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サラ☆の物語な毎日とハル文庫

佐藤多佳子の『一瞬の風になれ』はちょっとスゴイ!

新二と連は、昨日まで行われていた世界陸上の、日本国内選考会に出たのでしょうか?

リアルにそんなことが妄想される、佐藤多佳子の小説『一瞬の風になれ』。
文庫本の帯には、「青春陸上小説のNO.1」と書いてあるけど、陸上小説なんてジャンルが、これまでにあったのか?

新二と連は、『一瞬の風になれ』の主人公と、その幼馴染みの天才的スプリンター。
2人は春野台高校陸上部に入部し、3年間、100m走、4×100mリレー、200m走、4×400mリレーと、とにかく走りぬきます。

よくもまあ、こうやって「走る」シーンだけで、これだけ長く引っ張ったものだと、感心するばかり。上、中、下巻、3冊ですよ。
中だるみもなく、飽きさせもせず、次はどうなるの? と引っぱる、引っぱる。

その合間に、友情、家族、部活動、ちょっぴり恋愛の話題などが盛り込まれるけれど、すべては「走る」に集約されます。
よくもまあ、こんな小説が書けたものです。

1年から3年まで、いろんな大会を追いつつ、2人がいかに走者として成長していったかが、きめ細かく丁寧に描かれます。

なかでも白熱するのは、4×100mリレー。
バトンのアンダーパスの練習シーンなど、目の前で練習が行われているかのように、飽きさせることなく話をつなぐ手腕はすぐれもの。

北京オリンピックのときに、この本を読んでいた友人の1人が、400mリレーだの、アンダーパスだのと、なんだか騒いでいたけど、たしかに北京五輪の前にこの本を読んでいたら、日本が銅メダルをとったとき、私だって間違いなく興奮してめいっぱい楽しめたに違いない。
文庫化されるのを待つだなんて、惜しいことをしたものです。

陸上競技で関心があるのはマラソンくらいのもので、これまであまり面白いとも思わなかったけど、この小説を読む限り、陸上には陸上の面白さがあるんですねぇ。

俄然、「走る」ことの気持ちよさが想像されるようになりました。

そりゃあ、風に乗って走れたら、気持ちいいでしょう!

つくづく、そういうことがリアルに思える、読み応えのある小説です。
誰が手にとっても、ぜったいはずさないと思うな。
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