195の2『自然と人間の歴史・世界篇』物理学の発展(17~18世紀)
今日よく用いられる「エネルギー」とは、何であろうか。この言葉は、ギリシア語の「エネルゲイア」から派生したものながら、広く使われるようになるのは、ずっと後のことだ。イギリスの物理学者トマス・ヤング(1773~1829)が1807年に著したA Course of Lectures on Natural Philosophy(『自然哲学講義』)の中で提案した。従来使われていた「力」を意味するラテン語 vis の代わりとして、ギリシア語のenergeiaを持ってくる。これは、energos(エルゴス)に由来する合成語であって、en は前置詞で、ergon(エルゴン)は「仕事」を意味する。この二つの組み合わせにより、「物体内部に蓄えられた、仕事をすることのできる能力」という意味になる。
さて、ヤングは、このエネルギーの概念を用いて、「ある物体のエネルギーの変化は、その物体に対して行われた力を加えたことによる仕事量に等しい」と述べるのだが、これを、Eをエネルギー、Wを仕事量として表すと、こうなる。
ΔE=ΔW
物理学において、この仕事量は、加えた力Fと移動した距離Δ(デルタ)Dの積で与えられる。
ΔW=F×ΔD
ところで、ある物体をある加速度によって加速させた時の仕事量は、どうなるか。求めるのは、質量がmの物体に対して行われた仕事量ΔWなのであり、ニュートンが発見した力の関係式を入れて、次式が導かれる。
ΔW=m×a×d
(ΔWは仕事量、mは質量、aは加速度、dは移動した距離)
ここで距離は速度かける時間で求められるから、次のように書き換えられる。
ΔW=m×a×V×t
(続く)
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