『これでいいのか!』私が体験した三つのできごと
先日悲しいようなびっくりするような体験を三つ続けてしました。
一つひとつはまったく別のできごとなんですが、この三つはどこか
でつながっているような気がしてなりません。
◆体験1:久しぶりに神戸で大学時代の友人雅代に会いました。
十年ぶりかな・・・雅代の結婚式以来です。「まあ雅ちゃん、相変
わらずきれいね。今どうしてるの」と、私はさりげなく聞きました。
そのとき雅代の顔がちょっと曇りました。「・・・じつわね・・・
私離婚したの。もう三年になるわ」「え一、離婚!なんで、あなた
が離婚だなんて・・・信じられないわ」「うん、みんなそう言う
・・・彼のDVなの。こんなこと人に言えないでしょう」「それで
美代ちゃん(娘〕はどうしたの?」「うん、私がひきとってる。
でもたいへんだったわ。 まだ赤ちゃんだったし。向こうは渡さな
いって言い張って。とうとう裁判になってしまって。二年もかかっ
たのよ。娘をこちらにひきとれるまで」。「DV・・・なの」と、
私は息をのみました。「まさか、あのかしこそうでやさしそうな彼
が、DVだなんて」。
雅代の結婚式の様子が思い出されます。一流大学を優秀な成績で
卒業、一流の職場に就職。結婚してすぐに海外勤務について。
みんなの羨望のまなざしだった雅代。幸せいっぱいだった雅代の表
情をいまでも忘れられません。それがDVで離婚だなんて、私は信
じられませんでした。
「体のあちこちにあざができてね・・・警察に何度もかけこんだの。
こわくてこわくてとうとう我慢できず8か月の美代をつれて実家に
戻ったの」「よく美代ちゃんがこちらにとれたね」「なんとかね、
2年かかった。'あちらは法律の知識ばっちりでしょ。『僕はこの子
の父親だぞ。経済カもあるし、子育てにはおふくろが全面的に協力
するって言ってるし。子どもはこっちのものだ』ってやってくるし。
私だって絶対にわたさないって必死で対抗して。
お互いに弁護士をつけて、最後に決め手になったのは、私が青あざ
赤あざでなんども警察にかけこんでいた事実だったの。
おかげで美代は私の手にもどってきたわ。でもなんでこんなめにあ
わなくっちゃならないの」。
彼女の目から涙がぽろぽろとこぼれました。
有名・・大学の法学部出身で、エリート官僚で・・・彼のお母さ
んにとっては自慢の息子さんであるはずなのに、その彼がね一。
自分の思うようにならないと怒狂い、妻にDVふるっていたなんて
。背筋がさむ一くなってきました。
◆体験2:京都小旅行からの帰りの電車のなかで
私の前の席に幼稚園か小学一年生くらいの男の子とお母さんが
座りました。男の子はすぐに窓にしがみつくように外の景色を眺
めています。「思いだすなあ。私もこんなころ電車に乗るのが楽
しみだったな。家や畑があとへあとへと飛んで行くのがめずらし
くて。そんな童謡もあったっけ。この子あの歌知ってるかな?」
と、私は男の子のようすを見ながらぼんやりと昔をなつかしんで
いました。
そのときお母さんの声がしました。「卓也君、はい、これ」。
座るなりお母さんが取り出したのは、問題集のようでした。
「答え書いといてね。あとでみてあげるから」。「・・・」
男の子は黙ってスーッと手を出して受けとりました。
「え一と、15になるのは・・10と5、それに10たしたら
・・」「シー声ださないのよ」「ママー、この答え25やろ」
と、男の子はお母さんの顔を見上げて問いかけます。「ママは
あとでね、自分でやりなさい」。あ一あ、ママにふられちゃった。
男の子はしばらくして大きなあくび。「180円のお菓子、
140円の.あめと・・・90円のキャラメルとではお菓子の代金
は合計いくらでしょう?」。男の子はたいくつそう。またあくびが
でました。とうとう男の子は上半身をくねらせ、また窓の外をちら
ちらと横目で見始めました。家や工場が飛ぶように後ろへ後ろへ飛
んでいきます。その間から海が見えてきました。面白いのか首を伸
ばして追っかけるように見ています。「この景色をみたいんだろう
な、計算するよりも。電車の中からみる景色はぜんぜん違う面白さ
があるものね」と、私は心のなかで語りかけました。
その時またお母さんの声がしました。「ほらちゃんと前向いて座
りなさい! できたところ見せてごらん。卓也君、もっときれいに
書かないとダメでしょう」。男の子は前に向き直りながら私のほう
をちらっと見上げてバツの悪そうな顔つきをしました。「お母さん
に叱られたから、自分が悪いことしたと思ったのかしら。
そんなことないよ。あなたはちっとも悪くないよ。窓の外の景色、
