13 世のはじめからの魔法
魔女が小人とエドマンドを蹴飛ばして歩いているところへ、オオカミがうなりをあげて飛び込んできました。
「やられました!石舞台でやつらを襲ったのですが、アダムの息子めにモーグリムが殺されました。逃げましょう!」
「逃げることは無い、返り討ちにしてくれる。そちは我が手下どもに集まるようにふれまわれ、みなこぞって闘うのじゃ!」
オオカミは一礼して、駆け去りました。
「こやつは取引のためにまだ生かしておきましょうか?」小人がエドマンドを小突いて言いました。
「もうよい、やつらに奪い返されたら元もこもないわ。いけにえの仕度をせよ、」
こびとはエドマンドを木に縛り付け、魔女は石のナイフをとりだして、刃を研ぎ始めました。
エドマンドは、空腹と疲れで朦朧とした意識のなかでそのシュッ、シュッ、という音を聴いていると、突然ひづめと翼のとどろきが聞こえました。
次に小人の叫び声と魔女の悲鳴がしたかと思うと誰かに縄が解かれましたが、そのまま気を失ってしまいました。
「魔女はどこに行った?」
「おれはナイフを叩きおとしたが、そのあとは知らん、」
「このなかから逃げたというのか?」
アスランに遣わされた救助隊は不思議がりながら、エドマンドを背負って引き上げていきました。
その場にあった丸石に足が生え、切り株にこそこそ話しかけたのは、そこに誰もいなくなってからでした。
翌朝、ピーターたちはテントから離れたところをアスランとエドマンドがなにか話しながら歩いているのを見ました。
「兄弟がもどってきた。もう過ぎたことを話すひつようはないぞ。」とアスランがみんなにいいました。エドマンドは兄弟のひとりひとりに握手をもとめ、めいめいに「ごめんなさい!」と言い、ほかの子たちは「もういいよ、」とか「いいのよ」とかいいました。それからみんなは、エドマンドとふたたび仲良しになれたことがはっきりするようなことを、ごくふつうにさりげなく言いたいと、一心に思いましたが、もちろん、そうやすやすと言えるものではありません。
その時、こびとが歩いてきて、「ナルニアの女王」との会見を申し出ました。アスランは受け入れました。
「ここには裏切り者がいるな、アスラン。」と魔女がいいました。「このナルニアができる時にあたって、あの大帝がくだした魔法は、ご存知のはずじゃ。裏切り者はことごとく、掟にしたがってわらわの当然のえじきになり、裏切りがあるたびにわらわがそれに死をあたえるの権利があることはご存知のはずじゃ。」
「おお、そのためにしだいに自分が女王だとおもいこんでしまったのだな。」とビーバーさん。「大帝の死刑係りだからな。」
「静かに、ビーバー、みんな下がってくれ、わたしは二人だけで話したい。」とアスランがいいました。
話し合いは長くつづきました。
エドマンドは息が詰まって、いっそ、自分からなにか言おうかと思いましたが、アスランを信じたほうがいいと気がついて思いとどまりました。
とうとうアスランが「話し合いがついた。」とみなを振り返りました。「あなたがたの兄弟の血をよこせと言うのはやめてくれた。」
みな、一斉に安堵のため息をもらしました。
魔女は立ち去りかけて、言いました。「この取り決めは間違いあるまいな?」
「うおーお!」アスランは声の限りほえはした。
魔女はほんのしばらく口をぽかんとあけて見ていましたが、さっとスカートをつまみあげて、命かぎりに走って、逃げていきました。
魔女が小人とエドマンドを蹴飛ばして歩いているところへ、オオカミがうなりをあげて飛び込んできました。
「やられました!石舞台でやつらを襲ったのですが、アダムの息子めにモーグリムが殺されました。逃げましょう!」
「逃げることは無い、返り討ちにしてくれる。そちは我が手下どもに集まるようにふれまわれ、みなこぞって闘うのじゃ!」
オオカミは一礼して、駆け去りました。
「こやつは取引のためにまだ生かしておきましょうか?」小人がエドマンドを小突いて言いました。
「もうよい、やつらに奪い返されたら元もこもないわ。いけにえの仕度をせよ、」
こびとはエドマンドを木に縛り付け、魔女は石のナイフをとりだして、刃を研ぎ始めました。
エドマンドは、空腹と疲れで朦朧とした意識のなかでそのシュッ、シュッ、という音を聴いていると、突然ひづめと翼のとどろきが聞こえました。
次に小人の叫び声と魔女の悲鳴がしたかと思うと誰かに縄が解かれましたが、そのまま気を失ってしまいました。
「魔女はどこに行った?」
「おれはナイフを叩きおとしたが、そのあとは知らん、」
「このなかから逃げたというのか?」
アスランに遣わされた救助隊は不思議がりながら、エドマンドを背負って引き上げていきました。
その場にあった丸石に足が生え、切り株にこそこそ話しかけたのは、そこに誰もいなくなってからでした。
翌朝、ピーターたちはテントから離れたところをアスランとエドマンドがなにか話しながら歩いているのを見ました。
「兄弟がもどってきた。もう過ぎたことを話すひつようはないぞ。」とアスランがみんなにいいました。エドマンドは兄弟のひとりひとりに握手をもとめ、めいめいに「ごめんなさい!」と言い、ほかの子たちは「もういいよ、」とか「いいのよ」とかいいました。それからみんなは、エドマンドとふたたび仲良しになれたことがはっきりするようなことを、ごくふつうにさりげなく言いたいと、一心に思いましたが、もちろん、そうやすやすと言えるものではありません。
その時、こびとが歩いてきて、「ナルニアの女王」との会見を申し出ました。アスランは受け入れました。
「ここには裏切り者がいるな、アスラン。」と魔女がいいました。「このナルニアができる時にあたって、あの大帝がくだした魔法は、ご存知のはずじゃ。裏切り者はことごとく、掟にしたがってわらわの当然のえじきになり、裏切りがあるたびにわらわがそれに死をあたえるの権利があることはご存知のはずじゃ。」
「おお、そのためにしだいに自分が女王だとおもいこんでしまったのだな。」とビーバーさん。「大帝の死刑係りだからな。」
「静かに、ビーバー、みんな下がってくれ、わたしは二人だけで話したい。」とアスランがいいました。
話し合いは長くつづきました。
エドマンドは息が詰まって、いっそ、自分からなにか言おうかと思いましたが、アスランを信じたほうがいいと気がついて思いとどまりました。
とうとうアスランが「話し合いがついた。」とみなを振り返りました。「あなたがたの兄弟の血をよこせと言うのはやめてくれた。」
みな、一斉に安堵のため息をもらしました。
魔女は立ち去りかけて、言いました。「この取り決めは間違いあるまいな?」
「うおーお!」アスランは声の限りほえはした。
魔女はほんのしばらく口をぽかんとあけて見ていましたが、さっとスカートをつまみあげて、命かぎりに走って、逃げていきました。
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