必要だと思います。
いずれにせよHELLPが広く認知されて
重い症状で入院してくる患者さんが減ることを祈るばかりです。
←妊娠中期・後期に肝機能チェックすべし
実は息子生んですぐ後で妊娠したんですが、子供に重大な疾患が見つかり中断しました。その後出血止まらず救急にてバルーンオペ
子宮と胎盤の癒着もあったので、その後数カ月は生理来るたびにこれ又大量出血をし、救急に運ばれる等しました。その時言われたのは、子宮内の何処から出血してるのか分からないので、本当は子宮自体を取り除けば出血は止まるけど…と言われてました。三度目の救急と輸血とホルモン剤投与で何とか止血したので子宮は残せました。ギリギリでした。もうこれでも出血止まらなければこれ以上の処置は意味ないと(つまり子宮摘出覚悟せよですね…)
だから今回の妊娠は怖かった。でもこれが最後になるから、何とか持たせれば子宮摘出すればいいと思ってましたが、帝王折角すらできないケースもあったんですね…命宿して残すのは本当に奇跡と覚悟のいる作業だと実感しました…
HELLPに限らず、新しい症例については常にアップデートしておかないといけないと思いました。
このバルーンが入っていた産婦さんも帝王切開後の出血だったので、実は「帝王切開で何かのミス(動脈を傷つけたとか)があったんじゃないの?」と内心思ってたんですが(^^;)、このように実際の体験談を聞けば聞くほど、子宮内を人工的に操作(?)すればするほどハイリスクになる印象を受けますね。
このような経験をされた後だと出産するまで本当に不安、心配だったと思います。無事に出血が止まり、今回の妊娠出産で無事にお子さん達が産まれて本当に良かったです!