もっと見てたいよね。だってまだ幼稚園(小一?)だもんね」。
私は心の声で卓也君に語りかけながら、笑顔を返してあげました。
◆体験3:仕事がえりの地下鉄で、恐怖の「ヒーッ!」という母親の叫び
ドヤドヤーッと今にも発車しそうな電車の入口から母親と男の子
が駆け込んできました。「はやく席とって、座るのよあんたは」と、
母親は息子にむかって叫びました。びっくりして見ていると、お母
さんのほうは私の隣があいているのを見つけて猛然とダッシュ。
ドカッと座ると「あ一よかった」とたくさんの荷物を膝の上におい
て汗をふきはじめました。大きなボストンバックにハンドバック、
それにリュックサックもあります。私の膝にも荷物がせりだしてき
ました。
「あの一、荷物が・・・」と、言いたいのを抑えていると、お母さ
んが斜め前にたっている男の子に呼びかけました。
「あんた、なんで席とらなかったのよ。座らないとダメじゃない」
「いいよここで」「よくはないでしょ。すわらないと疲れるじゃない」
「だいじょうぶ」「だいじょうぶなわけないでしょ。はい、これチーズ。
食べて」と白い物を手渡しています。二人のあいだで喧嘩でもはじま
るんじゃないかと、ヒヤヒヤしながら息をつめていると、お母さんが
また話始めました。「英語や数学の授業があるんだから。今度の日曜
日は模試テストがあるんだもん。あんたそんなことでどうするの?
さっさと席とれば座れたのに・・ヒーッ!」突然悲鳴に近いお母さんの声。
周りにいる人たちは一斉に身を乗り出してこちらを見つめています。
そりゃあの悲鳴には誰だってびっくりするよね。どうやら息子は中学三
年生で、受験生(有名私立高校?)のようです。あくまでも推測ですが。
私は自分の膝の上にボストンバッグが半分以上せりだしていることも
忘れて思わずお母さんと男の子の顔を交互に見てしまいました。
するとお母さんが抱え込んでいるリュックサックは男の子の荷物か。
「受験生の息子にこんな思い物を持たせては、テストの点数にひびくわ」
と、思っているのかもしれません。なかには男の子が勉強する本や参考
書が入っているのでしょう。お母さんはハンドバックよりもしっかりと
抱え込んでいました。
「どうなってるのかしら、このお母さんは」。
そう思いながら降りる駅についたので、私は電車をあとにしました。
(写真はイメージ図です)
先日悲しいようなびっくりするような体験を三つ続けてしました。
一つひとつはまったく別のできごとなんですが、この三つはどこか
でつながっているような気がしてなりません。
◆体験1:久しぶりに神戸で大学時代の友人雅代に会いました。
十年ぶりかな・・・雅代の結婚式以来です。「まあ雅ちゃん、相変
わらずきれいね。今どうしてるの」と、私はさりげなく聞きました。
そのとき雅代の顔がちょっと曇りました。「・・・じつわね・・・
私離婚したの。もう三年になるわ」「え一、離婚!なんで、あなた
が離婚だなんて・・・信じられないわ」「うん、みんなそう言う
・・・彼のDVなの。こんなこと人に言えないでしょう」「それで
美代ちゃん(娘〕はどうしたの?」「うん、私がひきとってる。
でもたいへんだったわ。 まだ赤ちゃんだったし。向こうは渡さな
いって言い張って。とうとう裁判になってしまって。二年もかかっ
たのよ。娘をこちらにひきとれるまで」。「DV・・・なの」と、
私は息をのみました。「まさか、あのかしこそうでやさしそうな彼
が、DVだなんて」。
雅代の結婚式の様子が思い出されます。一流大学を優秀な成績で
卒業、一流の職場に就職。結婚してすぐに海外勤務について。
みんなの羨望のまなざしだった雅代。幸せいっぱいだった雅代の表
情をいまでも忘れられません。それがDVで離婚だなんて、私は信
じられませんでした。
「体のあちこちにあざができてね・・・警察に何度もかけこんだの。
こわくてこわくてとうとう我慢できず8か月の美代をつれて実家に
戻ったの」「よく美代ちゃんがこちらにとれたね」「なんとかね、
2年かかった。'あちらは法律の知識ばっちりでしょ。『僕はこの子
の父親だぞ。経済カもあるし、子育てにはおふくろが全面的に協力
するって言ってるし。子どもはこっちのものだ』ってやってくるし。
私だって絶対にわたさないって必死で対抗して。
お互いに弁護士をつけて、最後に決め手になったのは、私が青あざ
赤あざでなんども警察にかけこんでいた事実だったの。
おかげで美代は私の手にもどってきたわ。でもなんでこんなめにあ
わなくっちゃならないの」。
彼女の目から涙がぽろぽろとこぼれました。
有名・・大学の法学部出身で、エリート官僚で・・・彼のお母さ
