サラ☆の物語な毎日とハル文庫

先進的編集者・出版人のエッツェルがジュール・ヴェルヌとタッグを組む②

↑ 左の表紙は『気球に乗って五週間』、右の扉絵は『八十日間世界一周』

 

@サラ☆

さて、昨日の続き

 

編集者であり出版人のエッツェルは、1850年代には、

すでにジュール・ヴェルヌと知り合っていたらしい。

けれども、その才能を確信したのは、

ジュール・ヴェルヌが1851年に書いたという『気球旅行』を

亡命先のベルギーからパリに戻って読んだときだ。

「ヴェルヌは才能ある作家だ。もしかしたら大化けするかもしれないぞ」

と思ったかどうかは定かじゃないけれど

これを長編に書き改めるよう依頼し

1863年に『気球に乗って五週間』というタイトルの単行本として出版する。

すると、またたく間に大ヒット。

 

エッツェルは翌年に子供向けの雑誌

『マガザン・デデュカシオン・エ・ド・レクレシアシオン(教育と娯楽の雑誌)』

を創刊するのだけれど、その目玉はジュール・ヴェルヌだ!

エッツェルはすぐさまジュール・ヴェルヌを専属作家とする長期契約を結んだ。

そして、その後の40年間に65の作品を54冊の書籍として刊行したそうだ。

 

40年もの付き合い。

優秀な編集者は、どんなものが売れそうかという鋭い嗅覚と

どのようにアレンジすれば読者に受け入れられるかという

圧倒的なセンスを持ち合わせているものだ。

エッツェルと組んだことで

ジュール・ヴェルヌは安定した書籍化のルートと

有益なアドバイスと、資料集めのアシスト

そして満足すべき収入を得たに違いない。

そうでなければ40年間もつづかないだろう。

他の出版社から、かならず好条件を提示されるはずだから。

 

そんなわけで稀代の編集者と、空想科学冒険小説の才能あふれる作家がタッグを組み

イギリスとかにくらべると、それほどの勢いはなかったフランスに児童文学界に

一つの大きなジャンルをもたらしたという話。

 

そうだよねぇ。

ジュール・ヴェルヌを抱えていれば、すごいものだ。

ほかにはそんなに目立った作家や作品が見当たらないとしても…。

 

子どものときに読んで思い出に残っている本として

『海底二万里』をあげる男性作家も多い。

「ネモ船長」というワードは、

冒険と何とも知れないまがまがしい世界への入り口を示す

ゆるぎない記号になっている、と言っていいくらい。

 

仏文学者の鹿島茂氏のコレクションの展覧会を見て

ジュール・ヴェルヌに心をもっていかれたからといって、

存在の持つ力がそれだけ大きいのだもの、

当然なことかもしれません。

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