んにとっては自慢の息子さんであるはずなのに、その彼がね一。
自分の思うようにならないと怒狂い、妻にDVふるっていたなんて
。背筋がさむ一くなってきました。
◆体験2:京都小旅行からの帰りの電車のなかで
私の前の席に幼稚園か小学一年生くらいの男の子とお母さんが
座りました。男の子はすぐに窓にしがみつくように外の景色を眺
めています。「思いだすなあ。私もこんなころ電車に乗るのが楽
しみだったな。家や畑があとへあとへと飛んで行くのがめずらし
くて。そんな童謡もあったっけ。この子あの歌知ってるかな?」
と、私は男の子のようすを見ながらぼんやりと昔をなつかしんで
いました。
そのときお母さんの声がしました。「卓也君、はい、これ」。
座るなりお母さんが取り出したのは、問題集のようでした。
「答え書いといてね。あとでみてあげるから」。「・・・」
男の子は黙ってスーッと手を出して受けとりました。
「え一と、15になるのは・・10と5、それに10たしたら
・・」「シー声ださないのよ」「ママー、この答え25やろ」
と、男の子はお母さんの顔を見上げて問いかけます。「ママは
あとでね、自分でやりなさい」。あ一あ、ママにふられちゃった。
男の子はしばらくして大きなあくび。「180円のお菓子、
140円の.あめと・・・90円のキャラメルとではお菓子の代金
は合計いくらでしょう?」。男の子はたいくつそう。またあくびが
でました。とうとう男の子は上半身をくねらせ、また窓の外をちら
ちらと横目で見始めました。家や工場が飛ぶように後ろへ後ろへ飛
んでいきます。その間から海が見えてきました。面白いのか首を伸
ばして追っかけるように見ています。「この景色をみたいんだろう
な、計算するよりも。電車の中からみる景色はぜんぜん違う面白さ
があるものね」と、私は心のなかで語りかけました。
その時またお母さんの声がしました。「ほらちゃんと前向いて座
りなさい! できたところ見せてごらん。卓也君、もっときれいに
書かないとダメでしょう」。男の子は前に向き直りながら私のほう
をちらっと見上げてバツの悪そうな顔つきをしました。「お母さん
に叱られたから、自分が悪いことしたと思ったのかしら。
そんなことないよ。あなたはちっとも悪くないよ。窓の外の景色、
もっと見てたいよね。だってまだ幼稚園(小一?)だもんね」。
私は心の声で卓也君に語りかけながら、笑顔を返してあげました。
◆体験3:仕事がえりの地下鉄で、恐怖の「ヒーッ!」という母親の叫び
ドヤドヤーッと今にも発車しそうな電車の入口から母親と男の子
が駆け込んできました。「はやく席とって、座るのよあんたは」と、
母親は息子にむかって叫びました。びっくりして見ていると、お母
さんのほうは私の隣があいているのを見つけて猛然とダッシュ。
ドカッと座ると「あ一よかった」とたくさんの荷物を膝の上におい
て汗をふきはじめました。大きなボストンバックにハンドバック、
それにリュックサックもあります。私の膝にも荷物がせりだしてき
ました。
「あの一、荷物が・・・」と、言いたいのを抑えていると、お母さ
んが斜め前にたっている男の子に呼びかけました。
「あんた、なんで席とらなかったのよ。座らないとダメじゃない」
「いいよここで」「よくはないでしょ。すわらないと疲れるじゃない」
「だいじょうぶ」「だいじょうぶなわけないでしょ。はい、これチーズ。
食べて」と白い物を手渡しています。二人のあいだで喧嘩でもはじま
るんじゃないかと、ヒヤヒヤしながら息をつめていると、お母さんが
また話始めました。「英語や数学の授業があるんだから。今度の日曜
日は模試テストがあるんだもん。あんたそんなことでどうするの?
さっさと席とれば座れたのに・・ヒーッ!」突然悲鳴に近いお母さんの声。
周りにいる人たちは一斉に身を乗り出してこちらを見つめています。
そりゃあの悲鳴には誰だってびっくりするよね。どうやら息子は中学三
年生で、受験生(有名私立高校?)のようです。あくまでも推測ですが。
私は自分の膝の上にボストンバッグが半分以上せりだしていることも
忘れて思わずお母さんと男の子の顔を交互に見てしまいました。
するとお母さんが抱え込んでいるリュックサックは男の子の荷物か。
「受験生の息子にこんな思い物を持たせては、テストの点数にひびくわ」
と、思っているのかもしれません。なかには男の子が勉強する本や参考
書が入っているのでしょう。お母さんはハンドバックよりもしっかりと
抱え込んでいました。
「どうなってるのかしら、このお母さんは」。
そう思いながら降りる駅についたので、私は電車をあとにしました。
(写真はイメージ図です)